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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2005年09月25日

そろそろ喜劇になる

これは喜劇

ソニーの経営方針説明会についての記事を書いて、さて次はなにを書こうかと思っていた矢先、こんな面白ニュースが。

日経 ソニー会長、英紙に不満表明・「事業整理の熱意ない」

22日に発表した経営再生策について「職場の士気の低さ」と「人員削減に対する文化的な反発」のため、思い切ったリストラができなかったと述べた。
 会長は「今後も改革を進める上で共に働かなければならない人々との関係を保ちつつ、できるだけのことはやった」と述べた。しかし、ソニーの一部役員はいかなる人員削減にも徹底的に抵抗したと指摘し、「日本社会は米国社会よりも人道的だ」と皮肉った。
沈みゆく船の上、乗組員が一致団結して危機に向かうどころか、ここぞとばかりに小競り合いに夢中になっている、と。いやはや、まったく面白い喜劇ですね。

いまや、ネットメディアに加えて、マスコミまでソニー批判を堂々と掲載するようになりました。少なくない人々が、真剣にソニーの将来を憂えて、問題点を指摘しています。もちろんうちもその1つ。しかしこういう喜劇を見せられちゃうと、馬鹿らしくなっちゃいますな。
ソニーの新しい経営戦略を考える以前に、そもそもこの船に乗っている乗組員たち(とくにブリッジ要員)は、本気で自分たちの船を助けたいと思ってるんでしょうかねえ?

「経営」を理解できない経営者の喜劇

しかも経営改革の責任者たるストリンガー氏は、「経営」の言葉の意味を誤解している人物のようですし。
R30::マーケティング社会時評 「ストリンガーさん、終わったかも…」

傾きかけた会社なんて多かれ少なかれ縄張り争いと既得権益死守の両方で幹部同士がいがみ合ってるんだから、そのぐちゃぐちゃのど
こを「象徴」のボタンとして最初に押すかというのを、慎重に見極めてやらなきゃダメ。
NIKKEI.NETでFTのインタビューの断片を見る限り、ソニーの組織を変革する「象徴」となるキーレバーがどこにあるとストリンガー会長が考えてい
たのかは分からない。「職場のモラルが低く」て「人員削減に反発が大きかった」からリストラができなかったというのは、かつての富士通の秋草会長の「社員
が働かないからダメなんだ」発言にも似た香ばしさが漂う。

経営というのは、単純にいえば、社員1人1人のエネルギーをどうやって集約して、変換して、社外(マーケット)に出力するか?ということです。どういう組
織をつくれば、社員1人1人のエネルギーをより多く引き出し、より効率的に、より創造的に製品やサービスに変換できるのか。もちろん、時代と共にマーケッ
トは変化し、最適解も変化するわけで、そういう継続的な適応活動のことを経営といいます。
だから経営陣が「ユーザー視点」などのキーワードだけ並べても、それですぐに「ユーザー視点」の商品が生まれるわけではありません。そういう商品作りを社
内に根づかせる組織活動をして、はじめてそういう商品が生まれるのです。
(まー、それ以前に、ソニーの経営陣は、自社製品をまたもや逆さに持っていたわけで、いったいどの口が「ユーザー視点」と言ってるんでしょうか。あんたが
まず自社製品のユーザーになれ、と誰もが思ったことでしょう。)
例えば、アップルの経営は、スティーブ・ジョブズのカリスマ性だけで片づけられる傾向がありますが、いくらジョブズが「User
Experience」と連呼したって、アップル社員に「User
Experience」を重視して物づくりをし、サービスを提供するということが浸透していなければ、何の成果も生まれないわけです。アップルは認知心理学者のドン・ノーマン氏を「User Experience アーキテクト」とし
何年もかけて、社内に「User Experience」という考え方を浸透させたのです。
松下の復活を成し遂げた中村社長にしても、社内のあちこちで社員のエネルギーがつっかえてる状況、社員のエネルギーが内部摩擦で無駄に浪費されている状況
を変えることから始めたわけでしょう。ここ数年の松下は、社員のエネルギーをどう生かすかに、真剣に取り組んでいますよ。
燃料になる毒、ならない毒
アップルにしても、松下にしても、何年か前は負けてましたよね。負けている
企業ってのは、社員1人1人のエネルギーをうまく集められない、どこかで無駄に浪費されている状態です。だから、宗教集団でもなければ、ほうっておくと、
社員が毒(鬱憤、不満、愚痴、批判)をためこむようになって、どんどん腐るんです。
とくに若いやつほど、毒をためこみやすい。それがいけないわけじゃなくって、どんな組織でも多様性や柔軟性を維持しようと思えば、必然的に毒は出てくるも
のです。毒は企業が市場の変化に適応するための「燃料」になりますから、きちんと燃やして、前に進む原動力にすればいい。クリエイティブの世界では、創作
の素が毒、ってのは当たり前の話ですし、それ以外の世界でも同じでしょう。
ただし「燃料」にならない、ただ腐るだけの毒ってのもあって、これはヤバい。この毒が溜まりすぎると、組織は毒の沼地に沈んでいきます。浮かび上がること
はありません。また、燃える毒も、いつまでも燃えないでいると、燃えない毒になってしまいます。
つまり企業を立て直すというのは、社内にたまった燃える毒を燃焼させるべく、組織を変更することです。まぁ、社員のためこんだ毒がすべて燃える毒ならラッ
キーなんですが、やっぱり燃えない毒を抱えている人はいるでしょう。そういう人が、燃える毒を出せるまで待てるかどうか。待てるとして、どれぐらい待てる
かは、個々の企業の余力の問題になります。最終的には、いつまで経っても燃えない毒しか出せない人には退去してもらう。それが本来あるべき人員削減です。
ソニーの社員はみんな優秀だから、経営者が無能でも、ほうっておけば勝手に化学反応をおこして、すばらしいヒット商品を生み出す・・・・なんてことはあり
得ないんです。人ってのは放っておくと腐るし、サビつくだけなんです。ソニーにはまだ「底力」があるのかどうかという議論もありますが、底力というものは
引き出すもので、ほうっておいたら勝手に出てくるものではありません。底力を引き出すような組織を作れるのかどうかが重要なんです。
なんかもう、ソニーは本当に「経営」者に恵まれない企業で、いろんな会社を買って並べておけば、勝手に化学反応を起こすなんて真顔でいう経営者がいたかと
思えば、次の社長候補にいたっては「美学」なんて言って、現場の論理的な意見を握りつぶすような人物
そんなことしたら、現場は二度と積極的な提案をしなくなりますよ。追従をいうやつか、信者しかいなくなる。さすがにそんな人間が経営のトップに立つことは
ありませんでしたが、今度のトップは経営方針を発表した2日後には社員についての愚痴を公言しました。もはや、笑うしかないですな。

Posted by amanoudume at 2005年09月25日 00:02 個別リンク
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