最近は「Web2.0」という言葉が流行っているため、勘所の良い娯楽商品が話題になる時に「おっ、これはWeb2.0的だね」と言うソフト制作者が増えつつあります。まだWeb2.0という言葉を知らない人でも、現代的な皮膚感覚としては理解しているので、「なんか、これ、はてなっぽいね」「おおっ、iTunesっぽい」「アマゾンのオススメ的だよね」「グーグル的!」という反応を示したりします。
話題になったゲームや玩具を挙げてみます。
1. スタイリア
なぜ今,韓国ではカジュアルゲームがブームなのか。業界の重鎮Lee,Won Sool氏に聞く「スタイリア」の事業戦略とビジネスモデル
ポータルサイトでカジュアルゲームを展開する、というのが、韓国オンラインゲーム界のトレンドになっています。よりライトウェイトへという流れですね。しかし特に「スタイリア」は、従来よりもさらにライトウェイトなビジネスモデルを打ち出していて、要注目。
○ポータルサイト側でキャラクターを管理して、個々のゲームではそれを使おう
○ゲーム制作者は、キャラクター制作、コミュニティシステム、課金システムを作成しなくてすむ
○ゲーム性に特化できるので、小さい会社にもチャンスがある
○服やキャラクターなどの共通モデルの売上は、ポータルサイトとすべての開発会社で分け合う
(分配比率は接続者数などを元に算出)
○ゲーム内だけのアイテムの売上は、ポータルサイトと担当製作会社で分け合う
これは日本のゲーム業界でも近い問題があると思いますが,例えば,今何か新しいオンラインゲームをサービスインさせようと思うと,ゲームのルール設計やプログラミング,キャラクターのグラフィックモデルなどに加えて,サーバーの設計やユーザー管理システムなど,必要となる周辺部分のシステムを作らなくてはならなくなり,非常に大規模な開発にならざる得ないですよね。
パズルなどのミニゲームの場合はさらに深刻で,事実上,コストをかけずにコンテンツを制作するというのが非常に難しくなっている。それが有料サービスに耐えうるレベルとなればなおさらで,グラフィックスも含めて,結局はいろいろな部分にコストをかけざるを得ません。これは,オンラインゲームの参入障壁を極めて高くしてしまっている要因だといえます。
2. 20Q
バンダイ、人工知能がプレーヤーの思考を読む! 携帯型グッズ「20Q (トゥエンティーキュー)」
「20問の質問で、ユーザーが頭に思い浮かべた物を当てる」という玩具。
以前、同じことをやる20Q.netというサイトが話題になりました。玩具そのもののアイデアが面白いのはもちろん、ネット上でデータベースを鍛えるという作り方も興味深い。ネットを利用することで、従来なら膨大な人力を集積しなければできなかったアイデアが具現化した実例。
また、「20Q」ほどにはWeb2.0的ではないものの、ネット経由でデータの信頼性を築いたという意味では、「だめんずうぉーかー」も挙げておきます。タカラとインデクスが協力して、メールによるアンケートで1万人分の回答を集めました。
3. Google Maps APIゲーム
Google Mapsでレーシング公開!
(Google Mapsで鈴鹿サーキット試走 で好きな場所に移動するbookmarklet)
Google Mapsが発表された当初、掲示板等で「これでシムシティがやりたい」「車で走りたい」という、Google Mapsゲームの妄想ネタが話題になっていました。
面白いのはゲーム派とインターフェース派の意見の相違です。ゲームとして捉えるか、「コンピュータとネットワークを介した何か面白いモノ」と捉えるか。あるいは「1.0」的か「2.0」的か。ゲーム派よりも、インターフェース派の方が多い、という点が現代的な反応だと思いました。
今やWebサービスは人々の生活に密着するようになり、IT産業は「仕事」から、「生活」「娯楽」の領域に溶け込んできました。オンラインサービスとオンラインゲームは同じフィールドで競合する娯楽同士ともいえます。
その時代において、旧来のゲームデザインというのは、コンピュータとネットワークを介した面白い何かを、あまりにも「狭く」まとめています。その「狭さ」を感じている人たちが、「Web2.0」やゲームデザインのポストモダン化という反応を示しているのでしょう。
(追記)
刺激を受けた方がさっそくドライブオンラインゲームを制作されたようです。
多人数でドライブを楽しめ、近くにいる人とチャットできます。
YappoLogs 「Google Maps APIを使ったonline game作りました」
4. 総選挙はてな
総選挙はてな
[渡辺聡・情報化社会の航海図] 予測市場とオンラインゲーム
純粋な意味でのゲームではないかもしれませんが、今やオンラインサービスとオンラインゲームの境界が溶けている、という現実をはっきりさせた実例です。
*アイドルマスター
IDOL,M@STER WEB
「アイドルマスター」の発表を見た時、流行システムがソーシャルブックマーク的だな、と思ったんですよね。
プレイヤーがアイドルをどう育てるか、売り出すかで、結果的に流行が変動するのかな、と。ある程度までは、多くのプレイヤーが選択したジャンルが流行るんですが、集中すれば飽きられるのが早くなるとか。
プレイヤー向けの説明は一応こうなってます。
流行とは、日本中で活動している全アイドルのイメージをもとに、決定される。実際んとこ、どうやって流行を決定しているのかは不明なんですよね。ただ、過去のプレイ日記を読んでいると、仕組みだけ作って自動で決定させているわけではないみたいな印象。運営者が調整しているのでしょう。プレイヤーのプレイ情報を集めて、それを参考にしている可能性もありますが。 Posted by amanoudume at 2005年11月19日 23:00 個別リンク
たとえば、日本中の全アイドルのうち、「VOCALイメージ」で活動しているアイドルの数が一番多ければ、世間では「VOCAL系」が流行していることになるのだ。
流行に乗れれば、オーディションでも有利なことが多いぞ。
しかし、流行は、日々刻々と変化する。その変化を読み、対応していくことも重要だ!
コメント
Web2.0というのがどの程度ゲーム業界に浸透しているのか、見えて来なかったですが、スクエニの社長もちゃんとわかってるんですね。
「ゲームと全然関係ない」企業との提携も示唆--スクエニの中間決算
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000050156,20091230,00.htm
和田社長は、今後ユーザーが端末や通信環境に依存しなくなり、「web2.0ではないが、ネットワーク社会になるとユーザー自身が供給側に成り代わってしまう」という認識を強調。コンテンツからサービス産業にシフトしていく必要があるとし、ユーザーが作った帰属意識の高いコミュニティをいかにサポートして収益化するかということで事業の骨格を考えていくと明言した。「なんでゲームと全然関係ないところが関係会社になっちゃうんだろう、ということが今から起きると思う」と述べ、今後ゲーム業界以外の企業との提携があることも示唆した。
投稿者: ぽっど | 2005年11月21日 18:49
スクウェアエニックスといえば、中島聡氏率いるUI Revolutionを買収していますし、以前からIT業界の動向に敏感でしたね。セットトップボックスの開発など、ゲームのノウハウを活かしてゲーム以外の事を試みてもいます。
最近しつこく書いてますが、今やWebサービスは人々の生活に密着するようになり、IT産業は「仕事」から、「生活」「娯楽」の領域に溶け込んできました。オンラインサービスとオンラインゲームは同じフィールドで競合する娯楽同士ともいえます。
ネット企業がテレビ局を買う時代であり、米国でウォルマートがグーグルを警戒しているという記事が出たと思えば、日本ではヤフーとセブンイレブンが包括的提携を結ぶという時代です。
またゲーム会社にはお金が集まらないのに、ゲーム会社を買収する会社にはお金が集まる時代です。
すごく乱暴に言い換えると、「ゲーム機向けゲーム会社の過去の資産も開発力も評価するけど、お前らいつまでジリ貧事業(ゲーム機向けゲーム)やってんだ、ゴルァ!」という問いかけが突きつけられている時代です。
まぁゲーム会社にしても、投資家のためだけにゲームを作っているわけではない、というのは正論です。しかし同時に、「ジリ貧じゃねえ?」という問いかけに、胸を張って答えられる会社がどれだけあるのか?
投稿者: DAKINI | 2005年11月21日 20:58
SNSやWebサイトとの連携の実例
バンダイがSNS構築ソフト デジモンやたまごっちで展開
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0511/21/news101.html
「超(ちょう)じんせーエンジョイ!たまごっちプラス」
http://www.bandai.co.jp/releases/J2005101101.html
専用ウェブサイトと連動した遊びも楽しめます。パソコンで専用サイト『たまごっちタウン』へアクセスし、たまごっち本体に表示されるログインナンバーを入力すると、自分の育てているたまごっちが『たまごっちタウン』へ遊びに行きます。
投稿者: Dev | 2005年11月23日 03:06
ケータイビジネスにも急速にWeb2.0が浸透しているようです。
ゆめみ、Web2.0を使った携帯サービスを展開する新子会社設立
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/26643.html
ケータイ用語の基礎知識
第251回:Web 2.0 とは
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/keyword/26663.html
投稿者: たつみ | 2005年11月23日 21:44
まさしくWeb2.0的な広がり方の好例ですね。
「ソレハ イキモノ?」――ブログが鍛えた人工知能「20Q」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0511/25/news038.html
投稿者: VIP | 2005年11月25日 23:37
コメント
Web2.0というのがどの程度ゲーム業界に浸透しているのか、見えて来なかったですが、スクエニの社長もちゃんとわかってるんですね。
「ゲームと全然関係ない」企業との提携も示唆--スクエニの中間決算
http://www.lingamesjp.com/bbs/index.htm
和田社長は、今後ユーザーが端末や通信環境に依存しなくなり、「web2.0ではないが、ネットワーク社会になるとユーザー自身が供給側に成り代わってしまう」という認識を強調。コンテンツからサービス産業にシフトしていく必要があるとし、ユーザーが作った帰属意識の高いコミュニティをいかにサポートして収益化するかということで事業の骨格を考えていくと明言した。「なんでゲームと全然関係ないところが関係会社になっちゃうんだろう、ということが今から起きると思う」と述べ、今後ゲーム業界以外の企業との提携があることも示唆した。
投稿者: ぽっど | 2006年07月21日 17:46