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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2004年11月02日

日本流「馴れ合い開発文化」と欧米流「カッチリ分業開発文化」

EAのレッドウッドスタジオで働いている女性アーティストの方へのインタビューが、今月の「CG
World」に掲載されていますね(P.110〜)。EAの分業体制の一端がうかがい知れる内容になっています。EAのゲーム開発の方法は現在、かなり注
目を集めていますから、すでに「よく知っている」という人も少なくないでしょうが。
この方はライティング専任とのことで、プリレンダーや、ゲーム内マップのプリライティング(頂点カラーやテクスチャへの焼き付け)等を担当されているよう
です。仕事の流れを簡単に説明されていました。
  リードモデラーによる叩き台の作成と、その後の詳細化と作業分配(レベルのゾーン分け)。
  イントラネットを通しての映画素材へのアクセス。
  1シーンごとにライティングデザイナーを配置。
等々。
しかし一番印象的だったのは、「ここをこうしたら、もっと良くなる」という会話が映画制作より少ない、という話。世界観と方向性がアートディレクターに一
任されていて、線引きが明確になっているそうです。EAはやっぱりそうなのか。どっちかというと、日本は役割の区分があいまいな部分があって、プログラ
マーやデザイナーからもアイデアが出てきて、それを吸収して良い物にしていく、という文化が強いです。なので、そこまでカッチリと仕事を分けてしまう文化
は違和感がありますね。
まぁ大局的には、EA的な流れに進んでいかざるを得ないんでしょうけど。
最近は、ゲーム開発について、あちこちで議論されたり、情報が出てくるようになってきました。
今は日本的な「馴れ合い開発文化」の悪い面がすごく出ていて、欧米流「カッチリ分業開発文化」の良い面がクローズアップされていますよね。
(欧米でも、比較的小規模なスタジオで、組織作りがうまくいっていない所は発売延期の常習犯、ソフト流出の温床になってます。また年々、PCゲーム市場が
縮小しているとおり、そういう欧米流「同人的開発文化」は徐々に追いやられているのが実情。)
クリエイティブ系の職場論ではありませんが、デルと日本企業「楽しい職場」の対比をしたこの記事がなかなか面白いです。梅田望夫・英語で読むITトレンド 「楽しい日本の会社」にアンチテーゼを突きつけるデル
ここで「楽しい職場」対「楽しくない職場」論をぶつのもいい。けれど、事態はそんなに単純ではありませんね。最近では、そもそも「楽しい職場」って本当に
楽しいのか?という話も浮上していますから。(この辺は、「ほしのこえ」の登場や、「ほしのこえ」に対する押井守の強い否定を取り巻く議論が参考になりま
す)
「馴れ合い開発文化」は、効率性の面で欧米流「カッチリ分業開発文化」に押され、クリエイティブの面で「同人的開発文化」に押され、両方の板ばさみになっ
て、ここ数年は悪い面ばかりが表層化していますね。

Posted by amanoudume at 2004年11月02日 15:20 個別リンク
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Listed below are links to weblogs that reference '日本流「馴れ合い開発文化」と欧米流「カッチリ分業開発文化」' from 発熱地帯.
部活動的ゲーム開発スタイルの落とし穴
Excerpt: 日本の仕事文化って部活動的で,落とし穴もあると思う。ゲーム開発においては,深刻な問題かもしれない
Weblog: ゲーム屋ケンちゃん
Tracked: 2004年11月22日 15:42

コメント

その細かい分業っぷりはアメコミを想起させますね。お国柄、と言う一言では片づけられないような共同作業に対するスタンスの違いを感じます。

米国の分業のシステムは「企業文化」ぢゃないのです。MBA文化なのです。技術がどうであろうと、クリエーティブがどうであろうと、はたまた業態業界がな
んであろうと、(自称)「企業収益を最大化するシステム」をビジネススクールで学んできた(自称)「経営のプロ」がビジネスサイドに入ってきて彼らの宗教
を強要しているだけです。
どんな業界でもキャリアチェンジできる(あるいはそれを奨励する)ように経営のシステムを共通化して、それをカリキュラム化したのがMBAで、それを修得
した人間が実際に会社を渡りあるき、業界を渡り歩き、会社を変えては同じ事をやっていくわけですから、それぞれの会社の良さとか独自性というのはどんどん
消失していく仕組みになっているのです。職人芸とか、アーティスティックという神業からはどんどん遠ざかって、「マニュアル君」達が幅をきかせ、組織をい
じり、人を雇い、人をクビにしていくのですから、それまでの企業文化や流儀が追いやられるのは自然です。
分業というオペレーションのシステムはこれらMBA文化の信奉者から見れば一種のドグマ。それがいいと信じ切っているわけです。たまたま数字でいいところ
を見せつけられたりすると、ますます彼らの言いなりですね。
「分業」が必要になった背景は勿論MBAの存在以外にもあります。ひとつひとつの会社が新しく、人材の流動が大きく回転が速い業界となると、どうしても優
秀な人材以外も集まってしまいますし、優秀な人材でなくても使いこなさなければいけません。EAのような急速に大きな規模まで成長した会社なら、なおのこ
とです。オバカさんも沢山いる会社で、オバカさんに合わせて安定した開発やオペレーションを構築しなければならないとなったら、やはりマクドナルドのよう
に全てを細分化して単純化するしかない。そしてそれはMBAくん達にとって最大の関心である「四半期毎の数字」を管理しやすくするのです。
日本でも自動車の生産現場や電子機器の生産現場ではこの分業で旨くいってきた時代が長かったので、かなり信じ込まれていました。ですが最近は「セル」と
言って分業の向こうを行く生産システムの方が遙かに時間も資源も節約し、品質も効率よく維持できることが分かってきました(勿論分業と同様に、よりけり、
ではあります)。
ゲーム業界はまだ経営的に脆弱だ、と世の中で言われるので、その分、MBA出身の(自称)「経営のプロ」が進出してきて、コロっと騙される可能性が高いの
でしょうねえ。
んで、何が言いたかったかと言うと、「競争に勝ちたかったら、MBAの言うことは聞くな。彼らが牛耳るアメリカ企業のやることをマネするな。MBA文化に
騙されるな」、です。分業は人材ひとりひとりの能力を低下させ、変化と創造に向かない構造へと会社をおとしめるだけです。

tornatoです〜!「分業」の意味については、ご指摘のとおりで、自分は少々狭く限られた定義の方に固執してしまったようです!
んで、結局何が言いたかったのかというと、今の日本のゲームメーカーって、EAなどの米国ゲームパブリッシャーの勢いにかなり圧倒されているというか、羨
ましいと思っているようなので、「お気を付けあそばせ」ということなのであります!!
「最後は数字」のご意見はまったくもってしてそのとおりだと思います!

「馴れ合い開発文化」も悪いわけではなくて、ただその中で生まれるアイデアや技術を開発費の予算や納期の都合で完全に作りこむことができずに中途半端に
なってしまうのでしょうね。 (以降、管理人が強制削除いたしました)

>おそらくNDSも3年後ぐらいまでにはPSPにその基本性能の差で携帯機市場を奪われるでしょうし、
>その後にGBA2を出したとしてもPSvsN64の時と同様にソフトの充実度で敗れるでしょう。
言ってることが矛盾してませんか?
性能の差で優劣が決まるとおっしゃるなら
後発のGBA2が勝つということになりますし
ソフトの充実度という点でも現状NDSが勝っていますが・・・

三年ももつのかなぁ?PSP

>ESさん
えーっと、記事の内容についてのコメントはわかるのですが、
その記事とは無関係なコメントが主体というのはただの荒らしか
なにかに等しいと思います。本題が2,3行で、「それから」以降が
十数行ってのは・・・。
他の方も、このような稚拙な誘導には乗らないでいただければ
ありがたいです。ここはゲハ板とは違いますので。
ESさんの記事は無関係と判断された部分を強制削除しました。
ここは管理人がそういう強権を発動するBLOGです。
HABAKIさん、GGさんのコメントは、丸ごと消さざるを得なく
なるため、削除を見合わせました。が、以後、誘導に乗った
議論を続けられるようであれば、その時は強権を発動
させていただきます。
<補足>
まぁ無論、非常にロジカルかつ先見性にとんだ意見であれば、
本題からそれていても、あるいは何らかの面白い議論が
可能だと思いますが、ただの情緒的な議論では、何の説得力も
もちません。
そもそも、このBLOG、そのコメント欄、およびトラックバックで
つながったさまざまなBLOGが形勢する言説界の評価・定説は、
PSPの失敗とそれに続くソニーの脱落ですね。(天下二分)
そういう趨勢に対して、「説得力」を提示できてはじめて、
「情緒的ではない議論」といえるわけです。無関係な記事の
コメント欄に「情緒的な議論」を書き散らすのは荒らしと同義です。

はじめまして。
なかなか熱いコメントをありがとうございました。
米国企業の体質、文化について、非常によくまとまっていて、
参考になります。ただ「分業」という言葉にやや感情的な
反発をもっておられるように思います。EAの「分業」って、
単純にコンベア方式でしょうか?
EAは単純なコンベア的な分業ではなく、セル的な部分も
取り入れているように思います。
「ロード・オブ・ザ・リング」の開発において、各ステージごとに
プログラマー、プランナー、デザイナーから成る数人の
小チームを複数つくって、スケジュール性やクオリティを
競い合わせた話は有名ですよね。
クリエイティブの現場においては、まさかセル方式といっても、
プログラムからサウンドからグラフィックからすべて1人で
こなすわけにもいきませんから、小人数チームという
方法論は、悪くないと思いますよ。
逆に、中途半端に職人気質を守ろうとして、結果として、
「バランス感覚を失った近視眼職人」ばかりが増えたのが、
日本のゲームのクオリティを下げた一因ではないか、
という指摘もあります。ゲームの規模にたえられず、
途中で力尽きてしまうゲーム性、演出、貧相なシナリオ……。
職人芸ならぬ素人芸の露呈も、最近の日本のゲームで
しばしば指摘されるところです。
tornatoさんのおっしゃる「分業」と、今多くの日本のゲーム
会社が学びつつある「分業」が同じものなのでしょうか?
また、単純に分業だから1人1人の能力が低下する、
というのも乱暴な議論ですね。
まぁ無論、単純にEAの文化をコピペしようと考えるほど、
単純な経営者は日本にはいないと信じています。しかし
「分業」という言葉や、大枠としての文化論、「宗教論」に
こだわるあまり、競争相手の良い点を取り入れる努力を
怠っていては、所詮、競争には勝てないでしょう。
そして忘れてはならないのは、情緒的な「宗教論」など、
ビジネスではどうでもよく、最終的には、数字がすべてです。
勝ったものだけがすべてを語ることができる。負けたものの
創造性や職人性など、塵にも等しいのです。
tornatoさんがご自分のBLOGで力説されているような、
マーケティング重視の姿勢も、日本のゲーム会社が
EAを始めとする海外勢から学び「つつある」ポイントだ
と思います。
(まぁ学ぶといっても、各社それぞれ差はありますね。
作ったものを宣伝して売れば、それで売れていた時代が
長すぎましたからねえ・・・)

現世代機が登場する前後に、数人単位で1本作る→数十人体制で1本作る という工程の変化を
 1)見切って即応できた
 2)即応はできなかったが、最終的に対応した
 3)対応できなかった、もしくは、対応しなかった
という分類をしてみると、現世代機で儲かった会社と、とりあえず利益は出せた会社と、
仕方ないので携帯で利益を出せた(出す事にした)会社がおおまかに分類できるように思います。
ワークフロー及びキャッシュフローを同時に変革できた会社は現世代機で粛々と開発を続け、
変革できてない会社もとりあえず現世代機で開発を続け、恣意的に(でなくとも)変革しなかった
会社は携帯に行く事にした、と言い換えてもいいかも知れない。
ところで、欧米・日本問わず分業は大昔からやっていたはず…… というかゲーム開発云々以前に
仕事の基本だと思うのですが、違うのでしょうか??? 
多分「分業」とは何ぞや、という所を明確に定義しないといけないんでしょうね。
職人が勝って気ままにデータやバイナリを乱造してしまっているような状態は、おそらくは
分業とは呼べぬわけで。(仕事ですらない)

>黒騎士さん
その分類、面白いですね。
大手でダメになっている所は、3)か、あるいは2)と3)の
中間ぐらいの所に留まっているんだけど、体力があったから
何とか保っているだけ、という状態ですかね。でも体力が
すり減っているから、次はもうヤバそう……という。
携帯電話ゲームについては、それなりに儲かっている
という話は耳にしつつも、規模の拡大とクオリティの上昇に
ともなって、だんだんコンシューマーと同じことになりつつ
あるようですね。アイデア勝負みたいなマーケットには
なかなかならない。
「アイデア勝負の市場が無い」という話題が時々ありますが、
それをビジネスの場に求めるという発想がすでにして、旧時代的
なのかも、と思うことがあります。
アイデア勝負みたいな場は、無料系(FLASHとか)などの
非ビジネスの場に求めるしかないのかもしれません。
「ZOO KEEPER」のような非ビジネス→ビジネスの吸い上げの
例がもっと増えると好ましいのですが。
(まぁ制作者はプロですけどね)
# 話がそれました。

ポリフォニー・デジタルはどこにも分類できないようなので、この分類には大穴が空いているようです。
すみませんでした。
企業は利潤発生装置なので、アイディアをどのくらいの速度で利益に変換できたか、という視点で分類しないと、いけないんですね。
すると今度は多分テトリスが分類できなくなるけど…… まあいいや。
ZOO KEEPERは、最初から商品化前提で考えていたとしたら、スゴイですね!?

私はこの業界の人間ではなく、EAについても殆どしらない
門外漢ですが、EAの話はおもしろかったです。素人の憶測ですが、
ゲーム市場はひょっとすればかなりの成熟市場なのかなと
感じました。でなければ、分業体制で効率を上げるのは難しいかと。
一般的に分業化は、うまく役割・作業分担して初めて効率向上する
はずですが、そのようなそういった「カッチリ」した組織的な
分業作業体制から生まれるゲームが市場に受けるという事実を見ると、
ゲーム市場というのは、若い成長市場に見られる「斬新・革新」的な
もので開拓する余地がない、成熟した市場なのかなという印象をもちました。
そう考えた場合、少数精鋭的かつクリエイティブなベンダの長所の
アドバンテージは(この市場においては)相対的に価値が
少なくなっており、EAのようなところが勝ち残っていくことは
論理的に納得しやすく感じます。
上記の前提を仮定する場合、DELLの話も同じ文脈で解釈することは可能
な気がします。DECやCompaqが負け、DELLが勝つくだりは、創造性よりも
顧客指向と効率重視(特にLogistics)を重視した結果という解釈をすれば、
確かに共通項があるように感じられます。さらに、AppleはPC市場での
創造性よりも、別の市場での創造性で調子を上げている事実は恐らくは
それを肯定しているかもとも。
まあ、近年の携帯ゲーム市場の成長ように、ゲーム市場の中でも
新たなセグメントが生まれる時は、小規模でクリエイティブなベンダが
ある程度活躍することも考えられますが、昔のゲーム資産を移植する
だけで通用することもある場合も考えられますから、やはりゲーム業界
そのものは全体としてもかなり成熟した市場と解釈できるのかな、という
風に思いました。

はじめまして。
おっしゃるとおり、ゲーム産業はかなり成熟産業になりつつある
と思います。デルとEAの共通項については、過去の記事でも
ふれていますので、よろしければ、ご一読ください。
今後10年の戦略とは
http://amanoudume.s41.xrea.com/cgi-bin/mt/archives/000010.html

成熟して市場が十分大きくなった時代のビジネスロジック
http://amanoudume.s41.xrea.com/cgi-bin/mt/archives/000011.html

> もちろんハードとソフトは違うので、デルモデルとイコールでは
> ないでしょう。ただ、根本にある原理は同じ。全世界レベルで
> 見れば、ソフト開発者の数は増えているし、E3の状況を見ても、
> 着実に質が上がっています。中国、インドの安い開発スタジオも
> 今後ますます立ち上がっていく。

> すると全世界の開発スタジオのをつないで、もっとも安く(質の
> 高い)仕事のできるパートをそのスタジオに投げる作り方が
> 台頭してきます。

> 例えば、この2年間で、欧米の(特に英国の)ゲーム開発
> 会社がかなりの数、パブリッシャーに切り捨てられている
> けれども、これだって要はサプライチェーンマネジメントならぬ
> ディベロッパーチェーンマネージメントにとって都合の悪い
> 開発会社は切られていくというビジネスロジックなのである。
> 作家と出版社の関係で、作家が出版社から一方的に不利な
> 契約を押しつけられているという構図ではじつはないのである。
> そうとらえるのは古い見方で、もっと大きな流れの中で、
> ゲーム開発スタジオは作家からゲームの部品を担当する
> 分業者になりつつあり、マネージメントの論理がきわめて
> 強く働くようになっている。