任天堂がDSの今後についての発表会「ニンテンドーDS カンファレンス2005秋」を開催しました。すでに日本国内で、出荷360万台、実売300万台以上を達成したと、現状を報告。そして、Wi-Fiコネクションの詳細のほか、年末〜来年にかけて発売が予定されている多数のソフトラインナップが一挙に発表されました。
●ニンテンドーDS カンファレンス 2005秋 任天堂(任天堂公式)
●「ニンテンドーDS カンファレンス 2005秋」開催
●任天堂とバッファローが「ニンテンドーWi-Fiコネクション」で提携
●【任天堂カンファレンス】ニンテンドーDSのタイトルラインアップが発表!
●『FF III』が2006年にニンテンドーDSで復活!
●DSでリアル映像!? 坂口氏『ASH』制作発表
●コーエー『真・三國無双DS』などDS版4作品の制作発表
Wi-Fiコネクションは、店頭1000箇所のほか、全国展開されている無線LANサービス「FREESPOT」3000箇所でも利用可能。もちろん自宅に無線LAN環境があれば、自宅で利用可能。さらに自宅に無線LAN環境のないユーザーのため、「ニンテンドーWi-Fi USBコネクタ」を発売するそうです。WindowsXPのPCにこのUSBコネクタを差し込んで、付属ソフトを実行すれば、Wi-Fi接続が可能になるというものです。
ソフトラインナップはまさに圧倒的の一言。Touch Generation第2弾のほか、多数の新作ソフトが並んでいます。坂口博信氏の手がける「ASH」もついに発表。DSにはまったくの新作が大成功する土壌がありますから、独立したクリエイターの方の活躍が期待されます。
すでに任天堂は「新作ソフトは売れないのが当たり前」という常識を破壊していますが、「ユーザーは作家の名前では買わない」という常識もまた破壊してほしいものです。
サードパーティのソフトも充実。大量の新作発表がありました。さらにスクウェアエニックスが「FF3」のほか、「マリオバスケ3on3」を発表。またこれまで様子見モードだったコーエーも、一気に4タイトルを投入。日本国内のソフトメーカー各社から絶大な支持が集まっています。
SCEは9月を「第2のローンチ」として位置づけていたようです。新色である白PSPを発売するほか、「ウイイレ」というPS2のキラータイトルがPSPで発売されるからです。また9月は、任天堂がGBAの高級機種のミクロを発売するため、DSの広報展開がどうしても弱くなる時期でした。
そうした「反攻」の好条件がそろっていたにもかかわらず、結局PSPはDSの週間販売台数を1度も抜けませんでした。話題性の点では、たしかにミクロが目立ち、DSの話題が少なくなりましたが、ミクロはPSPの「第2のローンチ」も一瞬で吹き飛ばしてしまいました。またDSは「たまごっち」や「逆転裁判」といった人気作が発売されたほか、「敬老の日」に「DSトレーニング」がさらに売れ、販売台数が好調でした。
もちろんSCEも、まだPSPで何らかの展開は続けるつもりでしょう。しかしスクウェアエニックスを始め、国内のソフトメーカー各社がどのハードをより強く支持しているかは、もはや明白でしょう。PSPが国内300万台を実売で突破するのはいつのことでしょう? また、ワンダースワンを越える日はくるのでしょうか? 両ハードの発売から1年たたずして、携帯ゲーム機戦争は終わりました。
携帯電話ゲームの市場が成長した結果、携帯ゲーム機メーカーは必然的に携帯電話を意識せざるを得なくなっています。その結果、任天堂もソニーも共に「携帯電話ではできないこと」を自社のゲーム機に取り入れました。
任天堂はインターフェースで差別化を図りました。元々、携帯電話はインターフェースがゲーム向きではなく、全般的に操作性は悪いですし、複雑な操作のゲームもほとんどありません。ゲーム機はインターフェースが統一されているのが最大の利点ですから、新しいインターフェース(タッチパネル)を標準搭載するのは理にかなった発想です。携帯電話でもごく一部の機種ではタッチパネルを搭載していますが、台数ボリュームが無いため、特化したアプリケーションが数多くうまれる状況ではありません。(専用機戦略がうまくいく例)
一方ソニーはプロセッサ性能で携帯電話を圧倒しようとしました。これは非常に久多良木氏らしい発想です。しかし、そもそもPSシリーズはつねに「同世代のゲーム機の中では最高性能ではない」んですよね。PS1よりもN64のほうが性能が上でしたし、PS2よりもXBOXのほうが性能が上でした。久多良木氏が常々プロセッサ性能にこだわっているのは、インテル型のビジネスを志向していたからで、PSシリーズの成功要因は「プロセッサ性能」ではないんですね。自分の得意分野を見誤っていては、どうにもなりません。
実際、プロセッサ性能にこだわった結果、PSPは多くの失敗をおかしました。開発費が従来の携帯ゲーム機にくらべて高騰し、日本での発売時期に生産が間に合わず、携帯デバイスでは重要なバッテリーの持ち時間ではGBAやDSと比べるべくもありません。
そもそも久多良木氏が好きなインテルにしても、今や、いわゆる「プロセッサ性能至上主義」から方針転換しています。確かに久多良木氏のセンスは、ある部分では優れています。実際、CPUアーキテクチャのトレンドとして、マルチコアを予見し、プロセッサ業界をリーディングしました。しかし肝心要の付加価値の源泉がどこか? すばらしいユーザー体験はなにか?という視点では、目が曇ることが多いように思いますね。
●Intelがクロック至上主義に決別、IDFで次世代アーキテクチャー披露へ
●元麻布春男の週刊PCホットライン 「IDFに見るIntelの新しい進路」
インテルは無線(WiFi、WiMAX)や消費電力というファクターを重視する方針に転換しています。インテルもマルチコア路線に転じるものの、単純な性能向上を求めてのものではありません。そこがPSPやPS3とは決定的に異なる点。333MHzで設計したプロセッサを222MHzで動かす羽目になるような思想とは、根本から違います。
またインテルはChannel Platforms Groupを立ち上げて、新興市場でのPC(およびインテルCPU)の普及に取り組みますし、Digital Health Groupを立ち上げて、医療分野にも進出します。古い時代のインテル、過去の亡霊を模範とした久多良木氏のプロセッサ戦略は、いったいどこへ向かうのでしょうか? そちらの方角にはすでにインテルはいないのです。誰もいない、誰も集まらない世界を思う存分、疾走していただきたい。
ムーアの法則によって半導体が進化を続けていった結果、大多数のユーザーにとって必要十分な機能が満足されて、競争のルールが変わる、という現象が最近あちこちで起きています。
その1つが「チープ革命」です。
ウェブ社会[本当の大変化]はこれから始まる
もともとは「半導体性能は一年半で二倍になる」というシンプルな法則だったものが、現在は広義に「あらゆるIT関連製品のコストは、年率三〇%から四〇%で下落していく」という意味に転じた。新しい製品分野が登場してすぐは「こんな機能もほしい」「もっと高い性能を」「より使いやすく」という顧客ニーズが多いから、製品価格が下落するのではなく、同じ価格の製品の機能・性能・使いやすさが向上していく。しかしその製品分野が十分成熟し、顧客にとって「必要十分」の機能が準備されると、一気に価格下落が急となる。
しかしユーザーはアップルを選んだのです。
「白黒の液晶のiPodminiなんてダメ。カラー液晶じゃなきゃ」「ソニーはプロセッサ技術が高いから、ウォークマンのスタミナ性は圧倒的。技術力の低いアップルの製品には魅力が無い」などという人が、はたして存在するでしょうか?
アップルは、iTunes、シンプルなインターフェース、デザインといった、プロセッサ性能以外の付加価値で勝負して成功をおさめました。「プロセッサ性能」「液晶性能」にこだわらないので、他社よりも低コストで済み、同時に新しい付加価値を作り出したため、高いブランド価値と利益の出せる価格を両立させることができました。
その結果、他社よりもお得な価格で出しても、十分な利益が出せるのです。iPod mini と iPod Shuffleまではこういう流れでした。そしてnano に至っては、台数ボリュームというトップメーカーならではの低コスト要因がプラスされました。
旧来の競争では、ムーアの法則どおりの性能上昇曲線にしたがい、製品は性能と機能を強化すべきでした。しかしムーアの法則が長く続き、ユーザーの「必要十分」を満たしたとき、ムーアの法則どおりの性能上昇曲線に従う必要はなくなったのです。あえてスローカーブを描くという戦略が成り立つようになったのです。
それにしても、この1年のマーケットの変化はすさまじいものがあります。昨年末、DSとPSPのどちらが優勢か?という議論が盛んでした。PSPがDSを凌駕するという意見もあれば、DSがPSPを凌駕するという意見もあ
りました。しかし、ここまで短期間で決着がつくと予想していた人はそう多くなかったと思います。
ゲーム業界始まって以来の史上最大の初期不良騒動、PSPの初期出荷不足といったSCEの失敗も大きいものの、それだけではないでしょう。やはりマーケットの変化が一番の要因だと思います。この変化については、過去の記事でもふれていますので、興味をお持ちの方はご一読ください。
●そして「新規ソフトが売れない」は死語になった
●成功しているソフト企業の共通点