ゲームソフト市場に明らかな変化が表れています。
電撃オンラインの集計によると、DSの「やわらかあたま塾」が2週目にして、12万5000本。驚異的なのは、発売初週と同じペースで売れていること。これは「大人のDSトレーニング」と同じ現象で、ゲームソフトの販売動向としては、非常にめずらしい。「大人のDSトレーニング」は毎週3万〜3万5000本売れ続けて、累計26万本。30万本突破は確実で、発売から2ヶ月が経過しても販売ペースがまったく落ちないため、いったいどこまで伸びるのか、見当がつかない状態です。
また興味深いのは、電撃編集部による分析結果。
ちなみに、『nintendogs』が発売された4月18日週以降のDSソフト市場に占める前記3タイトルの販売構成比は、実に54.5%(『DS楽引辞典』を加えると55.6%)。従来のDSユーザーとは異なる女性層や大人層といった新規ユーザーを獲得しながら、市場を大きく牽引しています。明らかに新規ユーザーが開拓されていることが数字の上で証明されたといえます。
電撃編集部が取り上げた3本のゲームソフトの特徴を一言であらわすと、「敷居の低さ」でしょう。
○値段が安い (「やわらかあたま塾」「大人のDSトレーニング」)
○インターフェイスが優れている (「大人のDSトレーニング」)
○腕前が上達しなくても、ゲームのほとんどの要素にアクセス可能になる (3タイトルとも)
○一般のユーザーが興味をひく題材である (脳、犬といったテーマ)
○関連性が高い商品を展開することで、販売の相乗効果が発揮される (「やわらかあたま塾」「大人のDSトレーニング」)
また、こうした新しいソフトの販売動向で特徴的なのは
○長く売れつづけている
○発売前よりも、発売後に盛り上がっている
という点です。
これは「長期持続型」の成功といえます。
「問題点噴出!米映画産業」でかいたように、多くのコンテンツは発売日前に盛り上げて、発売日近辺で集中的に投資を回収しようとする「短期決戦型」の傾向を強めています。しかし一方で、ロングテール論の台頭など、長期持続型の成功例があちこちで芽を出しつつあります。
ネットというのは、情報の伝達が早いですから、それに背中を押される形で発売前に一気に盛り上げる方向にむかうのか、あるいは逆に口コミのパワーを利用して、発売後に盛り上げていくのか。両極端の方法論が顕在化している点が興味深いですね。
ただ、発売前に短期決戦的に盛り上げようとする方法論は、すでにタイトルの名前が十分知られているときは有効ですが、まったく新しいソフト、新しい名前を広げようとするときには、あまりうまくいかない。かえって、発売前には話題が盛り上がっていたのに、発売後に話題がなくなってしまう、という「短命化」をまねく危険があります。
たとえば、以前このブログで販売動向を分析した「メテオス」の場合、発売前にはかなり(といってもゲーマー系ブログで)盛り上がっていたのに、発売後にはファーストプレイの感想が1日、2日書かれたぐらいで、話題の求心力が失われてしまったように見えました。当時うちのブログにしても、よそにしても、コメント欄にやってきたゲーム通の方が、「今時パズルゲームが売れるとは限らない」とか「今時、新規ソフトが売れないのは常識」とか、そういうことを断言しておられました。
もちろん、新規ソフトを売るのがものすごく難しいというのは事実ですし、ボクも同意します。けれどもその認識がいきすぎて、「売れないのが常識」というようなことになってしまうと、さすがに、ちょっと違うんじゃないか?と思います。
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