毎年、忘年会が終わった後の反省が1つあって、それは「全員と話せない」ということです。割と1人の人とずっと話していることが多いため、後で「話ができなかったのが残念です」と感想をいただくこともあります。まぁ忘年会といっても、酒を飲む機会がほしいとか、他の面子に会いたいとか、業界人同士の集まりに参加したいとか、参加理由は人それぞれ色々あるはずですが、人によっては「DAKINIと話がしたい」の比重が大きい人もいらっしゃるわけで、そういう人全員とお話できないのは本当に申し訳ない。orz
一応、今年は「DAKINIと話をしたい人」全員とお話しするのを目標にしたいかな、と考えています。そのため、途中で席を替えることもしばしばあるかもしれませんが、話に興味が無くなったというような理由ではないので、ご容赦いただきたいです。まぁ、そうは言っても、話に熱が入りすぎてると、席の移動なども忘れてしまいかねないので、もしそんな状況になったら、話をしたいとお考えの方は積極的に寄ってきていただければ。
毎度till dawnではあるので、時間はあるといえばあるのですが、初めてお会いする人でそこまでつき合おうという人はなかなかおられないし、今年は開催が早くてまだ仕事納めになってない人もおられると思うので、1次会ではなるべく初めてお会いする方々とお話したいと思います。
さて、せっかくなので、忘年会での話題の前振りを2つほどやっておきます。
1つは国内マーケットの活性化と北米市場の衰退の兆しについて。もう1つはWeb2.0について。
実は今回忘年会を開くにあたって、「いわゆるゲーム屋さんではない人と、Web2.0とゲームについてお話しする」機会になればいいなあ・・・・と密かに思っていて、それで募集の文にも「Web2.0な人でも」とわざわざ入れておいたのですが、まさに願望かなったり。一番楽しみにしています。
説明&解説は一切抜きで、話題だけあげときます。一応、この辺は前提としておきたいなあ、という意図です。
●国内のマーケットが活性化してきた。
- ライトユーザーを中心に「据置→携帯」のシフトが起きた。
・DSは年内に累計500万台突破がほぼ確実(発売から1年と1ヶ月)。
・『おいでよ どうぶつの森』は年内100万本ほぼ確実。
・『DSトレーニング』は年末年始でミリオン突破確実。
・『アソビ大全』はすでに20万本を優に突破している。
- ライトユーザーの関心は「コミュニケーション」と「実用性」。
- 年末のDSの爆発的な売上は、来年の潜在市場を生み出した。
このライトユーザー市場に2本目、3本目のソフトを買ってもらう競争が起こる。
- マニア層向けの続編タイトルの売上が落ちてきている。
特に最後の牙城だったRPGでも、売上の低下が見られる。
スクウェアエニックスの上半期決算で、ゲーム部門が赤字だったのは象徴的。
●北米市場が縮小の兆しを見せた。
- 2005年の年間合計ではまだ縮小していないかもしれないが、
9月〜11月の3ヶ月連続で大幅な前年度割れを起こしている。
- 北米でタイトルの選別が厳しくなっている。
XBOX360向けソフトはタイレシオは約4本でかなり売れた。しかしリッジは9000本だった。
(初期ユーザーはPCゲーマー層が多いことや、バンドル効果が大きいことも
考慮に入れなければならないが、いずれにしても日本のゲーム会社が北米で
EA等の海外パブリッシャーよりも不利な戦いを強いられるのは確か)
- 成長神話を力強く主張していたEAでさえ、とうとう落ち込み始めた。
- 欧米のパブリッシャーはまだ目線がゲームに捕らわれている。「アップル効果」を軽視しすぎ。
PSPが失速→XBOX360待ち。年末商戦不調→PS3待ち。
「お客はゲームを欲しがってる。売れないのは別のゲーム機を欲しがってるから」理論。
- 年率1割減が4年続けば、市場規模は6割強になる。
市場が縮小するとき、いったいどういう事が起きるのか?を日本のゲーム会社は
すでに学んでいる「はず」であり、適切なオペレーションを取ると「信じたい」。
- 「国内市場+北米市場」で回収するつもりの大型案件は、非常にリスキーになっている。
- XBOX360が出荷不足だったため、結果的にXBOX360のソフト市場の立ち上がりは
ゆるやかになる。来年前半の据置ゲーム市場は、期待を下回る結果になるかもしれない。
●Web2.0とゲームデザインとポストモダン?
- まず前提。
「これからはゲームもWeb2.0」は誤読の極み。すでにWeb2.0。
流行ってるから取り入れよう、ではない。
今すでに起きている変化を、うまく表現できる言葉だから使っているだけ。
ネットゲームも、ネットサービスの1つなのだから、ネットの変化と無縁ではない。
- Web2.0企業が「Web2.0」という言葉が出てくる前から、存在し、成功したように、
Web2.0ゲームも、Web2.0ゲームサービスも、すでに存在している。
- 元々Web2.0という言葉がなぜ流行ったか。
世の中の色々な変化が肌で感じられた。しかも従来ならリンクしなかった分野が
ネットを通してリンクするようになった。例えば、iPodはAVプレイヤーだが、
iTunesはPCクライアントで、iTunes Music StoreはWebサービス。
「皮膚感覚」ではわかるのだが、言葉が無いと、議論しにくい。
そこにちょうど「Web2.0」という言葉がはまった。
現状ではバブル化してきているが、最初からバブルだったわけではない。
バブル性に目を奪われて本質を見失うようでは、バブルに流されてる人と大差ない。
- ネットでの最新の話題としては『おいでよ どうぶつの森』。
E3での発表以降、mixi的と言われてきたが、色々な人が言及を始めている。
・どうぶつの森ってなんでこんなにおもしろいわけ?・ネットワーク編
・どうぶつの森ってなんでこんなにおもしろいわけ?・共生編
・今度こそ「どうぶつの森 2.0」実現か。ネット対応『おいでよ どうぶつの森』
・古典だから仕方ない
特にいしたにまさき氏は『おいでよ どうぶつの森』について、連日エントリーを
書かれていて、しかも考察が鋭く、面白い。時間があればすべて読んだほうがいい。
しかしゲーム開発者やゲームデザイン学を研究している学生さんが
書いたブログよりも、Web2.0系な人の書いた記事のほうが、よっぽど
鋭いことを書いているという現実。古きを愛する心を否定はしないが、
「Web2.0なんてバブルだ、ブームだ」と噛み付く前に、もうちょっと
やることあるんじゃないの?
- オープンなネットワークはすでにあった。しかしmixiのようなSNSが出てきた。
小さくてクローズドなネットワークだという人もいた。しかしmixiは会員が200万人を超えた。
オンラインゲームはすでにあった。MMORPGもあった。
しかし『おいでよ どうぶつの森』が出てきた。
- ユーザー層の広がりが面白い。
従来から根強いファンはいたが、ファン&ライトユーザー→コアゲーマーの流れが見られる。
・【西村博之】「おいでよ どうぶつの森」に見る次世代ゲームのありかた
・また君か。 「ゲーオタ同調圧力」
(また君か。さんはある意味対極にあるXBOX Live!とWiFi Connectionを
両方こなしている点で希少で、面白く読ませていただいてます)
- 2chでWiFi板が立った。
小さくてクローズドなはずのネットワークが、大きくてオープンなネットワークの
住民を取り込んでいる。
- Web1.0→Web2.0の変化で見逃せないのは、Webがよりリアルに近づいたこと。
Web1.0の時は、リアル(現実)とネット(仮想現実)の距離が遠かったし、そこが受けた。
Web2.0では、よりリアルに近い部分に人が集まり出した。
より生活に密着したことで、多くの人の「感覚」が変わった。この「皮膚感覚」が重要。
・mixi (SNS)のような社会性をもったネットワークサービス
・ブログが履歴書
・アフィリエイト等によるネットで稼げる手段の充実化
・携帯電話のようなデバイスによる、いつでもどこでもインターネット
・ネット通販の成長
- ここ最近のゲームの変化もじつは「皮膚感覚」としては同じ。
ネットゲームも、完全な仮想世界を構築しようというMMORPGから、
よりソーシャルでよりリアルに近いタイプのネットゲームにシフトしている。
- テレビ画面の向こう側へ「没入」していく路線のゲームは元気が無くなっている。
- ゲームの評価を外部に求めるタイプのゲームに未来を感じる。
・『脳を鍛える大人のDSトレーニング』の脳年齢
・『nintendogs』のワイヤレスコミュニケーション。犬かわいいよ、犬。
・『おいでよ どうぶつの森』のコミュニケーション全般。
- かつてのダンスゲームブームにも言えるが、ライトユーザーを取り込む上で、
ゲームの評価の外部性は重要。
- 「ゲームを練習して上手くなることに喜びをおぼえる人」はほとんどいない。
- ゲームの評価の歴史
・スコアによるスキル評価
→うまい人と下手な人の分化。ゲームが上手い事が自慢にならなくなった。
・プレイ時間評価
→ストーリーの導入やRPG的なシステム、アイテム等の収集など、
長い間うまくいったが、開発コストの増加が避けられなくなった。
もっと美麗な映像表現、もっと長大なストーリー、もっと大量のアイテム・・・・。
→ユーザーの年齢が上がるにつれて、時間がかかることが忌避され始めた。
・金銭評価
→カード式のアーケードゲームや、アイテム課金制のオンラインゲーム。
→上流と下流の分化にはマッチするが・・・・。問題も多い。
- ゲーム内でプレイヤーに評価を与えようとする路線が行き詰まってきたため、
ゲームの外に評価を求める流れは、少なくともしばらく継続すると思われる。
*おまけ
ボクの「ゲームデザイン・オブ・ザ・イヤー」はダントツで『脳を鍛える大人のDSトレーニング』ですね。
しかしこのソフト、ゲームデザイン的に優れている点がネット上で全然言及されていないような気がします。ゲームについて語りたがる層と実際に購入している層がズレているといえば、それまでなんですが。そのうち誰か書くだろうと思っていたのに誰も書かないし、年内に書いておかないとダメかなあ・・・・。