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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2004年10月14日

日増しにリアリティをおびてきた新時代の天下二分の構図

ゲームショウ前後での最大の変化

PCが不調で、東京ゲームショウの前後、更新できなかったのがとても残念。それはさておき、ゲームショウ以降、日本国内での最大の変化はPSPの前評判だろう。いまやPSPはPSXの二の舞になりそうだ。すでにネット上の下馬評を見ていれば、ほぼ確定事項として語られている。

ゲームショウは任天堂が出展しないから、当然PSPの情報が多く、自然とPSPが盛り返すはずだった。実際、ボクもそういう予想をしていた。

ところが実際は逆で、ショウ前の戦略発表会直前に任天堂の先制攻撃を食らって以来、評判は落ちる一方だ。ネットユーザーだけでなく、メディアも白けた思いを隠さない。「空白の17分間」などは代表例といえる。主要なゲーム系サイトはほとんどが、PSPをスルーあるいは失望しているか、様子見を明言している。こちらのコラムなどでも、PSPは様子見、DSのほうが有利、という見解である。

なぜこんなことになったのだろうか?

「ハッタリ」と「デタラメ」の区別がつかなくなったソニー

会場では、ゲームがUMDで動作しておらず、ハードの完成度に不安を残したばかりか、コンパニオンが1時間半に1回バッテリーを交換していたという話が広がり、バッテリーに対する不安はますます大きなものになった。しかもこれはドライブを回さなくていいハードでの話だ。

ゲームの完成度も、ほとんどがかなり低い上、「PS2並み」と謳われた描画性能は、3Dゲームの実画面映像でしょぼさが露呈してしまった。なまじハッタリを語っていたばかりに、どのゲームもショボいだの、カクカクだの、といわれてしまった。出展前後で、2chでゲーム開発者のBLOGが注目を集めたりもした。ほかにも情報は流れている。現実がみんなの目に見えてきた。

消費電力を抑えるために処理能力を上げられないのか、いつの間にかハードの設計が変更されていたのか、ソフトの開発が間に合っていないのか。どこら辺に真実があるかはさておき、どこにあろうとも、ろくでもない理由なのは確かだ。
なるほど、なるほど、確かにゲームショウはPSPの話題でもちきりだった。
どれも悪い話題ばっかりだが。

「PSX」のスペックダウン発表後、ネットを中心に悪評がまたたく間に広がっていった、あの去年の出来事が頭をよぎったのはボクだけではないだろう。結局、ソニーは去年のあの大失敗から何も学んではいなかった。「PSP」発表当時と最近では、明らかに空気が変わっているのに、それを読めなかった。

「ハッタリ」は有効だが、「デタラメ」は通用しない。そんなことさえ、わからなくなってしまっていた。「PSX」でデタラメっぷりを露呈した以上、「PSP」も当然ユーザーは厳しい目で見る。「デタラメ」か「ハッタリ」かを見抜こうとする。みんなの頭にはまだ「PSX」の失敗が残っている。隙を見せれば、悪評が沸き起こるのはわかっていたことではないか。

不安要因の高まるPSファミリ

PSPの立ち上げが遅れたり、価格競争が激化すれば、ソニーはつらい状況に追い込まれる。なぜなら来年には次世代据置機が立ち上がろうとしているからだ。マイクロソフトは据置機のみに集中し、PS3よりも万全の体制で立ち上げを図ろうとしている。日本では、XBOXの大失敗が頭にあるから、XBOX2といっても気に止めるユーザーはほとんどいないが、北米ではかなり浸透しているし、いまや月間売上でPS2を抜くこともある。市場および業界での存在感は確立しつつあり、「次はもっと伸びる」との下馬評は日増しに高まっている。

PS3の最大の不安要因はBDの採用。よりにもよって、という感じである。PS2はDVDの普及直前だったから、ユーザーへのアピールは大きかったが、PS3は今のところBDの普及のはるか前に立ち上がる予定だから、ユーザーにとっては「何それ?」状態。そもそもHDTVの普及が進んでいないのに次世代DVDだけ先行して、説得力をもつのか?というと、かなり疑問がある。

そもそもビデオデッキからDVDへの置き換えは、たいていの消費者にとってわかりやすかったが、DVDから次世代DVDへの置き換えはわかりにくい。CDが結局CD以上のディスクメディアに移行できないでいる例を思えば、なかなか難しいのではないか。iPodのようなまったくあたらしい形態への移行なら、説得力をもつのだろうが。

また、BDを積むとなると、規格をめぐる攻防、生産体制の確立、コストの問題などで、スケジュールが遅れる可能性が高い。2005年末というのはかなり怪しく、2006年前半という予想さえ裏切って、2006年末というシナリオさえありえる。いくらなんでも投入時期があまりに遅ければ、それだけで致命傷になりかねない。
普及期の前に積む以上、当初はコスト高も覚悟しなければならない。マイクロソフトが現行DVDを使い、かつ低コストを意識してXBOX2を設計しているから、価格競争を強いられると、非常に厳しいことになる。

次世代機で求めるのは「低価格」で、複合的な機能には否定的な意見が出ている中、BDを搭載したからといって、それだけでPS3をXBOX2よりどれだけ高く売れるのか? PS2は米国では299ドルからスタートしたが、マイクロソフトがもしもXBOX2を199ドルでスタートしたら、PS3ははたして299ドルでスタートできるのか?
ソニーがそういう状況をすべて読みきって、ハード戦略&コスト戦略を組んでいるなら、たいしたものだが、案外ずさんなことは、あのPSPの戦略発表会の醜態を見ればあきらか。

日本市場が縮小し、北米市場の巨大さに注目が集まっている現状では、北米でのシェアがプラットフォームの生死を分かつ。日本のゲームマニアが1台もXBOX2を買わなかったとしても、世界戦においてマイクロソフトがソニーを倒すシナリオは十二分にあり得る。日本の市場はもはや相対的に小さなもので、日本のソフトメーカーも大半が北米優先で動き始めている。

そもそもPS3は、その投資額の巨大さによって、PS2並みに売れても回収しきれるかどうか怪しいプロジェクトだ。PS3以外のさまざまな家電、AV製品に組み込むという目論みがうまく転がればいいが、「PSX」の大ゴケ以来、メディアや市場の不信感は根強い。PSのチップを積んでいることがプラスに働くどころか、逆にネガティブな印象を与えかねないのが現状だ。

自ら二正面作戦を始めてしまったソニー

ソニーの思い描いた夢は「携帯機と据置機の両方でPSシリーズを成功させ、SDとHDの娯楽を完全に制する」ことだ。だが、それは裏を返せば、「携帯機と据置機の両方に戦力を分散させ、価格競争のリスクを倍増する」ことでもある。その結果、携帯機は任天堂に守りきられ、据置機はマイクロソフトに市場を奪われる。天下三分の計ならぬ、「日本が携帯機を、米国が据置機を制する」という天下二分の構図。はたしてどちらの未来が現実になるのか?

PSPを発表した直後は、誰もがソニーの夢が具現化する可能性が高いと感じただろう。
ところが、夢は日ごとに色褪せていき、PSXの壮大な失敗、E3での出展内容の貧弱さ、東京ゲームショウでの失態の連発をへて、もはや成否は50対50。いや、人によっては成否は4:6ぐらいと見ているだろう。そして今なお、ソニーは夢を具現化できるという材料を打ち出せていない。

まあそんな訳で、ゲーム業界はまだまだまだまだ、激動が続きそうである。それにしても、もしマイクロソフトが据置機で天下を取るようなら、据置機の2世代交代説(FCとSFCが任天堂、PSとPS2がソニー)が真実味をおびてしまうなあ。それよりなにより、映画などのハイエンド・エンターテイメント(据置機)は最終的に米国が強く、日本はよりミニマムなエンターテイメント(携帯機)が強い、という構図がゲームの世界でも確立してしまう。これもまた文化的必然なのであろうか?という思いも少し。

Posted by amanoudume at 2004年10月14日 00:17 個別リンク
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コメント

21世紀のウォークマンの正体はなんとmp3プレイヤーだった!!!
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20041014/psp.htm
れ? 音楽と映像が楽しめるUMDは?
最近、急に露骨な提灯記事が増えているのが失笑。。。これぐらいしか打つ手が無いんだとしたら、ほんとお寒いですな。

PSPは何もかも中途半端ですよね。
生き残る道があるとしたら
ソニーですら想定していない使い道が見つかった場合くらいじゃないでしょうか。
超低価格カーナビとして普及する、みたいな(w

PS2並みのソフトが動くって、いっても、PS2並みにほしいソフトが出るわけじゃないんだよね。
実際、ほとんどのソフトメーカーが様子見でしょ。スクエニがいまだに何も発表していないのがいい証拠。メタルギアもわけわかんないカードゲームになってる
し。まともなのリッジだけじゃん。
ソフトメーカーにも実態を見抜かれてるよね。初期需要で売り逃げして終わりじゃないの?

今のSCEは、作った半導体工場を埋めるために、新製品を作っているようなもん。本末転倒。
PSPの狙っている層は、音楽聴くならiPod
mini買うし、ゲームやるなら携帯電話で済ませちゃう層。デザインもそっちのほうがよっぽどいい。ディスクでゲーム起動してって、ぜんぜん手軽じゃない
し、古い感覚だよな。

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