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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2004年03月25日

チェック・ゲームズ++

作品についての感想はすでに書いたので、今回は現象論とその最大要因を中心に書きたいと思います。
ARTIFACTさんが「ジャック2」についてのインプレッションを掲載されていました。

より庇護欲をそそるタイトルになった
「ジャック2」が「ジャック1」に比べて面白いのは、辛い点をつける人間とマンセーする人間にわかれていることですね。辛い点をつけている人は、狙いどお りに作れていないこと、難易度調整が悪いこと、音楽が悪いことの3点を主に指摘しています。マンセーする人は、「GTA」との比較は無意味としたうえで、 3Dアクションアドベンチャーとしての完成度の高さと面白さ、ビジュアルの質の高さを絶賛しています。2chでは後者の人が多いように見えます。 どちらにも共通するのは、「GTA」的な面白さは期待できない、という評価。 この点を、狙いどおりに作れていないと考えるか、それは括弧にくくるかの違いですね。(個人的には、作り手が狙っているとおりに作れたなら、絶賛したいん ですけど、狙っているとおりに作れなかったことを軽やかにスルーしてまで誉めたいとは思いません。) ちなみに、ARTIFACTさんでは、 >舞台となる街がかなり作り込まれていて、自由に動けるため、『GTA』のようなゲームとよくいわれており とありますが、「ジャック2」が「GTA」と比較されがちなのは、一見似ているからというより、E3での発表において、制作者が「GTA」のようなフリー ローミングソフトをめざしたと語ったからだと思います。 http://www2u.biglobe.ne.jp/~nanko/news.cgi?id=2003051401 # 2chでいわれているように、「ゼルダの伝説 時のオカリナ」のハイラル平原に # たとえるほうが実態に近いとは、思います。

国内では、「ジャック2」は前作よりも、マニアックな人気を得たような印象があります。前作よりも歯ごたえがある点、前作よりもダークな点、前作よりもマイナーになってしまった点が、ハードゲーマーやゲーム業界人の庇護欲をそそるのでしょうね。「こんなに良くできたゲームがなんでこんなに売れないんだ」という気持ちになるのでしょう。しかしこの状況は、開発元のNaughty Dogのこれまでの実績を考えると、幸せとは言いがたいです。

前作が体験版を大量に配ったうえ、初週売上が10万前後だったはずなので、今回の初週出荷が2万数千、実売1万強という数字は完全にマイナータイトルになってしまったことを意味します。

売る気の欠如したパブリッシャー

要因はいくつもありますが、まず第一にSCEJに売る気がほとんどなかった(と思われる)点を指摘しておきます。雑誌での記事掲載も全然少ないし、広告も目にした記憶がとんとなく、前作のような大々的な体験版配布もなし。前作にくらべて、圧倒的に金抜きのリリースでした。まぁ、年末に発売できたにもかかわらず、年末商戦からはずした時点で、それは明確でしたが。

SCEJの海外ゲームの取り扱い方は、数年前にくらべて、あきらかにずさんになっているように感じられます。最近では、「EyeToy」もまたずさんなローカライズ、ずさんな広報展開の「被害」に遭いました(参考:EyeToy、コケた?)。
まぁ、数年前にくらべて、良質なソフトが国内から供給されているというなら、こういう変化も理解できるのですが……。PS1時代に誕生したシリーズ物を次
々と枯らしている状況で、わざわざ海外からもってきたタイトルを枯らしている、そのソフト戦略は理解に苦しむところです。
パブリッシャーとして、いい加減な真似をしすぎていますね。Naughty Dogの社長にして、「ジャック」シリーズのディレクターであるJason
Rubin氏は、「ジャック3」を最後に、Naughty
Dogを去ることを明らかにしています。その理由を直接語ることはしていませんが、D.I.C.E.2004の講演において、パブリッシャーとディベロッ
パーの対立について語っています。もちろん、具体的にSCEをやり玉にあげているのはいうまでもありません(参考:Tara Reid and the Future of Game Development )。

米国版には日本語のデータが入っていました。元々、Naughty Dogは各市場向けのバージョンを同時開発している会社です。

ありえないようなエピソード
Naughty Dogといえば、SCEAの有力ディベロッパーの1つ。その社長のJason Rubin氏がSCEAのE3祝賀パーティの招待客リストにはいっていなかったそうです。びっくり。いや呆れてしまいました。しかも、彼が祝賀パーティに 参加するためには、それから何度も連絡をとり、長い間待たされたり、確認に時間がかかったりしたそうです。これは想像ですが、おそらく記事のニュアンスか らして、彼は「Jason Rubin? ん、だれだ、そいつ?」的なあつかいを受けたのでしょう。なんたるひどい侮辱! 日本では、著名な開発者が会社組織の上位にくることがめずらしくない、という特殊性はあるものの、「小島秀夫って、だれよ?」「堀井雄二って、だーれ?」 「鈴木裕、はぁ?」なんて話はついぞ聞いたことがありません。(開発者全員が等しく、大切にされるわけではありませんが) Jason Rubin氏がこのエピソードを紹介したのは、なにも個人的な恨みを公の場で話すことで、憂さ晴らしをしたかったのではないでしょう。どんなに謙虚な人で あれ、作品をつくっている人間、表現者は誰であれ、最低限の「自負」をもっているものです。それがなければ、自分の表現でお金を取ることなど到底できはし ません。そして、それを踏みにじられ、ツバを吐きかけられれば、ささやかにして当然の怒りを覚えるのは当然ですし、おおらかな、そう非常に寛大な心でそれ を許し、忘れるにしても――ボクはJason Rubin氏がそのような大人物の器だと勝手に信じていますが――、自分自身がきちんと評価されるあたらしい場所を求めるのはまったく自然な欲求でしょ う。彼は奴隷ではない、1個の表現者なのですから。
口コミはまだまだ健在だが、求められていないソフトはそこに乗りようがない
ARTIFACTさんの記 事で少し気になったのが、 > 非ゲーム業界人で「良作のゲームを発掘しよう」という人がすごく減ってしまった という一文。 これは、ちょっと疑問。ゲーム市場において、口コミ網はいまだ健在。今となっては堂々の大作となった「無双」シリーズも最初は口コミソフトでしたし、最近 の例でいえば「魔界戦記ディスガイア」もそう。「GTA」だって、じわじわ売れたわけですし。そもそも「良作のゲーム」という定義自体、あいまいなので、 そこを議論しないと話がまったく噛み合わない気はしますが……。 「ジャック2」ははっきりいって、今の日本のユーザー(口コミ網を形成しているようなコア層)の求めている方向のソフトではないし※※、求めていないようなソフトが話題にならないのは、別に最近だけの話ではないと思います。 (自分が注目したソフトが話題にならないと、状況論などの大きな話に帰結させたくなる気持ちはわかるんですが、それはどうかな……と思います。)

※※求めている方向のソフトではない、について簡単に補足しておくと、今の日本の市場(特に大人市場)では「部活ゲーム」は売れなくなってきています。「ジャック2」は部活ゲームの文法から(制作者の意図および失敗した結果として)はみ出した部分はあるのですが、はみ出した結果、「スパルタ部活ゲーム」になってしまっていて、結果的に限られた猛烈部活好き(ゲーム体育会系)にしか受けにくくなっています。

部活ゲームとは
(コメント欄にて、加野瀬さんからご指摘を受けて追加いたしました。ありがとうございます。)

「部活ゲーム」という言葉は、元々はポップ・コラム もはや面白さは売れ行きを左右しないのか。
補助輪付きスノボゲー『1080°SILVER STORM』
の中の言葉でした。

> 任天堂特有の部活っぽさ(慣れるまでまっすぐ走ることすらできない
> 『マリオ64』に代表される造り)
> 私は部活っぽい方が好きだし、前作の「スノーボードは腰で乗る」感覚
> からするとリアリティはかなり控えめになってしまった

ボクは「部活」ゲームというのは、
    1)最初にある程度練習する or 慣れる必要がある、
    2)ゲーム内に課題が多く存在し、その課題を「反復練習」で克服することで、
      プレイヤーに達成感を与える作り、
    3)一般の人には難しい、
ゲームだと考えています。2)の部分は、どんなゲームにも存在する要素ですが、”特に”その部分が
強いゲームを指しているつもりです。

Posted by amanoudume at 2004年03月25日 01:44 個別リンク

コメント

「良作のゲームを発掘しようとする人」なんですが、ちょっと言葉が足りませんでした。「マイナーな良作のゲームをいろいろな人に広めようとする人たち」です。

SCEJの売る気のなさは何々でしょうねえ。もっとCMやって欲しいもんですが。

「部活ゲーム」の意味がいまいちわからない(サイトの過去ログにもなかった)んですが、1日1時間程度でも満足した遊び方ができるので、時間のない社会人に向いたゲームだと思いました。少なくともRPG系よりは勧めやすいです。
あと、イントロの印象が悪すぎるというのは同意です(笑)。

>「部活ゲーム」

元々は、ポップ・コラム「もはや面白さは売れ行きを左右しないのか。
補助輪付きスノボゲー『1080°SILVER STORM』」
http://pop-site.com/column/col036101.htm
の中の言葉でした。説明不足ですね、補足しておきます。

> 任天堂特有の部活っぽさ(慣れるまでまっすぐ走ることすら
> できない『マリオ64』に代表される造り)
> 私は部活っぽい方が好きだし、前作の「スノーボードは腰で
> 乗る」感覚からするとリアリティはかなり控えめになってしまった

「部活」ゲームというのは、
    1)最初にある程度練習する or 慣れる必要がある、
    2)ゲーム内に課題が多く存在し、その課題を「反復練習」で克服
    することで、プレイヤーに達成感を与える作り、
    3)一般の人には難しい、
ゲームだと考えています。
2)の部分は、どんなゲームにも存在する要素ですが、”特に”その部分が
強いゲームを指しているつもりです。


>1日1時間程度でも満足した遊び方ができる

加野瀬さんのおっしゃる通り、1セッションの時間というのは、重要な
ポイントです。売れているソフト「無双」「ウイイレ」等も同様ですし。
口コミ網に乗ったソフトである「ディスガイア」もシミュレーションRPG
という形態のため、区切りがステージ単位と、(プレイヤーにとって)
読みやすく、1時間もあれば十分進みます。

単に3D世界に放り出されて、そこを探索する「ジャック1」に比べると、
常にミッションを与えられる「ジャック2」は、その点で現代的なゲーム
といえます。「部活ゲーム」の文法から脱しようと、制作者が意図した
部分といえそうです。

ただ、それは、ある程度うまい人の話です。
仕事で疲れて帰ってきて、あれだけ難しいものを何度もやらされると、
イライラが増幅する一方ではないかと思います。(アクションステージに
よりますが)やられた時に最初に戻されることが多く、「またやり直しかよ!」
と思うこと、しばしばです。難易度調整の失敗等による、結果としての
「スパルタ部活ゲーム」化。

国内の大人市場では、イライラや疲れを解消するタイプの爽快感重視
(暴力的な爽快感をふくむ)、ゲーム内のリズム重視のゲームがヒット
しやすい傾向が顕著にあります。
「部活」ゲームのような、強い達成感を与えるために、難しい課題を
設定するタイプのゲームは、どんどんユーザーを失っています。
近年の日本国内における任天堂続編の売上半減傾向も一例かも
しれません。もっとも、元々売れていたから目立つだけで、数多くの
アクション系ゲームが同じように売れなくなっています。

もちろん、単純にヌルくするだけでは、強い達成感は得られないのも
事実で、ボクは単純に「ヌルゲーを作れ」と主張しているわけではあり
ません。しかし「難易度」「達成感」に対しての考え方を変えなければ
ならない時期なのは確かです。

狙いおよび可能性としては、従来の「部活ゲーム」から脱したポスト
「部活ゲーム」(体育会系部活から、文化系同好会ともいうべきか)に
なり得たソフトでした。しかし結果的にはそうなっていない、という点は
残念に感じています。


**おまけ**
部活ゲームの真逆として、例えば同じくSCEJ(開発はジャック2と違い、
日本ですが)の「トロ」シリーズは、シリーズを重ねるごとにどんどん
ゲーム的な達成感や自由度が無くなっていく傾向があります(ちょっと
乱暴なまとめ方かも)。

いやし、ほのぼのが悪いとはいいませんが、5800円の価値、かけた
時間の価値、ということを考えないと、商品としては辛いでしょうね。
(1作目を除くと、コミュニケーション要素に乏しいのも問題)実際に、
売上はどんどん衰退しているようです。

# まぁPSPのような携帯機であれば、本来の魅力を取り戻せるかも
# しれません……。

こんにちは。
マリオ64系のゲームを「部活」に喩えるのは、ファミ通での永田氏の連載「ゲームの話をしよう」で
スチャダラのボーズとの対談中、永田氏の知り合い女性の話として出てきたのが記憶に残ってます。
結構前だと思いますが。
部活ゲームに対するのが「サークルゲーム」でしょうか。


ボーズ とにかく俺が(ゲームやる女の子に対して)言うのは「64とマリオ買ってやるからやれ!」っていう(笑)
でも結局「まっすぐ走れな〜い」とか、そういうレベルで終わったりするんだよなあ。
永田 知り合いの女の子で、「マリオは部活みたいでヤだ!」っていう人がいて。最初のうちは楽しいんだけれども・・・。
ボーズ どんどんどんどん(笑)
永田 そうそう。最初、「バスケ楽しい!」とか思ってバスケ部入るんだけど
「バスケのために腹筋」とかになるとツラい、みたいな。
ボーズ 「それがおもしろいんだ」って言いたくなるけどなぁ(笑)
永田 そういう人には、「部活」じゃなくて「サークル」っぽいゲーム、がウケてるんでしょうねぇ。

おひさしぶりです。相変わらず、引用力すごすぎですよw

ゲームの部活っぽさは、GCの立ち上げ期に、雑誌等のインタビュー
の中で、宮本茂氏がよく口にされていたことでもありますね。
マリオのようないわゆるゲームゲームしたゲームと、どうぶつの森の
ようなコミュニティ系のゲームはある意味対極にあって、ピクミンは
その中間ぐらいにあるソフトだと語っていたのが記憶に残っています。
その時点ですでに、日本国内におけるユーザーの変化は悟っていた
のでしょうね。

しかし、そういう状況論に対して、GCがどの程度の答えを出せたか、
というのはすでに市場が結果を出していますが。「軽薄短小」を実現した
のがGCでもGBAでもなく、携帯電話とFLASHだったというのと同じで、
「いってることは間違ってないけど、完全な答えを出せてない」ということ
でしょうね。

とはいえ、米国のユーザーと日本のユーザーの間にはかなりの温度差
があって、米国のユーザーはN64の頃の任天堂系ソフトのような「部活」
ゲームをまだ好んではいますね。

ビジネス論ではなく、開発論になりますが、EAは、任天堂が(レアの
売却によるラインナップの変化もふくめて)以前ほど「部活」ゲームを
投入していない&できていないところに、こってりと楽しめるゲームを
そろえて、ブランド力をさらに高めました。版権の魅力で、部活臭を
薄めているのも、ユーザー層の拡大に寄与しました。

この辺は、昨年末、いかにもN64全盛期の任天堂らしいラインナップを
そろえた途端、欧米で急激にGCが盛り返したことでも証明されたかな、
とは思いますね。

とはいえ、日本市場においては、変化に対応できているとは言い難い
状況ですね。幅を広げてこなかった代償を今払っているのでしょう。

もっとも、現在日本のソフトメーカー(あるいは開発チーム)で、市場の
変化に対応できているといえる所がいくつあるのか……?
大きなタイトルとしては「無双」以外あるのか?というね。セガもちっとも
変われないし、ナムコは微妙かな。変わってきた部分も見えるし、相変わ
らずだなあと感じる部分もまだ多い。カプコンはあまりにヤバすぎでしょうね。
開発の意識のあり方を含めて、ちょっと見直しの時期なのでしょう。


これは、やれオンラインがどうとか、ハイエンドのグラフィックスがどうとか、
そういうつまらない「技術」議論ではなくて、ゲームの娯楽としての幅の
問題ですね。前に進んできたのはいいけど、幅がずいぶんと先細って
しまったなあ……という。

しかしここを突破できない限り、日本のゲーム会社の迷走はまだまだ続く
でしょうね。まぁしかし、全世界的にゲーム開発スタジオが増加している今、
もう少し国内の開発スタジオが淘汰されたとしても致し方なし、と感じては
います。変われないなら滅びるのもまた自由。そこさえ腹をくくれるなら、
好きに作ればいい。「ロマン主義」は表面的にはかっこいいですから。

もっとも、普段は「ロマン主義」のくせに、いざ自分がリストラされたり、
会社が消えてなくなったりした途端、あわてふためくのはみっともない
ですけど。そこまで覚悟したうえで変わらないつもりなら、それは本当に
自由でしょう。

なるほど、部活ゲームの意味、理解しました。
シューティングゲームなんかは、まさに「部活」化ですね。
自分自身は、ハードゲーマーではなく、ヌルゲーマーのつもりなんですが、80年代からゲームをプレイしているから、基本的に精神構造がゲーマーなのかもしれません。