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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2006年07月22日

マスプロモーション衰退後の世界(前編)

7億円もの巨額の宣伝費をかけたといわれる、SCEJの『LocoRoco』の販売が初週3万本と低調なようです。少し前にプロモーションについての議論がありましたが、やや乱暴に言えば、プロモーションに巨額の資金を投じたところで売れないものは売れないのです。

『ロコロコ』のプロモーションについては、wapaさんが冷静な分析を行っています。
わぱのつれづれ日記 ロコロコの苦戦に見る、プロモーション活動の課題

またゲーム系ライターの小野憲史さんが、ご自身の購入に至るまでの過程を語っておられます。
日々つれづれ 2006-07-20 LocoRoco☆LocoRoco

というわけでポイントは「知り合いがブログで誉めていた」こと。やっぱりレビューより売り上げより身近な人の意見が重要なわけであります。それがないと、いくらCMを見てもウザいだけだっただろうし。事前の体験版配布は、個人的にはマイナスでした。
もちろん、プロモーションがどうでも良いわけではありません。自動車や家電の例を引くまでもなく、今時のゲーム開発は広報や営業との連携が不可欠です。しかし経営者の方々はまず、良いコンテンツやサービスを生み出すことに経営資源を集中すべきです。それが第1のミッションだということを忘れた企業は、数年もすれば消え去っているでしょう。


マスプロモーションの衰退

大雑把にいって、消費者が実際に商品を買うまでの段階は、「知る」「興味を持つ」「買う」の3つあります。古い考え方では、まず第1に「知る」人を増やそうとします。そのため、テレビCMなどのマス広告にお金をかけるのが旧来のやり方でした。これは非常にもっともらしい。買ってもらう前にはまず興味を持ってもらわなければならず、それ以前にまず知ってもらわなければいけません。なるほど、子供にもわかる理屈です。

しかし昨今のマーケティングを取り巻く言説を追っていくとわかりますが、ちょっとこの常識が崩れてきています。
情報チャンネルの増加にともない、消費者の関心が分散した結果、チャンネル1つあたりの広告効果が落ちています。

また一昨年〜去年は、ネットと雑誌・新聞、テレビの間の広告費の奪い合い、みたいな話も、よく話題にのぼっていました。またHDDビデオレコーダーの普及にともなって、テレビCMの効果が落ちてきた、という見解が出てきて、あわてて電通が火消しに走るという一幕もありました。

まぁ電通必死だなって感じです。しかし既存のマスメディア(雑誌、新聞、テレビ)の広告効果が低下しているという認識は、着実に広がっています。

単純に情報チャンネルが増えただけでなく、消費者がマスメディアの言う事を信じなくなってきたという傾向も、よく言われることです。実際、このブログの読者のみなさんも、自分自身や身の回りをふりかえって、実感する所があるのではないでしょうか。

しかしこの結果は、企業にとって頭の痛い結果をもたらします。チャンネル1つあたりの広告効果が落ちているという事は、複数の情報チャンネルを通じて、より大規模に広報展開しなければならないからです。「とりあえずテレビにCM打っとけば、マスへの認知度は大丈夫だろ」なんてことは無いわけです。例えば、DSの一連のプロモーションは、実に多様な情報チャンネルを通して行われていたはずです。より多くの人間に知ってもらうには、1つのチャンネルに資金を集中投下するよりも、複数のチャンネルに資金を投入する方が適切です。


広告の効果が落ちている

でもねえ・・・・。
CNET Japan 「渡辺聡・情報化社会の航海図:マーケティングは変わろうとしているのか」

マクロではマーケティングの効率が落ちている、投資効率が落ちているというのが素直に導き出せる。巡り巡って消費者にも、直接的には投資家にとって良い兆候とはあまり思えない。
上記の各社の施策を見ていても、一つ一つ丁寧に考え抜き、積み上げていった上で実績に繋げていこうというのは分かる。なんとなく垂れ流している金額には見えない。手を抜いているなどということはなく、頑張っているのが手に取るように分かる。
しかし、販管費倍増といった決算内容が出てきていたりするのも事実ではある。
広告の費用対効果が落ちているにもかかわらず、広告を出さざるを得ず、過去と同じ水準、あるいは過去より高い水準を保とうと思えば、単純に広告費の負担は増えていきます。しかも昨今のメディアの状況を考えれば、しばらくは情報チャンネルの増加(分散)が進み、広告の投資効率は悪くなる一方のはずです。

「知る」人のうち、どれだけが「興味を持つ」人になるのか。「知る」→「興味を持つ」の比率がおそろしく悪くなっているのが今の時代の特性です。単純にマス広告に資金を投じるというやり方は、きわめて効率が悪く、資金力をもつ企業ならあるいは可能かもしれませんが、多くのゲーム会社にとっては厳しい話です。

最近増えてきた「マスプロモーション第一主義」の論理に従えば、これから先待っているのは開発費の高騰ならぬ、広告費の高騰。PS3とXBOX360が開発費のチキンレースだとすれば、DSの国内市場は広告費のチキンレースというわけです。「プロセッサ性能至上主義」から脱却した次は「プロモーション費用至上主義」ですか? 笑えない話です。

しかも、開発費はその企業の内部にお金が落ちていきますが、広告費は外に出ていくものです。開発費と広告費のバランスは、商品の性質によって変わってきます。にも関わらず、「開発費を削ってマス広告に回せばバカ売れ」などという馬鹿げた電波理論が流布され、ゲーム業界のマネージャーの方々がそんなもんを真に受け始めたら、日本のゲーム企業は競争力の源泉を失ってしまうでしょう。

つーかね、一般にマス広告の費用対効果に不信感が高まっている状況で、ただひとりゲーム企業だけが時代錯誤な認識で動き始めれば、「いいカモがきた」とテレビ広告屋さんは大喜びですよ。だからボクはゲーム開発者が自ら「プロモ、プロモ、プロモ」と連呼することに大きな怒りを覚えるのです。


これからどうなるのか?

マス広告の費用対効果に不信感が高まっている中、マーケティングについての議論が高まっています。一時期は「口コミマーケティング」という言葉が流行りました。企業がプロモーション用のブログやSNSを立ち上げる例もありましたが、いわゆる「炎上」が起こるなど、大失敗するケースもあります。去年のウォークマンAの宣伝ブログの大失敗は記憶に新しいところです。
livedoor ニュース - ドコモPR用「SNS」 10日で「炎上」

こうした浅薄な口コミマーケティングの最大の問題点は、従来の雑誌広告、広告記事の延長線上で、ユーザーの言論をコントロールしようとしていることです。ネットユーザーのマスメディア嫌いは非常に顕著ですが、要はみんな、メディアにコントロールされるのが大嫌いなんです。メディア(企業)側がユーザーを信じなければ、ユーザーもメディアを信じません。「不信」の連鎖がマス広告の効果を破壊しているのが現状です。
[R30]: 「メディアイン」というパラダイム

既存のマスメディア広告の凋落の結果として起こっている、企業側の根本的な認知の誤りを、「メディアアウト」という言葉で明確に定義していることである。メディアアウトとは、まず製品ありきで売り込みを考える「プロダクトアウト」の変化形で、「マス広告やセールスプロモーションの企画がまず先にあり、それに見合わない特性の製品やターゲット顧客はマーケティング戦略の初めから除外されてしまう」ようなビジネス展開の枠組み(パラダイム)を言う。

これに対して、Web2.0を前提とした世界では、「どんな情報を消費者に伝え、あるいは伝えないかという決定権が企業から失われている」という現実を認識したうえで、既存のメディアとインターネットとを混同せず、インターネットからは消費者の意見・動向を吸い上げて製品改良や企業活動全体に反映させていくような「メディアイン」のパラダイムに転換すべき、というのが山口氏の言い分である。

ここでも、認識を変える必要性が述べられています。
企業が莫大な広告費を出すことで、自分にとって都合のいい記事をメディアに載せ、ユーザーの意識をコントロールするという手法が通用しなくなっています。ソニーが凋落したのも、マスマーケティングに依存し過ぎ、上記の「メディアアウト」型の企業になっていたためです。

このような認識はボクだけでなく、多くのソニーファンにとって共通のものではないでしょうか。
コデラ ノブログ: 製造業の復権 [ITmedia +D Blog]

ソニーが前体制時に衰退した最大の原因は、販社の意向が強くなりすぎたことだと思っている。出井氏も安藤氏も優秀なセールスマンだったが、それゆえに市場の微細な動向に右往左往して腰の据わった動向が見据えられず、いたずらに現場を混乱させた。
(略)
現体制の場合、松下電器の劇的な復活のような、破壊を伴う改革はあり得ないだろう。まずエンジニアの良心が感じられる製品が発売できるか。製品は、言葉よりも雄弁にその素性を物語るのである。

こうした議論を見ていくと、いくつかのキーワードが浮かび上がります。「信頼」「良心」「製品」。後編ではこうしたキーワードを中心に、マスプロモーション衰退後の世界でどうすべきかについて、思う所を書いてみたいと思います。

Posted by amanoudume at 22:48 個別リンク | Comments (0) | TrackBack(0)

2006年07月12日

アニメとゲームの大人向けメディアが拡充

大人向けのメディア、続々と
最近、大人向けのアニメとゲームのメディアが充実してきたのを感じます。 この辺を開拓したのは『日経キャラクターズ』だと思いますが、雑誌(つかムック)の『オトナアニメ』や、OCNのサイトにできた雑誌型Webサイト『OG』など、徐々に増えてきているようです。ゲーム系でいえば、『ゲーム批評』が無くなって、ゲームのある生活応援マガジン『G-navi』が創刊されます。そういえば、少し前からファミ通も別冊で『オトナファミ』なんてのを出してましたね。

大人になった今でもアニメやゲームに触れている人、一時期離れていたけれども最近ゲームに戻ってきた人はかなりいるはずです。ファミコンミニの成功や、Wiiで展開される任天堂のバーチャルコンソールを考えれば、かつてのファミコン世代を狙うのは正しい発想。もちろんゲームセンターCXの成功も大きいでしょうね。

しかし一方で、雑誌というメディアが今時どうなんだ?という気もします。鮮度と情報量では、もはやネットに勝てないでしょう。『ゲーム批評』も消えてなくなっちゃいましたし。ではサイトを作るかといっても、雑誌形式だとそれほどインパクトはありません。ユーザー参加型というのは、大きな可能性があるものの、なかなか冒険しにくいでしょう。コミュニティサイトって、雑誌とは別のノウハウが必要ですから。

また紙媒体のアーカイブ性、閲覧性の良さは、意外と馬鹿にできないんですよね。そういう意味では、アニメもゲームも、もっと新書を頑張ったらいいんじゃないか、と思います。あれぐらいの情報量がギュッと1冊に濃縮されているという所に価値があります。ネットではすぐにまとめサイトが作られますが、何故かというと、ネットは更新頻度が早くて、鮮度は素晴らしいんだけど、まとまりが弱いんですね。リアルタイムで読んでいるうちはいいんだけど、後から追いかけるのは大変です。

そのため分厚い本ほどではないけど、雑誌よりは密度のある媒体がメリットを発揮しやすい。そこでムックぐらいで留めておくか、新書までいくか。ライトノベルの例だと、2004年にラノベ本が出てきて、2006年に新城カズマ氏のライトノベル「超」入門が発売されましたね。

すでに「新書戦争」なんぞと言われていますが、オタク系ももっとそちらへ乗っかっていった方がいい。ネットで色々書いているような人たちの知的な要求度という点では、それぐらいがちょうどいいのでは。正直、大人が読むには、その程度のインテリ感がほしいな、と。

書ける人は探せばいると思いますね。
古株の人間を捕まえてファミコン当時の話を書かせてもいいし、現役のゲーム開発者に書かせてもいい。3人ぐらいの共著でもいいし、何なら少しカラーページがあってもいい。ライトノベルならぬライト新書とかね。まあライト化し過ぎると、本末転倒なんですが。


補足1: ゲームセンターCXの成功の理由

ところで今日、ちょっと雑談してる中で出た話題。
ゲーム系番組や懐古系番組はこれまで、あまりうまくいってなかったのですが、どうして『ゲームセンターCX』は成功したのでしょうか? 知識自慢や、上手なプレイの披露ではなく、下手の横好きな人のプレイを見世物にしたからです。

  • 愛があるが、素直である
  • 目線が普通の人(評論家的ではない)
  • うんちくを垂れない(知識自慢をしない)
  • 視聴者の期待を裏切らない(ここで失敗するだろうなという場所で、必ず失敗する)
  • 下手な人にプレイさせている(視聴者が優越感や共感をもって観ていられる)
神動画は感心するけど、すぐに飽きるし、そもそもゲームが上手いことに感心する人なんて限られてるんですよね。ファミコンの頃は、子供は高橋名人の16連射に感心してましたが、今は少数です。

この視聴者の優越感は、最近のバラエティ番組全般やクイズ番組にも通じるところがあります。
TV LIFE ソフィーの業界 「最近のクイズ番組って、なぜあんなに問題が簡単なの?」

難しい問題の答えを知識として蓄えたり、それに正解してカタルシスを得るというクイズ番組のスタイルは、今や、誰でも知ってる常識問題を答えられない芸人やアイドルを笑うというスタイルへと変化してしまった。こんなことも知らないのかという優越感と自分は知っていたというカタルシス…とんでもなく低いレベルでの“知”を、いかに視聴者に提供するかが、今のクイズバラエティのテーマなのだ。


補足2: 日本のオタクと欧米のオタク

一方、海外ではいまだに「ゲームが上手いヤツがカッコいい」という文化が存在しています。XBOX Live!にも反映されていて、上手な人のプレイを鑑賞できるモードが付いていたりします。ゲームが上手いヤツを「ヒーロー」と呼ぶ感覚は今の日本では考えられません。

北米ってマニアックな物の市場が大きいんですよ。
E3がまさにその典型なんですけど、ゲーマーのゲーマーによるゲーマーのためのゲーム業界。そういう人たちの声がデカい。市場全体で見ると、そういう層ばかりではないんですけど、それでも濃いユーザーの市場が大きいから、注目されやすい。欧米でXBOXが強いというのも、この層をまず当てにしているわけですし、MOD云々だって、こういう層がボリュームを持っているからなんです。

まー、向こうのオタクって、日本のオタクとかなり違いますからね。イベントでリュックを背中にしょってるあたりは一緒なんですが、内向的な感じの日本のオタクと違って、アクティブですし、自分たちに引け目を感じてないんですよ。「ゲーム上手い、俺様ちゃんって、もしかして神?」って感じで、往来のど真ん中を堂々と歩きます。日本のオタクって、「いい歳こいて、特技がゲームしかない。うっ・・・・ごめんなさい」って感じで、道の端を歩くでしょう(もちろん比喩ですよ)。

で、ゲーム系ライターの人たちって、普通は自分自身がゲーム大好き人間、ゲーマーでしょう。すると「ゲーマーのゲーマーによるゲーマーのためのゲーム業界」がまぶしく見えちゃう。俺たちの理想世界ここにあり、みたいな。ラピュタは本当にあったんだ、って。そのせいで、欧米マンセー系にハマっちゃう人も現れるんです。「海外では達人のゲームプレイの動画に人気が集まっている」とか、「MODマンセー。日本のゲーム業界はさっそく取り入れよう!」なんて言い出しちゃう。おまけに、欧米のやり方をそのまま持ってこれないと、日本という環境が悪い!なんて言い出す人まで。

北米はそれで成り立っちゃうし、市場が回るんです。でも日本はなかなか回らないんですよ。ボクが欧米のゲーム業界の事情を知っていて、あえて触れない事があるのは、日本では通用しないと思っているからです。

Posted by amanoudume at 20:33 個別リンク | Comments (3) | TrackBack(0)

2006年04月19日

発掘エントリー 「市場価値のないユーザーを相手にするのは大変だ」

はてなブックマークを見ていたら、2年前の記事がwebarchiveから発掘されていたので、そんなにニーズがあるならということで掘り起こしました。以前、古い記事は整理してしまったんですよ。

2年前の記事ですから、当然、現在のボクの意見と異なる部分が少なからずあります。また、参照している記事も古いので、その点は注意してください。

この2年で国内のゲーム市場はどう変わったでしょうか。マニア向けに絞ったゲームを投入した会社は赤い海で溺れつつあり、ライトユーザーに向けてゲームを投入した会社は青い海をおおらかに泳いでいます。いつまでもマニア向けに作っていても、ジリ貧化する、レッドオーシャン化するという主張は当時から続いています。しかし当時は、国内市場のマニア層→海外市場、という予想をしていました。正直、ここまで短期間でライト層が活性化するとは思っていませんでした。

    ↓    ↓    ↓    以下、2年前の記事を発掘したものです    ↓    ↓    ↓

May 11, 2004
市場価値のないユーザーを相手にするのは大変だ

市場価値の縮小している男性オタク層

コンテンツ業界の悩みは深いが、とりわけオタク業界は大変だなあ、とつくづく思う。もはや新しいネタもとくになく、過去の資産を強引に焼き直すしか手がないようだ。
「トップをねらえ2!(仮)」、製作発表!!
かつてオタクに受けた作品の「2」をいまさら制作する、しかもかつての制作者がすでにいなかったり、作品の方向性を根本からねじ曲げていたり。ひどいもんだ。彼らはもう何が当たるのか、まったくわかっていないし、途方に暮れているんじゃないか、と思う。

ここ数年顕著なのは、男性のオタクの市場価値がゼロに近づいているということだ。
その辺は、ギャルゲー市場の縮小、萌え系コンテンツの迷走、エロゲー市場の長期的衰退などに顕著に表れている。また、男性のオタクが中心になって”一定以上の市場形成をなしえた作品が、アニメや漫画に皆無、という事実からもうかがい知れる。ネット上では話題になっても、実際にはたいして売れていない作品が多い。

最近は、女性のオタクが中心になってヒットにつながった作品のほうが多い。たとえば「SEED」「ハガレン」がいい例だ。ジャンプの漫画では「ONE PIECE」や「HUNTER×HUNTER」も無視できない。ここ最近のヒット作はほとんどすべて、女性のオタク層が中心になり、その後有象無象の男ども(あ、俺もふくむけど)が群がって、市場を形成している。男性オタクは市場形成能力を欠き、女性オタクのほうが市場形成能力を維持(増大?)している。

こうした市場動向は、着実に制作 or 供給側の認識を変えつつある。エロゲー業界では、アリスソフトの「大番長」やTYPE-MOONの「Fate/ stay night」、ニトロプラスの「デモンベイン」など、男性キャラ重視の潮流がはっきり生まれ始めている。規模の小ささから市場の動向に敏感にならざるを得ないためか、あるいは制作者側の時代のニーズに対する直感か。(むろん、これには「萌え」から「燃え」という、一部の男性オタクの嗜好の変化も影響しているとは思う)

そうしたニーズに乗れない旧世代制作者は、縮小し、分裂しつつあるオタク(男性)市場を前に途方に暮れているわけだ。その代表がガイナックスであり、その周辺もふくめた一部の古いオタク世代の人たちだ。90年代後半にやたらと出張っていたオタク文化論者の人たちが最近とんと元気がなかったり、クラシックなオタク世界に閉じこもって、全然動向を追えていないのは、単純にかれらがおじさんになったためだろう。

問題は彼らが自分たちのおじさん性にどれだけ自覚的なのか、ということだ。自覚したうえで、旧世代を相手に細々とビジネスをつづける、という確信犯的な選択もありだが、さて、いつまでもつかはあやしいもんだ。そうした彼らの悲惨な現状が、「トップをねらえ2」に顕著にあらわれている、というのは決していいすぎではないだろう。正直、痛々しい。

ユーザーの買い手市場という錯覚

市場価値のないユーザー層を相手にするのは大変だなあ、と思う。今はコンテンツがあふれていて、ユーザーが好きなように選べるし、違法コピーもふくめて、かなりユーザーが強い時代だというイメージがある。それは一面の事実なのだが、同時に虚構でもある。

というのは、今コンテンツ制作者&供給者がユーザー(市場)を選ぶようになりつつあるからだ。口うるさいだけで金もろくに落とさないユーザーよりも、もっと簡単にお金を落としてくれるユーザーに、ビジネスのフォーカスが当たるのは自然なことだし、あら探しばかりするお客よりも素直に評価してくれるお客に、制作者が心を傾けるのも自然なことだ。

国内のオタク業界においては、男性オタク→女性オタクという移行は顕著だ。また日本のコンシューマーゲーム業界も、明らかに国内の市場に見切りをつけ始めている。このあたりは、ゲーオタの人なら割と肌で感じていることではないかと思う。日本よりも、欧米で先に新作発表が行われたり、積極的に情報が露出されたり、欧米ユーザーの嗜好性にターゲッティングしたゲームを開発したり、という流れはここ2年ほどで、かなり明確な流れになりつつある。各社とも、全世界におけるローカライズ体制を急速に強化している。

つまり、より強く支持してくれる優良な市場(ユーザー)に対して、より優良なコンテンツとサービスを提供する、市場規模にあったターゲッティングが今後ますます盛んになっていく。そうなると、切り捨てられたユーザーは離れていくかもしれない。そして市場価値はますます縮小し、コンテンツ制作者&供給者はますますより優良な市場に傾いていく。たとえば「ゼノサーガ」のキャラクターデザインの変更などがいい例だろうか。

もはや市場は日本だけではない、という時代がすでに始まっている。その結果、一部では国内コンテンツ制作者とユーザーの間で、ますます乖離が起こるかもしれない。
    ユーザー「買ってほしかったら、もっと○○しろよ」
    制作者&供給者「あ、売れないなあ。よーし、もう国内はどうでも
               いいや。買ってくれる欧米の意見をもっと聞こう」
    ユーザー「俺ごのみじゃねえよ。もう絶対かわねえ」
    制作者&供給者「買わないなら客じゃねえな。買ってくれる人の意見をきこう」
                      :
                      :
もちろん、これはわかりやすくするために、オーバーに書いたわけで、実際ここまで子どもの喧嘩じみた対立はありえないがw、このようなズレは今後拡大していくのではないか、と思う。不幸だが、しばらくはしょうがないと思う。それがビジネスというものだ。
「お客様は神様だが、買わないやつは客じゃない。客じゃないやつの意見は聞く必要がない」
このシンプルな論理だけがビジネスを動かすのだから。

Posted by amanoudume at 00:08 個別リンク | Comments (3) | TrackBack(0)

2005年09月29日

ソフト企業の未来とは?

1bit Paper
話題になっている「1bit
Paper」。シンプルなインターフェース、必要最小限な機能、軽い動作、小さなアプリ。ここ最近のトレンドに合った素敵なソフトです。白黒2値しか扱わ
ないという割り切りはすばらしいですね。
昔は巨大ソフトウェア志向というものが流行っていて、その時代にはマイクロソフトが持てはやされました。その時代には、機能を盛りこめば盛りこむほど、ソ
フトウェアの付加価値は向上するという考え方が信仰されていました。多機能になれば、ユーザーにとって使わない機能が増えていきますし、初心者には不親切
になっていきますが、「初心者にはマニュアルやチュートリアルを渡せばいい」という思想が当たり前でした。
しかし今、「わたしはマイクロソフトが好きだ。すばらしいと思う」などという技術者がいれば、「あのおっさん、古臭いね。フェードアウト組だね」と蔑みの
目で見られることでしょう。「成功しているソフト企業」の共通点でも書きましたが、元気なソフト企業はどこも小さなアプリにフォーカスしています。

ソフト・ハード一体型の企業が好調

ところでグーグルにしても、アップルにしても、どちらもソフト・ハード一体型の企業です。


ソフト企業の適切なサイズとは?
では普通のソフト企業はこれからどうなっていくのでしょうか?
1つ大きな流れとして、パッケージ→サービスヘのシフトが顕著で、仮にパッケージを売ったとしても継続的にアップデートしていくビジネスになりつつありま
す。直接的にはウイルス対策やバグの修正、メンテナンス料金で収益を得たいというソフト企業のニーズが要因です。
しかし本質的には、ソフト制作という仕事に、企業の大きさを維持するだけの根拠が無くなってきたからです。ソフト企業が巨大化するのは何故か? どうして
多数の開発者を雇う必要があるのか? 1つ1つのソフトウェアが巨大化している時代には、答えは簡単でした。
しかし時代が変わり、いまやソフトを作るのに大人数を囲いこむ必要が無いことがわかってしまいました。もちろんオープンソースの影響もあるでしょう。商用
ソフトウェアに匹敵するクオリティのソフトを制作するのに、会社なんて必要ないことが証明されてしまったのです。
20世紀はソフト制作者やクリエイターが会社という仕組みを利用せざるを得ませんでした。会社という仕組みを通さなければ、ソフトを流通させ、宣伝するこ
とが難しかったからです。ソフト企業の存在価値はなにか? ソフト企業は巨大化する必要かおるのか?ということの説得力が揺らいでいるのです。もちろん会
社という枠組みが突然消えてなくなったりはしません。完成度が高く、実績もあります。しかし説得力が揺らいでいるため、ソフト企業の経営にも変化が求めら
れています(ソフト企業に限りませんが)。
従来の予算とスケジュールのマネージメントに加えて、クリエイティビティーマネージメントという考え方が必要なのだと思います。それができる企業とできな
い企業で、ものすごい差がつくようになるのでしょう。

Posted by amanoudume at 14:58 個別リンク | TrackBack(0)

2005年09月25日

ソニーを取り巻く言説の変化

この所、ソニーの経営についての批判が急速に増えていますね。ブログにとどまらず、ネットメディアや日経を始めとする大手マスコミまで、その輪が広がって
います。興味深いのは、批判している層が明らかに変わってきていることです。
フェーズ1: 被害者とアンチソニーによるソニー批判 (〜2005年3月) 
ソニー製品のサポートの悪さに憤った人、PSPの初期不良に怒った人、元々ソニーが嫌いだった人を中心とした批判。ソニーショック〜PSPの初期不良騒動
の頃にもっとも元気だったのはこの層だと思います。
主にブログのような個人メディアが中心でした。ゲーム系雑誌の大半がPSP初期不良をスルーするという、メディアのソニー擁護が露骨に表面化しました。た
だ、最終的には、親ソニーという印象の強かった日経が久多良木氏の「それがPSPの仕様だ」発言を掲載するにいたりました。
フェーズ2: 中立的なメディアによるソニー批判 (2005年4月〜2005年7月)週刊誌が面白がって、ソニーのネタ記事を掲載する
ようになった時期。UMDビデオでアダルト向け作品が出る、という記事が世間をにぎわせたりしました。経営方針や製品の品質を論じる記事は少なく、ネタの
宝庫としてソニー関連の記事が多かった時期です。メディアの間で、ソニーをネタにしていいんだ、という暗黙の了解ができたのもこの時期でしょう。
一方、ブログでソニーが取り上げられる頻度はかなり減っていました。久多良木氏の降格をもって、溜飲が下がった人が多かったのでしょう。
フェーズ3: 親ソニーだったメディアによるソニー批判 (2005年8月〜現在)「iPod対ウォークマン」という構図が鮮明になるに
つれて、再びソニー関連の記事が増えてきました。雑誌社の編集部がブログを開設するようになり、「本音」に近い記事が載るようになりました。
ブログのような個人メディアだけでなく、ネットメディアやマスコミもソニーの問題点を指摘し始めました。フェーズ1の時期にソニー批判をしていたブログの
大半は、すでに飽きていて、まったくコメントしない所が多かったようです。
またソニーの新型ウォークマンの発表後は、BCNランキングや日経などの親ソニーだったメディアが、ソニー擁護をしなくなりました。アップルファンや
iPodユーザーの心に火がついて、ふたたびソニー批判がブログを賑わすようになりました。
そして経営方針説明会の前後では、これまでソニー関連の書籍を手がけてきた麻倉怜士氏など、ソニー周辺、親ソニーな人たちから、批判の声が上がるようにな
りました。アンチソニー〜中立な人たちはもはや論じる価値もない、という態度に変化していて、ソニー好きが一番熱心になっているように見えます。
フェーズ4: ソニー内部からの告発このままいくと、おそらく次の段階はソニーグループ内部からの告発でしょう。ちょうど国内で大規模リ
ストラを敢行することもあり、いろいろなことが明るみに出やすい時期です。この時期になにが飛び出すかは、日頃の行いが問われるわけですが、場合によって
は、一気に最終段階まで悪化しかねません。経営陣の失言などはもっての他。ナイーブな情報ハンドリングが求められます。
フェーズ5: ゲームオーバーここまできたら、どうにもなりません。フェーズ3、せめてフェーズ4で踏みとどまりましょう。
これってソニーに限らず、ダメになっていく企業のパターンなんですよね。
ただ、ソニーはどうもこの進展が早い。今までイメージが良すぎた反動もあるのでしょうけど、それだけ積み上げられた「虚構」が大きかったのでしょう。
フェーズ4まで進むと厄介なので、これからは社内統治が重要になるでしょう。社内の士気を高められないまま、人員削減だけが進むと、火薬庫に火がつく危険
性が増大します。経営陣の手腕が問われる時期ですね。

Posted by amanoudume at 10:56 個別リンク | TrackBack(0)

そろそろ喜劇になる

これは喜劇

ソニーの経営方針説明会についての記事を書いて、さて次はなにを書こうかと思っていた矢先、こんな面白ニュースが。

日経 ソニー会長、英紙に不満表明・「事業整理の熱意ない」

22日に発表した経営再生策について「職場の士気の低さ」と「人員削減に対する文化的な反発」のため、思い切ったリストラができなかったと述べた。
 会長は「今後も改革を進める上で共に働かなければならない人々との関係を保ちつつ、できるだけのことはやった」と述べた。しかし、ソニーの一部役員はいかなる人員削減にも徹底的に抵抗したと指摘し、「日本社会は米国社会よりも人道的だ」と皮肉った。
沈みゆく船の上、乗組員が一致団結して危機に向かうどころか、ここぞとばかりに小競り合いに夢中になっている、と。いやはや、まったく面白い喜劇ですね。

いまや、ネットメディアに加えて、マスコミまでソニー批判を堂々と掲載するようになりました。少なくない人々が、真剣にソニーの将来を憂えて、問題点を指摘しています。もちろんうちもその1つ。しかしこういう喜劇を見せられちゃうと、馬鹿らしくなっちゃいますな。
ソニーの新しい経営戦略を考える以前に、そもそもこの船に乗っている乗組員たち(とくにブリッジ要員)は、本気で自分たちの船を助けたいと思ってるんでしょうかねえ?

「経営」を理解できない経営者の喜劇

しかも経営改革の責任者たるストリンガー氏は、「経営」の言葉の意味を誤解している人物のようですし。
R30::マーケティング社会時評 「ストリンガーさん、終わったかも…」

傾きかけた会社なんて多かれ少なかれ縄張り争いと既得権益死守の両方で幹部同士がいがみ合ってるんだから、そのぐちゃぐちゃのど
こを「象徴」のボタンとして最初に押すかというのを、慎重に見極めてやらなきゃダメ。
NIKKEI.NETでFTのインタビューの断片を見る限り、ソニーの組織を変革する「象徴」となるキーレバーがどこにあるとストリンガー会長が考えてい
たのかは分からない。「職場のモラルが低く」て「人員削減に反発が大きかった」からリストラができなかったというのは、かつての富士通の秋草会長の「社員
が働かないからダメなんだ」発言にも似た香ばしさが漂う。

経営というのは、単純にいえば、社員1人1人のエネルギーをどうやって集約して、変換して、社外(マーケット)に出力するか?ということです。どういう組
織をつくれば、社員1人1人のエネルギーをより多く引き出し、より効率的に、より創造的に製品やサービスに変換できるのか。もちろん、時代と共にマーケッ
トは変化し、最適解も変化するわけで、そういう継続的な適応活動のことを経営といいます。
だから経営陣が「ユーザー視点」などのキーワードだけ並べても、それですぐに「ユーザー視点」の商品が生まれるわけではありません。そういう商品作りを社
内に根づかせる組織活動をして、はじめてそういう商品が生まれるのです。
(まー、それ以前に、ソニーの経営陣は、自社製品をまたもや逆さに持っていたわけで、いったいどの口が「ユーザー視点」と言ってるんでしょうか。あんたが
まず自社製品のユーザーになれ、と誰もが思ったことでしょう。)
例えば、アップルの経営は、スティーブ・ジョブズのカリスマ性だけで片づけられる傾向がありますが、いくらジョブズが「User
Experience」と連呼したって、アップル社員に「User
Experience」を重視して物づくりをし、サービスを提供するということが浸透していなければ、何の成果も生まれないわけです。アップルは認知心理学者のドン・ノーマン氏を「User Experience アーキテクト」とし
何年もかけて、社内に「User Experience」という考え方を浸透させたのです。
松下の復活を成し遂げた中村社長にしても、社内のあちこちで社員のエネルギーがつっかえてる状況、社員のエネルギーが内部摩擦で無駄に浪費されている状況
を変えることから始めたわけでしょう。ここ数年の松下は、社員のエネルギーをどう生かすかに、真剣に取り組んでいますよ。
燃料になる毒、ならない毒
アップルにしても、松下にしても、何年か前は負けてましたよね。負けている
企業ってのは、社員1人1人のエネルギーをうまく集められない、どこかで無駄に浪費されている状態です。だから、宗教集団でもなければ、ほうっておくと、
社員が毒(鬱憤、不満、愚痴、批判)をためこむようになって、どんどん腐るんです。
とくに若いやつほど、毒をためこみやすい。それがいけないわけじゃなくって、どんな組織でも多様性や柔軟性を維持しようと思えば、必然的に毒は出てくるも
のです。毒は企業が市場の変化に適応するための「燃料」になりますから、きちんと燃やして、前に進む原動力にすればいい。クリエイティブの世界では、創作
の素が毒、ってのは当たり前の話ですし、それ以外の世界でも同じでしょう。
ただし「燃料」にならない、ただ腐るだけの毒ってのもあって、これはヤバい。この毒が溜まりすぎると、組織は毒の沼地に沈んでいきます。浮かび上がること
はありません。また、燃える毒も、いつまでも燃えないでいると、燃えない毒になってしまいます。
つまり企業を立て直すというのは、社内にたまった燃える毒を燃焼させるべく、組織を変更することです。まぁ、社員のためこんだ毒がすべて燃える毒ならラッ
キーなんですが、やっぱり燃えない毒を抱えている人はいるでしょう。そういう人が、燃える毒を出せるまで待てるかどうか。待てるとして、どれぐらい待てる
かは、個々の企業の余力の問題になります。最終的には、いつまで経っても燃えない毒しか出せない人には退去してもらう。それが本来あるべき人員削減です。
ソニーの社員はみんな優秀だから、経営者が無能でも、ほうっておけば勝手に化学反応をおこして、すばらしいヒット商品を生み出す・・・・なんてことはあり
得ないんです。人ってのは放っておくと腐るし、サビつくだけなんです。ソニーにはまだ「底力」があるのかどうかという議論もありますが、底力というものは
引き出すもので、ほうっておいたら勝手に出てくるものではありません。底力を引き出すような組織を作れるのかどうかが重要なんです。
なんかもう、ソニーは本当に「経営」者に恵まれない企業で、いろんな会社を買って並べておけば、勝手に化学反応を起こすなんて真顔でいう経営者がいたかと
思えば、次の社長候補にいたっては「美学」なんて言って、現場の論理的な意見を握りつぶすような人物
そんなことしたら、現場は二度と積極的な提案をしなくなりますよ。追従をいうやつか、信者しかいなくなる。さすがにそんな人間が経営のトップに立つことは
ありませんでしたが、今度のトップは経営方針を発表した2日後には社員についての愚痴を公言しました。もはや、笑うしかないですな。

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ホーム/2005-09-26
Excerpt: 昨日はジャパンカップ決勝戦を見てきました。優勝は昨年の覇者、トミー・ジョーンズ。 ちょっと遅れて会場に入ったので、お目当てのエキシビションは2つだけ見ることができました。ピンデッキに置かれた3本のピンを、クリス・バーンズとマイ ク・マチューガとレイエスの3...
Weblog: とんかつ3号 隠れ亭
Tracked: 2005年09月25日 22:39
そろそろ喜劇になる
Excerpt: っていうか、社外の人にとって見れば、ただのお笑いであり、ネタ企業になりつつある。...
Weblog: Computer U Relax
Tracked: 2005年09月26日 02:30

2005年09月24日

未来を捨てた企業に未来はあるのか?

失望を極めた経営方針説明会

22日、ソニーは経営方針説明会を開催。ストリンガー会長、中鉢社長がひきいる新経営陣による「ソニーの経営改革」が発表される・・・・はずでした。しかしその実態は、日経が16日に紙面に掲載した、金融売却を始めとするソニー再生計画「日経プラン」よりもはるかに後退したものでした。

また、決算予想もマイナス修正。まあ最近のソニーはマイナス修正が珍しくないのですが、ついに11年ぶりの営業赤字。復活は遠のいた・・・・という失望のため息が多くの人からもれたことでしょう。実際の報道を見てみましょう。
    ○日経 「ソニー会長:新経営方針、出井前CEO時代と基本戦略は同じ」
    ○日経ビジネス 「新しい方向性欠く、ソニーの新経営戦略」
    ○MSN-毎日インタラクティブ 「ソニー:エレクトロニクス不振をゲーム収益でカバーできず」
    ○AV Watch 「ソニー、新経営方針を発表。05年度営業利益は200億円の赤字」

未来を切り捨てたソニー
選択と集中と掲げるのはいいのですが、撤退と縮小の具体例としてあがったのは 「クオリア」と「キュリオ」だけ。どちらも現在のビジネス規模が小さく、この2つを切ったところで、他の部門にそれほどリソースを回せるわけではありませ ん。まあクオリアは的外れもいいところだったので、切るのは良いとしても、「キュリオ」に代表されるロボット事業を縮小するのは、時代に逆行する選択で しょう。 エンターテイメント向けロボットは今後、成長が期待されている分野の1つです。実際、IT系ニュースサイトでも、ニュースをよく目にするようになっていま すし、日本が独自の優位性を発揮する産業になる可能性もあります。 たしかにロボット事業は今後1年、2年ですぐに利益を生む分野ではありません。おそらく5年以上かかる、まあ下手すると10年後のビジネスです。今は小さ いでしょう。 しかしそれでは全然、この数年の反省を生かせていません。 梅田望夫・英語で読むITトレンド 「Jobsの復帰とiPod決算、そしてWozniak」
大型既存カテゴリーの新商品ではなく、新しいカテゴリーを創出しようとする場合、どんなものでも始まりは小さい事業なのだ。この シンプルな原則を忘れてはならないというのが、iPodから得るべき教訓だと思う。巨大化した日本の大手企業は、生まれようとしている小さい事業をバカに しすぎる。「えっ、売り上げ50億円? 年ですか? 月じゃないの? そんな小さい事業はうちではできないねぇ、もっと大きな話をもってこい」なんて思っている幹部が多いから、新しいカテゴリーの創出がなかなかできないので ある。

もう1つ。トヨタのハイブリッドカーという例もあります。こちらは何年もかけて地道にやってきた成果が、ある日新しい価値が「発見」されて、競争のルールを変えるイノベーションになったケースです。
R30::マーケティング社会時評 「環境が無敵のポジショニング軸になる日」

かつてトヨタ車などには脇目もくれなかったタイプだ。その彼がなぜハイブリッドが載ったレクサスなら買うのか?理由を聞いてみると、「モーターの加速を味わってみたいから」と言う。

眞鍋かをりと一緒に退屈なエンジン講義を聴いた人なら分かると思うが、排ガス低減・省エネのためだとばかり思っていたハイブリッド・エンジンに、実は高トルク走行時のガソリンエンジンの動力効率の悪さを電気モーターでカバーするという、新しい使い方があることを示した。

未来を捨てて、現在の利益だけ追いかける。そんな企業に未来はあるのでしょうか?
追いつくことしか考えてない、追い抜こうという気概がどこにもありません。

久多良木氏の夢、潰える

元々Cell構想をぶち上げたのは久多良木氏です。久多良木氏はインテルのビジネスモデルを高く評価しており、PSシリーズの需要をてこに、Cellアーキテクチャを娯楽機器およびデジタル家電のx86アーキテクチャにすることを狙っていました。
後藤弘茂のWeekly海外ニュース 「久夛良木健氏が語る、ソニーの半導体戦略」

ソニーの発想は、半導体屋さん的発想でなく、Intel的な発想だ。半導体的発想だと、集約すると二重苦、三重苦になってしま
う。(チップ当たりの)単価が下がって、売値が下がり、また、製造キャパシティが余ってしまうから。それに対して、我々は、半導体及びシステム事業をやっ
ている。それが強み。
Intelさんが競争力を維持できているのは、彼らが毎年毎年膨大な利益を上げて、再投資をかけているから。設備投資と研究開発に利益を注ぎ込むから、
IP(知的所有物)がどんどん積み上がり、製造能力が積み上がる。素晴らしいサイクルだ。

これは当然、継続的な追加投資を前提にした話です。この記事は2003年のもので、当時は久多良木氏がソニーグループの経営に深く関わっていましたし、社
長の有力候補でした。
ところがPSX、PSPと失敗をくり返した結果、久多良木氏は降格。ソニーグループの半導体戦略は、それまでの舵取り役を失い、方針が不明確になりまし
た。しかし不明確といっても、半導体事業への投資は数年前からおこなわれており、数千億もの規模にふくらんでいます。久多良木氏が失脚したからと言って、
「はい、やめました」ではすみません。
ソニーの新経営陣が下した判断は、
    ・Cellへの数千億の投資は回収しなければならない。
        PS3単独では厳しいので、Cell搭載のデジタル家電を開発する
        「Cellディベロップメントセンター」を新設
        →Cell搭載製品が仮に成功してもSCE=久多良木氏の手柄
         にはさせない、という意味もあります
    ・継続的にCellアーキテクチャに投資するつもりはない。
    ・今後はゲーム部門の「暴走」を許さない。きちんと利益を上げてもらう。
というものです。
日経エレクトロニクス 【続報】ソニーの経営方針,「2007年度に売上高8兆円,利益率5%」
同社の2003年度〜2005年度の研究開発投資は5000億円である。このうち2500億円が家庭用ゲーム機向けの投資だった。「今後はゲーム事業への大規模な研究開発投資はしない。ゲーム事業は今後ゲーム事業の中で収益を確保する体制としていく」(中鉢氏)。
Cellそのものは、今さらやめられませんが、久多良木氏の夢である「Cellを娯楽機器とデジタル家電のx86にする」は潰えたのです。

しかしこの判断も中途半端ですよね。久多良木氏の夢を支持するつもりはありませんが、少なくとも「未来」は持っていたわけです。でもソニーの新経営陣のやろうとしてることは、「過去」の清算ですよね。ここでも「未来」を切り捨てる姿勢が浮きぼりになっています。

(ちなみにソニーグループとしてはPS3を来春に発売する意向のようで、PSX、PSPと続く「出しちゃう」パターン
なったようですね。無茶なスケジュールを強行した時は、毎回失敗してるわけで、SCEとしては悩ましい事態。まぁソニーの新経営陣にとって、久多良木氏は
政敵ですからね。PS3が来春に間に合わなくても、PS3がPSP同様に初期不良等でつまづいても、久多良木氏に責任を取らせればいいわけで。なかなか面
白い事態になってきました)

アイデンティティ・クライシス

出井氏の経営多角化によって、ソニーは自らのアイデンティティを見失いました。
日経ビジネスの記事
も指摘されていますが、「ソニーが金融を持っていてどうするのか?」という問いに答えを出せないままなわけです。多くの人が新経営陣に期待しているのは、
「未来のソニー像」を掲げることです。リストラする人数を聞きたいわけではありません。ここでも新経営陣は「未来」に背を向けたのです。
16日に日経が掲載した「日経プラン」は金融、スカパーなどを売却するという再生案で、あれがパーフェクトだとはいいませんが、少なくとも「アイデンティ
ティ・クライシス」という根本的な問題を解決するものでした。そこは評価していいと思います。
出井氏は、ソフトとハードの融合などと言っていましたが、具体的なビジョンは何もありませんでした。会社だけ買ってきて、近くに置いておけば、勝手に化学
反応を起こして何かが生まれると思っていたわけです。それって何も考えてないのと一緒ですよ。その出井氏の基本方針を、新経営陣は継続すると宣言している
わけです・・・・。
先日、「成功しているソフト企業の共通点」という記事を書きました。ここでソフト企業といってますが、じつはこの3社、すべて「ソフト、ハード一体型」の企業なんですよね。今回はそのうちアップルを例に取ります。

梅田望夫・英語で読むITトレンド 「スティーブ・ジョブズ、コンテンツ産業の未来を語る」
ジョブズ氏が音楽ビジネス(サブスクリプションモデル)や、映画と音楽の違いについて語ったインタビューの一部が紹介されています。ジョブズ氏の語った内
容のすべてが正しいとはいいませんが、1つこれだけは言えます。ジョブズ氏は「ユーザー体験」というものを理解し、想定し、それを中心に商品を構築してい
る、ということです。アップルのソフト部門とハード部門が勝手に化学反応を起こしたわけではありません。
日経エレクトロニクス 「Appleにあって,ソニーに足りないもの(上)」

iPodの開発チームの誰もが,よく口にするフレーズという。User
Experienceとは,製品の機能や性能を議論する前に,ユーザーにどんな経験を提供できるのかという視点から,製品コンセプトを練るアプローチを指
す。ユーザーを中心に据えた設計手法と言い換えてもいい。

ユーザー体験、ユーザーの利便性を理解したうえで、はじめてソフトとハード一体型の経営ができるんです。「ユーザー体験」という結合力があって、ソフト
(サービス)とハードが密結合するわけです。ソフトのアーキテクトとハードのアーキテクトではなくて、ユーザーの体験をどう構築するかというアーキテクト
が必要なんです。そういう人材がいなければ、並べて置いてあっても酸化して錆ついて終わりですよ。といいますか、出井氏はそうやって錆びつかせちゃったわ
けじゃないですか、ソニーを。
新経営陣は、そこを全然反省できてない。これからもっと錆びついていくだけですよ。トップメーカーをパクるだけの二流メーカーになっておしまいですよ。情
けない……。

Posted by amanoudume at 00:08 個別リンク

2005年09月14日

成功しているソフト企業の共通点その2

グーグル、アップル、任天堂の共通点は他にもあって、1つはプライスリーダー(を支える低コスト体制)、もう1つはハード、ソフト一体型の会社だというこ
とです。
アップルや任天堂については説明は不要でしょうが、「グーグルはソフト企業ではないか?どこがハード企業なんだ?」と思われる方もいらっしやるでしょう。
グーグルの競争力の源泉は、検索エンジンとその他のサービスを支えるサーバー群です。
ここでいわゆる「10分の1のコスト」を実現しているから、グーグルは圧倒的な競争力を
もつと言われているわけです。
最近、グーグルやアマゾンなどのAPI公開型のWebサービスがさらに勢いを増していて、その盛り上がりから「Web2.0」「インターネットOS」
「グーグルOS」論が台頭しています。インターネット全体を1つの生態系と捉えて、そうしたWebサービスを「OS」とみなすなら、グーグルのサーバー群
はまさに「ハード」そのものです。
グーグル、アップル、任天堂といった最近の成功企業はいずれも、低コストのハードウェアと高品質のソフトを組合せて、競合他社を凌駕する付加価値を実現し
ています。
ただしハードウェアといっても、1つパラダイムチェンジがあります。いわゆる「プロセッサ性能」を武器にしていないのです。
グーグルはあのサーバー群を組み上げるために、「ネットワーク性能に特化した特殊プロセ
ッサ」を設計していませんし、アップルもiPodにおいてカスタムチップの使用には消極的です。
日本製のオーディオプレイヤーのほうがiPodよりもプロセッナ院能が良いとしても、
そこに大きな付加価値は発生せず、十分な競争力になっていないのです。
むしろ高性能のカスタムチップを間発しようとすると、コストが重荷になるうえ、
 (チップ設計に時間がかかるため)製品投入のスピードが遅くなったり、
変化に迅速に対応できない、というデメリットが生まれます。
またDSとPSPの競争においても、プロセッサ性能が競争を左右していないことは
今のマーケットを見れば明らかです。
なぜこうなったのか?
それはムーアの法則によって、プロセッサの性能が向上し、大多数のユーザーの 「必要十分」を満たしてしまったからです。
それがいわゆる「チープ革命」につながるわけですが。
ある一時期、ソフト優位論という考え方が台頭してきました。
ハードウェアは中国に追いつかれるから滅びる。
ハード中心の産業は、もっと高付加価値のソフト産業に移行しなければならない。
例えば、ソニーの出井氏はソニーをAV機器メーカーから、
メディア企業化しようとしていました。
そのために出井氏と技術者の対立が深刻化し、ソニーは技術力が他社に追い抜かれてしまいました。
しかし今や、その考え方は古いわけです。ハードのコモディティ化が進んだだけでなく、ソフトのコモディティ化も急速に進んでいるからです。
・中国、インドの台頭によるソフト開発者の人件費の値下げ圧力
・日米のソフト開発者の仕事が長期的に減っている
・DVDを始めとする映像作品の低価格化
・DVD作品、ゲーム共に廉価版リリースまでの期間が短くなっている
・音楽ビジネスの変化
・娯楽コンテンツの総量が増大したため、消費がますます一過性になっている
 「ハード産業→ソフト&サービス産業」とか
単純に「ハードは低付加価値、ソフトは高付加価値」という考え方は古く、
ハードとソフトをつなぎ合わせて、低コストな高付加価値を生み出す
戦略が重要になります。

Posted by amanoudume at 13:41 個別リンク

真実を告げるメディア、隠すメディア

既存メディアが分裂
既得権の崩壊、既存メディアの崩壊がやたらと叫ばれる昨今ですが、いよいよ既存メディアの中にも分裂が起き始めているようです。 1つは今まで通り、スポンサーの顔色をうかがい、「公平」「中立」という建前のもと、明らかに劣った製品を持ち上げたり、すでに勝敗のついた競争を「互 角」「2強」などと印象操作するメディア。もう1つは、個人メディア同様に、素直に意見を書くことを第一とする勇気あるメディア。 元麻布春男の週刊PCホットライン 「Appleが作りあげたiPodのエコシステム」
ちょっと違和感を感じたのは、これを「2強の激突」と表現するメディアがかなりあることだ。筆者の個人的感覚では、現世代の決着はすでにAppleの勝利でついている。
非常に素直な感想で、おそらく「iPod nano」を手にした人の99%が同じ意見ではないでしょうか。元麻布氏といえば、2ch等で「提灯ライター」と揶揄されていたこともあった人物ですが、なんのなんの、いまや信頼の旗手として、すばらしい記事を執筆しておられます。

日経TechOn! 「Appleとソニー,どっちも驚いた」

ユーザーを引きつける製品を作る方法の1つは,驚きを与えることです。予想を超える製品が登場すれば,いやでも購買意欲をそそり
ます。その点で, Apple社の今回の発表は及第点を超えました。編集部では,早くもオンラインストアで「iPod
nano」を購入した記者がいるほどです。ソニーの発表はどうでしょうか。正直私は失望を覚えました。

BCNランキング 「iPod nanoが垂直発進、初登場1位で早くも市場塗り替える勢い」

短かった2強時代は終わり、再びアップルの一人舞台になるのか?
メーカー別の販売台数シェアを見てみると、このところiTMS効果によって40%台の販売シェアを回復していたアップルだが、nanoの発売で一気に
14ポイント以上も上乗せし急伸。60%に迫る勢いだ。一方一時20%を越えていた時期もあったソニーは、ほぼ10%と約半分にまでシェアを落とした。


「誰もが素直に感じたこと」をかけないメディア、そんなものは誰も信じない

つい最近まで、既存メディアの伝えるソニー像とネットの個人メディアが論じるソニー像には、大きな乖離がありました。
例えば、PSPの初期不良について、多くのゲームメディアは沈黙を守り通し、週刊誌を始めとする一部のメディアが真実を報道するのみでした。しかしそんな
もの無意味なわけです。既存のメディアがいくら口をつぐんだところで、すぐにブログが真実を暴きたて、あっという間に真実が伝わっていきました。
既存の大手メディアに属する人間は最初、ネットの個人メディアに反発しました。「責任が明確でないメディアなんて信用できない」などと、言っていました。しかし誰もが素直に感じたことをかけないメディア、そんなものを誰が信じますか? 
そこにはスポンサーとメディアしかいない。読者が不在なのです。そして今、既得権は急速に崩壊しつつあります。
今までのやり方にしがみつくか、それとも読者に信頼されるメディアを目指すか。その二者択一が突きつけられているのです。徐々にではありますが、信頼を第
一と考えるメディアが現れ始めています。大手ニュースサイトが続々と編集部員によるブログを立ち上げているのも、その一例でしょう。普通のニュース記事は
従来のやり方に近いスタンスを取り、ブログではより編集部員の顔が見える、「誰もが素直に感じたこと」を書いていく。
キャズムを越えつつあるアップル
最後に「iPod
nano」の現状についての個人ブログの記事を引用します。上であげた勇気ある既存メディアの記事と、ネット上での個人メディアの記事が同調していること
が、よくわかると思います。既存のメディアは分裂し、一部の勇気あるメディアは、個人メディアと共に「誰もが素直に感じたこと」を書く信頼性あふれるメ
ディアになりつつあります。なんとも喜ばしいことです。
デジモノに埋もれる日々 「店頭でもはっきりと感じられた、iPod nano の盛況ぶり」
iPod nanoの発売を聞きつけ、発売日から間もなく店頭に足を運ぶ人々がこれだけ居るのですから、iPodは完全にキャズムを越え、新しいステージに入ったと見て良いでしょう。

Life is beautiful 「アップルはnanoでキャズムを超えるか?」

このアップルの絶妙な一手により、フラッシュ型の携帯音楽端末の市場がキャズム(=アーリー・アダプターとアーリー・マジョリ
ティの間にある狭間)を超えて一気に立ち上がる可能性はとても高く、そうなれば、フラッシュメモリーの供給不足や一時的な価格高騰が起こる可能性も十分あ
り、フラッシュメモリーの安定的な供給ラインを確保出来ない中小メーカーが淘汰されて寡占化が進むこともほぼ確実である。

Posted by amanoudume at 12:05 個別リンク

2005年09月10日

成功しているソフト企業の共通点

ここ最近成功しているソフト企業を見ていると、いくつかの共通点がハッキリ浮かび上がってきます。
それは「小さいアプリ」+「シンプルなインターフェース」+「生活密着」+「短いリリーススパン」ということです。

今、世界で一番成功しているソフト企業グーグル

あちこちのブログで、「グーグル対マイクロソフト」という構図で議論が行われています。
    ・Speed Feed 「Googleは本気でMicrosoftを殺す気でいる、たぶん。」
    ・Life is beautiful 「アルファギークはLonghornの夢を見るか?」
    ・Life is beautiful 「Google OS を妄想すると未来が見えてくる!?」

グーグルはWord(ワープロソフト)やPhotoshop(ペイントソフト)のような本格的なアプリケーションを作る気はないようです。インターネットが人々の生活に浸透していることを大前提に、誰もが必要とするような、生活に密着した小さなアプリを短期間にいくつも提供する、というスタンスです。

小さなアプリとは、写真アルバム、時計、ニュース、メール、メモ帳、株価チャート、天気予報、WEBサイトへのブックマーク、音声通話。いずれも小粋で、短期間で次々とリリースされ、インターフェースがおそろしくシンプルです。シンプルだからサイドバーに居座れるのですし、チュートリアルもいらないのですし、誰もがいとも簡単に使えるのです。
    ・PC WEB: 米Googleが「Google Desktop 2」をベータ公開、サイドバーを追加
    ・CNET Japan: グーグル、音声機能付きIM「Google Talk」を公開

いまや、生活に密着した小粋なソフトで勝負する時代になりつつあります。しかし実はそれはマイクロソフトが一番苦手にしていることです。実際、マイクロソフトはOSとOffice以外の分野では、ほとんど失敗しています。ヤフーとグーグルが圧倒的に先行し、追いつくのにあと何年かかるか予想がつきません。マイクロソフトはOSとOfficeという「レガシーを維持することで、シェアを守る」ソフトで食べている企業のため、開発の体質として、大きくてファットで複雑で気の利かないソフトをのんびり作ることしかできないのです。

浸透しつつある新しい価値観とルール

まだPCが人々の生活に浸透していない時代には、仕事で使うソフトをうまく作る企業が大きく成長しました。仕事で使うソフトの場合、大量の機能と高速な実行性能が求められ、そういう価値観でソフトは作られてきました。複雑な機能を必要としない多くの初心者は、メニューの9割を理解できませんし、意味不明な部分を「無視する」ことを強制されます。初心者にやさしいとは、メニューを10分の1にすることではなく、イルカ君を登場させてナビゲーションさせることや、長ったらしいチュートリアルを用意することでした。

もちろん、ソフト開発者の中には「初心者でも簡単に使える」「洗練されたインターフェイス」ことを目指してアプリを作る人もいました。しかしそのほとんどが、「仕事で使うソフトの常識」という枠の中でのシンプルさ、わかりやすさにすぎませんでした。例えば、メニューを2割減らして、チュートリアルを通常の3倍つけようという開発者はいましたが、メニューを10分の1にへらして10倍のユーザーを獲得しようと試みる開発者はほとんどいなかったのです。

それは間違いではありません。仕事で使うソフトなら、それでもユーザーは使ってくれたわけです。
ところが生活に密着するソフトでは、別の価値観に変わります。イルカ君に教えてもらわなければならなかったり、初心者本を買わなければいけなかったり、チュートリアルを潜り抜けなければならなかったり、メニューの9割が意味不明なソフトを、仕事でもないのに使う必要はないからです。

アップルもまたシンプル・インターフェースの文化

ハード、ソフト一体の企業という点で、アップルもまた「今一番成功しているソフト企業」といっていいでしょう。iPodは他社のオーディオプレイヤーと比べて、ずいぶん簡単なインターフェースです。PCの主な用途が仕事だった時代には、アップルはあまり成功できませんでした。ジョブズはつねにクリエイティブな世界を提示していましたが、残念、世の中の仕事の多くはそれほどクリエイティブではありませんでしたし、求められてもいなかったのです。

しかしPCが人々の生活に浸透し、デジタル家電が登場する時代には、価値観とルールが変わりました。「生活」において、人々はよりわがままになります。アップルはMacの時代のルールでは成功できませんでしたが、iPodの時代のルールでは大きな成功を手にしました。

ただ、一方で、小さなアプリやシンプルなインターフェースという思想は、パクられやすいのではないか?と心配する人もいらっしゃるでしょう。事実、ソニーが今、驚くべき勢いでアップルの商品や戦略をパクっています。
ですが悲観するにはおよびません。先週、アップルのiPod nanoとソニーの新ウォークマンが発表され、ネット上では驚くべき勢いでソニーへの失望感が広がっているからです。
    ・日経Tech-On! 「Appleとソニー,どっちも驚いた」
    ・わぱのつれづれ日記 「ソニー、有機EL/流線型ボディの20/6GB HDD「ウォークマンA」」
ネットメディアにとどまらず、あの日経でさえ、アップルには驚嘆し、ソニーには(失望のあまり)驚くのです。iTunesそっくりのCONNECT Player、アップルを真似た「パッケージへのこだわり」、プリペイドカード、・・・・。

あれ?  これって、どこかで聞いたことありませんか? ボクらは、こういうパクリに熱心な企業を知っているんじゃないかな? そう、マイクロソフトです。今のソニーはマイクロソフトによく似ています。自分のOSを普及させて利益を確保したマイクロソフト、自分の規格を普及させることに熱心でクローズドなソニー。

思えば、ソニーの経営者はマイクロソフト(やインテル)への嫉妬を抱き続けてきました。出井氏は「マイクロソフトのようにおいしい思いをしたい」という欲望をむき出しにしていましたし、SCEのトップである久多良木氏はマイクロソフトへの敵意をあらわにしつつ、インテル型のビジネスモデルを目標にしていました。

10年もそうしていたのです。ソニーとマイクロソフト、両者の顔や品位が似てくるのは自然なことでしょう。「俺のOS、俺のフォーマット、俺の規格、俺のチップを使え!そして俺様においしい思いをさせてくれ。ウッハウッハ」荒い鼻息が聞こえてきます・・・・。

はたしてアップルは同じ歴史をくり返すのでしょうか?
PCの時と同じように、パクる企業が勝つのでしょうか?
アイデアとクリエイティビティーで勝負する企業が、より資金力があり、より巨大で、徹底的にパクる企業に追いつかれてしまうのでしょうか?
たしかに、アップルをパクりまくったマイクロソフトが勝ったように、アップルをパクりまくっているソニーが勝つかもしれません。しかし現実には、生活密着型の市場において、マイクロソフトは負け続けています。ソニーもまた、デジタル家電の時代に入って、負け続けています。

なぜか? それはリリーススパンの違いです。
他社が真似することに熱心な間に、さらに前へ前へ進む。「短いリリーススパン」だからこそできるのです。グーグルは驚異的なスピードで、次々と新サービスを発表し、アップルはソニーがパクっている間に「iPod nano」という驚異的な商品を開発しました。「nano」は発表と同時に発売されましたが、ソニーの商品が発売されるのは発表されてから2ヶ月も先なのです。

ジョブズは決してソニーに怒らないでしょう。むしろ微笑むでしょう。なぜなら、パクることに夢中になっている間は、決してアップルの度肝を抜くような革新的な商品を生み出すことはできないからです。自分から勝負を捨ててくれているのです。怒るなんて、とんでもない。

ゲームソフト市場でも同じ現象が起きている

DSのTouch Generationの成功は記憶に新しいところでしょう。
電撃オンラインの実売集計によれば、DSの「脳を鍛える大人のDSトレーニング」が実売で50万本を突破し、「やわらかあたま塾」も今月中には50万本突破する見込みです。「nintendogs」と合わせると、この新規ソフト3本の販売本数が今年度のDSソフト市場の45%を占めます。新規ソフトは売れないという、ゲーム市場の「常識」が崩れたのです。

「脳トレ」と「やわらか」は、文字が大きく、わかりやすく、面倒なチュートリアルを必要とせず、生活密着型で、ボリュームも小さい、という特徴があります。すなわち「小さいアプリ」+「シンプルなインターフェース」+「生活密着」といった点を満たしています。「nintendogs」も犬との日常をゲームのメインに据えた、生活密着型のゲームです。また育成ゲームでありがちな、出会いまでの妙にひねったストーリーとか、お別れのエンディングとか、ストーリーちっくなイベントはありません。

また、これらTouch Generationのソフトは3ヶ月間に5タイトルという「短いリリーススパン」で発売されました。
ゲームの導入部にはプレイヤーを感情移入させるための濃厚なオープニングが必要だとか、複雑な操作系もチュートリアルさえしっかり作れば問題ないとか、メニューに膨大な情報量を表示したほうがプレイヤーは喜ぶとか、ステージやミッションの合間に長いデモを挿入することで遊び続けるモチベーションを高められるとか、どうせゲームはマニアしか買わないからライト層向けに作っても仕方ないとか、そういう「常識」が音を立てて崩れています。

また、例えば、DSの「ジャンプスーパースターズ」は30万本を突破し、確かに売れています。しかしDSを最も牽引しているタイトルではないのもまた事実です。一番売れるのは有名な版権をそろえたボリュームたっぷりのゲームだとか、携帯ゲーム機は子どもの市場だとか、そういう「常識」もまた崩れています。

まとめ

グーグル(対マイクロソフト)、アップル(対ソニー)、任天堂(対マーケットの常識)という3つの例を出しましたが、もちろん他の事例をあげることもできるでしょう。例えば、新興ネット企業のいくつかはこうした特長をもっています。すなわち
    ・小さいアプリ
    ・シンプルなインターフェース
    ・生活密着
    ・短いリリーススパン
他にも有意の特長はあるのですが、やや各論に入り込みすぎてしまうので、それはまたいずれ機会があれば。

Posted by amanoudume at 17:50 個別リンク | Comments (0) | TrackBack(1)
読んで唸った
Excerpt: 毎回、ゲーム系の事などで独自の考察文を発表しているブログ『発熱地帯』さん。 読む...
Weblog: テキストダブ〜ン
Tracked: 2005年09月11日 11:16

2005年09月07日

下書きメモ:ソニーはどこへいくのか?

今回は実験的に下書きメモの状態で、公開してみます。
かなり言葉足らずではありますが。
1つ1つの記事を書いていたら、(今の更新ペースからすると)来週までかかっちゃいますしね。
1.久多良木カラーを脱色するソニー
    ・深刻化してきた「ソニータイマー」のイメージ
        - いまだ謝罪も反省もない「それがPSPの仕様だ」発言
            →あの発言以後、久多良木氏を讃える記事は、ほとんど無くなった
        - 「ギシアン」がついに現代用語の基礎知識に
    ・「タフ」さをアピールする「Let's note」は販売絶好調
        →今のソニーには不可能なアピール
    ・VAIOシリーズ、サポート体制を見直し
    ・テレビ事業の失敗は久多良木氏が全部悪い?
        →「だが久夛良木氏は製造コストを制御することができなかった」以降・・・・。
    ・Cellはオールソニーの亡霊か?救世主か?
        →Cell搭載テレビが、松下製品やシャープ製品に対して
         優位な付加価値をもつのか? コスト競争力はあるのか?
        →PSXの教訓はみんなの記憶に残っている

2.ソニー改革の総仕上げ、SCEにメスが入るのはいつ?
    ・ゲーム各社は経営陣の交代(刷新)がほぼ完了
       →スクウェアエニックス、セガ、ナムコ、カプコン、任天堂
    ・残るはSCE。改革はされているのか?
    ・PSX、PSPと失敗が続くSCE
    ・ゲームは今のソニーにとって、重要な収益源
    ・赤字をたれ流すハードを作るような、経営陣の暴走は困る
    ・予想される収益の悪化に対して、ソニー本体はいつ動く? 2008年頃?
    ・そろそろポスト久多良木政権を想定すべき
    ・久多良木氏はグループ内政治が下手?
        →ソニー本体の経営陣にとって、社長レースの対抗馬だった久多良木氏は邪魔?
        →成功しているうちは無理でも、陰りが出れば、口実は作れる
        →社長レースの微妙な時期に「それがPSPの仕様だ」などと失言するあたり、政治センスは無い
    ・後任人事の最有力は? その前に、ソフト担当の強化があるべきか?

3.アイデンティティの分裂をどう解決するのか?
    ・「メディア企業」としてのソニーを評価する米国
    ・「AV家電の企業」としてのソニーを評価する日本
    ・ストリンガー改革と中鉢改革は、矛盾しないのか?
    ・アイデンティティの確立がソニーの長期的な課題
    ・ハード、ソフト一体のアップルはソニーの見本
    ・ジョブズという天才が不在で、図体が大きいソニーは、アップルにはなれない

(1章と2章の間に、EMCS改革についての話を入れるべきかなあ・・・・。)

Posted by amanoudume at 12:24 個別リンク | TrackBack(0)

2005年09月03日

ソニーが松下とジョブズに降参した日

ソニーが松下に降参した日

VAIOシリーズの秋モデルが発表されましたが、「VAIO type T」において、ついにSDカードに対応するようになりました。デジカメ市場におけるシェアを考えれば、当然の判断です。しかしこれまでソニーは、ユーザーの利便性を犠牲にしてでも、「オールソニー」の方針を貫いてきたわけで、大きな方針転換が起きています。


ニーはこれまで、自社の規格であるメモリースティックにこだわってきたわけだが、記録媒体としてメモリースティックを採用しているのは、ソニーのデジタル
カメラやオーディオプレーヤーくらいで、他社から登場しているコンシューマ向けデジタルカメラの多くは、SDメモリーカードを採用している。

ソニーグループの戦略商品という点では、PS3もSDカードへの対応を表明しています。これもやはり、デジカメ市場におけるSDカードの圧倒的普及率を無
視できないからでしょう。SDカードに対応しないかぎり、デジカメで撮った写真データをあつかうプラットフォームとしてはガラクタに等しい、という現実を
ようやく認めたことになります。
戦略の松下、時代に逆行したソニー

なぜ松下が勝ち、ソニーは降参したのか。理由はいくつもあげられるでしょうが、松下の戦略性が非常に高かったのは確かです。

R30::マーケティング社会時評 書評:「中村邦夫 『幸之助神話』を壊した男」

石全体のつながりを読みながらどこに石を置くのかが、きわめて重要なのだ。中村を見ていると、非常に戦略的に判断して手を打っていることがわかる。「エンパワーメント」を鼓吹し、組織戦略に重点を置いているようでいて、ここぞというときは自ら果断に動く。

そしてこの後、社長就任後数ヶ月経った頃に敗退寸前のデジタルスチルカメラ市場への再挑戦を指示したエピソードが続く。

松下のSDカード・プラットフォーム戦略

松下の3Dバリューチェーンの中で特に重要な役割を果たすのはSDカードである。利用領域の広がりを見せるSDカードを使い、デジタル化された家電を「統一された・簡単な手段」でネットワーク化することで「分かりやすく・使いやすい端末機器」の実現を図る。

下は、デジタル家電時代において、どこが勝負を分けるのか、どこが高い付加価値を生むのかを見定めて、その普及のためにデジカメ市場をおさえにかかりまし
た。
一方、ソニーは、コンテンツからネットワーク、ハードウェアに至るまで、幅広い分野に進出しておきながら、グループ各社の足並みがまったくそろいませんで
した。「オールソニー」が足かせとなって、かえって付加価値を落としつづけました。
「オールソニー」という考え方は、ソニーの技術力、製品開発力が他を圧していた時代なら機能したかもしれませんが、出井氏の失策によって、ソニーはこの
10年で同業他社にくらべて、大幅に技術力を落としています。現在では、単に不便なものを抱き合わせているだけの、ユーザー無視の戦略にすぎません。
デジタル家電時代のプラットフォーム戦略

松下の中村社長は、時代をよむ見事な戦略家。一方、出井氏はユーザーと時代を無視した夢想家でした。ここでもう1人、偉大なトップを引き合いに出しましょう。もちろんアップルのジョブズです。
iPodはポータブルオーディオプレイヤーとして成功しただけでなく、リビングと車の間をつなぐネットワークの橋渡しで、重要なポジションを占めつつあります。
渡辺聡・情報化社会の航海図 「アップルは何ビジネスを営んでいるのか」


内の自動車メーカーからもカーステレオへのiPodサポートを発表されている。リビングと車を繋ぐネットワークの橋渡し機能で重要な役割をアップルが担っ
ていくことになる。
こうなってくると、携帯電話が単なる電話ツールでなくなってしまったのと同じように単なる音楽プレイヤーとは言い難い。車とPC(もしくはホームネット
ワーク)とのやり取りを行い、かつ単体でも持ち歩けるパーソナルストレージとなってくる。人によっては、音楽再生機能はおまけとなる。

iPodもまた、SDカードと同様、デジタル家電ネットワークにおけるデータの橋渡しの役割を果たすわけです。形態や使用シーンは異なるとはいえ、松下も
アップルも共に、ソニーが想像すらできなかった巨大な可能性を掘り起こすことに成功したのです。
iPodの成功要因は数多くの人が何回もくり返し語っていますが、その中で忘れてはいけないのは、iTunesをWindowsでも提供したことです。間
違いなくiPodにまつわるジョブズの「英断」の1つでしょう。これはもちろん、ソニーの「オールソニー」戦略の対極にある発想です。
松下のSDカード戦略、アップルのiPod、どちらもデジタル家電時代の一大プラットフォームに成長しました。それはなぜか。
    1)ユーザーの利便性を尊重し、
    2)すなわちユーザーの範囲を限定するのではなく、拡大する方向に仕様を定め、
    3)色々なデバイスとの接続性を重視し、
    4)自社製品以外の製品とつなげても、ユーザーに不利益をもたらさない
からです。

Posted by amanoudume at 00:31 個別リンク | TrackBack(1)
松下電器のSDプラットフォーム戦略
Excerpt: 松下電器のSDカード規格がほかの規格に勝った経緯。学ぶところが多い。 やっぱハイテク業界の人はスイスアーミーナイフが好きだなあ @ ZEROBASE CAST そういえばちょっとまえにソニーという会社がVAIOを中心にAV機器などがすべてつながるというコンセプトを発表した...
Weblog: ZEROBASE CAST
Tracked: 2005年09月09日 09:27

2005年08月08日

PSPが越えられなかった常識、iPodが越えた常識

アップルのとてつもない可能性

ITmedia 「アップル、iTMSを日本で開始――100万曲・中心価格150円でスタート」
いに日本でも、ITunes Music
Storeがスタートしました。SMEが不参加など、若干楽曲の選択肢が制限されているものの、100万曲という大量の品揃え、90%の曲が150円、
10%の曲が200円という価格設定は、音楽業界への「黒船」として十二分にインパクトのある内容です。
実際、なんと4日間で100万曲の販売を達成
ました。
アップルは日本において、巨大なコンテンツ配信サービスを構築したことになり、これが音楽にとどまらず、映像、書籍、ゲームに範囲が広がる可能性はきわめ
て高いです。秋に発表されると噂されている動画再生可能のiPodが出れば、当然、映像の販売も開始するでしょう。
またそれだけの性能があれば、FLASHプレイヤーを動かすことも技術的には可能です。FLASHゲームが遊べるなら、短期間に数百万台クラスの携帯ゲー
ム機が立ち上がるかもしれません。しかもソフトはすべてiTMSで購入可能。流通コストがかかりません。パッケージ流通ではありませんから、販売価格も
100円程度から始められるでしょう。
(iPod
Linuxなんてものもありますから、専用のOSとネイティブアプリを供給することで、Macを超える新しいコンピューティング・プラットフォームを立ち
上げることも技術的には可能です。)

これから数年のプラットフォームホルダーは?

想像と予想をふくらませるなら、これから数年の主要なゲームプラットフォームホルダーは
  ○ドコモ (携帯電話キャリア)
  ○ハンゲームを運営するNHN (PC。オンラインゲームポータル)
  ○アップル (オーディオプレーヤー)
  ○ソニー (据置ゲーム機)
  ○マイクロソフト (Xbox Live!)
  ○任天堂 (携帯ゲーム機)
の6社になるでしょう。

このリストに対しては、「ドコモだけじゃないぞ、auもあるぞ」とか色々な意見が出てくると思います。もちろんこの6社だけが競争のプレーヤーになるわけではありません。あくまで、最低限どの辺りで視野に入れておく必要があるか?ということを示しただけです。

そして最初の3社はすべて
  1) オンラインでソフトを配信し
  2) 課金システムを持ち、
  3) 専用機ではないがゆえに暇つぶし(「ながら」)として強力で、
  4) フリーでコンテンツを配布されても困らない (ロイヤリティー以外に儲ける手段がある)
という共通点があります。

ロイヤリティーという古い制度に依存している「ゲーム機」ホルダーと、ゲームビジネスの古い常識にとらわれない「非ゲーム機」ホルダーの違いがよくわかると思います。

PSPが越えられなかった常識、iPodが越えた常識

今となっては、PSPを批判しているブログの1つとして認識されてしまいましたが、かつてはかなり肯定していた時もありました。2004年1月11日、まだPSPの具体的なプランが発表されず、憶測や噂が流れていた頃です。
「No Royaltyに近づいていくゲーム機ビジネス」

PSPの価格は39,500円に近い - ハードウェア単独で利益を出していく
SCEEのCEOクリス・デアリング氏のMCVに対するインタビューによれば、PSPの価格は300ポンド(59,300円)より200ポンド
(39,480円)に近いとのこと。またPSPのビジネスモデルは、ハードで儲けずロイヤリティーで儲ける従来のビジネスとは異なり、ソフトのロイヤリ
ティーを下げるかわりにハードウェア単体で利益を出していくビジネスになるそうです。

この頃のPSPはなんとも刺激的なプラットフォームでした・・・・。ファミコン以来20年のロイヤリティビジネスを破壊する弾丸になるのか、と思っていた
のです。ところが実際には、ハードの価格を無理に低くして、巨額の赤字を抱えこんだだけの変形ファミコンビジネスに落ちぶれてしまいました。
今の日本のPSPの状況を考えると、DSに対抗して無理に低価格にする必要はなかったと思います。同意見の人も少なくないのではないでしょうか。まあ結果
論といわれればそれまでですが。
梅田望夫・英語で読むITトレンド 「iPodはハードウェアビジネスの常識を越えるのか」
かみそりはただ同然で売って、かみそりの刃で儲ける。プリンタの消耗品ビジネスを代表に、コモディティ化したハードウェア事業の
ビジネスモデルを考えるときには、必ず出てくる古典的な「かみそりとかみそりの刃」の話。その逆をジョブズはやっているというのが、この冒頭の真意。
アップルの第1四半期(10-12月)の結果。平均400ドルで75万台のiPodを売り、99セントで3000万曲を売ったが、iTunesからの儲け
はほとんどなかなく、iPodこそアップルの収益性に貢献している。
どうもアップルは、ハードから儲けを出す方法を見つけ出したらしい。iTunesをロス・リーダーとして、iPodを売りまくっている。言い換えれば、デ
ジタルプロダクト(音楽)がコモディティになり、ハードこそマージンが出る場所。

ソフトでもうけずに、逆にハードでもうける。ソニーはある段階で、そういうビジネスを始めるチャンスがあったはずです。もし踏み込んでいれば、別にゲーム
が売れなくてもかまわない。音楽でも映像でもWebブラウザでも、エミュ需要であろうとも、とにかくPSP本体が売れるならかまわない。そういう展開に
なっていたんですがね。
なのに、ソニーは結局ゲーム産業の旧来の常識にとらわれて、トライしませんでした。アップルは音楽産業やソフト産業の古い常識など、あっさり超えてみせま
した。この違いがPSPとiPodの明暗を分けたのだと思います。

Posted by amanoudume at 00:18 個別リンク | TrackBack(3)
iTMS 日本で開始
Excerpt: http://amanoudume.s41.xrea.com/cgi-bin/mt/archives/000392.html ソフトが儲からないような書かれ方をしていますが、 実際は今まで高すぎた音楽ソフトを本来の価格相当で 売ってそれなりにソフトで
Weblog: リサイクルショップ安里
Tracked: 2005年08月08日 04:34
ホーム/2005-08-09
Excerpt: [[:]] PSPが越えられなかった常識、iPodが越えた常識(発熱地帯) どちらも欲しい自分って。 お名前: コメントはありません。 コメント/2005-08-09 ----- PING: TITLE: 深澤ネタ/web用小ネタ URL: http://casper/kikaku/pukiwiki/pukiwiki.php?%BF%BC%DF%B7%A5%CD%A5%BF%2Fweb%CD%D1%BE%AE%A5%CD%A5%BF IP: 61.211.252.171 BLOG NAME: PukiWiki/TrackBack 0.1 DATE: 08/09/2005 04:30:35 AM PlanningOffice 円周率 しゃるる&ぼいる http://amanoudume.s41.xrea.com/cgi-bin/mt/archives/000392.html Flash 用ゲームは iPod を通してビジネスになる可能性があるという件が興味深い。(記事自体は「ハードで儲ける」の文脈ですが。) 円周率 0〜9の数字が...
Weblog: とんかつ3号 隠れ亭
Tracked: 2005年08月08日 22:19
ハードウェアとソフトウェア
Excerpt: 発熱地帯さんのエントリが面白かったのでトラックバック。 ハードウェアベンダーが、ハードウェアで儲けるべきか、ソフトウェアで儲けるべきかのお話です。 PCゲーマーの世界では昔から、ゲームに金を払わない奴らがビデオカードやCPUには惜しみなく金を使うのが...
Weblog: 小心翼々
Tracked: 2005年08月11日 18:16

2005年06月26日

人の見えないGoogleの限界

かなり以前に、梅田さんのブログを読んで、Yahooは人にこだわり、Googleは技術にこだわる、というまとめ方をなるほど、と思いました。
梅田望夫・英語で読むITトレンド「YahooとGoogleは何が違うのか」

わずか1年でGoogle Newsなんて当たり前の存在になってしまった感があるが、1年前は、「Google
Newsには編集者が不在」ということに皆「大きな驚き」を感じていた。それでTomがGoogleのRosing副社長にそのことを尋ねたら、
Rosingは「人間なんか使うわけないだろ、Google Newsはエンジニアリングソリューションなんだから」と答えたという。

Googleの考え方はよくわかりますが、同時に、はたしてそのやり方でどこまでいけるのか?とか、そのやり方って米国ではうまくいくとしても、日本では
うまくいかないんじゃないの?とか、Googleの方法論では「決して到達できない信頼性」があるよなあ、とも思うわけです。
そういう疑問を感じる人は少なくないらしく、梅田さんの記事の中で紹介されているTom
Foremski氏も、その点をGoogleの弱点として指摘しています。
メディアビジネスを身体で知るTom
Foremskiにとって、メディア産業出身者がエンジニアを押さえて統治するYahooは理解できるが、Googleの「hard-core
engineer culture」はもう一つ理解できず、既存メディア産業についての無知がGoogleのアキレス腱になるのではないかと書いた。

そういう風なことが頭にあったので、Google AdSenseをめぐるトラブルについては関心をもって見守っていました。
    ●新佃島・映画ジャーナル 「Google AdSense顛末記(十)」
    ●たけくまメモ 「【業務連絡】Google AdSenseのリンクを停止」
    ●たけくまメモ 「【驚】Google AdSenseからの契約破棄通知」
この件についてのGoogleの対応は、ハッキリいって非常識すぎで、応対にアホな学生でも雇ってるんじゃないのか?と思うほど。PSP初期不良騒動にお
けるソニーの対応をはるかに凌駕してます。
ただ、なんとなくXBOX研磨機騒動の時のマイクロソフトXBOX事業部に共通するにおいをビミョーに感じなくもない。日本側にはまったく権限がなくて、
突っぱねる以外の選択肢はない、みたいな(あっ、もちろんこのGoogleの対応は、当時のマイクロソフトよりも、何十倍も非常識です)。
こうした点はすでにGoogleの重い足かせになっている気がします。
日本では検索エンジン以外の領域でのGoogleのブランド力、認知度は低いですし、Google
Newsなんて正直読もうとは微塵も思いません。しょせんツールでしょ、というのが日本人の大半のイメージでしょう。
Googleは現在「ツールとしての信頼性」以上の「信頼性」の領域に足を踏み入れつつあります。その「信頼性」はメディアとして、ブランドとしての信頼
性です。ただ「人」が見えないGoogleが得られる信頼性は一定以上にはなりそうにない(量ではなく質)んじゃないか、と思います。

Posted by amanoudume at 22:49 個別リンク | TrackBack(1)
[se] googleの弱点指摘
Excerpt: http://amanoudume.s41.xrea.com/cgi-bin/mt/archives/000364.html たしかにhttp://news.google.co.jp/をいつも参照してます。UIの分かり易さが好きだから使ってるって感じですが、読もうと思う 記事が少ないなあーと思ってた。人が携わってないってのが原因かも!
Weblog: clieはiPodの夢を観ているのか
Tracked: 2005年06月29日 03:13