日本のゲーム開発者と欧米のゲーム開発者に起きつつある(環境的・心理的・関心的)状況を見ると、チープな二項対立的比較がなんともチープなものに思える
ことがあります。*
梅田望夫・英語で読むITトレンド「連載1周年:日本にとって米国のIT産業は絶対ではなくなった?」
この記事の前半部を読んで、そういう思いがますます強くなりました。日本と欧米の違いについて、ここ2〜3年、じつにさまざまな言説が登場しました。技術
的優劣、市場の成長と縮小、革新性と保守性、……。しかしそのどれもが、かならずしもしっくりくるものではありませんでした。
例えば、欧米をマンセーしたり、日本を保守的と断じる人の多くは、ゲーム業界をドロップアウトした人、権力争いで敗れて追い出された人、自分自身は続編ば
かりつくっている人、ゲームの出来が悪いとパブリッシャーの悪口を平然と公言する人で、はっきりいって説得力は乏しいです。
> 最近IT産業全体で感じるのは、日本とアメリカの「関心の方向」が
> 違ってきたな、ということである
日米の開発、日米の市場を語るうえで、この「関心の方向が違ってきた」という言葉が重要な気がしています。
ボクは昨年後半から、梅田望夫氏のBLOGをたびたび参照するようにしていますが、その最大の理由はゲーム産業で必死になって、欧米優位論を唱えている人
たちの言葉よりも、一見ゲーム産業とは遠い存在である梅田氏の言説のほうが、日米の状況をはるかに的確にとらえているように感じられるからです。正しく
は、梅田氏はIT産業についてコメントしているわけですが、かなりの部分、米国のゲーム産業について当てはめられるように感じています。
# おそらくは、立場や感情、うらみつらみのないすがすがしい言説であるがゆえでしょうね。
> 日本はインターネットの「こちら側」に、米国はインターネットの「あちら側」に
> イノベーションを起こそうとしている、そこが日米の違いの本質ではないかということ
> 明らかに「こちら側」の世界、つまり、携帯電話、カーナビ、コンビニの
> POSシステム、高機能ATM、デジタル三種の神器(薄型テレビ、DVD
> レコーダー、デジカメ)等々といった世界は、日本が圧倒的に先行し、
> アメリカの遅れや無関心は目を覆うばかりだ。しかし「あちら側」については、
> アメリカが世界に差をつけて大きく先行している。
今回は「気がする」という、かなりあいまいな感想にとどめておきます。詳細な議論については、今後おいおい書いていくつもりです。欧米優位論者だとか、
「俺はそう思わない」などという人と議論する価値は現時点では、まったく感じません。つまらない議論は、敏感な者にしか察知できない”予兆の時期”にやる
べきではなく、誰の目にもわかりやすい根拠が多く顕在化する時期におこなうほうがいいでしょう。
このテーマについては、敏感な者だけがわかればいいというのがボクの現時点での考えです。
*ボクのサイトの読者なら、現在日本のゲーム業界には、好んで「二項対立論」をばらまく存在、たとえばゲーム系糞ライターがいることはご
承知のとおり。そういう言説は一種の病原菌のようなものであり、「自然治癒」は現実にはなかなか困難ですから、適度なカウンター言説もまた必要になりま
す。
(中立論は一見、冷静なようでいて、本心ではどちらかを擁護しているケースが多く、それが透けて見えると、いやらしさを感じます。それもまた中立病という
病でしょう)
病原菌あふれる現在、今しばらくは「殺菌」という意識を念頭に置く必要を強く感じます。手をゆるめるつもりはまったくありません。