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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2004年06月11日

新時代の難易度

週間ソフト販売(5月31〜6月6日)
見てふと考えたこと。
「GTA: Vice
City」が好調ですね。このペースなら40万弱までは確実。その上も視野に入っているでしょう。日本市場においてしっかりと地歩を固めつつあります。ス
テレオタイプな意見として、日本のユーザーは保守的で、欧米のゲームには拒絶反応を示す、というものがあります。しかし現実はどうなのか? 現実は今、ボ
クたちの目の前に存在します。
まぁ世の中には「GTAは例外」という声もあるようですが、そういう理解はきわめて浅い。日本市場は着実に変わりつつあり、面白い物は面白いと認めていま
す。要は、面白くもないし、魅力もたいしてないのに、労力をかけて「良くできたソフト」とやらを作っている時代遅れのカビた開発者が言い訳しているだけで
しょう。毒舌系のゲームサイトの方々がよく口にされるとおり、まさに「負け犬は去れ!」ですよ。

全世界で共通の傾向
最近、日本でも、欧米でも、1つの明確な傾向がありますよね。
針の穴を通すような作業を強いられるアクションゲームや、使い古されたネタを「探索性」と称して押しつけられる3Dゲームや、作業感の強いアクションゲー
ムはもはや売れなくなりつつあります。3Dの箱庭がめずらしかった時代とは違うわけです。今となってはたいしてうれしくもない作業を延々やらされる、そん
なゲームを喜ぶのは一部のゲーオタとか、開発者とか、一部の子供だけでしょう。いったい何年前の発想で物作りをしているのやら。そういう保守的な人間にか
ぎって、やれ市場が保守的だの、ユーザーが保守的だのとほざく。やれやれ。
日本では「三國無双」、欧米では「GTA」の登場の頃から、ユーザーがアクション系のゲームに求める楽しさ、難易度の傾向は変わってきています。一度楽し
いものを知ってしまったら、どうしてもどれるのか? 世の中には楽しいものがいっぱいある、という事実から目をそむけてはいけない(見城こうじの空想ゲーム学 第54回「アドバンテージ喪失の時代」)。目を背けて、旧来の発想の殻に閉じこもったソフト、開発者はフェードアウトしていきます。

1つのキーワードは「難易度」
ランキングを見ると、「ピクミン2」も毎週3万本以上、安定して売れているようですね。年末以外は壊滅的と評されるGC市場において、健闘をつづけていま す。これもまた、難易度という点において、優れたソフト。他にはナムコの「塊魂」もそうです。今売れているソフトを見ると、いくつかのキーワードが浮かび ますが、その1つが「難易度」。 この難易度というのは、単純にやさしければいい、という話ではありません。プレイヤーの労力(入力)に対する楽しさ(リターン)が現代的なバランスを保てているソフトだということです。多少極論をいってしまえば、この1年で発売されたソフトを「難易度」という軸で分類してみればいい。きっと見えてくるものがあります。

たとえば「ピクミン2」については、こんな書き込みが某所にありました。

> 時々「2は少しヌルイねぇ」っていう話題が出るけど
> そのヌルイがツマラナイに直結していないのがすごい気がする
>
> 初心者にも普通にクリアできる程度の難易度で
> 上級者も「ヌルイ」といいつつまんざらでもなく楽しめる
> 初心者ばかり意識してゲームとしてつまらなかったり
> 上級者ばかり意識して間口が異様に狭いゲームはいくらでもあるけどね

「たった1つの穴」を通らせて、どうするよ?
次に「塊魂」の例をあげましょう。「塊魂」のディレクター、高橋慶太氏はインタビューの中で、「抑圧と開放」といったゲームデザインを堅苦しいと語りまし た。「ここへ行かなければ大きくできない」ような、ゲーマーにしかわからないようなレベルデザインは排して、適当に動かしていても塊が大きくなるような大 らかな設計にしたとか。 今、「ゆるさ」「おおらかさ」というものがゲームに求められ始めています。それを直感し、理解し、実現した開発者は成功をおさめ、現実に背を向けた開発者 は先細っていく衰退の道を歩み、売れない言い訳をつぶやきつづけます。 「ゆるい」といっても、単にゲームとしてできていないわけではありません。ゲームにネタを仕込むことと「たった1つの穴」を通過するため の手順を作ることは本当は別なんです。でもいつの間にか、世の中には、同じことだと考えている人がふえてしまいました。なぜなら、作り手にとってみれば、 そのほうが「きちんとできあがっている」感じがするからです。ゆるくすると、できていないんじゃないか、と怖くなる。そこでキュッとしめちゃうんです。 するとどうなるか? 穴を通過するための手順を見つけるまでの時間は人それぞれ。けれども「プレイの幅」はとても細くなります。細い穴を通ったときに達成 感がある? なるほど。でもプレイヤーはその穴を通りたかったんだろうか? 通って楽しかったんだろうか。苦労をした→いい思い出だった→ふーん、本当 に?
穴を通らせるのが娯楽なのではない。楽しませるのが娯楽

こちらのレビュー
よれば、「ピクミン2」にはRPG的なゆるさが入っているようです。敵をコツコツ倒して借金を返せるし、スプレーをたくさん作ってゴリ押しすることもでき
ます。そういうゴリ押し可能な作りを美しくない、とか、謎や仕かけが無意味になると感じるゲーム開発者もいるかもしれません。
でも、例えばRPGをして、「なんだよー、レベル99まで上げたら、ボスキャラの弱点を探ったりする楽しさが無くなるじゃないか。戦闘の戦略性もまるでな
いよ。レベルアップなんて要らないよ」などという人、いるでしょうか? 日本において、アドベンチャーゲーム→RPGと移行した理由がここにあるんです
よ。アドベンチャーゲームは「行き詰まる」「行き詰まったらやることがなくなる」という問題を解決できませんでした。そのために、RPGという、よりゆる
い方向へ進んでいきました。
ゆるくしたらRPGは、物語系ゲームは崩壊したんでしょうか? しませんでしたよ。ゆるく作ることをヒステリックにおそれる必要はないんです。「無双」
「GTA」「塊魂」「ピクミン2」、こういったタイトルはいずれも成功をおさめているじゃないですか。おかしな妄念にとりつかれてゲームを作る必要はない
んです。
難易度についての妄念に囚われているか、自由な発想で作れるか。それが新時代のゲーム開発者とそうでない開発者を分けることになるのでしょう。
関連記事
同じような話は過去にもかいてきました。

「定価分の満足」
> しかしまぁ、「顧客満足度」っていう指標はあまりにもありきたりすぎて、
> ネットを見ても、「わかってる」とか「よくいうよね」とか、サラっと流しちゃう人が
> 意外と多いような気がしてます。でもわかってる人が本当に多いんだったら、
> 今ゲームはこんなことになってねえよ。もうちょっと真面目に売れなかった
> 理由、不評だった理由を考え直せ、ってことですね。もちろん、宣伝や
> 話題性って要素は大きいですよ。

チェック・ゲームズその3
> 遊ぶ側はもっと「ゆるさ」を求めているんでしょう。「無双」「GTA」を始め、
> 近年ヒットしたゲームはいずれも、「ゆるさ」がありました。売上を大きく
> 落としている続編タイトルは、まぁそれぞれの完成度も要因でしょうが、
> 「ゆるさ」がないんだと思います。

「ゲーム市場(ユーザー)を把握しているEA」
> EAは今のユーザーが最後までゲームを遊ばないということをよく理解している。
> だからEAのゲームはしばしば、最初が一番面白いといわれる構成を取る。
> この単純な事実を開発者はよく忘れがちだ。実際に自分がゲームを遊んだ時の
> ことを考えればわかるはずなのだ。みなさん、最後まで遊んだゲームが何本ある? 
> けれども作っている時には案外、忘れてしまう。開発者はおいしい物を後半に
> 残しているのだが、前半でユーザーのほとんどがやめてしまっている、という不幸な
> ケースは案外多いのである。はたから見ればこっけいかもしれないが、作っている
> 側は真剣なのだ。

Posted by amanoudume at 2004年06月11日 18:47 個別リンク
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