最近の記事
カテゴリー
過去ログ
検索


このサイトについて
このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2006年08月31日

かくして日はまた昇る

日本ゲーム業界代表の力強い宣言

日本市場は世界のゲーム市場のアンテナであり、日本のユーザーは世界のゲームユーザーの最先端を走っています。日本発のイノベーションが全世界に広がっています。そういう認識がゲーム業界に急速に浸透しています。

実際、スクウェアエニックスの和田社長がCESA会長として、力強い発言をしておられます。
素晴らしい。まずは大きな拍手を送りたい。これぞ、日本国内のゲームソフトメーカーの代表としてふさわしい言動だと思います。存在感の薄かった歴代会長とは次元が違う大きな責任を果たそうとしておられます(プロセッサ性能至上主義については優柔不断な態度を取っているものの、それ以外の点では、「さすが」の一語です)。

ITmedia News:E3の後継は東京に――スクエニ和田社長、ゲームショウの今後に言及

(E3)が来年から規模を大幅に縮小すると表明したことについて、スクウェア・エニックスの和田洋一社長は8月29日、「E3縮小後、ゲーム業界の精神的求心力は東京が持つべき、と産業界(ゲーム業界)では考えている。東京ゲームショウを世界のゲームの発信源にしたい」と語った。

和田洋一CESA会長基調講演「ゲーム産業は第2ステージへ」

和田氏は最後に「ゲーム産業はリードしているが故に、より大きな使命があるのかもしれない。通信インフラがこれだけ整備されている国は日本以外にない。その下にこれだけ均一して高性能な端末がぶらさがっている国もない。そしてそこに高度なコンテンツがこれだけ配信され、それを享受しているユーザーがこれだけいる国はない。これだけ進んだ環境の国は世界に日本しかない。その中で、最も進んだ産業はゲーム産業であるべきだ」と語り締めくくった。
ここ数年、ゆがんだデータに基づいた「日本ゲーム業界衰退論」が横行していましたからね。欧米マンセー主義者が知ったかぶって、日本のゲーム業界の未来は暗い真っ暗暗黒だなどと書き立てていました。残念ながらこの数年、日本のゲーム会社にとって厳しい時代が続いていたため、不安を煽る言説が力を持ちやすかったんですね。

しかし日本のゲーム市場が急回復し、日本発のイノベーションが欧米にも広がりつつある今、くだらない妄言は雲散霧消しつつあります。そうなると論理的な議論はできず、きわめて主観的な未来論、妄念を述べるしかありません。E3の縮小を受け、むしろ存在感を高めようとしてる東京ゲームショウに対して、「縮小だと思う」などと訳のわからない事をおっしゃる人も世の中にはいらっしゃいます。例えば、はてなブックマークにおけるRanTairyu氏のコメントがその1つです。おっ、そういえば、日本のゲーム業界の行く末を憂えたkanose氏のこの記事の続きをぜひ読みたいものです。

日本のゲーム業界は大きく前進しています。大多数のゲーム業界人も、大多数のユーザーも、いつまでも戯れ言につき合っているヒマはありません。時代をとらえた言葉、感性、意志だけが生き残っていきます。


日はまた昇る

ここ数年ずっと上り調子だった北米のゲーム市場が去年ついに縮小に転じました。パブリッシャー各社は赤字に苦しみ、北米ゲーム業界の権勢を象徴していた、世界最大のゲームショウE3は大幅に縮小。いまや、北米のゲームバブルは崩壊しつつあります。

その一方、日本のゲーム市場は急回復。DS路線は日本でまず大成功し、次に欧州で『nintendogs』『脳トレ』がブレイク。さらにDS Liteの投入によって、北米でも絶好調。自分たちの成長を頑なに信じ続け、成長は止まらないと主張していた欧米のパブリッシャーも続々とDS、Wiiへの注力を宣言。各社とも、従来路線のXBOX360と革新路線のWiiの2本柱である「Wii60」戦略に転換しています。

国内ではセガがセガトイズとゲームソフト部門の連携を強化し、これまでにない面白い動きを見せ始めていますし、スクウェアエニックスの旧エニックス側がDS路線で成功をおさめつつあります(『FF3』も実質的なプロデューサーは旧エニックス側。開発スタジオは最近のトルネコシリーズの実開発や、リメイクドラクエ5を手がけたマトリクス)。また、『カドゥケウス』を始め、DSの新しいソフトが欧米でも高い評価を得ています。

日本発のイノベーションが着実に欧米に広がっています。その事実が日本のゲーム会社の経営者、ソフト制作者を鼓舞して、さらに大胆なソフト開発につながっていくと思いますし、そうなることを期待します。欧米に先駆けて、プロセッサ性能至上主義から脱却した日本のゲーム会社のアドバンテージはおよそ1年弱。日本のゲーム業界が世界における存在感をさらに高めていくのか、欧米勢に追いつかれてしまうかは、これから1〜2年が勝負の分かれ目。動向に注目したいところです。

重要なポイントはいわゆるゲーム2.0です。
和田氏は今回もまたWeb2.0に言及。ユーザー参加型への本格的な転換を訴えました。オールドクリエイティブが衰退し、ニュークリエイティブが広がりつつあるという認識を、多くのゲーム業界人が共有するのは重要なことです。大勢のゲーム開発者がいち早く新しい変化に適応し、新しいソフト群を生み出していくこと。それが日本のゲーム業界の国際競争力につながるはずです。
そう、日はまた昇るのです。


補足

キャメロットのソフトバンク陣営への移籍や、テクモの「LieVo」発表など、このところ中堅開発スタジオや中堅企業がフットワーク軽く、Web2.0に取り組んでいます。
テクモ、Web 2.0ベースのオンラインゲームポータル「LieVo」を正式発表

Posted by amanoudume at 2006年08月31日 01:46 個別リンク
TrackBack URL for this entry:
http://amanoudume.s41.xrea.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/338

Listed below are links to weblogs that reference 'かくして日はまた昇る' from 発熱地帯.

コメント

kanose氏のこの記事(WiiはPC-98となるのかはたまた…)の件ですが、kanose氏の自作自演なのですか?

はじめまして。
あららさんはどの部分をさして「自作自演」とおっしゃっているのでしょうか?

> WiiはPC-98となるのかはたまた…
> 最近、日本のゲーム業界はかつての黄金期の日本映画のように
> なるんではないだろうかと考えることがある。
の短い2つの文章がkanose氏の文章で、引用文は現在閉鎖
している9bcというブログ(ゲーモク氏)の文章ですね。

同意できる内容の文章から、大部分を引用して、自説を語るという
スタイルのようです。まぁ逃げを打ちながら、自説を語っているとも
いえますが(笑
ぜひとも、kanose氏が自分の思いを自分の言葉で語った「Wiiは
PC-98」論を読んでみたいものです。

まぁkanose氏は非任天堂ハードが大好きなようですし、オンライン
ゲームの分析記事で、WiFiコネクションで大成功した任天堂を意図的に
省くほどです(もし意図的でないのなら、おそろしく認識不足、調査
不足の状態で記事を書いたのでしょう)。
http://japan.cnet.com/sp/onlinegame/story/0,2000064820,20137008-3,00.htm

独ゲーム展示会:独特の進化遂げた「第三の市場」
http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/game/gamenews/news/20060825org00m300066000c.html
『 また「米欧」間においてもニーズの違いはある。「Singstar」「EyeToy」は米国でも発売されたが、欧州ほどのヒットはしなかった。全体的に欧州のゲームユーザーは、米国よりもカジュアルで、非暴力的なゲームを好む傾向にある。PCゲームも米国で人気の一人称視点のシューティングより、思考系の戦略ゲームが人気だ。

 大ヒットした一人称視点のシューティングゲーム「UNREAL 2」シリーズでプロデューサーを勤めたボブ・ベイン氏に、「Singstar」「EyeToy」における欧米のヒットの違いについて尋ねると「非常に興味深い質問だが、率直に言って分からない。逆に『ポケモン』をはじめ、なぜ日本のゲームは世界中でヒットするのか?」というコメントが返ってきた。その持ち上げられた日本ゲームだが、世界シェアは年々減少している。』

興味深い記事でしたのでお知らせまでに。日本人向けに作られたゲームが海外でも同様に受け入れられ売れるというのは日本の強みですね。

情報ありがとうございます。

記事を書かれているのは小野憲史氏ですね。さすが。欧米ゲーム
市場に詳しいライターほど、欧米マンセー主義に走りやすいという
残念な傾向がある中、きわめて中立的かつ冷静に市場を分析
できる稀有な人だと思います。

PS2の5年間は「地域主義」が台頭した時代でしたが、その一方で
ここ1年ほどは新しいグローバル主義が育ってきたように感じます。
確かに地域ごとに文化は違うし、大人になればなるほど文化差の
影響は受けるんですが、一方で全世界どの市場にもマニア層は
いるし、ライト層もいる。
マニア層は各地域ごとの差が出やすいものの、ライト層はさほど
でもない。

「全世界どの国にもいるxxxxxな人たちへ」という時代でもあるの
でしょうね。

例えば小説にしても、普段小説なんてほとんど読まない人でも、
ハリポタは読んでいたりするわけで、ゲームに限らないことなのかも
しれませんが。

コメントを投稿

(コメントを投稿しても、管理人が承認するまでは表示されません。すぐに反映されない、最悪24時間以上かかる事もあります。ご了承ください。)