FFシリーズで最も人気の高いFF7のその後を描いた映像作品『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』の出荷本数が100万本を突破したそうです。昔から「FFにはムービーだけ観られるモードがほしい」などといわれていましたが、まさしく「ムービーだけのFF」がこれだけ多大な販売を記録したことは興味深いです。
女性ユーザーを大量に取り込んでいる『キングダムハーツ2』を除いて、2005年はRPGの続編の売上が低下した象徴的な年でした。2005年の上半期にもっとも売れたRPGは『ロマンシングサガ』のリメイク作品でした。『アドベントチルドレン』の成功と、RPGのジャンルとしての衰退を合わせて考えると、「ストーリーを知るためだけに数十時間もゲームにつき合うのはイヤだ」というユーザーがかなり増えていると言っていいでしょう。またストーリーを追求しようとすればゲームが邪魔になり、ゲームを追及しようとすればストーリーが邪魔になる、という昔からの問題もあります(参考:ストーリー神話の崩壊とゲーム業界の「ストーリー病」)
『アドベントチルドレン』と必ずしも同列に並べられないのですが、セガの『龍が如く』のプレストーリーを描いた実写版DVD『龍が如く 〜序章〜』が発表されました。次世代ゲーム機ではますます映像制作のコストが上がっていくため、制作したリソース(世界観、脚本、設定、CG素材など)をゲームだけでなく映像作品にも転用していくケースは今後増えていくと思います。
ゲームソフトと異なり、映像作品は色々なプラットフォームで動きます。例えばDVDはPS2、DVDプレイヤー、PCで動きます。次世代DVDのフォーマットが分裂したといっても、Blue-RayとHD-DVDの両対応することは、ゲームソフトのマルチプラットフォーム化に比べれば、格段に安い費用で可能です。また映像は放映権の販売など、マルチユースの融通がききやすいのも利点です。
こうしたユーザーの変化はゲームだけで起きているのではありません。週刊誌の部数低下や、連続ドラマの視聴率低下も見逃せない現象です。
ヤマカム 2006年01月05日(木)
マンガ雑誌と連ドラの不振について小学館の片寄聰執行役員は「次回に引いて引いて、という雑誌連載や連ドラの手法が、20代や30代になじまなくっている気がする。みんな、ガマンが嫌いになったのかな」。
FIFTH EDITION 「漫画、ドラマ、アニメが人気がなくなってきた件について」
ドラマは、全体でみると視聴率悪化に頭を悩ませていてつまり連続ものという形式がユーザーの感性や生活、視聴スタイルと合わなくなってきたわけです。単に忙しいということではないでしょうね。ユーザーにとって便利な環境がそろってきたのも大きいです。HDDビデオレコーダーの登場により、とりあえず撮りだめておいて、後でまとめて一気に観やすくなりました。Gyaoを始めとする動画配信サービスの急成長も、以前の放送分を好きな時に観られるからでしょう。もちろんiPod(iTMS)の影響もあるはずです。人間は一度便利なものを味わえば、元には戻れなくなります。ユーザーはより自由にコンテンツを楽しめる世界を味わえば、元には戻らないでしょう。
バラエティに押されつづけている。
バラエティの視聴率上位10傑が16〜20%の視聴率を取っているのに対し、
ドラマの視聴率10傑は8.6〜20%だった。しかも、ドラマ界の顔といってよい
朝の連続TVドラマ小説は、このところ、視聴率の悪化が著しい。
1970年代は40パーセント以上、おしんに至っては50%という怪物的
視聴率をとっていたのに、ここ数年はよくて20%、ファイトに至っては
初回16%である。
ゲームに限らず、コンテンツ産業では当分の間、ユーザーのスタイルと既存のビジネスモデルの溝を埋めることが最大の課題になるはずです。影響は販売だけに留まらず、制作の方向性にもかなりの影響を与えつつあると思います。
Posted by amanoudume at 2006年01月17日 20:54 個別リンク