最近の記事
カテゴリー
過去ログ
検索


このサイトについて
このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2006年01月28日

構想は素晴らしいものの、不安をぬぐえない技術プラットフォーム論

オンラインゲームでは技術プラットフォームが重要だが・・・・

ガンホー取締役開発本部長 堀誠一氏インタビュー
ガンホーの取締役開発本部長、堀誠一氏がプラットフォーム戦略について語っています。
この間、ガンホーとスクウェアエニックスを比較しましたが、こういう話をできる人がいるのがガンホーの優位点でしょうね。オンラインゲームでは、ハードの枠を越えたプラットフォームの重要性が増しています。
と言っても、やはり不安点はあるわけです。スクウェアエニックスに比べると、ガンホーはコンテンツ制作の能力やクオリティ管理の点で大きく見劣りがしますから、本当に良いプラットフォームになるかどうかは微妙です。

難しいんですよね。コンテンツ制作(アプリ)と技術プラットフォームのバランスは。
どれだけ優れた技術がベースにあって、きれいに汎用的に作られていても、いいコンテンツが揃わないとユーザーが増えないし、少なければ評価されません。
古参の読者ならご存知のとおり、ボクはミドルウェアの設計/実装をやっていて、それから企画系に転じた人間ですから、両方の立場と論理がわかるんですけど、そういう人って少ないですからね。

技術倒れのXBOX Live!

例えば、ゲーム機においても、マイクロソフトがXBOX Live!というプラットフォームを推進しています。しかしベースの技術は金がかかっているのに使い方がダメすぎで、とても残念なことになっています。XBOX360について、日本の360ユーザーやゲーム開発者はほとんど全員、口をそろえて「もっとXBOX Live!を生かすべき」「もっとXBOX Live!を売りにしたらいいのに」と言います。逆に言うと、現状が全然ダメということです。

広報戦略とアプリと技術プラットフォームの3者の意思疎通が取れていないように見えます。全員がバラバラに動いている感じです。
例をあげると、XBOX Live!のゴールドとシルバーの区別がわかりにくい。マッチングはゴールドのみと言いながら、シルバーでもマッチングできるタイトルがありますし、このタイトルがシルバーでもマッチングできるのかどうかという情報が公式サイトに載ってなかったりします。サポセンに電話してみても、お姉ちゃんもよくわかってない。「なんでお金を取ってるのかわからない。もう全員無料でゴールド会員でいいじゃないか」という意見はよく聞きます。

マッチングで金を取るというのも古いですよね。マッチングでも金を取って、アイテム販売でも金を取って。なんだかものすごくお金がかかる印象を受けるわけです。結局、マイクロソフトが無駄に金をかけすぎなんですよ。だから回収しようと思うと、課金、課金、課金……となってしまいます。
XBOX Live!に接続しようとすると、7桁の郵便番号を入れさせられたり。課金するならともかく、シルバー会員なのに、そこまで個人情報が必要なのか? よくわかんないですよね。不必要に個人情報を求められると、不安になります。あちこちに「うさん臭い」感じが漂っているわけです。

クラシックゲームをダウンロードして遊べるXBOX Live Arcadeは快適で素晴らしく、無料の体験版を遊んでいるだけでも、けっこう楽しめます。発売前にディスクゲームの体験版を落とせるのも、良い試みです。ただ、日本人になじみのあるタイトルがほとんど無く、広報もこういう利点をアピールできていません。


便利さの落とし穴にハマったXBOX Live!

ボイスチャットのようなXBOX Live!の機能がOSの中に入っていて、常に動いていて、ゲームアプリからはそれを呼び出せばいいだけ、というのは素晴らしいのですが、一方であんまり考えられてない。『リッジ6』ではマッチングを取っている間は、ボイスチャットで誰がしゃべったか表示されますが、レース中はさっぱりわかりません。要するに対応しただけなんですね。

これ、典型的な落とし穴なんですよね。
技術プラットフォームが便利になって、「苦労せずに使える」「何も考えずに使える」ようになると、何も考えてないような使い方やインターフェイスになってしまいます。実装コストがかかる場合は、アプリの側もコストに見合うだけのことをしようと、”自然と考える”から、こういうことは起きにくいんです。ボイスチャットを1から全部実装して、サーバーも準備しなければならない・・・・となったら、相当なコストですから、ゲーム開発者も色々と知恵をしぼって、うまく使おうとするでしょう。しかし簡単に使えるから、「ただ対応しただけ」のソフトばかりになるんです。

だからXBOX360のXBOX Live!は、発売同時の数本のタイトルがオンライン対応しているにも関わらず、全然話題になっていません。昨年末、たった2タイトルのWiFi Connectionのほうがはるかに大きな成功をおさめました。XBOX Live!というプラットフォームの技術は素晴らしいし、サードパーティにオンライン対応してもらうという方針も間違っていません。しかしその先が全然ダメ。連携も全然取れていません。

忘年会の時も話に出たんですけど、XBOX360は全体を通して見ている人が不在に思えます。
クオリティ管理がまるでできていません。 XBOX 関連ではJ・アラード氏が比較的まともに思えますが、技術だけの人なんで。開発プラットフォームは素晴らしい物になっているようですが、それだけです。内部事情は知りませんが、マイクロソフト・ゲームスタジオのエド・フリース氏がいなくなった影響はやっぱり大きかったのかな?


「理屈」と「コンテンツ」の話は難しい

・・・・と話が大きくそれて、ガンホーの話ではなくて、XBOX360もったいなさすぎ話になってしまいましたが、同じような不安感があります。もっとも堀氏は『グランディアオンライン』のプロデューサーもやっていて、コンテンツも見ているようですから、マイクロソフトほど情けないことにはならないとは思います。逆に言うと『グランディアオンライン』で、そこら辺の能力や体制が見えますね。大いに注目しています。

「理屈」と「コンテンツ」の話は難しい。
スクウェアエニックスの「ポリモーフィックコンテンツ」なんかも、理屈でしょう。
制作者は理屈で物を作れないということを実感として知ってるんですけど、そうじゃない人は知らないし、(理屈で作れないことが)許せないと思ってるわけですよ。後づけの理由のヒットじゃなくて、前づけの理由のヒットがほしい。

それって投資の論理ですよ。お金を潤滑に回していくためには、そういう「理屈」が必要なのはわかります。でも嘘なわけです。いや、ボクは嘘がダメだと言っているわけじゃない。嘘も方便ですから、それでお金を取ってきて、現場に制作費が下りてくるなら、好きに嘘をついてくれていい。しかし自分で信じちゃダメですよね。それでは宗教です。

Posted by amanoudume at 2006年01月28日 22:59 個別リンク
TrackBack URL for this entry:
http://amanoudume.s41.xrea.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/151

Listed below are links to weblogs that reference '構想は素晴らしいものの、不安をぬぐえない技術プラットフォーム論' from 発熱地帯.

コメントを投稿

(コメントを投稿しても、管理人が承認するまでは表示されません。すぐに反映されない、最悪24時間以上かかる事もあります。ご了承ください。)