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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2005年11月12日

ゲーム2.0

何でもかんでも「2.0」と付けてしまう「2.0」ブームは相変わらずなので、今回は「ゲーム2.0」とか言ってみます。我ながら、安直ですね。「Game Design2.0」は割と真面目でしたが、今回は酔っ払った勢いで書いた半分ネタなので、そのつもりで。この分だと次は「ゲーム機2.0」などと書きそうですが、さすがにしつこいか。

2005年はゲームデザイン史において重要な年だった

さて、「ゲーム2.0」などと書き出した1つの理由は、今年に入って新しいタイプのゲームの台頭が顕著になってきたからです。「nintendogs」「DSトレーニング」といった新機軸のゲーム、ゲーム的でないゲームが、急激にゲーム市場を席巻する一方、それら新しい潮流のゲームを除いた市場が停滞しています。

市場の変化、時代の変化、といえばそれまでですが、実際に変化を感じている業界関係者は少なくないでしょう。また、いくつかのゲーム開発(ゲームデザイン分析)系ブログでも、この変化を敏感に意識しておられるようです。

  ●ABAの日誌 「プログラマ兼ゲームデザイナはもう古い」

ただ、上で挙げられているNintendogsがこの論文の定義でいうゲームかというと、どうも違うんだよね。Nintendogsは論文中のゲーム図における無期限シミュレーションに当たるため、ボーダーラインケースに位置づけられ、ゲームではない別の何かという扱いになる。

なのでLost Gardenのアーティクルに戻って考えると、要するにこの論文中でゲームと定義されるようなものを再生産しているようじゃダメ、せめてボーダーラインケースまで離れたものを視野に入れてデザインしないとね、という主張にも思える。

  ●Nao_uの日記 「コンピュータゲームのポストモダン化の進行」

自分もポストモダン的なものの無条件の受け入れにはやや抵抗があるものの、長い目で見れば「純粋な古典的ゲーム」も衰退していく運命にあるのだろうなぁ、ということは実感している。

  ●Classic 8-bit/16-bit Topics 「ポストモダン化するコンピュータゲーム」

日本における脱ゲームモデル志向のゲームデザインはとりわけ「数値化可能な結末」を遠ざける方向、つまりコスティキャン流に言い換えるなら、「ゲーム」と「玩具」の境界領域を目指して突き進んできました。近年では「いっそゲームでなくしてしまったほうが面白いのではないか」というようなラディカルな意見さえ散見されるわけですが、思うにこの域に達した脱モデル化こそが、ゲームにおけるポストモダニズムなのではないでしょうか。

そうはいっても、ヴィデオゲームの脱モデル化はもはや避けられない潮流であるように思われます――近年発展しているシリアスゲームという領域も、また別の軸からの脱モデル化ではないかと考えられるので、なおのこと。

新しいゲームの台頭に対して、どういうスタンスを取るかは人それぞれなので、別段とくに議論しようとは思いませんが、ゲームそのものの世代交代のようなものが起きつつある、という認識が広がってきているのは確かです。(今はまだ、日常的にゲームデザインについて考察している人々に限定されてはいますが)

ゲーム機の両手系インターフェースはそれほど特権的なものではない

もう1つは、PCオンラインゲームと携帯電話ゲームの台頭がゲームデザインに与える影響について。
「ゲーム機」ゲームの開発者や、ファミコン世代のゲーマーの中には、携帯電話ゲームをかなり嫌っている人がいます。嫌いというと語弊があるかもしれませんが、生理的に合わないらしい。何が受け付けないかというと、インターフェース。ゲーム機向けに設計されたゲーム機コントローラと違い、携帯電話は操作感、レスポンス、インターフェースの統一性という点で明らかに劣っています。

ボクもファミコン世代のゲーム開発者ですから、感覚的にはそうした主張に共感できます。
ただ同時に、世の中の一般の人たち、とくに若い人たちは、そこまでこだわってない、というのも事実だと思います。

日々つれづれ 2005-11-10

最近とみに感じるのは、今の30代(ファミコン世代)と10代(携帯電話世代)では、ゲームの手触り感に対する認識がまったく違うんだろうなあってこと。

ゲーム機のコントローラの特権性というのは、
  ●人間工学的に「ゲーム」に最適化された専用機ならではのデザイン
  ●それまでのゲーム経験による「慣れ」
の2つに依存しています。ゲーム機ゲーム開発者やゲーム機ゲーム論壇では、前者の比重が高いように言われるものの、ぶっちゃけ、実際には後者の比重がかなり高いんじゃないか、とボクは思ってます。

ブロードバンド普及後の今、子供の頃からパソコンがある家庭は珍しくありませんし、携帯電話も中学生いや小学校高学年ぐらいから持つようになりつつあります。家庭にあるコンピュータといえば、ファミコンぐらいだった世代と、若い頃から携帯電話やパソコンに触れていた世代では、当然、携帯電話やパソコンへの「慣れ」が違います。

例えば、ケータイ小説の市場。上の年代のユーザーは、携帯電話のあの小さな画面で本を読む気はしない、とネガティブな反応を示しますが、携帯電話でメールを読み書きしている若い世代ほど、抵抗感が無いようです。かくいうボクも、以前はケータイで本を読もうとは思わなかったのですが、毎日読むうちに慣れました。

また、ゲームにしても、実際問題、困るのはアクションゲームぐらいなもので、その他のジャンルのゲームは携帯電話でもさほど困らないでしょう。ドラクエはゲーム機だから100%楽しめる、携帯電話では100%楽しめない、などという人はいるでしょうか?

最初を思い出そう

そもそもテレビゲームとは何か?を考えると、それは「十字キー+ABボタン」ではなくて、単にテレビという装置が家庭にものすごく普及しているからそれにぶら下がっただけの娯楽機械なわけでしょう。であれば、今はテレビ以外にも、ブロードバンドにつながったパソコンと、個人のネットワークにおいて無くてはならない携帯電話がこれだけ普及し、生活に密着しているのですから、それにぶら下がってもいい。面白ければ、それでいいわけです。それが娯楽なんじゃないか。

昔はテレビにはコンピュータが載ってませんでしたが、パソコンと携帯電話には最初から載っているので、ハードをぶら下げる必要は無くて、ソフトを乗せればいい。ソフトメーカーがゲーム機を離れて、パソコンと携帯電話に重心シフトしていくのは、娯楽を提供する者の感覚として、至極まっとうです。家庭用ゲームはそもそも「生活密着」を基本としていたはずです。ゲームの作り手は、伝統工芸ゲーム機ゲームを守る会の会員ではないのですから。

携帯電話ゲームというのは、当初はゲーム会社の「おいしい小遣い稼ぎ」として注目されましたが、開発費も徐々に高騰し、ユーザーも増えて定着した結果、ゲーム開発者にとっての選択肢の1つとして確立しつつあります。それを今なお「ただの小遣い稼ぎ」と思っている人は、ちょっと感覚が古いのではないか。いずれ、過去のソフト資産を移植しつくした後に、フェードアウトしていくだけでしょう。
振り返れば、ファミコンだって、最初はアーケードゲームメーカーや、パソコンゲームメーカーの「小遣い稼ぎ」だったわけです。

ゲームクリエイター2.0

まぁ現在は転換期であり、過去と未来が共に存在する時期です。
そのため、「ゲーム1.0」を愛する人、その伝統を守ろうとする人の声はかなり大きいでしょう。しかし、それはいずれ小さくなっていく声です。

「ゲームクリエイター1.0」の中には、時代の変化を感じて、「ゲームクリエイター2.0」に変わった人もいるでしょう。あるいは、「いや俺はずっとこの伝統を守り続けていくよ」と「1.0」に留まる人もいるでしょう。ある程度ベテランの人であれば、それでもいいかもしれません。「1.0」が明日、明後日すぐに消えて無くなるわけではありません。しかし若いクリエイターがあと20年食っていくには厳しいでしょう。(まぁでも伝統工芸で食うってのは、そういうことですね)

ゲーム開発者はやはり、年を取っていくと淘汰されやすいのですが、なんだかんだで開発者の年齢に幅が出てきているのも事実です。ですから、全員が「2.0」である必要はありません。逆にいえば、「1.0」の伝統に縛られる必要もありません。

結局のところ、若いクリエイターにとって、「伝統」のインターフェースの上で「伝統」のゲームデザインを継承していくのが魅力的なのか、世の中に浸透しているインターフェースの上で「未知」の新しいゲームデザイン、操作系の文法を作り出していくことが魅力的なのか、ということなのかもしれません。
継承者か、創造者か。答えは人それぞれでしょう。

Posted by amanoudume at 2005年11月12日 00:06 個別リンク
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ネット*゛ャル2.0のコト
Excerpt: すっかりフェードアウト組の鶴見ではあるが、流行に追いつこうとWeb2.0とゲーム...
Weblog: 六百デザインの「嘘六百」
Tracked: 2005年11月14日 19:34

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