大人になった今でもアニメやゲームに触れている人、一時期離れていたけれども最近ゲームに戻ってきた人はかなりいるはずです。ファミコンミニの成功や、Wiiで展開される任天堂のバーチャルコンソールを考えれば、かつてのファミコン世代を狙うのは正しい発想。もちろんゲームセンターCXの成功も大きいでしょうね。
しかし一方で、雑誌というメディアが今時どうなんだ?という気もします。鮮度と情報量では、もはやネットに勝てないでしょう。『ゲーム批評』も消えてなくなっちゃいましたし。ではサイトを作るかといっても、雑誌形式だとそれほどインパクトはありません。ユーザー参加型というのは、大きな可能性があるものの、なかなか冒険しにくいでしょう。コミュニティサイトって、雑誌とは別のノウハウが必要ですから。
また紙媒体のアーカイブ性、閲覧性の良さは、意外と馬鹿にできないんですよね。そういう意味では、アニメもゲームも、もっと新書を頑張ったらいいんじゃないか、と思います。あれぐらいの情報量がギュッと1冊に濃縮されているという所に価値があります。ネットではすぐにまとめサイトが作られますが、何故かというと、ネットは更新頻度が早くて、鮮度は素晴らしいんだけど、まとまりが弱いんですね。リアルタイムで読んでいるうちはいいんだけど、後から追いかけるのは大変です。
そのため分厚い本ほどではないけど、雑誌よりは密度のある媒体がメリットを発揮しやすい。そこでムックぐらいで留めておくか、新書までいくか。ライトノベルの例だと、2004年にラノベ本が出てきて、2006年に新城カズマ氏のライトノベル「超」入門が発売されましたね。
書ける人は探せばいると思いますね。
古株の人間を捕まえてファミコン当時の話を書かせてもいいし、現役のゲーム開発者に書かせてもいい。3人ぐらいの共著でもいいし、何なら少しカラーページがあってもいい。ライトノベルならぬライト新書とかね。まあライト化し過ぎると、本末転倒なんですが。
ところで今日、ちょっと雑談してる中で出た話題。
ゲーム系番組や懐古系番組はこれまで、あまりうまくいってなかったのですが、どうして『ゲームセンターCX』は成功したのでしょうか? 知識自慢や、上手なプレイの披露ではなく、下手の横好きな人のプレイを見世物にしたからです。
この視聴者の優越感は、最近のバラエティ番組全般やクイズ番組にも通じるところがあります。
TV LIFE ソフィーの業界 「最近のクイズ番組って、なぜあんなに問題が簡単なの?」
難しい問題の答えを知識として蓄えたり、それに正解してカタルシスを得るというクイズ番組のスタイルは、今や、誰でも知ってる常識問題を答えられない芸人やアイドルを笑うというスタイルへと変化してしまった。こんなことも知らないのかという優越感と自分は知っていたというカタルシス…とんでもなく低いレベルでの“知”を、いかに視聴者に提供するかが、今のクイズバラエティのテーマなのだ。
一方、海外ではいまだに「ゲームが上手いヤツがカッコいい」という文化が存在しています。XBOX Live!にも反映されていて、上手な人のプレイを鑑賞できるモードが付いていたりします。ゲームが上手いヤツを「ヒーロー」と呼ぶ感覚は今の日本では考えられません。
北米ってマニアックな物の市場が大きいんですよ。
E3がまさにその典型なんですけど、ゲーマーのゲーマーによるゲーマーのためのゲーム業界。そういう人たちの声がデカい。市場全体で見ると、そういう層ばかりではないんですけど、それでも濃いユーザーの市場が大きいから、注目されやすい。欧米でXBOXが強いというのも、この層をまず当てにしているわけですし、MOD云々だって、こういう層がボリュームを持っているからなんです。
まー、向こうのオタクって、日本のオタクとかなり違いますからね。イベントでリュックを背中にしょってるあたりは一緒なんですが、内向的な感じの日本のオタクと違って、アクティブですし、自分たちに引け目を感じてないんですよ。「ゲーム上手い、俺様ちゃんって、もしかして神?」って感じで、往来のど真ん中を堂々と歩きます。日本のオタクって、「いい歳こいて、特技がゲームしかない。うっ・・・・ごめんなさい」って感じで、道の端を歩くでしょう(もちろん比喩ですよ)。
で、ゲーム系ライターの人たちって、普通は自分自身がゲーム大好き人間、ゲーマーでしょう。すると「ゲーマーのゲーマーによるゲーマーのためのゲーム業界」がまぶしく見えちゃう。俺たちの理想世界ここにあり、みたいな。ラピュタは本当にあったんだ、って。そのせいで、欧米マンセー系にハマっちゃう人も現れるんです。「海外では達人のゲームプレイの動画に人気が集まっている」とか、「MODマンセー。日本のゲーム業界はさっそく取り入れよう!」なんて言い出しちゃう。おまけに、欧米のやり方をそのまま持ってこれないと、日本という環境が悪い!なんて言い出す人まで。
北米はそれで成り立っちゃうし、市場が回るんです。でも日本はなかなか回らないんですよ。ボクが欧米のゲーム業界の事情を知っていて、あえて触れない事があるのは、日本では通用しないと思っているからです。
Posted by amanoudume at 2006年07月12日 20:33 個別リンク
コメント
そう言えば、設定やアートワークのような
ムック系の本は今でもよく買いますが、
情報誌はあまり買わず、買っても目にしているのは
連載記事やディープ攻略の類で、
最新情報の項目は読み飛ばしている、
最近はそんな感じですね。
速報性の情報は、雑誌が出た頃にはフラゲ情報や
業界の噂で既に知っている場合が
多いことに気がつきます。
ネットワーク標準のゲーム機ばかりになる今後、
新作の発表はコンソール上で告知をし、サンプルムービーや体験版という形で発表するほうが
スタンダードになる、そういう将来は考えられますね。
XBOXなどが既に始めていますが、宣伝も自前のネットワークでこなそうという考え方は、
iTuneの機能などを見ていると今後増えていくのでしょう。
>補足について
そう言えば、「ゲーム批評」などを読んで「なんだか偏った事書くな」と
思う反発などは自分にも覚えのある感情ですが、
ゲームセンターCXを見て物足りなさを感じる人はいても、思想に反発したり不快になる人はおそらくいないでしょう。
この目線の違いは、重要かもしれませんね。
投稿者: Mrb | 2006年07月13日 10:14
>北米ってマニアックな物の市場が大きいんですよ。
分母の違いってヤツですかねぇ?
仮にマニアックな層の%が同じでも分母が多ければそれだけ多くの市場が形成されるわけで、
そうやってユーザーの声も大きくなれば「マニア=マイノリティ」にはなりにくいでしょうし、マイノリティじゃなければ小さくなる事もないでしょう。
圧倒的数を背景にしたアクティブさとでも言うのか…
島国根性(失礼!)丸出しの人だって徒党を組めばとんでもない事やりだすじゃないですか。
投稿者: BAN/ | 2006年07月13日 22:06
>Mrbさん
> この目線の違いは、重要かもしれませんね。
今は評論家のウンチクなんて読みたい人はほとんどいないですよね。
どうせ雑誌の紙面は制限が多いし、書いている人も専門家では
なかったりするから、結局薄いですし。
今はライターという職業は何とかもっているんですが、よく言われる
ように、これからはますます厳しくなるでしょう。どこで価値を出すかを
真剣に考えないといけないわけですが、知識型の人は普通に
考えればフェードアウトしていき、高い取材力を持った人だけが
生き残るんじゃないかな。
知識や分析なんてのは、ネットで拾ってくればいくらでも良い人材が
いますからね。
もう1つは、ライター自身をキャラクター化、ブランド化することです。
ボクはいつも、ライターさんは自分のブログを持って毎日更新した
方がいい、と書いてるんですけどね。本業があるかもしれませんが、
仕事を持ってるのはみんな一緒なんだから、書けない理由には
なりませんからね。
>BAN/さん
アニメもそうですよね。日本のアニメが評価されてると言っても、
本当に売れたのってポケモンのアニメぐらいですから。あとは
アニメマニアが支えているだけです。
ゲームはアニメに比べれば、まだ市場がうまく回ってるんですが、
どうしても「大きいマニア市場」の話題が大きく伝えられがちです。
XBOXが支持されてると言っても、やっぱりマニア層を中心として
いますから。だからマイクロソフトはファミリー向けのラインナップを
そろえようとしてレアを買ったわけですし、『ピニャータ』もそういう
狙いですよね。カジュアルゲームを取り込もうとしているのも、
弱点を補おうとしている動きです。
PS2時代には、任天堂はChildishだったし、MSはマニアックで、
SCEAが一番バランス感覚が良かった。PS3時代は・・・・本命
だったSCEAがアレげなのでねえ・・・・。
投稿者: DAKINI | 2006年07月13日 23:12