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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2006年08月06日

日本のゲーム業界の3つの生態系

ネット企業によるゲーム機業界の解体進む

少し前に、キャメロットが任天堂陣営から離れて、ソフトバンク陣営に移行するというニュースが話題になりました。他のゲーム機陣営に移るのではなく、ネット企業に移行するという点が興味深いところです。もっとも、ドワンゴによるチュンソフト買収など、ネット企業が中堅クラスの開発スタジオを取り込むケースは最近増えています。資金力を誇るネット企業がゲーム機業界を解体にかかっている、という図式は、もはや多くの人の共通認識でしょう。

Web2.0への注目が一段と高まっているのも、ネット企業のそうした動きを察知してのこと。開発スタジオにしても、いつまでも続編の仕事を続けているだけでは、という思いはあるでしょうし、当然自社のキャラクターや権利でゲームを作りたいと考えるのは自然なことです。据置ゲーム機の先行きが不透明な中、より有利な立場でパートナーシップを結ぶチャンスに飛びつくのは当然の判断。
キャメロットのチャレンジ精神に惜しみない拍手を送りたいですね。


日本のゲーム業界の現状を整理

日本のゲーム業界には今3つの生態系が生まれつつあります。オンラインゲームを中心とした生態系、携帯ゲーム機を中心とした生態系、据置ゲーム機を中心とした生態系です。今回はその辺りを整理してみたいと思います。

1.ネット企業を中心としたオンラインゲーム業界

ネット企業がオンラインサービスの一環としてオンラインゲームを運営するケースが多いです。
一方、スクウェアエニックスやコーエーなど、PCでのオンライングームに積極的なゲーム機系のパブリッシャーもいます。しかし軸足がゲーム機市場にあるため、PCに特化している企業に比べて、戦略が甘い傾向があります。スクウェアエニックスにしても、『FF11』以外のタイトルが育たず、噂されている『FF11』の次の作品も、『FF11』のユーザーを移行させられるのか、そもそも同じパイの取り合いではないか、という問題が指摘されています。

マイクロソフトや任天堂など、ゲーム機メーカーが急速にオンラインゲームサービスを立ち上げていて、またたく問に一大勢力を築きつつあります。加野瀬未友氏のこの記事は、なかなかよく整理されていますが、WiFiコネクションで一躍、注目を集めた任天堂が抜け落ちているなど、ゲーム業界にうとい部分が見られますね。

2.携帯ゲーム機を中心とした新市場

PCや携帯電話から実用ソフトを貪欲に取り込みつつ、すさまじいスピードで莫大なユーザー数を獲得しています。ゲーム機に特化していたゲーム会社がWeb連携を重視してPCや携帯電話に進出していく一方、実用ソフトを抱えるソフト会社がゲーム機の世界に飛び込んでくるという逆の流れが面白い。

DSによるボイスチャットは子供にとっての携帯電話といえますし、『どうぶつの森』はmixiに匹敵する成功をおさめています。携帯ゲーム機のコミュニケーションツールとしての長所をうまく伸ばしています。Web2.0時代の特徴として、ネット社会とリアル社会の距離感が近づいた、という点が挙げられます。mixiや『どうぶつの森』のように、完全な仮想社会でのコミュニケーションだけでなく、リアルでの人間関係を取り込める形のサービスが成功しています。そういう意味では、持ち運びできないPCよりも、ネットにも繋がるし、持ち連んでリアルで集まれる携帯ゲーム機の方が将来の可能性はあるといえます。

3.据置ゲーム機を中心とした衰退する世界

日本市場では「据置→携帯」シフトが鮮明になりました。またPS2時代とは異なり、1つのプラットフォームが世界の全ての地域でトップになる事はない、と予想されています。据置ゲーム機はグローバルプラットフォームからローカルプラットフォームになりつつあります。

PCとの差別化が最大の課題ですが、PCはそこそこの3D性能を持ったWeb専用機になり、ハイエンドの据置ゲーム機は映像体験を重視したハイエンドゲーム端末になっていくでしょう。というのはPCが廉価になっていても、ハイエンド環境を整えるには、けっこうな金がかかるので、ハイエンドゲームを好むユーザーはPS3やXBOX360に移行していき、一部のウルトラハイエンドゲーマーだけがハイエンドPCを好んで購入するという分化をすると思います。大部分のPCユーザーはWebサービスと密結合したカジュアルゲームを楽しむでしょう。

PCと据置ゲーム機の一番の違いは設置場所。テレビゲーム機は違和感なくテレビに接続する人が全世界に1億人弱存在します。一方、中身がほとんど同じなっても、PCをリビングに置く人はほとんどいません。
この辺りは、例の経路依存の話と似ていますが、ユーザーはずっと「リビングで遊ぶ機械としてゲーム機を買ってテレビにつなぐ」ことに慣らされてきました。中身がどうなっているか、PCと同じかどうかなんてことは、実は大きな意味がなく、習慣効果のほうがはるかに大きな意味を持ちます。

リビングでPCとゲーム機のどちらを使うかはユーザーが決めること。ソフトメーカーが決めることではありません。テレビでWebを見たいかというと見たくない。テレビは複数の人間が見るもので、Webは基本的に個人で見るものです(ただしYouTube型の動画共有サービスは別かも)。

そこがゲーム機の防衛ライン。リビングコンピュータとしてどういう付加価値を提供していくかが重要。それができれば生き残れるし、できなければ生き残れません。PCと据置ゲーム機が住み分けられるかどうかは、性能の問題ではありません。ユーザーの使用環境、インターフェイス、習慣で決まるものです。

ただし、据置ゲーム機がPCと携帯ゲーム機に食われて、市場のボリュームが小さくなるのは避けがたいです。設置場所は住み分けられても、時間は奪い合いますから。また独身層ならPCでもゲーム機でも、どちらでもいいです。その結果、はたしてどれぐらいの台数が残るのか。基本的に縮小は避けがたいので、さっさと見切りをつける会社が出てくるのも当然ですし、素直な判断でしょう。


補足

『マリオテニス』にしても、『マリオゴルフ』にしても、N64→GCで大きく売上を下げています。任天堂は古くから、「マリオ」という親しみの持てるキャラクターを入口にして、幅広いユーザーに遊んでもらうという戦略を取ってきましたが、その戦略の効果が薄れてきています。今は逆にマリオが付くことで「子供っぽい」と判断され、ユーザーを限定してしまう可能性があります。      
(Newマリオは2Dのマリオなのでファミコン世代に受けるものの、だからといってマリオタイトルすべてに同じ効果が働くわけではありません)

実際、Wiiの初期タイトルとしてE3で発表されたラインナップには、マリオ系スポーツゲームが1本も並んでいません。キャラクターに頼らなくても、間口を広くすることができることを証明するのかもしれません。そもそも「マリオなんちゃら」ばかり並べるようでは、何のためにハードの名称を「Wii」にしたかもわからないですからね。まぁファンがいるタイトルなので、何らかの形で出した方がいいのかもしれませんが、プラットフォームにおける重要度は格段に下がっている、と言っていいでしょう。

Posted by amanoudume at 2006年08月06日 05:12 個別リンク
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コメント

生態系論には異論はないですが、

> WiFiコネクションで一躍、注目を集めた任天堂が抜け落ちているなど、
> ゲーム業界にうとい部分が見られますね。

氏がゲーム業界に疎いかどうかはともかく、
現状のWi-fiコネクションではオンライン部分の課金無しですし、通信対戦がフックにはなっても主ではないですから、
オンラインゲームのビジネスモデルとして考えると他と同列に語るのは現時点ではちょっと違和感があるかなぁって気もします。(X-boxLiveも有料会員と無料会員でサービス分けていますし)

もちろんユーザーの取り合いという面では含めるべきなんでしょうが。

ユーザーにしてみれば課金を余儀なくされるよりも、
無料で楽しめるという点は魅力ですので
ここを崩さずにどこまで食い込めるかですね。
場合によっては既存のビジネスモデルに地殻変動が起きるかもしれませんし。


> 何のためにハードの名称を「Wii」にしたかもわからないですからね。

ゲーム体験をリセットする。というポリシーで始めたのに続編やキャラものだらけでは全然リセットになりませんからねぇ。
『ゲームは面白いよ。』と、当たり前のことが当たり前に言えるようになるゲームを期待します。

…これって最近の業界に一番欠けているんじゃないですかね?

美少女ゲームに詳しい人がゲーム機業界に詳しいわけではあり
ませんからね。ゲーム機業界の記事を専門に書いている人たち
に比べれば、当然、認識不足な面も多々あるでしょう。

まぁあの記事については、うといというより、任天堂が好きでは
ないから意図的に抜いたというのが一番ありがちな解釈でしょうね。
(ユリイカの記事も、心情的には非任天堂ハードに愛着が深い
ということを述べておられたようですし)
日本におけるXBOX Liveの存在感を考えれば、XBOX Liveを
高く評価しすぎですしねえ・・・・。あの記事を書いた時点では
発表されていなかったとはいえ、「三国志大戦」「ドラクエモン
スター・ジョーカー」など、多数のタイトルが続々WiFiコネク
ションに集まっているわけで。水面下の動きを多少なりとも察知
しているライターなのであれば、ああいう記事にはならないでしょう。

少なくないネット企業やオンラインゲーム企業がWiFiコネク
ションを評価している中で、あんな記事を書けば、不見識を
疑われてもおかしくない。そういう空気感を察知できない辺りは
「うとい」ですね。


> オンラインゲームのビジネスモデルとして考えると他と同列に語るのは
> 現時点ではちょっと違和感

会費無料という事なら、アイテム課金のハンゲームを始め、すでに
存在しますし、よく言われるようにネット広告的なビジネスモデルで
あれば、ユーザーからの直接の徴収は無いわけで、ビジネスモデル
のOne Of Themであり、同列に論じても問題ないと思います。

というか、パッケージビジネスであるわけで、パッケージの値段の
中にネットサービスのコストが含まれていると解釈すれば、最も手
堅いビジネスモデルといえます。

> 任天堂が好きではないから意図的に抜いたというのが一番ありがちな解釈でしょうね。

はぁ…そうなんスか(汗

好き嫌いで意図的に材料を欠いての考察って一体…

X-BOXLiveはCS向けを考えればでは最も洗練された仕組みだと思います。
ただ、優れたシステムだからといってそれがユーザー数の獲得(=存在感)に繋がるわけではないと。

MMBBはいずれWi-fiに取って代わられてしまうのではないかなと思いますね。

ネットのビジネスモデルは大まかに見ると

【大分類】
○初期費用無料型
○初期費用有料型

【小分類】
・アイテム課金などの対価課金型
・月額料金制などの定額型
・広告収入やパッケージ代収入によるユーザー無料型

って感じになるんですかね?

あと、まったく関係ないですけど

> 一部のウルトラハイエンドゲーマー

この表現に思わず吹きました(笑)

今後のニーズを読み解くときに
・リビングルームゲーマー
・プライベートルームゲーマー
・モニターレスゲーマー
みたいな分類も面白いかも。と思ったり。

まぁプロのライターなんて言っても、本当に力や志のある人は
一握りですし、得意分野と不得意分野があるわけですし。kanose氏は
非常に優れた記事を書かれていると思いますが、やはり偏向性は
ありますからね。

そういうライターごとの癖や傾向も、多くの読者の間で共有して
いきたいですね。より正しいメディア理解が浸透していけばいいな、
と思います。
(最近だと1万を越える日もありますが)さらに多くのもっと多くの
読者の間で、メディアリテラシーの相互成長ができれば、素敵です。

大雑把にいって・・・・

○新清士氏
海外の動向に詳しいが、MS有利なネタを積極的に取り上げる。
任天堂やSCEにとって有利なネタはあってもスルーする事がしばしば。
MS好き。

○加野瀬未友氏
もともと美少女ゲーム系、オタク文化論系の人なので、独自の視点
に期待するも、洋ゲーが結構好きで、XBOX系(メガドラ系とか、
そういう臭い)がお好きなご様子。
しかしそうなると、洋ゲーマンセー系ライターの方が海外事情に
詳しいわけで、記事の独自価値がどれほどあるかは未知数。

○西川善司氏
3D系の技術記事を書く事が多く、PCゲーム系のライターなので、
洋ゲーマンセー、XBOXマンセー、DirectX礼賛。

まあ情報源が偏っているのか、海外ゲーム会社の動向はフィルタが
かかっていると思ったほうが無難。その点では、新清士のほうが
まだ歪みはずっと少ない。ライターとしての誠実さの違いかな(笑

○小野憲史氏
基本的に中立的。そういう意味では一番素直に、一番信用できる
記事を書く人。
誠実。

○野安ゆきお氏
ゲームの内容面についての洞察(直観)は鋭い人。論理性、分析性が
欠けるように感じることは時々ありますが。かつてのSCEや現在の
任天堂には、比較的好意的。


・・・・ま、もっと上げることもできますが、この辺で。ゲーム業界ライター
クロスレビューとか、ライターめった斬りってのも、そのうちやって
みようかな(笑

ソニーに悪意のある記事を書いた、MSに・・・、任天堂に、スクエニに・・・、
ナムコに・・・・にみたいなのを調べて、偏向度を公表してみるとかね。
まぁ頭の中には、大体できてるんですがね。メディアフィルター対策として、
そういうのって、あると便利でしょう。フィルターの酷い人は淘汰されるのか、
あるいは逆に重宝されるのか(笑

>ゲーム業界ライタークロスレビュー
IT系ビジネスニュースサイトを見てても
記事ソースの配慮・おべっか、記者の好悪による偏向記事が多く
読み解くのに手間ですし、これ非常に楽しみです
まぁ多少おべっかや好悪が混じってても
真面目に業界の未来を予測心配した記事なら面白いですけど

いくつか見知った名前が同様の感想です
新氏はネットゲームに注目してるようですので
PS3、Wiiのネット評価の仕方でMSだけ好きか分かるでしょうか
西川氏、まさにそんな印象です
野安氏、なるほどと思いました、評価の仕方が面白い

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