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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2003年12月28日

ゲーム業界の構造的変換を示す「遠心力」というキーワード

またもや社内ページで使ったネタをこちらにも。最近多いけど。

梅田望夫・英語で読むITトレンド「PC技術の構造的転換を示す「遠心力」というキーワード」
(ボクは米国のIT業界で起きていることと同じような現象が、ゲーム業界でも起きているという考えをもっているため、梅田望夫氏のBLOGからの引用が最近かなり増えています。)
IT業界とゲーム業界を同一に捉えるわけにはもちろんいかないが、ゲーム業界においても「遠心力」という言葉はキーワードになってきたと強く感じる次第だ。

求心力(centripetal force)に支配されてきたこれまでのIT産業。すべてのものを中央のpersonal computing deviceに近づけようとするのが求心力なのに対して、ワイヤレス革命がもたらすのは遠心力。PCをバラバラにしていく方向に働く力のことである。

1つ前の産業構造転換をもたらした心臓部であるPCがdisintegrateされる新時代だから、25年ぶりの産業構造転換だというわけ。

PC時代のルールはintegration。つまり、ありとあらゆるコンポーネントを1つのPCの中にintegrateしたから、それらを機能させるためのソフトも必要だった。周辺機器はPCと物理的に接続するという前提条件で作られていた。
ここまで読んで、「何だ、これはユビキタスについて日本で語られている話に似ているではないか」と思った人も居るかもしれない。

ゲームの場合は、これはむしろソフトとソフトメーカーにおいて、はっきり発現している。ファミコンの登場によって、TVゲーム機の周辺、すなわりPCゲーム、アーケードゲーム、玩具、その他の分野からじつに色々な会社がTVゲームという市場に集まってきた。

またゲーム機のハードウェアも、基本的にはコンポーネントを増やしていく一方の流れだった。XBOXに至っては、ネットワークアダプタとHDDまで搭載することになった。周辺機器との接続性についても、基本的にはワイヤードで、しかもTVゲーム機を中心とした接続法が至極当然のように思われてきた。
以上が「求心力」の時代。

しかし今後は逆になる。「遠心力」の時代。TVゲーム機という世界から色々な物が出て行く時代。スクウェアエニックスは今期、携帯電話とPCという非TVゲーム機分野の売上が全体の4割を占める計画。コーエーはオンラインゲームはPS2ではなく、PC優先で出していくことに方針転換。セガもTVゲーム機以外の路線を積極的に拡大していく。

スクウェア・エニックスは、パソコンや携帯電話などゲーム機以外へのコンテンツ(情報の内容)供給を拡大する。半導体メーカーやパソコン周辺機器会社、通信会社との連携を強化、通信技術などの発達でゲームを遊び環境が拡大しているのに対応する。今3月期は売り上げ構成の約4割をゲームソフト以外の分野にする見込み。
元々、TVゲームの市場というのは、周辺の様々な会社が集まり、豊富で多様なコンテンツを送り出すことで支えられてきたもの。それは「温室」にたとえるこ
とができる。

昔はTVゲームという「温室」の外には荒野しか広がっていなかった。だからみんな、ショバ代を払ってでもそこに集まった。しかし今は違う。外には花畑が広がっている。ショバ代を取られることのない広大な、とても広大な世界。しかも温室はどうも荒れてきた(w 昔ほど居心地がよろしくない。
「おーい、みんな。ちょっと温室が荒れてるんだ。一緒に直してくれないか?」
「はぁ? 俺たちが何のために金を払っていると思ってるんだ。温室の世話は庭師の仕事だろ(藁」

TVゲームという「温室」で培った資産、ノウハウ、技術が外の世界に広がっていく。TVゲーム文化は非常にすばらしい高みに達した。周辺に存在する、たとえばPCゲーム文化を見事に粉砕してのけた。PS2はPCゲーム文化に対して、これ以上無いほど強烈な一撃をお見舞いした。現に、PCゲーム市場は年々縮小していった。PCゲームオンリーの開発会社は好調とされる海外においても、パブリッシャーから見切られ、見捨てられ、潰れていっている。大作ソフトは延期に次ぐ延期で、いつまで経っても出ない。PCゲーム文化は滅亡寸前。いや滅亡したと断言してもかまわないかもしれない。もはや誤差程度の違いだ。ライターの質もますます低下し、糞みたいな記事をたれ流しているだけだ。PCゲーム文化の死。

まさに「求心力」の時代が絶頂を極めたのが去年から今年の前半にかけての話。そして「遠心力」の時代になった。ゲームのユビキタス時代。すなわちゲームがありとあらゆる所に溶けていく時代。これは以前から何度もしつこく書いている通りだ。携帯電話とPC以外にも、パチンコ・パチスロへの浸透、さらにはファミレスでのゲーム端末、将来的にはカーナビへのゲーム搭載(後部座席の子供たち用)もあるかもしれない。

こうしてあらゆるコンピュータデバイスにゲームが溶けていく。PSXはSCEにいわせれば、ゲームのリアルタイム性とインタラクティブのセンスをデジタル家電の世界に持ち込んだ自慢の製品らしいが、将来的にはスクウェアやナムコがその2Dメニューのセンスをソニーや東芝やパナソニックのデジタル家電のメニュー開発に活かすかもしれない。そういうことも十分ありえる。

またXavixにしても、あれはハード的にも人材的にも、TVゲームが玩具に溶けていった姿といえる(だから以前、XavixとPSXを比較したわけだ)。今、一見あちこちで起きている現象、それらをすべてカバーできるキーワード、それは確かに「遠心力」の一語に他ならないのである。

Posted by amanoudume at 2003年12月28日 04:43 個別リンク

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