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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2003年12月28日

今後10年の戦略とは

ゲームの世界にもやってきた「価格破壊の10年」

梅田望夫・英語で読むITトレンド
IT産業に迫る「価格破壊の10年」

ここ数年、そしてこれからの10年を表すキーワードが「Cheap」だという話。
まずはGoogle。
> 1万2000台のCheap server(1台平均2000ドル)で、1億7000万ページビュー
> を処理するシステムを構築している。そしてその上、壊れたサーバーは捨てて、
> 「剃刀の刃」を取り替えるように新しいもので置き換える。サービス契約も
> しない(ここがベンダー側の利益になる部分)。だからシステム開発コストの
> 常識に比べて、10分の1でシステム構築が行なわれている。

> インドと中国については、説明の要もあるまい。労賃が安いところへのアウト
> ソーシングがどんどん進んでいる。

> これから登場する格安の店で簡単に買えてしまうWi-Fi等の無線製品群は、
> ミニコンを駆逐したPCのようなもの。何が駆逐される側の現代のミニコン
> なのか。それは3G等のWireless Wide Area Networksだというわけである。

梅田望夫・英語で読むITトレンド
グーグルとデルとウォルマートの共通点
ゲー
ムもそれ以外の産業も、多くの企業にとって、今が非常に苦しい時期なのは確か。その最大の悩みは価格破壊。デフレ。ハードにしろ、ソフトにしろ、どんどん
価格を下げざるを得ない状況が続いている。そして価格が下がれば、その分製造費や開発費を削らなければならず、例えば人件費の削減、雇用の削減という厳し
い事実につき当たる。
それは一時的な問題ではなく、今後ずっと続く。まさに「価格破壊の10年」はまだ始まったばかり。
   えっ、苦しいって?
   大丈夫、来年はもっと苦しい。
   再来年はもっともっと苦しい。
これは時代の変化であって、台風のような一過性の苦しさではない。おそらく。
> そこで、彼は2つの道しかないと書く。1つはLow Disruption。
> もう1つはHigh Disruptionである。その中間はあり得ないのだと。
これは既に家電にも、ゲーム機にも起きている。例えばゲーム機でいえば、PS1(49ドル)、そして今年の年末のGC(99ドル)が低価格帯。PS2と
XBOXが高価格帯。日本では2層の市場を意識する機会は少ないかもしれないが、欧米でははっきり確立した市場になっている。
# 読者の中で、日本人の感覚が抜けられない人は、同じく梅田望夫氏の「日本とあまりにも違う家電に対する米国の認識」を読むことをおすすめする。

> びっくりするほど安い製品やサービスを提供しつつ、価格破壊革
> 命をレバレッジしてそれでも利益が出るように事業展開するのが、
> Low Disruptionである。その代表例にGoogleを挙げる。

> Googleという会社の凄みは、新しいイノベーションとそれを支える
> 技術が高度だというだけでなく、産業の水準に対して10分の1の
> コストで、Karlgaardの言葉を借りれば「価格破壊革命をちゃんと
> レバレッジして」システムを実装してしまっている点にもある。

自分自身をどう位置づけるか
ゲーム機のハードとソフトの価格競争はここ数年、激化している。ハードの値下げもそうだが、バンドルソフトの本数の増加はとくに欧州で深刻。ソフトの価格
も下がっている。日本も廉価版や低価格ソフトか、高い金を出してもらえる大作ソフトしか、売れなくなっている。LowかHighか。中間は生き残れない。
自分を、自分の商品をどう位置づけるのか、それが明確でなければ、売れないのである。また、低く売る場合にも、身銭を切って売るという論理はもはや通じな
い。無限に血を流すだけである。今だにそんなことを真顔で言っている人がゲーム業界にはいるようなのだが(例えばXBOX信者とか)、時代錯誤もはなはだ
しい。「中間」の市場が成立していた頃なら、まだ血を流して勝つという戦略はあったかも
しれないが、今は気が遠くなるほどの血を流しても、それでも市場は買えないのである。それぐらい価格破壊が進んでいるし、今後はさらに進んでいく。
逆に、Highの例を挙げるなら、「GT」や「ウイイレ」。GTにあわせて多くの人が買い、そして1万円もするのに30万台売れた。あれが5000円ぐら
いの価格設定で、その値段で出すために、中途半端な作りになっていたら、とてもあの台数は売れなかったはず。(実際に買った人たちに話を聞いても、彼らは
安いもの、そこそこなものがほしいんじゃない。いいものがほしい)
欧米が強いとか、日本が強いとかいう狭い話ではない

こうした時代を”勝つ”ためには、ゲーム会社も対応が必要なわけだが、それは単純に欧米の開発が良いとか、日本の開発が良いとか、そういうロジックではない。もっと大きな話で考えないといけない。
(欧米市場は日本市場と違って、大変好調だが、欧米は人件費が日本より高く、遠からず問題になる。また開発期間の長期化しがちなスケジュール管理の悪い開発会社は、よほど強い会社でなければ(つまりidやValve)、パブリッシャーから切られ始めている。)

次の10年の勝ち抜きにおいて、非常に有望な会社はいくつか挙げられるが、このネタは今後何度も書くつもりなので、今回すべてを書き尽くすつもりは無い。

タイムリーなネタなので、サミーの戦略
例に取る。
(サミーが好きではない人は、ここの読者には多いかもしれないが、ボクは常々「好き嫌いがどうであれ、現実は変わらない」派なので、ためらいもなく書くこ
とにする)
> 具体的にはサミーが開発した低コストの業務用ゲーム機「アトミスウェイブ」
> をセガが業務用ゲーム機として採用するよう働き掛けていく。同ゲーム機は
> ソフトを交換することで様々なゲーム機として遊べるのが特徴。セガが生産
> 停止した家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」向けMPUを利用しており、
> 現在サミーは日本と米国で販売している。同社長は「一回あたりのゲーム料金が
> 10円でも採算が取れるほど低価格なため、発展途上国にも販売できる」とみている。
セガが「ダービー・オーナーズ・クラブ」で道をつけた路線をいわばHigh Disruptionへの可能性とするなら、このサミーの狙いはLow
Disruption。いわゆる「10分の1のコスト」である。
低所得な国に安く多く売ろうという流れは例えば、PCでも(東欧市場向けに)起きているし、今後成長の見られる中国市場でも同じである。
LowとHigh。そして中間はあり得ない。これが今後のコンテンツ産業(ゲームよりは進行が遅いだろうが、いずれ日本のアニメもこうなるのは見えてい
る)が直面する厳しい現実。
補足。あちこちで書いたのだが、どうもサミーの例は感情論的に反発を覚える方が多いのか、あるいはどうしても日本でのアーケードの話を意識する方が多いの
か、議論がかみ合わない意見が多く寄せられて、少し残念な思いがしています。日本以外の地域では、日本とは相場が違うのだということがなかなか想像できな
い方も少なからずいらっしゃるということを実感しています。日本で普通の値段でサービスされているものが低所得な地域では、”法外に高い”ように感じられ
る、そもそも質と金額のトレードオフ以前の問題とさえいえるということは認識する必要があると思います。

Posted by amanoudume at 2003年12月28日 05:09 個別リンク