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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2005年11月27日

押し寄せる無料ソフトウェアの波

マイクロソフトに押し寄せる無料ソフトウェアの波

    ●マイクロソフト、広告を新たな収益の柱に
    ●「サービス化の波に備えよ」--ビル・ゲイツによる話題のメモを全文公開
    ●「マイクロソフトは広告ビジネスに賭ける」、バルマーCEO

マイクロソフトがWeb2.0の波を無視できなくなり、広告で収入を得るビジネスモデルの 「Windows Live」「Office Live」を発表したことは、みなさんご存知の通りです。現時点では詳細が発表されていないものの、XBOX Liveもまた、広告型のビジネスモデルを導入することを検討しているそうです。

ここ2年ほど、米国のIT産業を中心に「グーグルOS」論が台頭していました。
マイクロソフトの収益源はWindowsとOfficeの売上です。OSやアプリを販売するビジネスモデルのマイクロソフトにとって、無料サービスはビジネスを破壊する天敵です。広告を収益源とするグーグルがWebからデスクトップに無料のサービスを浸透させていくことで、マイクロソフトは自社のビジネスの根幹を脅かされました。

もちろん冷静に考えて、Officeの機能を代替するほどの巨大なWebアプリは現実的とは言いがたいです。またグーグルがクライアントPC用のOSを開発したり、販売することもおそらく無いでしょう。しかしその一方、はたしてOfficeほどの機能が必要なのか? という疑問があります。PCが広く浸透した結果、PCが「仕事」から「生活」「娯楽」の領域に浸透しました。その新領域では、人々は重くて高機能なアプリを使う必要がありません。メールが読めてブラウザが動けば、十分なわけです。さらにiTunesが動けば、音楽ライフも十分です。

PCのビジネスにおいて、インテルやマイクロソフトは最も利益の高い部品(CPUとOS)を支配し、それ以外の部品を他社にまかせました。PCメーカーは価格競争で苦しみ、IBMはPC部門を中国企業に売却しました。マイクロソフトにとって最も脅威なのは、Windowsに対抗するOSではなく、「OSなんて、どれでも変わらない。大切なのはWeb上のサービスだ」という世の中になることです。付加価値の中心がWebサービスに移ってしまうことが、最も怖い変化なのです。

ボクが記憶している限りでは、日本にブログが伝播した当初、真っ先にブログに飛びついた先進的なブロガーの人たちでも、ブログが一般に浸透するかどうかは疑問、という見解が少なくなかったはずです。確かにブログツールを自分でインストールするのは敷居が高い状態でした。
しかしブログのホスティングサービスが始まると、ユーザーはあっという間に増加していきました。ホームページビルダーのようなWebページ作成ツールを買わなくて済み、FTPクライアントで転送せずに済み、過去ログの管理などの苦労が軽減されたからです。無料サービスが有料のクライアントアプリを駆逐する実例といえます。

無料ソフトウェア(サービス)の波の脅威については、FPN 「Googleはネット世界の創造神なのか破壊神なのか」でも非常に面白い指摘をしておられます。

ゲーム機ゲーム会社に押し寄せる無料オンラインゲームの波

オンラインゲームは急速に「無料化」の方向に進んでいます。無料+アイテム(アバター)課金という形ですね。
    ●韓国のカジュアルゲームの台頭
    ●無料MMORPGの台頭

月額会費を支払ってくれるマニア層は限られていて、より多くのユーザーを獲得するには「無料」「軽いゲーム」で、金銭的/時間的な敷居を下げる必要がある、ということをオンラインゲーム各社は悟ったのです。
またコミュニティを育てる重要性がますます認識されています。ポータルサイトとブログやSNSを連携させる動きが活発になっています。参加者を増やして、コミュニティを大きく育て、コミュニティ内で流通する付加価値から収益を上げる。それが最も現代的なオンラインゲームビジネスです。

これは極めてWeb2.0的な方法論ですね。スクウェアエニックスの和田社長が中間決算発表の席で、Web2.0を引き合いに出して、コミュニティから収益を得るビジネスに転換する、と宣言していましたが、今やオンラインゲームの世界において、Web2.0的な考え方は常識となりつつあります。

無料ゲームの浸透は、有料ゲームを基本とするゲーム機ゲームのビジネスを破壊し得るものです。実際、オンラインゲームを遊ぶのは大人のマニアだけという時代は過去の物になり、主婦層や小中学生への無料オンラインゲームの浸透は軽視できなくなりつつあります。また、無料+アイテム課金というビジネスモデルは、「中流」→「上流」「下流」と階層化の進む今の市場にマッチするものです。(参考:下流社会

無料のサービスが有料のパッケージビジネスを縮小させていく(完全な消滅は無いとしても)という流れは、IT産業でも、ゲーム産業でも、起きている現象です。ゲーム機メーカーやゲーム機ゲーム会社の人たちは、マイクロソフトが10年ぶりの方針転換を宣言した時、どう思ったでしょうか?

「おやおや。マイクロソフトもようやく時代の変化に追随してきたね。それにしてもノロい。まるで亀だね」ですか?
「ついにマイクロソフトが本気になったか。ぐずぐずしてはいられないな」ですか?
「ふ−ん。あっちは大変ですなあ。マイクロソフト必死だね(藁」ですか?
「サービス化の波? 何を寝言いってんだ。所詮ブームだよ、ブーム」ですか?

ゲーム機の牙城は堅固だが・・・・

ゲーム機の世界は、PCに比べると、非常によく囲い込まれていますから、守りが堅い、変化の速度が遅いのは確かです。同じPCの上でぶつかり合うグーグルとマイクロソフトと違い、PC(ケータイ)とテレビではプラットフォームが異なりますし、何よりロケーションが異なっています。テレビの前に家族が並んで座っている光景は簡単にイメージできますが、PCを家族が囲んでいる様子は想像しにくいです。

そのため、ゲーム機ゲームの方がゆるやかに縮小させられていくはずです。
ハードウェアとしてのゲーム機が無くなるとは思いません。ただしロイヤリティを中核とするゲーム機ビジネスは衰退するでしょうし、ゲーム機向けのソフト市場や、提供タイトル数、ユーザーのプレイ時間といったものは大幅に縮小していき、ゲーム機向けのビジネスは縮小するでしょう。

本当に致死的なレベルに達するのは5年後ぐらい。 オンラインゲーム市場がゲーム機ゲーム市場に匹敵する規模に成長するのは、それぐらいでしょう。ただし今後、ユーザーの奪い合いが激化していくことを考えると、もう少し前後するかもしれません。

次世代機の5年を経た後、ゲーム機とPCとケータイの市場が横並びになっている可能性はかなり高いわけです。しかしゲーム機が厄介なのは、ライフサイクルの5年間は、(ファームウェアの更新や、型番変更による多少の改造はあるものの)大きくアップデートできないということです。その5年間で、無料のオンラインゲームはますます伸びていきます。
つまり、ゲーム機メーカーはそういう事態を予期して、プラットフォーム競争で勝てるようにしなくてはいけません。
    A)ゲーム機ならではの利点をいかす
    B)ゲーム機が持たない、PCとケータイの利点を取り込む

例えば、Aの1つはリビングにあることですし、Bの1つはネットヘの接統率ですね。
しかしこういったことは、ゲーム機メーカーが勝手に悩めばいいわけで、ゲーム産業を支えるその他大勢の人間が考える義理は何もありません。基本的に、ソフトメーカーはロイヤリティービジネスに縛られたゲーム機から、PCとケータイヘ重心シフトすればいいと思います。もしもゲーム機メーカーが魅力的なプラットフォームを用意するなら、そちらにも、ソフトを供給してあげればいい。

重要なのは、必要なタイミングで必要な決断ができるかどうかです。マイクロソフトはすでに決断しました。あなたはいつ決断しますか? もうしましたか? 新しい市場は小さい状態からしか始まりません。早い段階で多額の資金を投じても、投資の回収が難しい。しかし市場が本当に大きくなってからでは、取り分が無くなってしまいます。
例えば、iPodの開発が2名の社員に下されたのは、2001年初頭。2001年のクリスマスシーズンに最初のiPodが市場に投入され、それから4年。今やアップルの一人勝ちの状況です。しかし逆にいえば、4年はかかったのです。市場の大きさを認識してから、あわてて動き出した日本のメーカーはどうなりましたか?

誤解しないでください。決断するか/しないかという話ではない。いつ決断するのか(決断したのか)という話です。

Posted by amanoudume at 2005年11月27日 00:19 個別リンク
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ホーム/2005-11-28
Excerpt: おはようございます。だんだんとボウリングにハマってきた今日この頃です。土曜日は5ゲームも投げてしまいました。友人には「お前らアホだなw...
Weblog: とんかつ3号 隠れ亭
Tracked: 2005年11月28日 07:43

コメント

>実際、オンラインゲームを遊ぶのは大人のマニアだけ
>という時代は過去の物になり、主婦層や小中学生への
>無料オンラインゲームの浸透

同意します。
任天堂の「おいでよどうぶつの森」なんて明らかにTouch Generationsで捕まえたライトユーザー狙いですが、過去最大の勢いで売れてるのですから。競争が激化していく一方の、オンラインゲーム市場でのコアゲーマーの奪い合いをせずに、いきなりライトユーザーを狙ってきた点は、相変わらず抜け目無いです。

ネットゲームでは360、PS3、ガンホー、スクエニがコアゲーマーをめぐって競合し、ハンゲーム、ネットマーブル、任天堂がライトユーザーをめぐって競合するのではないでしょうか。

http://blogs.itmedia.co.jp/speedfeed/2005/11/web20_a12e.html
今日付けの日経産業新聞に「Web2.0」の簡単な解説が掲載されたようで、geek→ビジネスマンへの伝播がこれまでになく早いですね。
よくわからんけど、何か当たるかもしれんから押さえておこう、という騒ぎでしょうけど(汗

エンタープライズ向けでは、パッケージ販売は衰退する方向のようですね。

今までのやり方は通用しない--激変するソフトウェアビジネス
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000050158,20091704,00.htm
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000050158,20091704-2,00.htm

月額課金から無料+アイテム課金へ料金体制を移行するケースも。
無料化トレンドには逆らえなくなっているようですね。

ネクソンジャパン、MMORPG「アスガルド」
基本料金を無料化しアイテム課金制へ移行
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20051129/asgard.htm

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