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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2006年05月28日

週末の読書(2006年5月27〜28日)

1.夏期限定トロピカルパフェ事件

米澤穂信の小市民シリーズ第2巻。日常の謎を解いていくタイプのミステリー。
依存関係にはなく、お互いを利用しあうだけの互恵関係を結んでいる、小鳩くんと小佐内さん。2人がケーキを巡って知恵比べする第1章「シャルロットだけはぼくのもの」は、観察力を問う倒叙もので、良く出来ています。途中で読むのを止めて、謎解きに参加してみるのも一興。

また短編連作の形式を取っていた1巻と違い、今回は短編が長編の一部を構成しています。第1章と第2章はそれぞれ読切短編として雑誌掲載されただけに、単独でも気の利いたミステリーですが、それらの話が結びついて最後に1つの長編が浮かび上がるという趣向が見事です。第1章の2人の知恵比べが、この巻全体の本質を暗喩している点も秀逸。

またこの2巻が優れているのは、キャラクターの性格が1冊の長編としての謎を解く上で鍵になっていること。小鳩くんと小佐内さん、お互いをよく知っているがゆえに、お互いの嘘を見抜けます。そしてお互いの嘘をよく見抜きすぎたために、2人の関係は1つの大きな変化を迎えることになります。はたして『秋期』以降、2人はどうなっていくのか、過去のトラウマとどう折り合いをつけていくか、気になります。

キャラクターの性格が謎に絡むといえば、第1巻の第3話「ココアの作り方」でも、謎が解き明かされると同時に、小鳩くんの友人堂島健吾の性格が浮き彫りになりました。こうしたキャラの性格と謎をからめた手法は、単なるロジックだけの解明以上に、納得感がありますね。


2.神様のパズル

人工授精で生み出された天才少女の穂瑞と、留年寸前の学生の綿さんが、現代物理学がいまだ答えに到達していない「神様のパズル」に挑戦します。はたして人間に「宇宙を作ることはできるのか?」。2人は大学の研究室のゼミで、宇宙が作れる事を証明しなければなりません。しかし巨大粒子加速器”むげん”の完成をめぐって、基礎理論を提唱した穂瑞への風当たりはしだいに強くなっていき・・・・。

ハードSFでありながら、舞台が少し未来なことを除けば、理系ミステリのようでもあり、昨今のライトノベルに通じるキャラクター性の高い小説であり、しかし最終的には「自分とは何か?」を真剣に悩んでいる少女を描く青春小説です。やってることはえらく地味で、登場人物は現代物理学の議論ばかりしています。扱っている題材のディープさの割に、おそろしくライトなこの本なら、SFをあまり読まない人でも楽しく読めるでしょう。映像化しやすいとはお世辞にも言えないのですが、すでに角川春樹事務所とエイベックス・エンターテインメントによる劇場化が決定しているそうです。

それにしても最近、SFと青春小説の接近を感じます。新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー』も時間旅行能力者を題材にした一級の青春SFエンタでした。


3.SHI-NO 黒き魂の少女

うたい文句どおりの「純愛系ミステリー」かどうかは怪しいのですが、まあ何故か最近テーマが「L・O・V・E!」になっている富士見ミステリーに、論理的な宣伝文句を期待してもしかたありません。混沌と迷走だけならライトノベル最強のレーベルですから。

大学一年の僕の部屋に、小学5年生の支倉志乃ちゃんが毎日やってきます。兄妹でもないのに。それというのも志乃ちゃんは、両親が忙しくてほとんど家にいなかったから、小さい頃に僕の家で預かっていたため。つまり兄妹でなくても、兄妹のような関係。

無口でクールで大人しい志乃ちゃんは、手がかからない良い子。でも猟奇事件や怪事件に異常に興味を示すのがただ1つの心配の種。でも事件に近づかなければ、美少女小学生探偵シノシノには変身できないんですね〜、仕方ない。
正直、この本のテーマ自体はちょっと微妙ですが。森博嗣あたりなら、もっと詩的にエレガントに書けるんでしょうけど。

気がつけば、ライトノベル4大・小学生ヒロインを制覇してるじゃないかorz
    『紅』  紫(7歳)
    『円環少女』  メイゼル(12歳)
    『BLOOD LINK』  カンナ(9歳)
    『SHI-NO』  志乃(11歳)

Posted by amanoudume at 2006年05月28日 20:58 個別リンク
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