最近の記事
カテゴリー
過去ログ
検索


このサイトについて
このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2006年08月18日

ライブ感コンテンツの最先端『ひぐらしのなく頃に』、ここに完結

お盆も無く、クソ忙しいというのに、『ひぐらしのなく頃に解 祭囃し編』を完了。
鬼隠し、綿流し、祟殺し、暇潰し、目明し、罪滅ぼし、皆殺し、祭囃し。全8編、ついに完結ですよ!
シリーズ最長。全部で10時間ぐらいですかね。
いやー、日曜と月曜の深夜でクリアして、火曜の夜は裏エンディング。
「忙しい? なら睡眠時間を削ればいいじゃない」的なプレイで、ヒットポイントがさすがにヤバめでした。水曜の夜はブログ更新する体力もなく、寝てしまいましたよ。あー、若さが足りない。3年ぐらい前なら、睡眠削っても、後に引かなかったんですが、ダメージが残りますね・・・・。

ネット上にもさっそく感想がいくつも上がってますね。(ネタバレを含むものもあるので、注意してください)

一応、ネタバレはこの先に↓

(『ひぐらしのなく頃に解 祭囃し編』のネタバレあります)


今回は(も?)評価が分かれるかもしれませんね。
主人公である圭一たちの物語は、実質的には前話の『皆殺し』編でほぼ終わっていて、今回のメインは犯人役である鷹野。前話の鷹野はアレげな狂人に見えたわけですが、子供時代のトラウマ、おじいちゃんとの出会い、2人だけの生活、その後の運命(神)と闘う人生など、今回は彼女の人生が深く掘り下げられていて、感情移入できる人物として描かれています。

羽入も大活躍。というか、今回の話は鷹野(運命と闘う人間)対羽入(神)の戦いですね。主人公たち、影がかすんじゃってるような・・・・。圭一たちの活躍を期待していたファンは期待ハズレだったでしょうし、逆にこの大胆な構成を高く評価した人もいるでしょうね。

作者の竜騎士07氏によれば、世界の構造(動機や犯人が誰か?など)は決まっているが、描き方(誰の活躍を増やすかなど)はユーザーの反応を見て変えているらしいです。実際、羽入のデザインはファンが想像して生み出していた「オヤシロさま」の要素を取り入れていますし、赤坂のあの台詞は2chのひぐらしスレのAAで使用されていたものです。『祭囃し編』が鷹野と羽入の物語になることは決まっていたとしても、この2人が前話で不人気だったことを受けて、当初の予定以上に、描きこんだ可能性は高そうです。またファンの間でヘタレキャラとして定着しつつあった魅音に不自然なまでの活躍の場を与えたのも、前話のラストのヘタレぶりの反動でしょう。おかげで前話までは、主役とヒロイン的に奮闘していた圭一やレナの出番が減って、能力もかなり低下しているように思えます。

ライブ感という点で、『ひぐらしのなく頃に』は明らかに時代の先駆をいっていると思います。
一方で、そこがTYPE-MOONあたりと比べて、圧倒的に「同人くさい」要因にもなっています。作品のぶれはかなりありますし、完成度はそのぶん低下しますし、TYPE-MOON以上に好き嫌いが明確に分かれるはずです。また、リアルタイムでつき合った人と、後から知った人で、楽しさにかなり差が出るかもしれません。例えば、『DEATH NOTE』にしても、リアルタイムに連載を追いかけている人と数年後単行本でまとめて読む人では、明らかに楽しさが違うはずです。(もちろん両作品とも、数年後に読んでも、傑作として楽しめます。しかしリアルタイムでつき合えば、超傑作として感じられるはずです)

両作品とも、この時代の特性をよく反映しています。コンテンツの「消費」がますます加速していき、内容以上に話題性、話題の持続性が重視される時代には、このような作品が大きな成功をおさめるのでしょう。ライブ感をもったストーリーコンテンツとは何か?を知りたければ、『DEATH NOTE』(コミック)、『ひぐらしのなく頃に』(ノベルゲーム)、『涼宮ハルヒの憂鬱』(アニメ)が良い実例です。

最近マニア向けゲームの元気がありません。アニオタにとっての『ハルヒ』に相当するような作品が、ゲーオタには存在しません。評価の高い作品はポツポツ現れてはいるものの、その分野のオタクの話題をすべてかっさらうような作品が出てきていない状況です。おそらくコンシューマーゲームの市場に、ライブ感のあるコンテンツが登場するのを待たなければならないのでしょうね。(アーケードゲームやPC美少女ゲームでは、ライブ感のあるコンテンツが登場してきているものの、どちらもユーザーを限定しすぎています)

しかし着々とその下準備(次世代ゲーム機はすべてネットワーク標準対応ですし、ダウンロード販売が可能になります)は整いつつあります。あとは、土壌の上に種が蒔かれるかどうか。次世代ゲームの1つの焦点はそこにあると思います。

(最近、プロセッサ性能至上主義の崩壊がよく話題になります。しかし崩壊もなにも、こういう決して上手いとは言えない絵のゲームがいちばん口うるさそうなオタク層の間でヒットした2年前の時点で、見えていたことでしょう。絵の品質は面白さやライブ感(お祭り感)に比べれば、たいした価値は持たないのだと。変化は常に辺境で先に起こるものです。同人ゲームや携帯ゲーム機という辺境で起こった変化が、据置ゲーム機という中央に伝播する。そして辺境と中央のパワーバランスが揺らぎ出す。それが自然の流れです)

Posted by amanoudume at 2006年08月18日 00:53 個別リンク
TrackBack URL for this entry:
http://amanoudume.s41.xrea.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/330

Listed below are links to weblogs that reference 'ライブ感コンテンツの最先端『ひぐらしのなく頃に』、ここに完結' from 発熱地帯.

コメント

> おそらくコンシューマーゲームの市場に、
> ライブ感のあるコンテンツが登場するのを
> 待たなければならないのでしょうね。

なるほど。

確かに、パッケージ型のゲームはリリースしたらメーカ側の関与は終わってしまうので、
相互で盛り上げるというのは難しいですね。

ただ、ゲームの場合は途中参加の難しさ(時間や、個人のスキル、他のゲームの登場)などの問題で、ユーザーが尻上がりに増えるよりも徐々に減っていく傾向が強いですから、そこをどうクリアしていくかですね。

久々にコメントさせていただきます。(私が最後にコメントした記事から読み直し、ちょっと触発される部分があったので(笑))

『ひぐらし』は、私は怖いのが苦手ですし、コンシューマ版まで待つつもりなので、wikiで知っている程度の知識しかありませんが、この記事を読んで連想したことを少々。

私としては、上の記事を読んで、下の記事を思い出しました。
■「鮮度」「ライブ感」の時代
http://amanoudume.s41.xrea.com/2006/07/post_236.html

で、ちょっと思ったのは、「強度」と「鮮度」の関係なのですが、、
◎「強度」のあるシナリオと「鮮度」のあるシナリオは対立する(例えば、CMネタはすぐ風化する、など)
訳ですが、しかし、
◎「強度」のあるシステムと「鮮度」のあるシナリオは、補完関係になり、相乗効果をもたらす。
のではないかということです。(TVのクイズ番組も、基本フォーマットに「強度」がないと、長寿番組になれない、とか。)

要は、繰り返し使用する
◎システムや世界観などのルールには「強度」が必要
だが、世の中の変化やユーザー反応などを反映させ、ライブ感を出すには、
◎シナリオやキャラクターなどのデータには「鮮度」が必要
ではないかと思います。(当たり前かもしれませんが)

もちろん、ゲームシステムの(文化的文脈的な)進化やハードウェアの進化によって、前者が絶対的な「強度」を持つことは難しいとは思いますが、それでも、最新データを載せてしまえば、ある程度時間がたっても(それなりに)遊べてしまうのではないかと思います。実際にセガのゲーセンのカードゲームはそうでしょうし、また、「鮮度」を提供するデータは常に情報が変化する訳で、それに金を払うシステムというのは商売として、理にかなっていると思います。(次世代機のネット機能が、そんな感じで使われる部分もあると考えるのが普通だと思います)

まあ、でも、少し話が変わりますが、(フィクション(ストーリーコンテンツ)の)データの賛否両論は良いのか悪いのか。あるいは、それを超える仕組みはないのかなどに関しては、まだ考えはまとまっていません(笑)(ネタ元がフィクションの場合、データの「鮮度」は、その割合や盛り込む手法などにかなり手を加えることが出来るので、解があるような気もします。が、ないような気もします)

ただ、ちょっと思ったのは、こういうレビューって大事なのではないかということですね。作品の手触りを文字通り手探りで紡ぎだしていくというのはゲームの未来につながることなんじゃないかと思います(もちろん、レビュー自体も読んでいて面白ければさらに良いと思いますが)。特に日本人は、理屈立ててゲームの理論をこねくり回すより、こういう感触が欲しいとか、こういう気持ちを再現したいとか、そういう方法論の方が合っているような気もします。

コメントを投稿

(コメントを投稿しても、管理人が承認するまでは表示されません。すぐに反映されない、最悪24時間以上かかる事もあります。ご了承ください。)