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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2005年06月15日

狭くなりすぎた「ゲーム機」ビジネス

PSPハックで広がるPSPワールド

PSPがゲーム機以外の何かになりつつあるようです。
ゲーム機としては、5月23日〜2005年5月29日の週間ソフト販売でシェア0%というXbox級の数字をたたき出して、「ソフトが売れないPSP」「タイレシオが1.0を切るのも時間の問題」などと話題になっていますし、販売台数も長期低下傾向に歯止めがかかりません。

その一方で、PSPハック系が非常に活発です。
PSPでも動く! アドベンチャー作成ツール「カルナノード」PSP版ビューアー制作中PC
でもPSPでも動くのはなんとも素敵。
フロムソフトウェアの「アドベンチャープレイヤー」もビューアー自体が無料で、PSPユーザーなら誰でも見られるというのなら、すごく魅力的なんです
が・・・・。プレーヤーがUMDゲームで供給されるため、作った物を見てもらえるのが数千円出してプレーヤーを買った人に限定されるのが残念。「見てもら
える人数」が限られてしまうのは、コンテンツ・プラットフォームとして致命的な弱点ですね。
(もっとも、忍氏のブログによれば、作る楽しさ以外でも、十分お買い得な内容になっているようです。忍之閻魔帳:コンストラクション部分は無視しても充分お買い得「アドベンチャープレイヤー」

また、PSPへの音楽ファイル転送はツールが充実してきましたし、PodCastingならぬ「PSP Casting」なんてものも現れてきました。情報考学 Passion For The Future「PSPの第一印象、今年はPSP Hacksが流行する?」で予想されたような状況になりつつあります。

エコシステムが回るのはPS3よりもPSP

ゲームの話題が全然なく、UMDビデオもアダルトUMDの話ばかりがあふれ返る中、PSPを盛り上げるのはこういうユーザー側が作ったアプリ群です。ゲーム会社はゲームしか作ろうとしませんし、映像業界もアダルトばかり積極的。SCEの中の人も、現状は当然理解してるわけですから、こっち方面を盛り上げる努力をしたほうがいいでしょう。

今までは、僕らがライブラリを提供したり、ゲームソフトメーカーがインハウスで作ったりしてやってきた。でも、もうそれは無理で
しょう。何するにしても、もっと広がりが必要。でも、そうなって来ると思う。例えば、PSPで僕らがびっくりしたのは、iTunesとの同期ソフトが速攻
で出た。面白いと思ってもらえると、その上で動く色々なものが出てくる。

PS3はHDD+Linuxで汎用コンピュータと主張するらしいですが、それではPS2Linuxと同じ結果になってしまいます。あの失敗から何も学んで
いません。PS3はHDDが標準搭載されないため、HDDの普及率はPS2並みかそれ以下と予想されます。
そういう進歩の無いPS3よりも、PSPのほうがよっぽどコンピュータとしてのエコシステムは回しやすいはずです。iPodが登場し、ユーザーの手で
iPodderが生み出され、PodCastingがまたたく間に広がったように、PSPには面白いプラットフォームになるチャンスがあります。とはい
え、現状ではまだiPodの後追いレベル。
ここからの盛り上げには、SCEのバックアップも重要。
現状では、PSPハック系のソフトに手を出して使いこなしている人は少ないでしょう。ネットで積極的に情報を集めている層は限定されます。エミュレータは
さすがに無理としても、PSPハック系の成果物を公式ソフトに取り込んだり、メディアで紹介してもらったり、そういう広げる努力が大切。理想を言えば、開
発環境のオープン化、メモステ駆動のアプリケーションの公式な容認もあっていい。
社長がハック系を無邪気に喜んでいるだけでは、お話になりません。
「ゲーム機」ビジネスが「ゲーム機以外」のビジネスを狭める
ここで最大のネックはUMD。そしてゲー
ム機はアプリ1本につきロイヤリティーを取っているということ。(公式には)PCみたいに誰もがアプリを作って、無料で配布したりできません。そのために
アドベンチャープレイヤーも、FLASH等の通常のコンストラクションツール(ツールは有料で、プレーヤーが無料)とは逆の方法(ツールは無料で、プレー
ヤーが有料)を取らざるを得ませんでした。メモステ駆動のアプリがバンバン出てくれば・・・・と思っても、今のゲーム機ビジネスの枠組みではSCEがもう
かりません。
PS3もこの点は同じで、本気でコンピュータとしてのエコシステムを回したいなら、任天堂が始めてSCEが改良した「TVゲーム機のロイヤリティビジネ
ス」自体を自己改革すべき。
任天堂がやっていた温室ビジネスは、品質管理(および任天堂の利益維持)という点では優れていましたが、あまりにも「ゲーム」を狭くしすぎました。ですか
らROMカートリッジからディスクメディアへの移行は、文化論としても
味がありました。任天堂が負けてSCEが勝ったのは、ゲーム業界のために良かったと思います。
ところがそれから10年経って、もはや「ディスクメディアでは狭い」という状況になりつつあります。実際、UMDにこだわらなければ、PSPはまぁゲーム
機としてはわかりませんが、メディアプレーヤーあるいはまったく新しいポータブルコンピュータとしては、もっと広い範囲で成功していたはず。SCEがディ
スクにこだわり続けるなら、文化論として、SCEはもう要らない。負けたほうがいい。
ただねえ・・・・じゃあ、かわりに勝つのがマイクロソフトか?任天堂か?というと、どっちも微妙ではあって。任天堂はPCとの接続性については、SCEよ
りも保守的(まぁ「プレイやん」等を見るかぎり、最近は少し改善されてきてますが)。マイクロソフトはPCとの連携という点ではすばらしいものの、
XBOXビジネスはできるだけクローズドな方向に持っていこうとしているように見えます。つまり誰も新時代の王様たる資格がない。
その辺が、「次の10年」を考えると「ゲーム機」(ビジネス)は滅んだほうがいいかも、とボクが書いている理由なんですよね。とはいえ、いきなり消えても
らっても困るので、マイクロソフトが伸びてきてSCEと据置ゲーム機の世界シェアを分け合うとか、日本企業と米国企業が天下を二分する、というような状況
になって、その後「次世代で加速するマルチプラットフォーム」みたいにプラットフォームホルダーが弱体化していって、徐々にゲーム機ビジネスが崩壊するのが一番マシなシナリオかもしれません。

しかし・・・・

その一方で、IBMがPCからゲーム機へ半導体戦略を切り替えている点や、
半導体の性能競争をドライブする主役がPCからゲーム機になりつつある点も忘れてはいけないでしょうね。ソフトウェアビジネスとしては明らかに古くなりつ
つあるものの、ハードウェアとしての注目度はむしろ向上しているわけです。というのは、仕事で使う分にはコンピュータは大多数のユーザーが満足できるレベ
ルに達してしまったからです。一方、エンターテインメントというのは、欲望、快感を追求する世界。性能への要求レベルが仕事用途よりも高い。性能向上を至
上命題としてドライブしてきた半導体業界が、エンターテインメントへシフトするのは自然な現象です。
(参考:高性能な処理能力はもちろん、ゲームを前進させる。

また、ここ最近従来の「ゲーム」の定義を広げるようなソフトが次々とリリースされていて、狭くなった「ゲーム機」の表現世界が広がりつつあることも、無視できません。(参考:「ゲーム」の定義を広げようとする「ゲーム機」ホルダー
他には、マイクロソフトが「PCゲーム→ゲーム機(XBOX360)」の動きを強めており、PCゲーム市場はさらに縮小していこうとしています。
こうした「ゲーム機中心主義」「ゲーム機志向」の動きと、先ほど述べた「ゲーム機」ビジネスの限界の露呈。ゲーム機にゲーム機以外の付加価値を集めようと
する動きが活発になるほど、それは今のゲーム機ビジネスを破壊する圧力になります。その結果、どういう新しいビジネスが生まれるのか?
それが「次の10年」の大きなポイントだと思います。

Posted by amanoudume at 2005年06月15日 21:22 個別リンク
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Listed below are links to weblogs that reference '狭くなりすぎた「ゲーム機」ビジネス' from 発熱地帯.
PSPで開催中の祭について
Excerpt: 発熱地帯さんが「狭くなりすぎた「ゲーム機」ビジネス 」で取り上げている通り、ただいまPSPでハッキング祭が開催中です(笑)インターネット上のGEEKが踊り、それを囃したてる2ちゃんねらーという構図 ですが、徐々に規模を拡大して、祭としての様相を呈してきました。イ
Weblog: ゲームのマボロシ
Tracked: 2005年06月16日 13:36
PSP で一番驚いたのは?
Excerpt:  PC Watchのこの記事で、速攻でiTunes同期ソフトが出て驚いたとあるが、PSP で動く過去のハードのエミュレータが出た時と、UMD の吸出しに成功された時と、どれが一番の驚きだったのだらう? いや、一番驚いたのは、発熱地帯さんが言及している、週間ソフト販売でシェア...
Weblog: 神崎隼BLOG
Tracked: 2005年06月16日 15:36