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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2005年11月23日

お金をかけずにゲームマニアでいられるようになった時代

マニアでさえゲームに飽きているのが現状

国内のゲーム市場の縮小が続いた結果、簡単にゲームから離れてしまう(と思われている)ライト層よりも、ヘビーゲーマー、マニア層を狙った方がいいのでは、というムードがゲーム業界に生まれていました。 2003年〜2004年、このブログの前身のBBSや、このブログのコメント欄でも、そのような意見がよく出ていました。
    「どうせゲームは続編や版権モノしか売れない」
    「日本のユーザーは保守的」
    「ゲームは所詮ブームだった。ゲームに付いてきてくれるマニア相手にしぼった方がいい」

ボクは当時からそういう論調には違和感をおぼえていました。その違和感は2004年秋にSCEが「スゴイゲーム」というプロモーションを打った時に、さらに大きくなりました。当時は「マニアでさえゲームに飽きているのが現状」という一文を書いたのですが、肌で感じたことではあっても、その現象をうまく説明できませんでした。
(常に”皮膚感覚”は理屈や理論に先行します)

しかしその後、国内のゲーム市場に大きな変化が現れました。
新規タイトルが売れるようになり、むしろ下手な続編よりもずっと売れていますし、商品寿命が短いのが当たり前だったゲーム市場で、驚異的なロングセラーを続けています。またゲーマーの間でも、濃厚なゲームから離れる動きが出てきました。

時間が無い、飽きてきた、ゲームでまで疲れたくない、買ったけど遊んでない積みゲーが増えすぎた・・・・。
話題が消費されるのが早くなり、一度買い逃したゲームは忘れてしまって結局買わない、という傾向が強くなりました。ゲーマー間で共通の話題が減ってきた、とも言われています。つまり「マニアだけはゲームを買ってくれる」という時代から、「マニアでさえゲームに飽きてきた、疲れた、買わない」という時代になってきました。

もちろんマニア層全員がそうなっているわけではなく、いまだに積極的にゲームを購入して、精力的にゲームをこなす人たちも存在しますが、その数は減っていて、市場における影響力が減退しているように見えます。
理由を挙げてみましょう。

    ●お金をかけずにゲームマニアでいられるようになった
    ●オンラインゲームの浸透
    ●ファミコン世代のゲーマー層の年齢が上昇し、時間や小遣いに余裕が無くなった
    ●ネットの浸透で話題の消費が早くなり、従来型のマニア向けマーティングが通用しなくなった
       (商品寿命が短命なので、発売直前に話題性を最大にしようという方法論)
    ●特に男性向けの市場において、嗜好の分散傾向が顕著になった
    ●さすがに続編に飽きてきた

お金をかけずにゲームマニアでいられるようになった

先日紹介した「下流社会」で語られていることですが、「中流」が消失し、「上流」と「下流」に分離しつつあります。そして従来の常識「オククやマニアはお金をたくさん使ってくれる」が崩れてしまったのではないでしょうか。

ARTIFACT 「オタク趣味は金をかけなくてもできるようになった」
90年代にオタク論が盛り上がった時には、オタクは声は大きいし、口うるさいけど、お金は使ってくれる人たちでした。それがオタクマーケティングの根幹を支えていた理屈でしたし、日本の一部のゲーム開発者が取り憑かれた妄念でした。

声は大きいし、口うるさいし、お金も使ってくれない人だけを一生懸命相手にしても仕方ないわけです。マニア層といっても、「お金を出す人」と「お金を出さない人」がいるということをハッキリ認識しておかないと痛い目を見ます。

タイトル数が少なくないこともあって、具体的な名前を挙げようとは思いませんが、妙に勘違いしたオククマーケティングに走ったゲームが出てきています。売れている間は「オタクに媚びない」みたいなことを公言していたのに、いざ売上が落ちてくると、大慌てで安易な萌え要素、エロ要素を入れて、それで時代の変化に追随したと思い込んでいる・・・・。いや、それ、もう終わってるから・・・・。すでに発売されて結果が出たものもあれば、春までに発売されてこれから結果が問われるものもあります。

(誤読する人はいないと思うのですが、ボクは別にマニア向けゲームを批判しているのではありません。ブームや市場動向を考えるなと書いているのでもありません。市場動向を気にするなら、”もっとちゃんと、もっと敏感に”気にしようよ、と書いているのです。)


与太話:2005年は第2次ライトユーザーブーム元年だった?

さあ、ここからは与太話です。
いきなり本題に入りますが、10年前のようにライトユーザーブームが再燃すると思いますか?
2005年の国内ゲーム市場における新規タイトルの成功はそれを感じさせるものがあります。DSのTouch Generationsの成功は誰の目にも明らかですが、「ゲームで勉強する」ことの認知度が高まり、PS2『漢字検定』なども動いているという話を耳にしました。また近年、シリアスゲームに注目が集まっているのも確かです。

なるほど、「ゲーム+実用性」という路線はうまくいっています。しかしそれだけにはとどまりません。
例えば、Touch Generations の第2期ソフトの1つ、『だれでもアソビ大全』がかなり好調です。発売2週で10万本を突破し、少なくとも年末年始の期間までは売れ続けそうな感じです。これは、実用とはちょっと違いますし、毎日トレーニングするタイプのゲームでもありませんし、価格は3800円と少し高めです。

この所、市場が「軽いゲーム」を求める傾向が強まっていることを考えても、単にDSの脳を鍛えるソフトがヒットしたという以上の、もっと広い動きなのではないか、と思えます。もちろん、現時点ではまだ十分な力強さはありません。さらなるヒット、さらなるさらなるヒットが続いて、説得力が生まれます。

思えば、10年前のライトユーザーブームは、SCEがPS1を引っさげてゲーム機ビジネスに参入し、大人のユーザーを市場に呼び戻そうとしたことがきっかけとなり、それに多くのソフトが続いて生まれたものです。2006年、ソフトメーカー各社がどういうソフト戦略を取ってくるか。またそれらのソフトがユーザーの支持を得るかどうか。それ次第でしょう。数年後に振り返った時、あるいは2005年は第2次ライトユーザーブーム元年として記憶されるのかもしれません。

そろそろ起き上がろうか

国内市場は、国内のソフトメーカーにとって強力な地盤です。長期的な戦略として、海外市場でのシェアを回復していくのは大切なんですが、やはりEAを始めとする欧米列強との競争は厳しく、1、2年でシェアを急伸するのは難しい状況です。
セガなどのソフトメーカーの中間決算を見ても、海外市場での苦戦がハッキリわかります。セガでいえば、国内の『ムシキング』のヒットが収益を支えています。スクウェアエニックスにしても、国内の『FF7 アドベントチルドレン』の売上が大きな貢献を果たしました。
輸出産業において、自国の市場が好調というのは世界的な競争で有利なんですね。

今年に入って国内の景気が上向いているのも、いい兆候です。株式市場では個人投資が活発で、バブルの再来とまで言われてます。もちろん「中流」→「上流/下流」の流れなど、バブル期とは状況がかなり違います。
しかし、ようやくいい風が吹きそうかな? という感じがします。10年に1度の風が近づいていると思います。Web2.0、ライトユーザーブーム、・・・・。チャンスは掴んでこそチャンスなので、掴まなければどうしようもありませんけどね。

なにしろここ数年、ゲーム業界はチャンスロスが多かった。
決算という会社の事情が優先され、年度末にタイトルが集中して、ボーナス商戦にタイトルを投入できなかったり、市場動向を見て始めたはずなのに、開発期間が長すぎてソフトが出る頃には完全に火が消えていたり。要は市場の変化に対して、フットワークが重いんですね。

やー、こんなこと書いといてなんですが、ボクはゲーム業界、特にゲーム機向けゲーム会社がとんでもないチャンスロスをしてしまうんじゃないか、という気がしてしょうがない。他の娯楽業界、サービス業界の人たちに、いいトコを持ってかれちゃうんじゃないか。今や、ゲームはゲームの世界だけで競争しているわけではありませんから。ゲーム会社には金が集まらなくても、ゲーム会社を買収する会社には金が集まる、というのが現状です。

まぁこういう事を書くと、必ずシニカルな批判が出てくるんですけどね。不景気→好景気、好景気→不景気の時って、なかなか信じてもらえない。おいおい、こんなにゲーム業界がヤバいのに、なに寝言いってんだよ!みたいな。

もう5年ぐらい前になりますが、ボクがネット上でゲームソフトの売上やマーケティングの話を書いていたら、「はぁ? バカか。ゲーム業界は最強。売れて当然」とか、「売上を気にするのはクリエイターじゃない」とか、「マーケティングとクリエイティブは相容れない」とか、怒る人たちがやってきました。聖域を汚すな、このクズがっ!みたいな感じで。

それから数年が経って、彼らは今どこへ行ったのでしょうか。ここ数年で、国内のゲーム会社がどう変わっていったか。それをよく知っているというのがボクの強みですかね。人に話しても誰にも信じてもらえない変化、そういう変化は一気にやってきて、本当にあっという間に変わっちゃうんです。

背中を丸めて「あー、ちっとも儲からないねー。開発費はかかるねえ。ゴホゴホ」なーんてやってれば、それで何かが解決しますか? 1度でいい、あなたの皮膚感覚を総動員して、もう1度市場の変化を感じてみたらどうでしょう? もちろんボクとは異なる見解になるかもしれません。しかしそうだとしても、あなたの思い込みを砕く、新しい発見は得られるかもしれません。

Posted by amanoudume at 2005年11月23日 00:06 個別リンク
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コメント

RDFファイル (http://amanoudume.s41.xrea.com/index.rdf) が10月21日以降 更新されていないようです。

ご指摘ありがとうございます。
3.2にバージョンアップした後、RSS1.0だけ吐かれてなかった事に気づきました。

また何かありましたら、ご指摘ください。
よろしくお願いいたします。

XBOX360が有利と日頃から力説されているDAKINIさんには、釈迦の耳に念仏かもしれませんが、日本とは対照的に、北米ではマニア層が非常に活発ですね。
XBOX360も上位パッケージの方が人気があり、さらに初日45万台があっという間に売り切れ。
(45万台はTVで流れたのをちらっと聞いただけ)

米Microsoft、Xbox 360を北米地域で発売
シアトルのショップにビル・ゲイツ氏が来店
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20051122/xbox.htm

米国で「Xbox 360」発売開始、上位パッケージを中心に好調な出足
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2005/11/23/101.html

> XMANさん

はい。そうですね。
まだ正確な数字が出ていないのですが、とりあえず
XBOX360の出足は好調だと思います。出荷すれば
しただけ売れるという状態がしばらくは続くでしょう。

北米と日本のユーザー、市場はかなりズレがあると
思います。もちろん今回の記事は何度も「国内の市場」
と書いてあるように、日本の状況について書いた記事で、
北米ではゲーマー層が活発にゲームを購入しています。

日本では市場の変化に伴い、競争のルールが若干
変わりましたが、北米ではまだしばらくは変わらないでしょう。
数年後に変わるとしても、その時には次世代ゲーム機
戦争の決着はついていると思います。

ゲーム機のサイクルは5年と言われていますが、
普及台数競争と言う意味で、決着がつくのは
もっと短い期間です。

これまでの経験則でいえば、すべてのプレイヤーが
揃ってから、2回の年末商戦で決着がつくはずです。
来年、すべての次世代機が揃うとして、1度目が
2006年末、2度目が2007年末。2007年末の商戦で
決着がつくと思います。

北米市場の成長が止まって、競争ルールが変わる前に
XBOX360が先行逃げ切りする、というのがボクの予想です。

初めまして。
日本ではハード売上において携帯ゲーム機(DS、PSP、GBA)が過半数を超える勢いですし、ソフト売上でもDSを中心にヒット作が続いています。

携帯ゲーム機があれば据置ゲーム機は要らないという「据置不要論」さえ現れる始末。次世代機では据置機の需要が確実に減るものと思われます。
この状況をどう推察しておいでか、ご見識をお聞かせください。

現時点での「ファミコン世代からの1ゲーマーの心情」としては、
不要ですね。ただ心情的な問題であって、現実の市場は
そうではないでしょう。

携帯機の好調といっても、ハードの競争があるからで、しかも
それがハードの売上には結びついてもソフトの売上には結実
してません。

ミクロはおそらく一時的な需要でしょうし、PSPも少なくとも日本
では消えていくでしょう。1年後にはやはり据置機にフォーカスが
移っていると思います。
ただ、据置機の開発費高騰についていけない会社や、携帯電話
ゲームを作っていた会社の流入は考えられますから、市場の
「微増」はあるでしょう。

デスクトップ→モバイルという流れは、PCなどコンピューティング
デバイスでは、必然的な流れですが、かなり長期的な傾向で
あって、ゲーム機はまだそこまで行かないでしょう。
PS2.5ぐらいの携帯ゲーム機が、長時間バッテリー、無線通信、
素晴らしいインターフェース、軽量で、TV出力が可能なら、
あるいは「据置機不要」になるのかもしれませんが。

どうぶつの森も、「nintendogs」以降のユーザー層とかぶりますし、流れに完全に乗っている印象。ネットゲームに興味あったけど、手を出さなかったマニアも巻き込んでいるようにも。ライトを取って、マニアも巻き込む方法論がトレンドなんですかねー?

http://ameblo.jp/sinobi/entry-10006474865.html
他機種を含めても、
「第3次スーパーロボット大戦α」「ウイニングイレブン9」に次ぐ
本年度第3位の記録となっており、
週間販売数で30万本を突破するのはほぼ確実、
DS本体も「おいでよ どうぶつの森」効果で大幅に伸びている。

「上流」「下流」の流れ加速

生活程度「中の下」3割、減る「中の中」 電通総研調査
http://www.asahi.com/life/update/1204/003.html

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