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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2006年06月10日

瞬発力と持続力(1) ゲームの「瞬発力」

代表的な「瞬発力」はグラフィック

「瞬発力」というのは、パッと見て読んで触って、すぐに夢中になる、興奮する、価値がわかる、魅力的と感じる要素のことです。ゲームにおいて、一番わかりやすい「瞬発力」の例は、グラフィックでしょう。凄い映像というのは、誰が見てもパッと魅力がわかります。3DCGムービー全盛期はこの「瞬発力」が非常に持てはやされましたし、2Dの頃でさえ、巨大なスプライトのボスが派手に登場したり、無数の弾が飛んできたり、スクウェアのドット絵世界に多くのゲーマーが夢中になったものです。また、美少女ゲームの場合は、キャラクターデザインです。

グラフィックの強みは、写真やビデオでも魅力が伝えられることです。ゲームは実際に触らないと面白さがわかりにくい性質があります。しかしそれでは宣伝しにくいし、売りにくいので、ゲーム業界が伝統的にグラフィックの力に頼ってきました。

とはいえ、3DCGが高度になってきて、一般の人には違いがわからなくなった、と最近よく言われます。北米はまだグラフィックを重視するコアゲーマーが多いものの、日本では以前ほど、惹きつける力がなくなってきたのかもしれません。では、グラフィック以外の「瞬発力」にはどんな物があるでしょう?


もう1つは「体感性」

1つは「体感性」でしょう。アーケードゲームの歴史を振り返っても、体感ゲームは幅広いユーザーを呼び込むヒットをいくつも生み出してきました。乗り物系の体感ゲームは、家庭では絶対に味わえない興奮をもたらしてくれます。『太鼓の達人』などの音楽ゲームは、遊んでいる姿がとても楽しそうで、自分もやってみたいと感じさせる力があります。

PS2時代、国内のゲーム市場は縮小していました。そして一時期、Xavixのような体感玩具がとても注目を集めました。コナミは玩具に力を入れていましたし、スクウェアエニックスも『剣神ドラゴンクエスト』を発売しました。また据置ゲーム機でも、『太鼓の達人』やその派生の『ドンキーコンガ』が登場し、ヒットを飛ばしました。

据置ゲームにおける「体感ゲーム」は基本的に1ゲーム=1コントローラのため、大きくてかさばって場所を取るのが問題でした。任天堂のWiiのコントローラは、体感玩具に比べると専用性・特殊性が落ちるものの、汎用的に使えるという点で画期的な提案でした。あのコントローラ1本で、テニスのラケットを振り、銃を撃ち、料理をし、ゴルフや野球をすることができます。従来なら、ラケット型コントローラ、光線銃、調理器具型コントローラ(?)、ゴルフクラブにバット型コントローラが必要でした。この進化はちょうど、1ハード=1ゲームだったゲームウォッチから、1ハード=マルチゲームのカートリッジ方式への移行によく似ています。

実際、E3で任天堂のブースは大盛況だったようですし、E3前後でWiiに対する期待感は爆発的に上昇しました。また、身体を動かすのが好きなアメリカ人だけでなく、日本人にもハッキリ魅力が感じられたようです。
ファミ通.com 「スーツ姿のおじさんたちが笑みをこぼしながらプレイ?」
E3でも経営方針説明会でも特徴的なのは、スーツ姿の人が楽しそうに遊んでいた事です。普段は自分では手にとってゲームを遊ばない、見ているだけか、若い部下にプレイさせて感想を聞くだけのスーツのおじさんたちが何人も、楽しく遊んでいたわけです。

けれども「体感性」は、写真やビデオではなかなか魅力を伝えにくい、という弱点があります。実際に遊んでみないと、なかなか良さがわかりません。DSでタッチペンを導入し、空前の大成功をおさめた任天堂は、プロモーションにおいて、ゲーム画面よりも遊んでいる人の姿を映すこと、できるだけ体験の機会を増やすことを重視しました。また、ネットの普及にともなって、ユーザーが自分の体験を他の人に伝えやすくなり、口コミ網が形成されていたことも、DSの成功を後押ししたと思います。グラフィック程ではないものの、昔に比べれば「体験性」は伝えやすくなりました。


ゲームにおけるギャグ漫画の誕生

さて、「グラフィック」と「体験性」以外の「瞬発力」はないでしょうか?
もちろんあります。1つの例が『メイドインワリオ』でしょう。5秒間で1つのプチゲームをこなすというゲーム性に加えて、どんなゲームかを瞬間的に判断するというメタなゲーム性もあり、ゲームプレイそのものが「瞬間」の連続といえるゲームです。そのため、必然的にゲームのネタ(遊び)と笑いも、瞬間的にわかり、面白いものになっています。特に、『まわるメイドインワリオ』以降は新しいデバイスと一緒に登場するようになり、より「瞬発力」を増しています。

『メイドインワリオ』のゲームデザインは多くのゲーム開発者に評価されています。理由はいくつもありますが、その1つが「グラフィック」と「体感性」以外の「瞬発力」を生み出したことだと思います。もちろん、そのために掛かっているアイデアの労力は並大抵ではないでしょう。なにしろ200以上のネタを毎度詰め込んでいるのですから。

そのアイデアの詰め込み方は、ギャグ漫画に似ています。思うに、『メイドインワリオ』は漫画において初めてギャグ漫画が誕生した時に匹敵するインパクトです。俗に、漫画家の中でも特にギャグ漫画家は磨耗しやすいと言われますが、このシリーズを長く続けるのは、恐ろしく大変なことだと思います。そういう点では、新しいデバイスと共に新作を出すスタイルは良い方法論です。


「瞬発力」は持続しにくい

一般的に「瞬発力」は持続しにくいものです。例えば、全編を通して見せ場しかない映画というものはありません。あのハリウッド映画にしたって、全体の長さを計算した上で、徐々に盛り上げる場所、静かに溜める場所、一気に盛り上げる場所を作るわけです。ずっと凄い映像が続くというのは、すなわちずっと退屈だという事です。同じように、どれだけムービーばかりのゲームでも、凄い迫力の映像だけをつなぐことはありません。全編、派手なボスだけのゲームも、普通はありません。また全編凄いグラフィックにするのは、制作コストがかさむという問題もあります。

「体感性」も同様です。身体を動かすのは楽しい反面、疲れやすいからです。Wiiについても、ネット上ではその点を懸念している人を見かけることがあります。『メイドインワリオ』も瞬間というか非常に短い時間を切り取っているから、成り立つわけです。長く遊ばせようとすると、大量にネタを詰める必要があります。

ゲームに限ったことではないのですが、大抵、「瞬発力」の高さと「持続力」の高さは両立しません。「瞬発力」が高い商品(作品)はその分、持続力が弱く、飽きられやすく、やめられやすいです。「持続力」が高いものは、地味だったり、キャッチーでなかったりします。しかしそれでは困るわけです。そこで長らく、ゲーム業界が頼ってきたのは、ストーリーです。ストーリー、とりわけ映像とストーリーの組合せが、「瞬発力」と「持続力」を共に高くする方法だと考えられてきましたし、実際そういう効果をもたらしてきました。

しかし最近、そのストーリーの効果がうまく働かなくなってきました。では「ストーリー」に代わるほどの「持続力」は何か見つからないのでしょうか? あるいはストーリーのもつ「持続力」を再び高めることはできないのでしょうか? という所で、次回「ゲームの持続力」に続きます。

Posted by amanoudume at 2006年06月10日 03:58 個別リンク
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コメント

メイドインワリオ。
直感的なゲームのメイドインワリオ、
直感的なインターフェイスを携えたまわる〜。

今にして思えばDSの成功も盛り上がるWiiへの期待もこのソフトが起点になったと思いますね。

時代が変わる。と感じた瞬間です。

あんまり長々とコメント書いて、次回のエントリーとの方向性がずれてしまうと目も当てらんないので(笑)
次回のエントリー楽しみにしています。

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