最近、ゲームメディアの未来について書いた記事をいくつも見かけます。
問題意識を抱いている人は以前からいたのでしょうが、ようやく公言しやすい状況になってきた、という事ですね。「そう考える」→「そう公言する」の間には、かなりタイムラグが空くものです。野安氏と小野氏に共通するのは、紙メディアは限界にきており、ソフト会社は雑誌を救ってくれるわけではないので、ビジネスモデルの転換をメディアの人間自身が考えなければいけない、という認識です。
やはり大きいのは、企業が商業メディアを通さずに情報発信できるようになった事です。従来であれば、企業は1次情報を商業メディアにのみ落としていました。ユーザーは商業メディアの書いた記事について、あれこれ書いているだけだったわけです。商業メディアと個人メディアの最大の違いは、書いている人間の文章力でも、専門知識でもなく、1次情報にアクセスできるかどうかでした。
しかし企業が1次情報を公開するようになると、商業メディアの優位性はかなり失われてしまいます。もちろん個人メディアの質が必ずしも高いわけではありません。けれども個人メディアは商業メディアに比べて制約が少ないですし、数が多い。玉石混交でも、その玉が商業メディア以上のクオリティであれば、あとはグーグルやネット上の評判などで選別され、良い記事を書きつづける個人メディアに読者が集まってきます。
ユーザーも、今は商業メディアを介した情報は信用しなくなって、企業からの直接的な「生の情報」のほうを重視するようになっています。企業の広報は明らかに変わってきているし、個人メディアと商業メディアのパワーバランスもますます変わってきています。最終的にどのような形に落ち着くのかはまだ不透明ですが、「信頼」がきわめて重要になっているのは確かでしょう。
- 「信頼」をどう担保し、高めていくかが重要。メディアやライター自身がレビュー(評価)の対象になる。
- ボクはずっと言っているが、ライターは商業メディアの補完として自分のブログを持つべき。
- メディアは読者のコミュニティを育てるという意識を「より強く」もつ必要がある。
- メディアはソフトメーカーと一緒にコミュニティ形成すべきかも。例えば、電撃プレイステーションがファミ通の取り上げないようなメーカー(日本一ソフトウェア)と一緒にメーカーのファンを育てていったように。
Posted by amanoudume at 2006年09月09日 01:54
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'ゲームメディアにも意識の変革が広がっている' from
発熱地帯.
コメント
ネットの普及・情報伝達手段の発達で
商業メディアを通した情報の劣化
というのはファミ通のレビュー等で
顕著になってきていますね。
広告や情報等をメーカーに握られている以上、
公平な評価は下しにくくなり、
ネット上でユーザー発のレビューサイトが
盛況を見せる、といった具合でしょうか。
もちろんブログ等でゲーム開発
の現場の方々の声も商業メディアを
通るよりクリアに聞き取れるように
なったと感じます。
投稿者: @ | 2006年09月09日 10:59
例によって、脱線気味の話になるかも知れませんが。
ふと、連想したのは、今週号の『ゴーマニズム宣言(正式名称はリニューアルしていたはず)』で、作者の小林よしのりが自分のやり方に限界を感じ、今まで否定していたネットとの共闘を呼びかけたということですね。ゲームメディアに限らず、既成メディアで非常に大きい影響力を持つ人間が、既成メディアの限界と半公的なネットの言論空間が無視できなくなったということは、「近い将来、そうなるであろう」というような流暢な話ではなく、現場の肌感覚で起こっている変化なんでしょうね。
まあ、それはともかく、
> (中略)「信頼」がきわめて重要になっているのは確かでしょう。
(「信頼」とはまたニュアンスが違う話なので)微妙に話はずれるかも知れませんが、一般論として、もうネットユーザーは誰も商業メディアの「意見」を「信用」していないような気もします。例えば、某新聞の社説なんてネットユーザーからすると、ネタ以外の何者でもない訳で。
ゲーム雑誌にしろ、ファミ通の最後に載っている浜村通信氏の文章を面白いと感心しながら読んでいる人ってどれくらいいるのか疑問です。基本的に、既成メディアでは建前レベルの話しか出来ない訳ですし、関係者から求められているのも建前なんでしょうが、(特にネットをやっている)ユーザーからすると、それは本音の書いていない、まるで信用のおけないシロモノだったりします。
まあ、私はメディアに味方をする義理はありませんし、正直、もっと(ゲームに限らず)メディアに弱体化してもらいたいんですが、メディアの生き残る道はあると思います。というか、既成メディアは、メーカーとユーザー、「(一方ではなく)両者」に利益をもたらすという本来の機能を取り戻すために、メディア2.0としてバージョンアップする必要があるのではないでしょうか。
もっと平たく言うと、メディアは、ネットと連動をもっとちゃんと考えるべきだと思います。メディアにおける紙媒体の建前とネット上の本音、紙媒体の有料コンテンツとネット上の無料コンテンツなどの使い方や使い分けはまだまだこなれていないような気がしますし。(素人考えですが、メーカーがメディアに載る二次創作を公的に認めて、ネットユーザーから作品を募集して人材を発掘するとか、いくらでも方法はありそうな気がしますが)
いずれにしろ、メディア自体の、メーカーとユーザーをつなぐインターフェイスという役割が弱まってきている以上、別の機能、存在価値を見つけ出し、メディア自体のファンを増やさないとそのメディアは生き残っていけないと思います。
投稿者: bin3336 | 2006年09月10日 01:03
私もファミ通には一度ひどい目にあわされましたから(タイアップの関係で電撃に最初に情報を載せたところ、ファミ通から広報に抗議の電話があったとか)歪んだ力関係がキライでした。一方ゲームマスコミといいつつ、メーカーに批判的な意見は書かない、書けないマスコミに意味はありません。
もっとも、日本ではファミ通が野球の巨人、ドリマガ(ゲーマガ)が阪神、みたいな関係で、これまた野球と同じく地盤沈下を起している途中かと。
ですが、最近廃刊になった「ゲーム批評」みたいな雑誌もネットによって意味がなくなりましたからね。辛辣、かつメーカーに媚びない意見はネットの方が量が多いし無料だし。
正直紙メディアの情報誌が残るには付加価値を付ける以外に無いんじゃないかと。もっとも、それさえ発売前にネットで流出しますが(W.
投稿者: こうのとり | 2006年09月10日 13:31
初めて投稿いたします。
PSP発売の頃から楽しく拝読させていただいている
非ゲーム業界の人間です。
もし投稿の仕方がおかしかったならそれは
私の知識が足りないからですのでご寛恕のほどを。
少なくともゲーム業界においては、今までファミ通を代表とするメディアは
メーカーから発信された一次情報を、広告料の多寡などの基準に応じて
「陳列するだけ」
でしか無かったように思います。
これまではともかく、今後はそれでは沈没してしまうというのが
今回の趣旨だと認識しました。
で、じゃあ生き残れる手段があるとしたら。
1.たとえばインタビューなどの形式で
「発言の価値」が高い人の生の声を発信する。
その際の質問や舞台の設定、その他企画力をコアコンピタンスとする。
すでにブログなどで情報を発信している「発言の価値の高い」
ゲーム関係者の方も数多くいらっしゃいますが
みんな、というわけではないので。
また、既にインタビュー記事もいろいろありますが
もっと企画性を高めたものでないといけない様に思います。
・・・と思っていたら任天堂の今まさにやっている
「社長が社員にインタビュー」!!
こういう企画をいかに設定できるかにあると思うのですが。
任天堂は本当に本当にゲームメディアは不要だと思っていることが
明らかにわかってしまいますね。
2.「大作というわけではないが本当に面白いゲーム」
をピックアップして紹介する
たとえばFMラジオにおける「ヘビーローテーション」のように
まだ無名だが編集側が本当に面白いと評価するゲームを
詳細に執拗に紹介し、それを盛り上げる。
あの紹介者の推薦するゲームは外れない
みたいな評価を得ることができれば・・・
今ある「クロスレビュー」では何の意味もないので
<発掘すること>に特化する。
媒体が紙かどうかは別として
彼らゲームメディアが生き残るには
こんな感じの方向転換が必要なのでは
と感じました。
以上、素人が思いついたことを
述べてみました。
投稿者: とむ | 2006年09月10日 22:48