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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2005年01月10日

嗜好の細分化の果て・・・そして「超ニッチ市場」の誕生?

超ニッチ市場の誕生
ここ数年、エロゲー分野において、商業市場と同人市場の境界が薄れてきています。 同人ソフトを扱うショップの増加、オンラインの通販サイトの増加にともない、ここ数年で同人ソフトは簡単に手に入れられるようになりました。単純に認知度 と流通量が増加し、一定の市場を形成するようになりました。 さらにはTYPE-MOONの「月姫」の成功によって、作品的な認知度が急激に高まったのも大きいでしょう。商業作品を越えた人気、クオリティの作品が生 まれたわけです。TYPE-MOONは「Fate/stay night」以降、商業市場に移行し、冷え込みつつあるエロゲー市場にて、10万本以上の売上を記録しました。また、シナリオライターの奈須きのこ氏の執 筆した同人小説「空の境界」を講談社が出版したところ、50万部を突破(トーハン調べ)。ライトノベル市場において、ダントツの売上を記録しました。 今年は07th Storming Partyの「ひぐらしのなく頃に」の台頭も大きなニュースでしょう。夏前にWEBサイトで体験版を公開したところ、多数のアクセスが殺到。夏コミを経 て、認知度が急上昇。ショップでの取り扱いも開始されました。すでに第2のTYPE-MOONともいわれています。 また、乳之書さんが「ボリュームインフレーション検繕界の消失」にて、同人市場の台頭の要因を分析されています。嗜好の細分化によって、商業作品では埋めきれない「嗜好の隙間」をぬう同人作品が売れるようになってきたようです。

> CGボリュームは商業ソフトのロープライス商品にも及ばないが、「パイが少ない」
> として商業ソフトが手につけない、「フェラチオ単体」「ぶっかけ単体」といった
> マニアックな性的嗜好へと特化し、ユーザーから高い評価と満足を勝ち取った。

同じことはAV業界でも起きているらしく、微妙な嗜好の隙間を埋めきれない大手アダルトメーカーと違い、マニアックなニーズを満たすインディーズが台頭しているらしいです。嗜好の細分化によって、商業作品では狙いにくい「超ニッチ市場」が生まれているという点は注目に値する現象でしょう。

ゲーム市場を理解するキーワード「嗜好」
話をコンシューマーゲーム市場に移します。 売れるソフトと売れないソフトの差が開いている現状は、多くの方が認識されているとおりです。ブランドを維持しているソフトは売れていますが、そうした+ αの要素をもたないソフトはますます売れなくなっています。要因はいくつかありますが、その1つはユーザー側の「嗜好の隙間」を埋められないことです。ク オリティよりも、ブランドや、細分化する嗜好にどれだけフィットしているかがゲームの売上に影響するようになってきました。 (例えば、PS1の頃に比べて、ファミ通の期待のソフトランキングと実際の売上が一致しなくなっていたり、レビューの点数が売上にほとんど影響を与えなく なっています。) 去年は日本のゲームが欧米で売れなくなっていることがますます実感させられる1年でした。まず欧米のゲームのクオリティが上がってきて、クオリティの差が 売上におよぼす影響が大きく減りました。日本のゲームと欧米のゲームでクオリティが変わらなければ、あとは嗜好性が影響するようになります。 カプコンは名古屋、東京と日本の開発スタジオを閉鎖して、かわりに欧米の開発ラインを増強しました。辻本社長がかつて口にした「日本人でもハンバーガーは 作れるかもしれないが、アメリカ人の口に合うハンバーガーが作れるとは限らない」という言葉はなかなか印象的です。 つまり、日本でゲームが売れないのも、欧米でゲームが売れないのも、要は作り手がユーザーの「嗜好」にフィットした作品を作れなくなっているほど、嗜好の細分化や先鋭化、地域化が進んでいるのが要因といえます。そしてユーザーの嗜好に合わない作品は売上を落として、会社が傾いたり、潰れたりして、開発者が流出しています。
変化しつつある開発リソースの形
そしてパチスロ、携帯電話などのいわゆるTVゲーム機以外のゲーム市場が、養いきれなくなった開発リソースの受け皿として機能してきました。とはいえ、非 ゲームのソフトウェア企業、一般企業への流出もかなりありました。 また、数年前のエロゲーバブルの時期には、コンシューマーからエロゲーに移行した会社、開発チームはかなりありました。もっとも、エロゲー業界に移行した 会社の大多数がコンシューマーの経済感覚で金をかけすぎて、すぐに消えていったのですが(なにしろペイラインが1桁は違っていましたから)。エロゲー市場 が冷え込むと、今度は同人市場に移行する会社や開発チームが増えてきました。 例えば、TYPE-MOONの竹内氏はコンパイルの経営破綻後、奈須きのこ氏と共に同人サークルを立ち上げました。他には、プロの開発者がゲーム会社を辞 めて一般企業に勤めながら、同人ゲームの制作を続けるケースもあります(例えば、LANGuexの 深沢氏。現在「True Color」を制作中)。 90年代後半コンシューマーに集中していたゲーム開発のリソースは、この数年で外へ拡散していきました。 また、正社員からフリーや派遣社員になった人もかなりいます。もっとも、派遣社員の比率が増しているのはゲーム業界に限らず、日本企業での一般的な現象で す。不況期に企業は固定費(特に人件費)の圧縮をおこないましたが、その後も継続的に正社員の人数を抑える傾向にあります。正社員+派遣という人員構成 や、中国などの安い地域へのアウトソーシングは、ますます浸透していくでしょう。
あるいは遊軍的開発リソース?
さらに今後どうなるか。 漠然としたイメージとしては「本隊+遊軍」という構成に徐々に移行していくんじゃないかと思います。遊軍の比率は少しずつ増えていくのでしょう。 まず、一生プロのゲーム開発者を続けていく人口はかなり減っていくんじゃないかと思います。日本のゲーム業界がますますシビアな状況に追いやられ、会社が つぶれ、フリー、派遣社員が増加し、中国へのアウトソーシングが増えるためです。雇用できるキャパシティはおそらくまだ減るでしょう。 また、若い時にしかゲーム業界で働かない人はもちろん、アマチュアでゲームを作る人、一般企業に転職した後にゲームを作る人、同人に移行してゲームを作る 人が遊軍的な開発リソースとして、存在感を増していくのでしょう。 遊軍的開発リソースについて、もうちょっと書きます。 ゲーム業界の長期的な課題は、ユーザー側の細分化、先鋭化する「嗜好」にフィットするコンテンツを作れる制作・供給体制を確立することです。市場が大作路 線と軽量路線に分化する中、軽量を突き詰めていくと、この記事の冒頭にのべた「超ニッチ市場」にいきつきます。ただ、個々のソフトの数量を考えると、あま り大きな会社には向いてない。そうなると、同人だとか、あるいはネットのFLASHやShockwaveの制作者から、何か生まれてくるのかな、と思いま す。「ZOO KEEPER」という先例もありますし。 橘寛基のGamersta 第29回 お金はなくてもゲームは作れる!す でに成熟しているという点で同人は優れていますが、ジャンルの幅が狭く、エロと萌えに集中しすぎていますから、最大値は見えた世界でしょう(もっともエロ は嗜好性が最も細分化されているジャンルだから、超ニッチ市場が誕生しやすかったのですが)。となると、ネット上でのフリーゲーム、FLASH文化といっ た領域から、可能性のあるコンテンツを発掘していくことになると思います。SIMPLEシリーズのような形で、パブリッシャーがすでに完成したゲームを買 い取って、多機種展開する流れでしょうか。 ただ、単純にネットの表層に浮かんできたものを拾い上げていくだけで市場が回るかというと、かなり難しい。少なくとも出版社と作家(1人〜数人)ぐらいの 関係が維持できないと厳しい。かといって出版側に作家を継続的に雇用する負担とリスクはない、というような。そこら辺の仕組みが現時点で不足しているん じゃないかと思います。 アマチュア層から吸い上げる形の商品開発はこれまで何回も試みがあったものの、あまりうまくビジネス化されてません。また、軽量路線も市場として育ってい るとは言いがたい状態にあります。牧歌的な楽観論だけではブレイクスルーには至れないでしょう。まぁ、そもそもこれが「解」ではないという可能性もあるわ けですし。 確かなのは、嗜好の細分化が多品種、短期間の制作を後押ししているということ。そこをビジネス化する「ブレイクスルー」が必要ということでしょう。 Posted by amanoudume at 2005年01月10日 00:48 個別リンク

コメント

何らかのパラダイムシフトが必要と強く感じるものの、
なかなか良いソリューションが見つからないのが現状ですよね。
今後のさらなる考察も楽しみにしています。

本文に対して話題が飛躍しているため適切なレスとはおもえませんが、いわゆる「正社員切り」の人件費圧縮のため、個人ベースにおいてゲームにかけることの
できる費用そのものの減退が生じているような気がします。
同人ゲームは同人誌にくらべ、商業ベースのものより安価に入手することができ、評価されたものは商業一般に出回っているものよりも「質」が高い。
また、少人数での開発ノウハウが蓄積されている、ノベルゲー、STG、格闘ゲー、は対応の柔軟さから同人ベースのものが増えていくと思います。
ゲームは時間消費型娯楽ですから、本人に十分な余暇時間と資本がなければ成立しえないものです。人件費等の圧縮の結果が縮小再生産にならないことを望みま
す。

 今回も、興味深く見見させて頂いております。
 本質的な流れとしては、細分化の進行による負担コストの低下と其れによる常時の人材の抱え込みが不可能になる、と。今必要なのは、ハーレクインロマンス
を即時にゲームとして2人月以内のコストで落とし込めるような、定型的なソフトを極限まで低コストに落とし込める試みと、アニメよろしくプロデューサーと
出資者のような「モード論」によるゲーム製作のための枠組みと言う事なんでしょうね。
(アメリカは大作嗜好が強いと推定されるのですが、この国も、やがては日本と同じ状況になるのでしょうか興味深いです。)
追記:管理人様はGDCに出られる予定はあるのですか?

市場の二極化という流れの中で、ブランドが物をいうタイトルはもちろん
存在しますし、大作路線の流れも残るでしょう。とはいえ、ここ数年
起こっていたようにタイトルの選別は今後も続いていき、大規模な
タイトルは絞り込まれるのではないでしょうか。
二極化の流れの中、中規模のタイトルのジリ貧化は避けがたい
傾向です。とりあえずは信者ゲーム化というかファン層を維持する
ような流れが顕著ですね。
その結果、従来オタクっぽくなかったゲームがオタク向けゲーム化
していくんでしょうね。実際、「シャイニング」シリーズのキャラデザとか、
ワイルドアームズの「3」以降のアニメゲーム傾向とか、いくつも例は
挙げられますね。中規模タイトルは、沈まないように必死にバタ足
しているのが現状だと思います。
北米は大作路線が強いものの、一方でロープライスのマーケットが
日本以上に存在しますから、EAなどの強大なパブリッシャーに対して
日本のパブリッシャーが短期間で地歩を築くには、低価格なソフトライン
ナップを揃えるのが有効かもしれません。去年、低価格攻勢をかけて、
セガスポーツがEAに一矢報いたのは記憶に新しいところです。そこら辺に
可能性があるのかな?という気はしています。
とはいえ、アメリカは根本的に映画の国ですからね。TVの国の日本ほど、
軽量路線市場が成長するとは思えない。「メイドインワリオ」が日本では
ライトユーザーを掴まえて成功したのに対し、アメリカではほとんど
売れていないことは日米の傾向をよく表していると思います。
例えば、日米で成功したDSも、日米の展開はかなり異なっていましたね。
日本ではタッチパネルと「ワリオ」を先頭に押し立て、定番のタイトルとして
「マリオ」をバックアップ的に展開していましたが、北米では有力なFPS
タイトル「メトロイド」を同梱し、「マリオ」の広報的な存在感も日本より大きい。
北米は定番もの、続編ものがいまだにかなり強い保守的な市場です。
どちらかというと、日本のほうがゲームに「飽きて」きている印象があります。
近年の体験ゲームブームや、DSの成功(タッチパネルへの関心の高さや
ピクトチャット人気など)、といった現象を考えても、新しい市場のチャンス感が
生まれつつあると思います。「電子玩具」としてのゲームというものが
見直されている時期ではないでしょうか。

書き忘れてましたが、GDCに行く予定はありません。

FLASH文化からのゲームといえば、海外で ALIEN HOMINIDが発売されましたね。
元々 FLASHのアクションゲームとして公開されたものが、
http://newgrounds.com/portal/view/59593
PS2、GCに移植されています。
http://www.alienhominid.com/
ゲーム自体は、ごく普通の 2Dスクロールアクションですが、
ダイナミックな動きやタイムコントロールをデザイナで完結して調整できる という意味では、
FLASHで作りやすかったろうなぁ、と思います。