書き下ろしの長編ではシリアスな本筋の物語を展開し、雑誌連載の短編ではコメディな日常を描く、というフォーマットを富士見ファンタジア文庫が確立させて以来、ライトノベルは短編小説を活性化させてきました。その後も、短編連作の形式で1つの物語を描き出した「ブギーポップ」の登場や、電撃文庫において短編の地位を確立させた「キノの旅」のヒットによって、ラノベにおける短編の地位は維持されてきました。
ラノベの根本にある「読みやすさ」が短編のボリュームと相性がよかったこと、「キャラクター小説」としてのラノベが日常を描く形式を必要としたこと、この2点がラノベにおいて短編の地位を堅固にした理由だと思います。
そして今、ケータイ小説の台頭によって、ショートショートに脚光が当たりつつあります。
「ネット小説、ケータイ小説への関心の高まり」で書いたように、ケータイ小説の賞が次々と設立されています。(出版社がケータイ小説に関心を持ち始めたのは、2003年あたりからだと思います)。
ケータイ小説についてのニュースもよく目につくようになってきました。
○ケータイWatch:イートレックジャパン、「ステーション文庫新人賞」大賞発表
○asahi.com:絵文字はお断り 「ケータイ小説」、北海道文教大が募集
○「MY CAFE eBookSpot」の夏のケータイ小説、累計アクセス126万を突破
ショートショートは本としてはあまり見かけなくなりましたが、ケータイというメディアが普及したことで、手ごろなボリュームとして認識されるようになったわけです。ただ、全体としてみると、ケータイ小説は女性の読者が圧倒的に多いような印象を受けます。
そのせいか、男性オタク向けの小説はまだまだケータイ小説への進出が遅れている感がありますね。
きちんと調べたわけではないんですけど、パッと見つかったのは「絶対少年〜神隠しの秋〜穴森」」だけでした。一方、ラノベでも女性読者の多いコバルトはケータイ小説サイト(PCでも閲覧可)をやっています。
電撃文庫は「電撃hp読者参加企画」として、ショートショートを募集していますが、とくにケータイ向けには掲載していないみたいです。ちょっともったいない気がするものの、(男性オタクには)需要無いのかなあ・・・・。以前は「電撃short3」1つだったのを、3つに増やしているぐらいですから、この手の企画は安定したアクセス(および電撃
hpの購買)を見込めるのでしょうね。
萌え漫画やパロディー漫画が4コマという形式と相性がよかったように、萌え小説もショートショートと相性がいいんじゃないか、と勝手に思ってるんですが、どうなんでしょうね? 内容もきちっと話のオチをつけるんじゃなくて、4コマ漫画レベルでいいと思います。(そういえば、オタク向けの4コマ漫画が目立ち始めたのって、いつ頃でしたかね?)
しかし萌え系にしても、一般(または女性向け)にしても、ケータイ小説のショートショートは単独の商品としてはまだまだ弱いのが実情です。萌え系の電撃はあくまで「読者参加企画」ですし、一般のケータイ小説賞にしても、客
寄せ企画としての意味あいがまだまだ強いです。今のところ、本という形で「出版」することが出版社の基本のビジネスなわけで、そうなると何十本も書かないと1冊の本にまとまらないショートショートはビジネス価値が低いのでしょうね。
実際、試みに、とあるケータイ小説賞に送ってみたところ、受賞しても「もっと長いものを書いてください」と言われるわけです。(まあ逆にいえば、そこらのブロガーが「ちょっと書いてみた」程度で通ってしまうほど、まだまだ競争が少ない世界なのです)
ケータイ小説に関心があるなら、ケータイ小説関連のニュースを掲載されている携帯小説評論家♪たまの携帯小説を読もう!さんが参考になります。ちょっと宣伝多いけど・・・・。
Posted by amanoudume at 2005年08月13日 00:23 個別リンク