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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2006年10月17日

動き出したディベロッパーたち

日本のゲーム市場が拡大に転じたことや、次世代機が立ち上がりつつあることで、ディベロッパーの動きも活発になってきました。単純に仕事が増えているからです。そしてつい最近、開発スタジオに関する面白い動きがありました。1つはクローバースタジオの解散、もう1つはレベルファイブのパブリッシャー化です。

■GameWatch:カプコン、子会社「クローバースタジオ」を解散
クローバースタジオは硬派なクリエイターが揃っているというイメージがある一方で、最近ヒットを飛ばしていません。『ビューティフルジョー』『大神』『ゴッドハンド』等の新作にしても、コアゲーマーの評価が高い割にソフトの売上は今ひとつです。採算性の悪いスタジオを維持している余裕はカプコンにも無いでしょうから、解散の発表は意外でも何でもありません。

クローバースタジオ所属のクリエイターが辞めていたことも明らかになりましたが、解散が先に決まっていたのか、クリエイターの流出が引き金をひいたのか、その辺りの事情は不明です。

ただ、業績以外にも、三上氏、神谷氏、稲葉氏がカプコン(クローバースタジオ)から離れる理由はあったと思います。ゲーム系商業メディアはどこも書いていませんが、カプコンの内部がゴタゴタしていたのは公然の秘密です。カプコンはかつては数人の著名クリエイターが並列で、各開発部を率いていました。しかし色々あって、開発は稲船氏が掌握する体制になりました。その後、稲船氏と対等だった各開発部のリーダーの大半は、カプコンを離れて独立したり、分社に移っています。そのため、クローバースタジオの設立当時から、三上氏や神谷氏といったクリエイターの「追放先」「隔離場所」という黒い視点が業界内には存在しました。

そんなわけで、今回の解散はあまりポジティブな出来事ではありません。
しかし次世代機が立ち上がる時期は優秀な開発スタジオに資金が集まりやすいですから、クローバースタジオを辞めた人たちがより良い形でクリエイティブを継続する機会を得ることも可能でしょう。今後の動向に注目したいところです。


■レベルファイブ、パブリッシャー事業を開始
こちらは完全にポジティブなニュースです。
『ドラクエ8』の開発で一気に名前を売ったレベルファイブがDSに参入し、パブリッシャー事業を開始。第1弾として『レイトン教授と不思議な町』を発表しました。ゲーム会社が潰れるとか、買収されるというニュースばかりのゲーム業界で、ディベロッパーがパブリッシャーにランクアップしたのは喜ばしいこと。自己資金でゲームを開発して、自分たちの作品の権利を自分たちで握るのは、多くのディベロッパーにとって強い願望です。ここはひとつ、盛大な拍手を送りたいですね。

次世代ゲーム機では開発費が高騰しますから、ますますパブリッシャーになるのは難しくなります。そこで、次世代機の開発は従来どおりディベロッパーとしてこなして、最先端の技術をキャッチアップし、一方で開発費の低い携帯ゲーム機でパブリッシャー事業を始める。なかなか巧みなビジネスプランといえます。競争が激化する中、多くの開発スタジオが生き残る道を模索しています。半パブリッシャー化は、1つの模範モデルになりそうです。

ちょっと面白いのは、任天堂の営業本部長である波多野氏が来場して挨拶したこと。がっちり握手する写真が掲載されていますが、ずいぶんと親密さを積極的にアピールしていますね。ソフトメーカーの発表会に任天堂の役員がやってきて、こういうアピールをするのはめったにないこと。レベルファイルへの期待感が高いことの現れでしょうね。

また、レベルファイブといえば、(TFLOとドラクエ8を除けば)基本的にSCEの仕事をしてきたディベロッパーですし、率直にいってSCE陣営の開発スタジオの中では、数少ない頼みの綱です。象徴的な意味でも、今回の独立は大きい。ちゃんと空気を読んでますね。生き抜くためには嗅覚が非常に大切。今回の発表は、本当に色々な意味で、多くの開発スタジオにとって参考になる行動かもしれません。

Posted by amanoudume at 2006年10月17日 21:56 個別リンク
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コメント

 最近「面白そうなソフト」と「お金を出して買うソフト」は違うんじゃないか?ということをしみじみ思うようになりました。>クローバースタジオ解散

 大神、ビューティフルジョー、GODHANDと、とにかく個性的で話題にもなり、内容も評価が高いものでも「注目はされた、でもユーザーは金を落とさなかった」というのは何とも残念と言うか・・・反対に「もうポケモンの流行は過ぎた」と言われていたにもかかわらず、あっという間に200万本を超える売り上げを出したり

 DSの任天堂ソフト絶好調なのを見ても思うのですが、どうも昔ながらのクリエイターが求める「面白さ」と一般層(ここではゲーム雑誌など読まない層)の求める「面白さ」の意識格差がここに来て大きく出てきたのかもしれませんね。

 ラブ&ベリーの大ヒットなんて、誰も予想してませんでしたから。

>  最近「面白そうなソフト」と「お金を出して買うソフト」は違う

ですね。
より正確にいえば、kamoさんが書いておられるように、ゲーマー層&
ゲーム制作者の考える「面白い」と一般層の「面白い」が相当ズレて
いるという現象が顕著になってきました。

また旧来のゲームデザイン学がしばしば陥りがちな、ゲームデザイン=
ルールデザインというような考え方でも、最近のゲーム業界のトレンドを
追うのは難しいです。

実際の所、ゲームはルールも大事ですが、他愛も無い小ネタの
集積で成り立っている部分もあるわけです。そこはインタラクティブな
メディアの特性かもしれませんが。

このブログのコメント欄でも過去に議論になりましたが、今はどちらか
というと、interestingの方が一般層をキャッチできる気はしますね。

画面に触れるとか、ゲーム機から声が出てナビゲーションしてくれるとか、
そういう、専門家からしたら当たり前で他愛も無いと思えるような、
けれども意外と一般には無かった物が魅力的な要素として受け入れ
られているように思います。

またゲームデザインにおける「直感性」「テンポ」「快適性」の重要性が
増している気がします。元々重要なんですが、3Dになって、結果的に
少し軽視されてしまった感があります。DSになってその揺り戻しが
きているんじゃないかな。

<直感性について補足>
例えば、2Dアクションゲームでは後期にならないと、矢印とか
矢印看板が出てこないんですが、3Dアクションでは割と初期から
そういう風に作っていて。まあ3Dになった分、「説明」が多くなるのは
仕方ないのかもしれませんが、「説明」があるとわかりやすいのは
いいんですが、「直感性」は無いという事なんですね。

ただ、製品としてはわかりやすければいい、わかればいいので、
そこは問題視されないんです。だから良くない3Dゲームは
ユーザーをナビゲートしませんし、良い3Dゲームは矢印を看板
や壁に描いてユーザーをナビゲートするんですが、そこで議論が
止まりがちです。

そもそも「説明」しなくてもわかるように作れないのか?という所には
意識も議論も進んでいかないんですね。「説明」があるというのは
丁寧という事ですから、悪いことじゃないんですけども。

「出来の良いゲームが多いね」問題と、ボクは勝手に呼んでいます。
丁寧な作りのゲーム開発チームは増えていて、とても良いことなの
ですが、その「丁寧」を越えようとしてる所はほとんど無かった。
で、離れた視点で見ると、そもそも説明が多い時点で、うんざりする
わけです。世話を焼いてくれるマメな制作者は増えたんですが、
おせっかいしないでもプレイヤーが遊べるように、という風には
意識がいかないんですね。そこが1つの問題です。

>「面白さ」の意識格差
ズレているのは確かだと思います。
というより、kamoさんのいう「昔ながらのクリエイター」が
トップを走り続けて後続を見なくなっただけの気もします。
団体を引っ張るペースメーカーじゃなく、一ランナーとして独走。

昔はどんなに凝ろうとしても、
ゲーム機のおかげで操作は難しくなかった。
誰でも操作は出来る。

今ではボタンが沢山あって、
凝ろうと思えば何個でもボタンが使える。
誰でも操作出来ない。

マラソン選手が一般人に気を使わずに走れば
一般人が付いてこられるわけないですしね。

DSの売れてるソフトも「簡単」なことが見てわかる。

一般層への玄関とゲーマーへの出し物、このバランスが大事なのかと。


Wiiの振り回す動作がどう受け止められるのかは分りませんが
リモコンのボタン数は減っているので、何かを期待させます。(あくまで個人的にですけどねw
まぁ「DSの勢い」と言われれば、それまでかもしれませんが。

クローバースタジオの話を読んで思い出したことなどを少々。(風邪を引いているので、短めに・・・。DAKINIさんもお体にお気をつけください)

多分、どこかのブログの記事だと思いましたが、お笑い芸人は、「面白いやつ」が偉いと思っている。しかし、テレビで要求されるのは、「楽しい人」の役割である。そして、お笑い芸人達もその辺は十分認識している(が、「面白いやつ」が偉いという認識は変わらない)。その辺が面白いね、みたいな話を思い出しました。そういう意味でも、ゲームの「テレビ化」は進行しているのかもしれませんね、とか。

あと、前にも書いたような気もしますが、一般層から求められているのは、「楽しい気分」にさせてくれるもの(遊んでいて気持ち(気分)が良いもの)であって、決して、ガチンコ勝負なものではないと思います。だから、ガチなお笑いやガチなゲームは、局所的な存在にならざるを得ないし、逆にそれらはその局所性を利用したほうが(少数である以上、すばらしい作品は貴重なリソースになるという意味で)大きな存在になれるような気もしました。平たく言うと、PS2という据置機においても、求められているのは「みんなのテニス」程度の軽さであり、クローバースタジオの作品は「(主に)作品性で勝負」という点で、ガチすぎたということなのかも知れないということです。かえって、より局所的なアーケードゲームを作っていたほうが面白い結果になったのではないか、などと思いました。

お大事に。
お互い身体には気をつけましょう。寒くなってきましたし。

> 「(主に)作品性で勝負」という点で、ガチすぎたということなのかも
> 知れないということです。かえって、より局所的なアーケードゲームを
> 作っていたほうが

ゲーム業界において一番問題なのは、「こだわり」「作品性」を
追求する路線が大抵、開発費の増大する路線とイコールだという
ことです。明らかにクローバースタジオの作品は開発費がかかって
いますからね。
そういう方向でしか、作家性、作品性を発露できない、という不器用さ、
未熟さがゲーム業界の1つの大きな課題だと思います。

これは制作サイドの自己矛盾、破綻なんですね。
クリエイティビティーが幼稚に発露されている結果にすぎません。
ゲームユーザーが保守的で、続編しか買わないとか、そういう妄言を
吐くクリエイターも世の中にはいますが、全然核心をついていません。

ノベルゲームなんかだと、どれだけこだわろうと、制作費はたかが
知れているんですけども。おそらく「PS3地獄」とでも後に呼ばれる
であろう制作費高騰の悪夢は実の所、制作者サイドの思い込みに
起因します。

ユーザーが求めていない要素を求めていると思い込む。ユーザーが
求め続ける限り、こだわって作るしかないし、金がかかるのは仕方
ないと言い訳する。子供の論理です。そういう人たちが淘汰されて、
作品性というものがそれぞれに見合った規模で発露され、それが
当たり前と認識される。

ゲーム開発者の精神的成長こそが1つの課題だと思います。今は
まだ幼稚なクリエイティブ論が横行していますね。

次世代機における製作費の高騰…

ラノベで例えるなら…
上質な紙を使用して、挿絵は全部フルカラー、表紙はもちろんハードカバーでお値段は数千円!
普通のラノベより高いけど、描き下ろしイラスト集として考えれば安いでしょ?

…ってことですよね(苦笑

私も見事風邪を引いてしまった。

最近、ゲームの開発者と話をして小骨が喉につかえたような違和感を感じていましたが。
なるほど、その正体が見えたような気がします。
「まだ幼稚なクリエイティブ論が横行していますね。」
これは確かに正鵠を射ていますね。

その方もDS人気は流行に乗っているだけだ。
本当にゲームしているのはPSPだと話されていました。
だけど私はゲームの外のコミュニティもゲームと捉える中で
それは違うのではという話になったのですが
体調不良のため結論は先延ばしです(汗

ユーザーとしても気づきますね
好きなジャンル(D&Dぽいファンタジー)では大作化、複雑化、マニア化したのを歓迎です
オウガ、Diabloなんかヤリ込みました

一方で興味がある程度のジャンルではシンプルなのが好みです
ウイイレ、さかつく、光栄物、VF、ギレンの野望などは複雑化する以前の物が楽しいです
次々目新しい物に手を出していきますが、複雑すぎて序盤でめげたりすると卒業です

1個人でも購入判断がジャンルでかわるのに
着地点をどこを目指して開発するかは判断が悩ましいんでしょう

新たなパブリッシャー化を目指すようなところは大作勝負なんて無理でしょうし
王道ジャンルで、ファミスタからパワプロくらい変化したのをシンプルに仕上げたのを見たいですね

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