ここ1〜2年ほどの間、日米の向かっている方向の違いを実感している人は多かったのではないでしょうか。日本企業と米国企業の関心の違い、ユーザーの関心の違い、市場傾向の違い。ゲームの世界でも、ゲーム以外の世界でも、日本と米国の関心の違いが顕在化していました。
たとえば、2004年春、1年と少し前に梅田さんが書かれた以下の記事も、大いに納得できたものです。
梅田望夫・英語で読むITトレンド 「連載1周年:日本にとって米国のIT産業は絶対ではなくなった」
要旨は、日本はインターネットの「こちら側」に、米国はインターネットの「あちら側」にイノベーションを起こそうとしている、そ
こが日米の違いの本質ではないかということ。「こちら側」とは、インターネットの利用者、つまり我々一人一人に密着したフィジカルな世界。「あちら側」と
は、Googleに代表されるような、インターネット空間に浮かぶ巨大な「情報発電所」とも言うべき、大規模コンピューティング設備のことである。
日本と米国の違いは、高速ブロードバンドの普及率の違い(米国の回線は本当に遅い・・・)や、高性能携帯電話の普及率の違いにとくに顕著にあらわれています。
ゲームに関連するところでは、携帯電話ゲーム市場の大きさは全然違いました。日本ではかなり早い段階から大手ソフトメーカーが市場進出していましたが、米国では大手パブリッシャーは自社ソフトのライセンスはおこなっていたものの、自社でソフト供給はしていませんでした。
ところが最近、事情が変わってきました。米国の大手パブリッシャーが携帯電話ゲーム市場に目を向けはじめました。たとえば、EAがクアルコムと提携して、BREWベースでゲームを供給すると発表しました。EAは重厚長大〜中規模のゲームを重点的にリリースしている企業で、どちらかというと「軽い」市場への関心は薄いパブリッシャーでした。また、THQなどのほかの大手パブリッシャーも、携帯電話ゲームの配信を強化しています。
要因はいくつかあると思います。
●高性能携帯電話の普及。日本に比べればはるかにおそいものの、
時間がたてば普及する。
●据置ゲームのリスク、参入障壁が高まるにつれて、小さい開発会社
にとって、チャレンジしやすく、のし上がるための「軽い」市場が必要に
なっていた。携帯ゲーム機、携帯電話がその役割をはたす。
●日本にかぎらず、アジア市場では携帯電話は無視できない存在。
無視しつづければ、未来を失う段階に達した。
また今月、Googleがケータイ対応サイトの検索サービスを開始したのも見逃せないニュースです。といってもこのGoogleの対応は、日本の感覚からすれば明らかに「おそい」です。鈍重の極み。ただし、Googleは本社が米国にあり、日本個別のサービスや「日本が先行し、米国がおくれている分野」には、とことん「ニブい」企業です。
インターネットの「あちら」側に関心を集中させている代表格であり、「こちら」側の代表格である携帯電話への関心がもっとも薄かった企業でもあります。Googleはとてつもなく頭が良すぎるがゆえに、とてつもなくニブい一面があります(関連:人の見えないGoogleの限界)。サービス内容そのものよりも、あのニブチンが動いたことの方がはるかに面白い。
EAにしても、Googleにしても、自分たちの得意とする分野では先進的ですが、ケータイについてはものすごくニブい企業です。先鋭的な企業が未来を唱えるよりも、鈍感な企業が動き始めたという事実のほうが、米国企業の変化を示す例としてはインパクトがあります。