2004年まで北米のゲーム市場は拡大を続けていました。ゲーム開発のレベルも上がってきて、ゲーム大国の座は日本からアメリカに移ったと真顔で語る業界人もいたほどです。もっともその幻想は、北米のゲーム市場の縮小や、E3の大幅縮小といった出来事によって、こっぱみじんに打ち砕かれました。
また、XBOX360が日本だけでなく、英国を除く欧州でも不調です。
欧米制覇の見込みは薄く、シェアを築き上げられるのはおそらく米国と英国に限定されるでしょう。そのため「世界市場を考えれば、XBOX360が有利」という論理は崩壊しつつあります。
かつては日本にも、ハードが高く、対応ソフトが少ない時点でも積極的にゲーム機を購入するユーザーが多数いました。また欧米でゲーム機が発売されるまでに半年、1年のタイムラグがあり、日本のソフトメーカーは欧米のソフトメーカーよりも先行して開発し、日本のユーザー相手に開発資金を回収した状態で、欧米市場にソフトを投入することができました。
しかし日本では「ゲーム離れ」が進行し、最初はライトユーザーが離れていき、次いでゲーマー層の消費も落ち込んでいきました。新作ソフトの売れる期間はますます短くなり、長時間かかるゲームはマニアでも敬遠するようになりました。
2000年〜2005年、日本でゲーマー層の購買パワーが落ち込んでいた間、北米では購買意欲の高いゲーマー層がソフト市場を支えていました。その結果、北米では従来のゲームをより良く、より大規模に作る技術が発達しました。それは新清士氏のこの記事で言及されているとおりです。
「クリエイター」と「ディベロッパー」、日本のゲーム技術者の進む道は
単純にいって、日本では米国よりもクリエイターが多く、米国では日本よりもディベロッパー体質の開発チームが多いです。北米のゲーム産業は多数のゲーマー層に支えられ、「ゲーマー大国」に特化しました。しかしその結果、非「ゲーマー大国」からは乖離してしまいました。
米国ゲーマーに特化したゲーム機であるXBOX360が日本でも欧州(英国除く)でも不調なのが、その証拠です。日本はゲーム離れが進行していましたし、欧州はそもそもゲーマー層が多くない地域です。
欧州はゲーム機の普及が最も遅れている地域で、ゲーム人口が少ないんです。またゲームに対する固定観念が薄いから、ユニークなゲームが大ヒットする市場が存在します。PS2の『EYE TOY』は200万台以上売れていますし、『nintendogs』が300万本以上売れています。
世界的に見て米国ゲーム産業の影響力が限定的になっているのは、あまりにも「ゲーマー大国」に特化したせいです。ゲーマー大国に特化しすぎれば、非ゲーマー大国で存在感を失い、非ゲーマー大国に特化しすぎれば、ゲーマー大国でのシェア争いに不安が出ます。1つの潮流に特化しすぎることなく、バランスよく2つの潮流を制することが大切です。そしておそらく、それが可能なのは日本だと思います。
Posted by amanoudume at 2006年10月22日 00:35 個別リンク
コメント
なるほどゲーマー大国ですか、より的を射た表現ですね
日本は市場低迷も経験し特化しすぎるリスクも学んだし、
DSヒットに新鮮な作品での爆発力も確認できたし、
よりいいバランス感覚もみせてほしいです
あとなぜ北米がゲーマー大国になりえたかの理由も考えてみますが
スポーツ物の毎年恒例のバージョンアップは選手入れ替えの必然性がある
TVドラマなどで昔ながらの長寿ジャンルが確立しつねに安定需要がある
(軍事、超能力、現代魔女、宇宙SF、ファンタジー、科学捜査、医療現場、無人島とか)
考えると、日本はゲーム以外にTVや漫画などの作品も
ヒット作の便乗乱発して、枯れればポイ捨てがデフォですね
メディアミックスなどは1作品だけで完結するんじゃなくて
1ジャンルを育てる方向性がいいですね
投稿者: lagr | 2006年10月23日 17:13
欧州は昔からゲーム盛んですよ。
PCなり、ボードゲームなり有名どころがいっぱいあります。
端的に言って日本からの視点が"ファミコン"に偏りすぎてるんですよ。
北米も、欧州もゲームの歴史はファミコン以外のファクターが多かっただけのことです。
まず、家庭用コンソール以外のゲームを知らないと、欧米のゲーム事情云々は語れないと思いますが、
一体、日本人は具体的なタイトル名をどれだけ挙げられるでしょうか?
投稿者: Miu | 2006年10月23日 23:30
>: Miuさん
欧州でもマニア層が古くからゲームをやっていたのは確かです。
問題は一般層を巻き込んでいたかどうかです。
欧州で一般層が(少し)ゲームをやるようになったのは、ソニーが
PSを浸透させてからのことです。
マニアックな知識を持つ人はしばしば、向こうのマニア層(マニア市場)を
巨大なものと考えがちです(笑 アニメオタクが日本のアニメが米国で
(興業的に)大ヒットしていると思い込んでいたのに似ていますね。
カルトな人たちだけ見て語っても無意味です。
洋ゲーマー(?)にありがちな思い込み解説、ありがとうございました。
人口に占めるゲーマー層は少ないのが欧州の実態です。
投稿者: DAKINI | 2006年10月23日 23:42
「ゲーマー」に関する面白い議論ありがとうございました。
「ゲーマー」をどういうプロファイルとしてとらえるかでかなり違うんだろうなあ、と思います。欧米の間でも「ゲーマー」層の正体はかなり違うのではないかしら。
欧米の温度差でいうと、「ゲーマー」以前に家庭に持ち込む電気機器への認識、ってところでもう全然異質です。「ゲーム機」をなんと見るか、という以前に。ゲーム機も一応電力を消費する家庭電化製品ですからね!
ヨーロッパに行くと、これ自分は笑っちゃったんですが、「壊れるからテレビ使うな」「電気使うから電灯つけるな」「ヒューズ飛ぶからエアコン切れ」なんです。目的と手段がひっくりがえるなんてことはザラw
建物自体が古くて、アパート(といっても日本みたいな2階建てくらいのやつではなくて、街の中にあるふるーい石造りの3〜5階建ての建物です)のような共同住宅だとADSLが使えないくらいに構内電話線が劣化していたり、変圧器がおいてない(置けない)ので一戸あたりの電気容量がやたら低かったり(昔の日本住宅もそうでしたけど)。あととにかく1世帯野中にあるコンセントの数が恐ろしく少ない。。。リビングに一つあったらもうおしまいとか。。。。日本のワンルームマンションの方がよほど電化生活向きですよ!
欧州でコンシューマーゲーム機の普及が日米欧で一番遅れたのも、オンラインゲームがはやらない理由の一つも、この電化製品に対する意識の違い、電化インフラの遅れと言われました。ゲーム機は電気を使うから買わない!だからコンシューマーゲーム機は家庭に入らない(今では入らなかった、という過去形が正しいですね)。PCは使うときだけつける。だから常時オンなオンラインゲームが生活のモードになかなかならない。
欧州で「ゲーマー層」という話を持ち出すとボードゲームが、、、という話が出てくるのは、ボードゲームなら電力を消費しない、という彼らにとってはまじめな環境(?)意識(??)、というかこういう住環境の違いがあってのことだと思いますw
ゲームという趣味の領域は生活文化の影響をもろに受けるので、こういうところでも欧州、北米、日本の差異が現れているのでしょうねえ。
投稿者: ぶらりん | 2006年10月26日 08:33
>ぶらりんさん
欧州は英国と大陸側でまず2つに分けて考えるべきとよく言われますね。
さらにいえば、各国の違いもやはりあって、例えばフランスは日本
びいきですね。子供の頃に日本のアニメを見て育った世代が30代に
なっていて、市場的にも業界的にも影響力を持っています。フランスは
そのせいか、和製RPGが割と売れるみたいですね。
欧州はユニークなソフトを受け入れる土壌がある、と何度も書いていますが、
それは過去のソフトの売上傾向から見てもいえますし、実際、欧州の
ゲーム業界の要人もWiiが勝つと予想しているみたいですね。
(HD、フルHDテレビの普及が最も遅いといわれているだけに、
XBOX360もPS3もその性能が過剰すぎるという見方もできるかも
しれません)
ゲーム開発会社とパブリッシャをつなぐ「Game Connection」の運営者が語る,その開催主旨とEUゲーム市場
http://www.4gamer.net/news.php?url=/news/history/2006.09/20060926152528detail.html
カルド氏:
価格が1番安く,開発もしやすいWiiの評判がいいですね。多くの人は任天堂がこのプラットフォーム戦争に勝つと思っていますよ。プレイステーション 3は,ヨーロッパでの発売日が2007年3月に延期されたこともあり,ソニーは苦戦すると考えられています。
投稿者: DAKINI | 2006年10月26日 20:20