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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2006年04月06日

天才のいない野球漫画『おおきく振りかぶって』

以前から書店やコンビニで見かけていたのですが、最近あちこちで話題になっていたのでついに買いました。
確かに面白いです。
高校野球を描いてきた漫画はそりゃ古今東西いくらでもあるわけですが、この作品で特徴的なのは登場する少年たちが誰も彼も必死で一生懸命なことです。なぜ一生懸命なのか、それはこの作品の世界には天才がいないからです。凡人だからこそ、彼らは一生懸命に野球をする。その必死さは、ボクたちが身近に感じる必死さですし、ひたむきさです。

そもそも、これほど暗くて卑屈でオドオドした主人公(ピッチャー)がかつて野球漫画に存在したでしょうか。
彼は中学時代、祖父の経営する私立学園に通い、実力が無いにもかかわらず、ずっと試合でエースを張り続けました。チームメイトのやる気は下がりまくり、チームの成績は3年間、低迷しっぱなし。自分のせいで、みんなの中学時代を台無しにした・・・・と、落ち込んだまま、彼は学園の高等部には進まず、他の高校に進学しました。

「経営者の孫だからってエースやらせんの? ヒッデエ監督だな」
「カントクのせいじゃないよ。自分から降りたって、部を辞めたっていいんだ。そう……しなきゃダメって、わ……わかってたのに。オレ、マウンド3年間ゆずらなかった!」
はっきりいって、彼は彼自身の言うとおり、最悪かもしれません。才能ないなら、やめろ、出てけ、どけ。そう罵られても仕方ないし、チームメイトの士気を下げてまでマウンドに執着するのもキモいかもしれません。

才能が無いかもしれない、下手の横好きかもしれない、自分の存在が足を引っ張るかもしれない。それでも彼はマウンドに執着します。この執着は、天才というよりは凡人の執着ですし、ボクたちの身近にあるものです。
ボクたちの大部分は野球選手ではありませんが、職場で学校で家庭であらゆる場所で、同じような思いをすることがあるでしょう。才能が無いかもしれない、下手の横好きかもしれない、自分の存在が足を引っ張るかもしれない。言葉ではっきりと「無能だね」と罵られたかもしれない、無言の圧力で「邪魔だよ」と責められたかもしれない、あるいは自分自身の心が勝手に自分を責めるかもしれない。

大なり小なり、似たような思いを抱いたことがある人はいるでしょう。凡人だもの、仕方ない。だからこそ、彼を始めとする少年たちの執着は、必死さは、一生懸命さは読む者の胸を打つのだと思います。

Posted by amanoudume at 2006年04月06日 01:37 個別リンク
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コメント

「おお振り」友人からすすめられて読みましたが、私もはまりました。
すごく取材したんだろうなと思わせる、保護者の様子や家のなかの様子まで、すべてに作者の愛情が感じられます。
個人的には、香具山くんの話が最高でした。ひたむきさって、今は憧れの対象かもしれません。

確かに、確かに。
3巻のあの「はじめてグラついている」香具山君の話は良かったですね。

何事にせよ、誰でもグラつく時というのはありますから。誰もが覚えのある壁にぶつかるから、共感を抱くのですし、ある種の憧れもわいてくるんですよね。

自分も読みました。
この作品が他の野球マンガと決定的に違うのは、
野球を知らない人をも引き付ける魅力があるという点ですね。
そういったドラマのつくり方が抜群にうまいです。

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