本の紹介を1つ。
巡回中に見かけることが多かった、話題の本が『下流社会』(三浦展)。
ゲーム市場を分析する上でどれぐらい役に立つかは保証できませんが、一般論として押さえておくべきレベルの本でしょうね。
国民のほとんどが自分を中流と意識する1955年体制から、階層化の2005年体制へと移行し、消費の質が変わるというマーケティング本。これからは商品も上流マーケティングと下流マーケティングが必要になると主張するわけだ
「下」の趣味として三浦さんが引く統計は次のようなものを挙げている。
パソコン・インターネット、AV機器、テレビゲーム、音楽コンサート鑑賞、スポーツ観戦。
どこか「下」なのか?ちょっと不思議に思えるチョイスである。
三浦さんはこれをこう解説する。
「パソコンというと『デジタルディヴァイド』と言われて、お金のある人は持てるが、お金のない人は持てず、よって所得によってパソコンを使えるかどうかに差がつき、ひいては情報格差がつく、という懸念があった。しかし、今やパソコンは接続料さえ払えば何でも手に入る最も安い娯楽となっており、低階層の男性の最も好むものになっているようである。(・・・)パソコンを所有し、それで楽しむという点では階層差はなく、むしろ趣味がパソコン・インターネットである者は『下』ほど多いというのもまた事実なのである。」
この本の要約とか感想は、優秀なブロガーの方々がすでにまとめていらっしゃいますから、今さらボクが書く必要もないと思います。
そこで、この本を読んで、ゲーム市場の場合はどうなのか?について考えたことを、グダグダと列挙してみます。
ただ、1つの記事としてまとまった文章を提示するつもりはなくて、キーワード列挙、メモ書きという形を取らせていただきます。
●TVゲームとパソコン(ネット)は共に、安価な娯楽、暇つぶしとして浸透している。
逆に言えば、この2つは時間の奪い合いをしている。これは前提。
●ゲーム市場における「上流マーケティング」と「下流マーケティング」って何よ?
●そもそもゲーム市場における「上流マーケティング」はありえるのか?
○PSX以降の「ゲーム機を高い値段で売りたい」路線がうまくいっていない
消費者は「ゲーム機はあくまでゲーム機」と捉えている
「あれだけの機能、性能があれば、○万円でも安い」という論理が通じない
PSPの値段、XBOX360の割高感、……。
○GTForceはあの値段で10万台以上売れた
「GT」はブランドタイトル。個々のソフトにプレミアムを載せる方がわかりやすい。
鉄騎コントローラも含めてよいかもしれない
(たかが1〜2万円のコントローラを「上流」と位置づけていいの? 違う気もする。要検討)
コントローラは付加価値がわかりやすい
○とはいえ、過剰な豪華版、限定版は危険 (これは「上流」マーケティングとは違うと思う)
忍氏の「「粗大ゴミ」化するだけの限定版に存在意義無し」は良い指摘
モッコスの事例を引くまでもなく・・・・。ファンは最も激しく愛してくれるが、最も怒る存在。
●「下流マーケティング」の方がわかりやすい
○中古市場
中古市場の拡大
ユーザーの求める「手頃な価格」とゲームの提供する価値が釣り合っていない
→単純に「50時間遊べるから5000円出そう」ではない。
どちらかといえば、「10時間でいいから、1000円にしてくれ」という感覚も考慮。
価格と時間と価値とボリュームの4つのバランス。
○低価格ソフト
安ければ単純に売れるわけではない(前提)
ソフトやジャンルによって、値頃感というものがある。
『地球防衛軍』は際立った
Touch Generationsの影響で、ゲームで学習するという体験が認知された
→『漢字検定』等の学習効果のあるソフトも売れている
○廉価版
Best版の方が売れた、「もじぴったん」
→パズルゲームの「手ごろな」価格は2000円〜4000円程度か
Best化が早すぎる問題
→良し悪しは市場が判断すること。
ただしシリーズのブランド力を落とす危険性があり、売上動向は興味深い
→開発コストのかかるPS3では、この傾向に拍車がかかるのではないか?
○無料ゲーム
ネットゲームは実は無料で遊べる
βテスト、フリーゲーム、アイテム課金型(ハンゲーム等)
小中学生でも自宅のパソコンでネットに接続し無料ゲームを遊んでいる
「ネットゲームは敷居が高い」はPCでは急速に過去の戯言になっている
参考:デジモノに埋もれる日々「一般向けにはもっとカンタンなモノを」のそのウソホント?