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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2006年05月31日

ゲーム機がローカルプラットフォームという時代

ゲーム機が「ローカルプラットフォーム」という時代

E3でPS3の問題点が誰の目にも明らかになり、色々な事が言われていますが、昔から天下二分論を唱えていたボクにしてみれば、予想の範疇の出来事でした。性能至上主義が崩壊しつつあることを始め、ソニーの問題点をずっと書いてきました。今年のE3は、変化がより大きくなって、誰の目にも明らかになっただけです。E3の話題をスルーしたのも、あらためて書くような事は何もないからです。

世界シェアという点で、据置ゲーム機はマイクロソフトがシェアを握り、携帯ゲーム機は任天堂が握りつつあります。もっとも、「XBOX360が世界シェアトップ」というのは、日本ではシェアを取れないけど、最大市場の北米でシェアを取るから、世界トータルではトップという意味です。

裏を返せば、日欧米どの地域でも売れるゲーム機はPS2が最後で、各地域で台数シェアが変わる時代に入ったということです。そういう認識は、すでに多くのソフトメーカーの経営者が抱いていることで、スクウェアエニックスの和田社長も常々コメントしています。

「いままでとは質の違う環境変化を向かえている。これまでの一強皆弱ではない時代がくる」とコメント。各プラットフォームが併存し、国や環境によって勝ち組プラットフォームが変化するとの見方だ。
何もこれは日本のゲーム会社だけの認識ではありません。韓国オンラインゲーム界の雄NCsoftのTJ Kim氏も同じ事を言っています
1年で私もちょっと考え方が変わりましたよ(笑)。現在,コンシューマゲームの市場は,どの機種を選んだとしても,広い意味での「ローカルプラットフォーム」になってしまっているのではないかと考えています。例えばプレイステーション2の場合,タイトルが出れば日本でもかなり売れて,ヨーロッパ/アメリカでもそれなりの売り上げが見込めました。しかし次世代機が出揃った現在,技術的には向上していますが,市場的には若干後退しています。
今回のE3でも複数の次世代コンシューマ機が出展されていますが,私にとってはそのいずれもが,プレイステーション2のようにワールドワイドな市場で通用するものになるとは思えません。コンシューママーケットはすでに,グローバルパワーを失いつつあると考えています。
ここまで明確に言葉にしなくても、ソフトメーカーの幹部にとって、地域主義の台頭はいまや大前提です。

【4Gamer.net】奥谷海人のAccess Accepted : 日本のゲーム企業「第3の海外進出」

日本のソフトメーカーが欧米市場で売れるソフトを作れる欧米のゲーム開発会社を買収したり、提携しているという話です。大雑把にいって、日本市場向けのソフトは日本の開発者に、欧米市場向けのソフトは欧米の開発者に、というのはわかりやすい話です。

今後は、グローバルコンテンツとローカルコンテンツの2つに分けてソフトラインナップを考えて、ローカルコンテンツは各地域の開発スタジオに制作をまかせるケースが増えていくと思います。またグローバルプラットフォームとしての据置ゲーム機の価値が下がるため、相対的にPCのプラットフォーム価値が上昇します。最強のゲームOSを自称するWindows Vistaが出てきますし、PCの価値を見直す動きはより顕著になるでしょう。


ローカルプラットフォーム時代の常識・非常識

ピーター・ムーア氏インタビュー 日本での成功なくしてXbox 360の成功あり!?
さて、このような記事によって、日本のソフトメーカーがXBOX360を見捨てつつある、という話が広がっているようです。まぁ実際、今年のE3は酷いもので、スクウェアエニックスが『FF11』の供給を発表し、マイクロソフト自身が日本のソフトメーカーを持ち上げていた去年とは対照的でした。
粘りの無い所に勝機はありません。PS3が大失敗をおかした時、XBOX360が日本向けに大きな発表を行っていたら、少しはムードが上向いたでしょうに。反攻する最大のチャンスを逃した以上、マイクロソフトが日本でシェアを伸ばすのは難しいでしょう。まぁ北米では相変わらず好調なので、彼らはそれで構わないのでしょう。もっとも、ついに北米市場は市場の縮小が始まりました(2006 ESSENTIAL FACTS/ESA)。

ただね、XBOX360が北米で売れようが売れまいが、それは北米市場ローカルでの話であって、日本市場に影響することはありません。日本のユーザーは北米で売れているからゲーム機を買うわけではないし、北米のユーザーも日本で売れているからゲーム機を買うわけではありません。日本以外を制覇したら、自動的に日本市場がオマケでついてくる・・・・なんてのは、電波戦略もいいところです。大多数の消費者はゲームがつまらなければ、買わなくなるだけです。ほしいゲーム機がなければ、買わなくなるだけです。世の中には娯楽がいっぱいあるんですから、無理に今まで見向きもしなかった洋ゲーを遊ぶ必要はありません。離れていくだけでしょう。

逆に北米のユーザーはたとえ日本で売れていなくても、XBOX360を買うわけです。ゲーム機はローカルプラットフォームという認識が当たり前になりつつある中、普通はソフトメーカーも、北米市場と日本市場は分けて考えています。例えばカプコンは『デッドライジング』『ロストプラネット』など、XBOX360向けに前評判の高いソフトを用意しています。『ロストプラネット』はE3期間中のXBOX Live!でのダウンロードが2位でした。体験版を配信した所がほとんど無い中、非常に頑張っていました。今はそういう時代で、各地域ごとに戦略を変えていくのが当たり前です。


日常的な娯楽と非日常的な娯楽

現実には、日本のソフトメーカーも、北米市場では北米市場にあった戦略を取っています。
にも関わらず、いまだに旧来の考え方に捕らわれている人々もいるのかもしれません。つまり、「日本のソフトメーカーが北米でシェアを取るXBOX360に注力しないと、日本のゲーム業界は世界的には衰退するよ」とか、「長期的には市場の大きな欧米系に、日本のソフト市場は押しつぶされるよ!」などと不思議な理論を唱える人たちです。

日本のゲーム業界衰退論というのは、PS2の頃からずっとあって、特に「ゲーム離れ」「市場縮小」していた頃には顕著でした。しかし実際には、去年から日本の市場は急拡大しているんですよね。日本衰退論を唱えていた人々の言葉はまったく虚しいものです。

日本衰退論で、例としてよく持ち出されるのが映画です。しかし、別にゲームは映画とは違うメディアですから、何の説得力もありません。たとえ話は一見説得力をもつが、何も言っていないに等しいのです。それこそ、たとえ話を持ち出すなら、アニメもコミックも日本は確固とした牙城を築いています。テレビドラマやバラエティなどの日常目にするコンテンツは、日本ローカルのコンテンツが圧倒的に多いわけです。映画のようなたまにしか見ないものと、日常的に消費するものは、求める品質や価格や地域文化性が全然違うんです。

あえて、映画やテレビドラマの例をゲームに当てはめるなら、据置ゲーム=映画=高級&非日常、携帯ゲーム=テレビドラマ=日常という感じでしょうか。去年からのDSブームを考えれば、大多数の日本人にとって、日常気軽に遊ぶものは携帯ゲームで十分なわけです。そこは、開発規模がどうの、物理エンジンがどうの、映画的なゲーム製作がどうの、といった「知ったような言葉」とは無縁の世界です。

例えば、『Newスーパーマリオ』が初週87万本売れたらしく、ダブルミリオンはほぼ確定、トリプルミリオンを見据えた動き方をしています。『テトリスDS』が出荷80万本を越え、ハードの累計台数は840万台。年末に500万台突破とか言ってたばかりなのに。DSの勢いはもはやかつてのファミコンブームに匹敵すると言っても過言ではありません。
いま目の前で起きている市場の大再生を無視して、いかなる未来予想も無意味です。かつてファミコン市場が誕生した際、その流れに乗ったから、大手ソフトメーカーは急成長しました。成長のチャンスを逃した会社の多くは、消えていきました。


据置ゲーム市場はゴーストタウンになるのか

据置ゲーム機は、今や衰退し、縮小している世界です。しかも、全世界どの地域でも売れるという特性さえ失いつつあります。携帯ゲームに押されていますし、PCのオンラインゲームにも着実に食われつつあり、あまり良い未来図は見えません。で、もし仮に、そういう世界から大多数のユーザーが離れてしまって、残るのはマニア層だけとなった場合、そんな狭くて小さい世界を欧米勢が握ろうが、日本勢が守ろうが、どうでもいいことなんですよ。ゲーム機の中心が、据置から携帯に移った、という事なんですから。ゴーストダウンを誰が占拠したかなんて、つまらない話ですよ。

どちらかといえば、このまま急速に「据置→携帯」のシフトが進むのかどうか、据置が盛り返すことがあるのかどうかが重要です。つまり据置ゲーム機が再び、日常的な娯楽を提供する、テレビに接続された機械に戻るのかどうかです。日本でのゲーム離れは、ゲームが大多数の消費者のニーズを越えて、非日常的で高級で高プレイコストなものになったから起きました。逆に、市場が急回復したのは、日常的に手頃な値段と手軽なプレイコストで楽しめる携帯ゲーム機が盛り上がったからです。
・・・・まぁ世の中には、ゴーストタウンで幽霊談義をするのが好きな人もいらっしゃるんでしょうけど。

Posted by amanoudume at 2006年05月31日 05:51 個別リンク
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コメント

最後のくだりの

どちらかといえば、このまま急速に「携帯→据置」のシフトが進むのかどうか

これって、「据置→携帯」の間違いですよね?

あ、この書き込みはコメントに反映しなくてもいいです。

おっと・・・・。
ご指摘ありがとうございます。
修正しました。

邦画復活のきっかけとなったのは、テレビ局主導の「踊る大捜査線」あたりからですが、「携帯ゲーム=テレビドラマ」と考えるなら、据置ゲーム復活の鍵を握るのは何でしょうね。
任天堂がWiiで何をやってくれるか楽しみです。

05年北米のコンソールとPCの売り上げは70億ドルで、04年の74億ドルから4億ドル下がっていますが、これはリテールのみの数字ということで、ESAのソースであるNPDが再調査したようですね。

http://www.npd.com/dynamic/releases/press_060525.html

リテール以外に配信や課金などで4億ドル以上の売り上げなので、05年のほうがトータルの数字は若干増えているようです。もっともコンソールの数字には影響有りませんので、DAKINIさんのコンソール市場の縮小というご指摘に変わりは有りません。あくまで補足事項ということで。

アナリストはハード交代期には数字が落ちるので、07・08年からまた伸びるという予想をしているようですね。

> 邦画復活のきっかけとなったのは、テレビ局主導の「踊る大捜査線」
> あたりからですが

復活の鍵という程のものではありませんが、今後は携帯→据置という
流れも出てくるでしょうね。PSPの『Untold Legend』でしたっけ?の
続編が据置で出ますし。

『ポケモン』の外伝作品、『メイドインワリオ』の続編など、携帯機で
成功したタイトルを据置に持っていくケースはかなり増えてきている
と思います。もはや携帯は「据置の移植で小遣い稼ぎをする場所」
ではなくなりつつあります。

いまだにその程度の認識でビジネスをやっている会社も多いんですが。
だから売れないし、どんどんジリ貧になってるんですけどねー。
名指しはしないけどさ。

例えば「日本語ワープロ」という家庭向け製品がカテゴリーごと消滅したように、「据え置きゲーム機」というカテゴリー自体が消滅することだって、別に不思議ではないと思います。

そこで充たされていた需要(いまのところいわゆるコアなゲーマー層?)がどこかに別の形であれ、別のシーズであれ、吸収される必要はあるかもですが。

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