この所、ソニーの経営についての批判が急速に増えていますね。ブログにとどまらず、ネットメディアや日経を始めとする大手マスコミまで、その輪が広がって
います。興味深いのは、批判している層が明らかに変わってきていることです。
フェーズ1: 被害者とアンチソニーによるソニー批判 (〜2005年3月)
ソニー製品のサポートの悪さに憤った人、PSPの初期不良に怒った人、元々ソニーが嫌いだった人を中心とした批判。ソニーショック〜PSPの初期不良騒動
の頃にもっとも元気だったのはこの層だと思います。
主にブログのような個人メディアが中心でした。ゲーム系雑誌の大半がPSP初期不良をスルーするという、メディアのソニー擁護が露骨に表面化しました。た
だ、最終的には、親ソニーという印象の強かった日経が久多良木氏の「それがPSPの仕様だ」発言を掲載するにいたりました。
フェーズ2: 中立的なメディアによるソニー批判 (2005年4月〜2005年7月)週刊誌が面白がって、ソニーのネタ記事を掲載する
ようになった時期。UMDビデオでアダルト向け作品が出る、という記事が世間をにぎわせたりしました。経営方針や製品の品質を論じる記事は少なく、ネタの
宝庫としてソニー関連の記事が多かった時期です。メディアの間で、ソニーをネタにしていいんだ、という暗黙の了解ができたのもこの時期でしょう。
一方、ブログでソニーが取り上げられる頻度はかなり減っていました。久多良木氏の降格をもって、溜飲が下がった人が多かったのでしょう。
フェーズ3: 親ソニーだったメディアによるソニー批判 (2005年8月〜現在)「iPod対ウォークマン」という構図が鮮明になるに
つれて、再びソニー関連の記事が増えてきました。雑誌社の編集部がブログを開設するようになり、「本音」に近い記事が載るようになりました。
ブログのような個人メディアだけでなく、ネットメディアやマスコミもソニーの問題点を指摘し始めました。フェーズ1の時期にソニー批判をしていたブログの
大半は、すでに飽きていて、まったくコメントしない所が多かったようです。
またソニーの新型ウォークマンの発表後は、BCNランキングや日経などの親ソニーだったメディアが、ソニー擁護をしなくなりました。アップルファンや
iPodユーザーの心に火がついて、ふたたびソニー批判がブログを賑わすようになりました。
そして経営方針説明会の前後では、これまでソニー関連の書籍を手がけてきた麻倉怜士氏など、ソニー周辺、親ソニーな人たちから、批判の声が上がるようにな
りました。アンチソニー〜中立な人たちはもはや論じる価値もない、という態度に変化していて、ソニー好きが一番熱心になっているように見えます。
フェーズ4: ソニー内部からの告発このままいくと、おそらく次の段階はソニーグループ内部からの告発でしょう。ちょうど国内で大規模リ
ストラを敢行することもあり、いろいろなことが明るみに出やすい時期です。この時期になにが飛び出すかは、日頃の行いが問われるわけですが、場合によって
は、一気に最終段階まで悪化しかねません。経営陣の失言などはもっての他。ナイーブな情報ハンドリングが求められます。
フェーズ5: ゲームオーバーここまできたら、どうにもなりません。フェーズ3、せめてフェーズ4で踏みとどまりましょう。
これってソニーに限らず、ダメになっていく企業のパターンなんですよね。
ただ、ソニーはどうもこの進展が早い。今までイメージが良すぎた反動もあるのでしょうけど、それだけ積み上げられた「虚構」が大きかったのでしょう。
フェーズ4まで進むと厄介なので、これからは社内統治が重要になるでしょう。社内の士気を高められないまま、人員削減だけが進むと、火薬庫に火がつく危険
性が増大します。経営陣の手腕が問われる時期ですね。