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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2006年07月28日

日本人はもっと自分の感覚に自信を持っていい

DSが全世界で圧勝開始

全世界的にDSが圧勝しつつある状況が見えてきました。ソニーの第1四半期決算が発表され、ついに公式に「DSに苦戦」しているとのコメントがあった模様です。
PSP販売「DSに苦戦」認める・ソニー決算会見

ソニーが27日発表した2006年4―6月期連結決算(米国会計基準)でゲーム事業の売上高は前年同期比29.1%減と落ち込んだ。携帯ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」の日本やヨーロッパでの販売不振と、家庭用ゲーム機「プレイステーション2(PS2)」用ソフトの販売数量低下と単価の下落による。
日本だけでなく、欧州での苦戦も、もはや隠し通せないレベルに達しています。
発売直後こそメディアプレイヤーとして評価され、売上は好調でしたが、iPod旋風にその勢いをかき消されましたからね。また『nintendogs』の欧州での大ヒットによって、DSが新しいユーザー層を獲得し始めたことも大きい。『nintendogs』が最も売れている地域は実は欧州なんですよね。また『脳トレ』も、日本で発売された当初のように、じわじわ売れているようです。欧州でも日本のように、ゲームに慣れていない人たちを掘り起こせるか注目です。

例えば、フランスのゲーム販売集計を見てみましょう。1位〜4位までを任天堂のDSタイトルが独占し、トップ10のうち7本がDSタイトルです。『脳トレ』が2位、『nintendogs』のダルメシアン・バージョンが3位に入っています。あれ? これ、どこかで見たことないですか? そうです、日本の週間販売トップ10とよく似ていますね。フランスは欧州の中で最も日本のアニメやゲームの人気が高い国だという点は考慮しなければいけませんが、日本の圧倒的大多数のユーザーに支持された路線が欧州でも徐々に支持を集めてきています。


北米でもDSがPSPを引き離し始めた

では次に北米の状況を見てみましょう。北米はGBAがいまだに根強く売れている地域です。去年一番売れた携帯ゲーム機はGBAだった程です。北米の売上集計では、NPDのデータがよく引用されます。NPDの集計は、海外の掲示板によく投稿されていて、2chの海外売上スレなどでログを残してくれています。
北米NPD売上集計

去年のある一時期、「海外ではPSPがDSに勝っている」というようなデマが流れたことがあります。実際には累計普及台数でDSが負けたことはありませんでした。発売当初のPSPの追い上げが凄かったことや、日本より販売が好調だったせいで、そういう誤ったイメージが広がったんですね。ここ半年の月間販売台数を見ると、5月まではほぼ互角で揉み合っていることがわかります。差がついたのは6月です。DSが59万3000台、PSPが22万1000台と圧倒的な差が付きました(NPD6月分の売上データが投稿されたのは海外のこちらの掲示板)。

いったい何が起きたのでしょうか? 簡単すぎますね。
そう、DS Liteが北米で発売されたのです。北米ではGBA SPが非常に人気が高く、そのデザインの流れをくんだDS Liteが売れるのは自明でした。また欧米人の手には小さすぎたタッチペンも、DS Liteでは長く太くなっています。ボクに限らず、多くの日本人ゲーマーが「DS Liteが出れば、北米では決着がつく」と予想していたと思いますが、まさしくその通りの結果に落ち着きそうです。


UMDビジネス崩壊

PSPの問題点は2つあります。
1つはソニーがPS3とPSPの2正面作戦を始めてしまったこと。PS3という多大な開発リソースを要するハードを立ち上げる以上、PSPに自社の有力タイトルを供給するのは難しくなります。実際、PSPの発売前からアナウンスされていた『GT Mobile』はいつまで経っても、影も形も出てきません。
もう1つは北米でのPSPを下支えしていたUMDビジネスが崩壊し始めたことです。

ウォルマートの広報はコメントを拒否しているものの売り場面積はかなり縮小しており、映画スタジオ関係者によれば(そもそも映画ソフトがなくなるので) 「完全撤退も目前」。ユニバーサルスタジオ・ホームエンターテインメントの幹部によれば「(UMDの売り上げは) ひどい。ほとんどゼロに近い。これはソニー爆弾だ」。ユニバーサルはUMDでの新規リリースを全面的に中止、またソニー・ピクチャーズもタイトルをもっと「厳選する」とのこと。
まぁ日本のユーザーの感覚からすれば、今まで売れていたのが不思議なぐらいです。UMDなんていう円盤は、先進的な日本のユーザーの目には原始的なメディアに映りました。北米のユーザーは認識が遅れていたようですが、ビデオiPodが登場し、YouTubeが爆発的な成功をおさめている状況ですから、さすがに「こんな原始的なメディア要らないね、未来は無いね」と気づき出したのでしょうね。
ここでも、日本のユーザーが鋭く最先端の動向を察知し、遅れて欧米のユーザーが付いてくる、という流れが確認できます。


過度に自信を失ったゲーム開発者は迷走を始める

2002年〜2004年頃、日本のゲーム市場が縮小し、欧米でのシェアも低下したため、欧米ゲーム開発優位論がはびこりました。たった1、2年現場にいただけの人間、一度もゲームを作ったことのない人間がもっともらしく、「欧米のゲーム開発はすばらしい。日本のゲーム開発は時代遅れ」「欧米こそゲームの中心。日本のユーザーは保守的。欧米のユーザーこそ、真のゲーマー」などと、わめき散らしていました。冷静に考えれば、失笑極まりない。けれども当時はゲーム業界に危機感が広がっていたので、真に受けてしまう人たちもいらっしゃいました。

しかし実際には、日本のゲーム市場の新しい流れが欧米にも広がりつつあります。一方、単純に欧米市場に乗り出したゲーム会社は、欧米のパブリッシャーとの競争で苦戦しています。それもそのはず。自分の好きでもない物を、違和感をおぼえるやり方で作る羽目になれば、結果など知れたものです。中途半端に欧米市場を意識して、日本のユーザーからもそっぽを向かれたゲームも出てきました。

例えば、旧ナムコの開発した『ガンダム』がいい例だと思います。おそらく欧米市場を意識して、TPS的な要素を入れたんでしょうが、そこが日本のユーザーに不評で、目標の100万本にまったく届かない売上で終わりました。また、Unreal Engineを採用した『フレームシティ』は開発中止が発表されました。欧米のゲーム開発の方法論を、よく吟味もせずに取り入れて失敗した代表例です。率直にいって、最近のナムコは欧米マンセー主義者に騙されたとしか思えない、安直な動きが多すぎました。日本有数のゲーム会社の自信はどこに行ったんでしょうか?


日本のコンテンツが再び世界を席巻する

10年前、『ポケモン』が海外進出する際、「あんな日本的な感性の作品が海外で受けるはずがない」と声高に主張した人たちがいました。ところが結果はどうでしょう? ゲームは全世界の子供たちから支持されましたし、アニメも北米で最も成功した作品となりました。

20年前、ファミコンが日本で成功し、北米に進出する際も、「コンピュータゲームの本場はアメリカ。日本の玩具が通用するはずがない」と主張した人たちがいたのかもしれません。もし任天堂がその一見もっともらしい理屈に従っていたら、今の家庭用ゲーム機の世界的市場は存在しなかったでしょう。

同じような例はいくつも挙げられます。全世界で600万本以上の出荷を達成した『nintendogs』もその1つでしょう(任天堂2006年3月期決算説明会資料)。日本でミリオンを越え、北米ではさらに売れ、欧州ではさらに驚異的な売上で、今なお売れ続けています。欧州でじわ売れしている『脳トレ』の動向も気になるところです。

日本のユーザーから支持された新しいコンテンツが全世界に広がっていく。ファミコンだってそうでした。慢心は危険です。けれども自信を失い、自分たちの立つ場所を見失うのも非常に危険です。ボクはある時期、日本のゲーム開発者は自信を失いすぎたと思います。そのせいで、おかしな欧米ゲーム開発優位論に惑わされてしまいました。ソフトが売れない時期が少々長く続いたからといって、「市場が保守的。日本のユーザーが悪い。欧米市場マンセー」などと叫び出す。その末路は知れたものです。

巨大な欧米市場は魅力的です。しかしだからといって、日本のゲーム開発者が欧米ゲームの劣化クローンみたいなソフトを一生懸命作っても仕方ないんです。自分たちが信じる、素直に感じられるものを、全世界で売れるように作り上げることが大切です。

ユーザーは適切な方向が見えているのに、一部のゲーム開発者は「見えない、俺には見えない」と叫んでいるのです。目の前にユーザーがいるのに、目をそむけています。滑稽な話です。彼らのすべき事はただ1つです。まっすぐ前を見ろ。たったそれだけで、混迷から脱け出すことができるはずです。

Posted by amanoudume at 2006年07月28日 08:50 個別リンク
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コメント

欧米の人気ゲームをただ複製しても
それは売れるはずありませんよね。
今の日本のオタク市場向けの製品を
そのままもって行けとも言えませんが
(笑)

日本人の確固たる内容のゲームを、
しかも欧米のユーザーにも楽しんで
もらえるように工夫を凝らす、
二つの手間をかけて初めて成功する
ゲームができるのでしょう。

逆も同様だと思います。
FPS系のゲームは日本でもかなり
認知されましたが、メトロイドプライムや
Haloのような評価されているゲームは、
欧米ゲームの粋を、しかも日本人が
とっつけるように日本の開発者に意見を
聞いて工夫されています。
(なんかDSのメトロイドプライム
ハンターズが予想外に売れている
ようですね。DSのファン層が明らかに
ライトばかりとは言えないようで面白い)
萌えゲーのデッドコピーなんかに
走ってないだけ、海外ゲームの適合力の
方が無駄手間を省いているのかも。
こういう努力を海外の開発者が
続けている事、それがゲームの内容云々
関係ない「欧米ゲームの力」でしょうか。
そういう点を皆が評価し、また脅威だと
いうなら話は分かるのですが・・・ね。

ポジショニングでこれだけ当初の思惑からずれたコア層に向かっていっても、
UMDがこれだけ崩壊、撃沈していても、
ゲームタイトルシェアでこれだけDSの世の中になっていても、
物作りでこれだけ魂のない追随型、リメイク型タイトルに偏っていても、

それでも4〜6月期の3ヶ月でハード202万台を全世界で売り上げ(決算説明会より)てしまう。

趨勢やシェアはともかく、スゴイビジネスなんだなと再認識しました。私の業界で200万台なんて数字はそれだけ見たら、天上の更に天上の超「神!」のような規模ですから。。。。

「プロモで対応するから無問題www」と
いう安易な発想にマーケッターが流れてしまうのも人の気持ちとして不思議ではないのかも知れません。

ま、それで利益が出てれば、ですけどね!

DSとPSP発売前から両ハードは住み分けるべきでそれは可能なハズ。
と思っていた自分にしてみればまさかここまで差がつくとは思ってませんでした。
携帯機に威信をかけた任天堂と
携帯機を舐めてかかった他社との差…と言ってしまえば簡単ですけどね。

サードの本気というのを最近見ていない(感じていない)ような気がしますね。

感覚的な意見だけで言ってしまえば
任天堂が掲げる、〜95歳までの幅広い層に遊んでもらえる
マーケティングが世界的にも通用したんだな〜と感じていますね。

まぁ、ゲーム開発の環境は基本的にオタクの世界なので、
どうしても考えや視野が狭まって
自分達の好きなモノだけしか見えないんでしょうねー。
欧米マンセーなんて言ってる開発者ってネタ尽きてるの分かってて、
あちらの舞台で「俺達の作ったモノ、スゲーだろ」
って、
後ろから空き缶やゴミとか投げつけられながらも
自慢してる人にしか見えないですわ。

>Mrbさん
おっしゃる通りで、さすがにこれだけの台数になってくると、コア
ゲーマーもかなり所有していると思います。


>ぶらりんさん
そうですね。なんだかんだいって、ゲーム機もゲームソフトも、
世間の水準からすれば「売れている」んだと思います。だから
逆に危機感がきちんと機能しにくい面があるのだと思います。

>BAN/ さん
振り返ってみると、任天堂もソニーも実は住み分け戦略を取って
いないんですよね。任天堂はプレイやん、ブラウザー等を出して、
「PSPにあってDSにないもの」をDSに加えていきましたし、
ソニーも途中からは『カズオ』『LocoRoco』などのライト路線を
押し出すようになりました。

>Albelさん
ですね。いくら文化が違うとはいっても、幅広い層に遊んでもらう
姿勢そのものが全世界で通じる/通じない、という論点はそも
そもおかしな話ですから。

ただ、変化の表れ方が違うのは確かで、日本はかつてのファミ
コンブームでゲームを一度楽しんだ人たちが多かったことや、
中高年のユーザーも比較的柔軟な方々が多かったということ
でしょう。流行りに弱いという見方もありそうですが。

欧州は比較的ゲームの弱い地域ですから、ゲームに対する
固定観念が弱いように感じています。それが効を奏したのかも。
EyeToyが200万台以上売れたのも欧州市場ですし。

北米は「ゲーム」というものについての固定観念が強く、比較的
変化が遅く現れている地域だと思います。日本でも変化を受け
入れていないゲーム業界人は当然「北米、北米」といっている
わけですが、実際には市場の縮小も表面化しましたし、レッド
オーシャン化が進んでいるように思います。

DSのマーケットも最初は青くても、いずれは赤くなる、という見解も
ありますが、それはその通りなのですが、だからといって元の
赤い海に留まる怠惰の言い訳にはなりません。結局、常に青い海
を探し求め続ける姿勢が大切だということです。

小手先の理論で、欧米ゲーム開発優位論を唱える輩は、今は
減ってきたように思いますが、さっさとフェードアウトしてほしい
と心の底から思います。

日本人の感覚でソフトを作っても仕方がない、日本人の感覚は
欧米では通用しない、とわめく日本人は、ちょっと理解不能です。
まぁ傲慢は危険で、何も努力をしなくても通用するというような
考えを抱くと、どうしようもないのですが。しかし肝心の自信を
失っても仕方ないんですよ。

ソニーはよくわかりませんが、UMDで
稼ごうとし過ぎていると思います。

例えば、「ロボコップ」ですが、
DVDだと今は1,479円、旧価格でも
3,129円です。

http://www.tsutaya.co.jp/item/movie/ve_ks00000001.zhtml?pdid=10007772&srkbn=S

ところがUMDだと3,990円もします。

http://www.jp.playstation.com/shopping/Item/1/6177289.html

DVDとの価格差が開きすぎです。
DVDは、DVDプレイヤーでTVで見たり
パソコンで見れますが、UMDという
限定されたメディアで画面の小さい
PSPでしか利用出来ない。

その割りにDVDより数段割高です。

「ロボコップ」という旧作でさえこの
価格差で売れる訳がないと思います。

本体の赤字(?)分をソフトで回収
しようと思っているのでしょうか?
消費者をなめているとしか思えない
価格設定だと思います。

PSPでしか使えないという事を考え
なおかつ普及させたいのなら映像
ソフトに限り1,000円くらいに単価を
落とし薄利多売をした方がよっぽど
儲かると思うのですが。

> 振り返ってみると、
> 任天堂もソニーも実は住み分け戦略を取っていないんですよね。
> 任天堂はプレイやん、ブラウザー等を出して、
>「PSPにあってDSにないもの」をDSに加えていきましたし、
> ソニーも途中からは『カズオ』『LocoRoco』などのライト路線を
> 押し出すようになりました。

確かに済み分けは打ち出していませんね。
企業として勝手に幅を狭めるのは得策ではないですし。

ただ、上記の例でも言えるのは、
基本路線はブレずに拡張しているのが任天堂で、基本路線も定まらずに拡大しようとしているのがソニーであり、
その姿勢の違いが大きく明暗を分けているのだと思います。

ひと昔前のソニーなら「ニーズは我々が作り出して見せる」位の力と自信があったハズで、
ソニーファンはそういった姿勢に共感して付いていったと思うのですが。

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