PCゲーム市場は年々、縮小しつつあります。一番の要因は、PS2の登場によって、従来ならPCゲームを購入していた大人層がPCゲームではなく、PS2
を購入し、PS2のゲームを遊んでいること。
無論、あらゆるPCゲームがTVゲーム機で満足ゆくレベルに達するわけではありませんが(解像度やマウス等)、大多数のゲームがPS2で遊んだほうが遊び
やすく、快適。(操作の簡単さ、PCとTVの設置位置の違い、ディスプレイとTVの大きさの違い。フレームレートや動作環境の安定性、……)
ソニーの世界市場における最大の貢献は、従来、最も攻略が難しかった欧州市場の発掘ですが、ここは同時に、PCゲームの比率が極めて高い市場でもありまし
た。PS1、PS2と2世代続いたTVゲーム機の浸透により、TVゲーム機はかなりの勢いで浸透しています。(欧州はソニーブランドが強力な地域でもあ
る)
マルチプラットフォーム化が進み、TVゲームでPCゲームが遊べるようになっただけでなく、有力マルチタイトルのかなりがTVゲーム版のほうが早く遊べる
ようになったのも大きいでしょう。
アジア市場はPCゲームの方がまだまだ圧倒的ではあるが、有力ソフトメーカーは、TVゲームという巨大市場への関心を日増しに高めている。たとえば韓国は
元々市場が非常に小さいため、韓国外での市場展開が大きな課題になっているわけですが、そうであれば、縮小しつつあるPCゲーム市場よりも、TVゲーム市
場に乗り出したほうが将来的には可能性があります。今は、過渡期で、自分たちの得意とするPCゲームをやりつつ、少しずつ勉強している状態でしょうね。
もちろん、日欧米のパブリッシャーがアジアの開発会社に目をつけ始めたことも背景にはあります。ビッグチャンスはTVゲーム市場にある。
PCでしか開発できないような開発会社は、むしろ淘汰の対象になりつつあって、TVゲーム版との同時開発が求められるようになっています。パブリッシャー
側が、時代遅れの開発会社を切りはじめました。
移行できない連中はかわいそうだが、消えてくれ、ということ。
安易な「パブリッシャーVS開発会社」の構図を持ち込むのは早計と単なるプロパガンダであって、時代遅れの人間を企業が解雇するのと変わりません(まぁ従
業員と会社間の契約をいっしょにするのは乱暴ではありますが)。
海外が強いといっても、一方では負け組にはシビアな淘汰が起こっています。
海外の状況に同情? 少なくともボクにそんな”全世界労働組合”的な発想はありません。少なくともこのBBSにおいては、そんな主張、プロパガンダを許容
するつもりもない。おかしな”政治”の場にされては困る。
ただ、日本国内に限定すれば、開発者リソースの損失を最低限に抑えるべきということに関心があります。日本のゲーム業界は今、かなり不景気ですし、また北
米市場拡大→北米で売れるゲームは
北米で作るべし→北米の開発人員増加という論理が急速に広まっているため、企業の総雇用能力が一定と仮定するなら、日本の雇用状況はどちらかといえば、悪
化しつつあります。
2年ぐらい前なら、「業界再編」というキーワードの下に、中小の開発会社が潰れた結果、流出した人材を確保して、総開発能力を高めようという人的戦略が大
手ソフトメーカーにはありました。現在はしりませんが、カプコンはそうでしたし、ナムコも去年は国内の開発人員を3年で倍増すると息巻いていました。
無論、理性的な会社であれば、一時の流行り病のような、SARSのような安易な論理に軽挙妄動せず、まぁ確かに北米での人員は増加させるけれども、国内の
人員の安定確保は継続するでしょう。
ただ、さすがにあらゆる会社、あらゆる経営者が理性的であると信じるわけにはいきません。過去にどれだけ短期的近視眼的な選択によって、失敗を繰り返して
きた人間でも、むしろそういう人間だからこそ、安易な論理につき動かされて、軽挙してしまうことはあるでしょう。
日本は会社単位で、数年かけて人材を育成する(現場で勝手に育つのもふくむ)環境であり、せっかく成長した人たちがたかだかの不景気程度で、この2,3年
の状況程度で、もったいない結果になってしまっては、中長期的には日本のゲーム産業は大きな力を失ってしまう危険性があります。
そういう意味では、「安易なアメリカ優位論」「日本の開発者は時代遅れの骨董品」「技術者がだめぽ」的なプロパガンダ・イメージを広めている人間というの
は、日本ゲーム産業の敵でしかない、とさえ言えます。冷静な議論は歓迎だが、海外の一時の状況だけを見た、チープな主張は、短期的には日本のゲーム開発者
の低減、中長期的には日本の総開発能力の低下、さらに超長期的には”国内市場軽視による”次世代のゲーム市場ならびに次世代のゲーム開発者の低下をまねき
ます。
また一方で、海外も必死なわけです。
海外のゲーム市場が好調とはいえ、一方で淘汰も起きています。また、技術力が高そうなイメージのある会社でさえ、もはやミドルウェアが無ければ、開発でき
なかったり、GPUメーカーにシェ―ダーを書いてもらわなければならなかったり、技術の空洞化は着実に進んでいます。
特にPCゲームしか作れない会社は必死でしょうし、狭い意味での技術に夢中になって、ゲームを作ることを忘れてしまったゲーム会社、”技術オタクにはたま
らんけどちっとも面白くない”ゲームしか作れない海外技術者は必死でしょう。
なぜなら彼らの未来は全然明るくないから。ゲーム以外のソフトウェア産業や、ハリウッドからの人材流入は続いており、むしろ中途半端な連中は徐々に淘汰さ
れていきます。また、シリコンバレーの状況を見れば、ゲーム業界でも同様に、技術の海外へのアウトソーシングは欧米では進んでいくでしょう。
するとどうなるか。
アメリカよりも人件費の安い日本、さらに安いアジアに仕事が流れていくことになるわけです。だから必死な人たちは、自分たちを擁護するためのロジックを作
る必要がある。日本のプログラマーはアセンブラとCしか知らないだの、初等的な数学と物理しか知らないだの、必ずしも実態とかけ離れたちゃんちゃらおかし
いプロパガンダ・イメージを捏造して、全世界にばら撒きます。
「そうかー。日本は技術力ないね。だめだね。君ら、金はかかるのに”いつまで経ってもゲームが完成しないから、切ろうかと思ってたんだけど、それならもう
少し猶予をあげようかな」なんて、言われるのを期待しているのかどうかw
まぁ働く人間が、自分の有用性を主張するのは彼らの権利であり、当然の行為でしょうから、くだらぬ妄言には反論するにしても、それをどうこういうつもりは
ありません。
実際に日本の技術を云々している人たちの大半が、「あれ、そういえば最近ゲームがまったく完成してませんね」とか「なんかやってたんですか、最近?」とい
う人たちであるのは指摘しておきますが。
しかしそういう海外開発者の論理に乗っかって、日本のゲーム産業の片隅でチュウチュウ蜜を吸いながら、日本のゲーム産業の衰退に嬉々として手を貸している
連中もいるわけです。
現状の課題に真摯に取り組むことと、安易なプロパガンダ・イメージをばら撒くことはまったく別です。
梅田望夫・英語で読むITトレンド
「年収500〜1000万円の仕事がなくなっていく米国」>
「グローバルに仕事が移転する時代では、ある時首を切られて、
> それ以降全く仕事がなくなってしまう、ということが十分起こり得る。 >
IBMをはじめとするIT企業は、オフショアリングとか称して、
> どんどんソフトウェア関係の仕事を海外に移転させている
海外ではパブリッシャー側の管理がシビアな管理に向かっている。いくら市場規模が大きくても、海外のゲーム開発会社が誰も彼も同じだけのチャンスを与えら
れるわけでも、同じ扱いを受けるわけでもない。むしろ勝ち組と負け組の選別がますます加速し、激化している。
スケジュール内でソフトを開発しきれない開発会社なんて要らないのである。今はまだ数年前の論理で動いている会社も存在するが、生き残れるのは過去の資産
(過去に稼いだ資金、ブランド等)をかなり持っている会社だけで、そうした会社も過去の資産を食いつぶしているのが実情。
結局大作FPSはどれもこれも来年に延期してしまった。思えば、ここ数年で納期を守って、高い品質のソフトを発売してきたのは、基本的にTVゲーム機系の
会社ばかりである。
Splinter Cell ← レアのGolden Eyeチームの系譜。
Metroid Prime ← レトロスタジオ。元イグアナ(テュロックチームの系譜)。
Medal Of シリーズ ← PS1から出発した珍しいケース。
Halo ← BUNGIE。XBOXを機にPCからコンシューマへ移った賢明な会社。
まだコンシューマーの空気になじんでないせいかどうかは知らないが、
「来年春発売」から「発売延期」になるという噂が流れている。