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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2005年03月30日

フォアグラウンドとバックグラウンド

「高性能な処理能力はもちろん、ゲームを前進させる。」に続く、「未来のゲーム」についての話です。ボクは現時点で「未来のゲーム」の方向性として5つのイメージをもっていますが、今回はその1つ「フォアグラウンドとバックグランド」について書きます。


ハードウェアの高性能化がフォアグラウンド処理とバックグラウンド処理の並存を生む

ハードウェアの高性能化によって、ゲームというかゲーム機上のソフトウェアがフォアグラウンド処理とバックグラウンド処理という意識をより強くもつようになるでしょう。これは2年前、Cellの特許が話題になり、PSXが発表された後に、このBLOGの前身のBBSに書いたことです。

高性能化が進むと、複数のアプリケーションを同時に動かす方向にいくのは、例えばPCの例を見ると、自然な流れに思えます。またその先がけという形で、「家電+ゲーム機」という「PSX」が発表されたのは当時興味深かった。結果的にはPSXはゲーム機の部品と家電の部品をほとんどシェアリングできていませんでしたが、まぁ「未来を見せる」という意味はありました。

そういうこともあって、「PSP」の基本ソフトウェアがあらかじめゲームアプリで使えるメモリを制限する、という考え方自体にはボクは肯定的な意見をもっています。(8MBのメモリサイズが妥当か、というような詳細については疑問の余地は大いにありますが)

XBOX2においては、ゲームサービスという括りの中で、フォアグラウンドとバックグラウンドの処理が例示されていて、より一段階進んだ発想として興味深いです。

Xenon向けの最初のゲームでも、フルにCPUを使えるようにしたい。まず、シングル(スレッド)アプリケーションスキルも、(マルチコアで)スケーラビリティを得ることができる。例えば、次世代のユーザーインターフェイス(UI)や、オールウエイズオンサービスなどが、ゲームパフォーマンスに影響せずにバックグラウンドで走ることができるようになる。「Project Gotham Racing」をプレイしながら、バックグラウンドでHaloの新レベルをダウンロードすることもできる。こうした(マルチタスキングの)スケーラビリティは素晴らしい。なぜなら、リソースの競合があまり発生しないからだ。(スレッド同士の)同期はほとんど必要とされない。同期が必要になるのは、例えば、一方でダウンロードしている時に、一方でアップロードをする場合のTCP/IPスタック程度だ。
ハードウェアがプアだった時代には、必然的に単一のゲームソフトを動かすだけでプロセッサの処理もメモリも精一杯でした。けれどもハードウェアが非常に高性能化し、また単体のゲームソフトの内容だけでなく、プレイ環境を支えるゲームサービスや、プレイのスタイルが重要になってくると、単一のゲームソフトだけを動かすという発想ではなくなってきます。これは自然な進化でしょう。


遊びのフォアグラウンド処理とバックグラウンド処理

2年前にBBSで示した例の1つは、ゲームアプリとエージェントソフト(任意たんみたいなもの)を両方常駐させるという形態。他の例を出すとすると、複数のペットゲームを同時に動かすという形態がわかりやすいかもしれません。たとえば携帯機上に、シーマンとピカチュウとペット動物がいて、全部持ち歩けて、ボタン1つで別のペットゲームに切替えられるというプレイ環境。

1ゲーム1ディスクで1度に1枚のディスクを起動するという今のメディア形態では実現しにくいわけですが、例えばゲーム版iPodのようなメディア形態に移行したら、複数のゲームアプリの同時起動はさほど非現実的なものではないでしょう。

それと、当時BBSには書かなかったんですけど、ボクが毎日つけてるメモの中には「インタラクティブ・ゼロコンマ」という言葉が残っています。普通のゲームをインタラクティビティー1、テレビ番組のようなたれ流しをインタラクティビティー0とした時に、0と1の中間、0.3333・・・・や0.8888・・・・といった0.の領域のことです。

ゲームはインタラクティブなメディアといわれてきましたが、それは同時に、「ながら」ができない(しにくい)という特性を生みました。これまでのゲームの大半は、プレイの最中、ずっとコントローラを握っていることを要求するような作りが多かった。全力でゲームに向き合いなさいよ、という思想が支配的なんですね。

まぁムービーの多いゲームだと、ムービーを観ている間はコントローラを床に置けますが、ムービーが長いゲームが「操作するよりムービーを観ている時間の方が長い」と批判される土壌があります。また、(MGSのように)リアルタイムデモ中であっても、カメラを動かしたりできる作りが誉められる土壌があります。コントローラを握りっぱなしにさせようという思想が文化的に非常に強いわけです。

けれども、両手でしっかりコントローラをにぎって、顔をテレビに向けて、全力でゲームに集中するというスタイルそのものが古い、と思うわけです。2年前もそう感じましたし、今も感じています。インタラクティビティー0.というのは、まぁ色々な具現形がありますけども、その1つはちょっと触ったりいじったりしたら、結果が返ってくるとか変化が起きるまでしばらくの間放置しておく、というような遊び方です。触ったりいじっている間はフォアグラウンドの遊びなんですけど、放置している間はバックグラウンドの遊びになるわけです。

当時BBSでは「たまごっち」のような常時通電型のゲーム機の可能性について議論になりました。(その時、伊藤ガビン氏のたまごっちについての考察が話題にのぼりました。伊藤ガビンのあしたのゲー「第七話 携帯液晶ゲーは専用線感覚のタバコ・メディアか?」)「たまごっち」はプレイヤーがゲームを遊んでいない時間まで遊びの時間に組みこんだ良い例ですし、プレイヤーが意識的に操作していない間にコンピュータが動いている面白いゲーム機です。「たまごっち」の場合には単一のアプリケーションしか入っていないので、まぁバックグラウンドという表現は適切ではありませんが、遊びの意識という点では上記のバックグラウンドと同じことです。

「たまごっち」自体はペットの世話で忙しい遊びで、それは今時のユーザーの求める所ではないと思いますが、常時通電という「仕組み」は忙しい遊びだけのためにあるわけではないので、あの仕組みはまだまだ発展の余地があるでしょう。
最近の例でいえば、「nintendogs」のすれ違い通信も、路線としては同じ方向にあるといえそうです。これも単一のアプリしか動いていないという点では、バックグラウンドという表現は適切ではありませんけども。

携帯端末の例では、まだフォアグラウンドとバックグラウンドを同時に動かすほどのハードウェア・リソースが無いわけですけど、いずれ時間が進み、自然に高性能化していけば、自然とそうなっていくんじゃないかと思います。
まぁ高性能化の恩恵というのは、単に絵がきれいになるとか、よりリアルな物理挙動でオブジェクトが動くという、1つのゲームの内容をリッチにしていくことだけではありません。家電+ゲーム機、ゲーム+データダウンロード、実時間連動型の育成ゲーム、バックグラウンドの通信、・・・・。フォアグラウンドとバックグラウンドの処理を同時に走らせることで、遊びのスタイルを変えられるようになれば、それは高性能化の大きな恩恵の1つといえます。

*単一のコンテンツをリッチにしていく以外の方向というのは、「プレイヤー中心のゲームデザインから、プレイデータ中心のゲームデザインへ」で書いた内容ともリンクします。

Posted by amanoudume at 2005年03月30日 14:40 個別リンク

コメント

「パッケージ」から「サービス」へという流れはオンラインゲームブームの時に話題になりましたが、いよいよサービスを支えるクライアント側の端末が整いつつあるという事でしょうか。

ダウンロードとアップロードというのは最もわかりやすいバックグラウンド・アプリケーション。
Winnyがいい例。

面白いですね

水口氏のよく挙げる「マルチタスク」にも通じる話かも。
複数のゲームを次々と切り替えて同時に遊ぶ?

片手でできる物もあれば、1時間に1回様子を眺めて楽しむ物もあれば、手を止めた時に遊ぶ物もあれば、、、、、そうなったとき1つ1つのソフトはもはや従来の「ゲーム」では無いのかもしれないが。

たまごっち型ゲーム、GBAで「千年家族」というゲームが先日出ましたね。
http://www.nintendo.co.jp/n08/bkaj/
たまごっちと違い、電源オフでもゲーム(?)が進むようです。

PCですがガンダムネットワークオペレーションは必要動作スペックが低め、ログアウト中も進む等バックグラウンド的な役割を考えた作りになってるようです
ね。
ネットゲームと言うと多大な時間の作業を強いられるイメージでなので、なるべくそれを回避しようとした例ではないでしょうか。

dakini氏やガビン氏の「たまごっち」記事にあるように、
バックグラウンド処理と、時計機能は完全に別の物だな。
そこは区別すべき。
たまごっちやてくてくエンジェルの場合は、
ユーザーの入力が無いタイミングでのイベント発生や、
万歩計などのセンサーの常時作動など、
常時通電でなければならない使い方だった。
すれ違い通信も常時通電でなければできない。
あくまで本当にマルチタスクだから(マルチタスクを
処理できる性能があるから)意味のある議論。

なんというか、ゲームは視覚と聴覚を使うんでそういう方向には行かないと思います。映画と音楽の違いと同じで、音楽は聴覚だけだから作業とかしながら聞け
ますが、映画だとそうはいかない。やはり、画面の前で映画だけに集中するじゃないですか?
バックグラウンド的な要素を受け入れられるほどに、ゲームは生活に密着していないような気もします。

> 映画と音楽の違いと同じで、音楽は聴覚だけだから
> 作業とかしながら聞けますが、映画だとそうはいかない。
> やはり、画面の前で映画だけに集中するじゃないですか?
> バックグラウンド的な要素を受け入れられるほどに、
> ゲームは生活に密着していないような気もします。
現状分析としては正しいと思うけど、だからこそ逆に
まだ実現されていないシチュエーションが存在している
とも言えるんじゃないかと思います。
最近のテレビなんて、ノートパソコンでインターネット
を見つつ音だけ聞いてて、興味があるシーンだけ
画面を確認したり、なんていう風に「ながら視聴」を
よくやります。
娯楽が生活の邪魔になるようでは本末転倒。
うまく隙間に入れるような工夫が必要だと思う。
ちょっとした空いた時間に本を読んだり、ながら視聴
ができるテレビ、音楽だったりなど…。

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