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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2005年07月29日

3つの性能

2つの視点

まこなこさんの「次世代機で勝つのは任天堂」という記事がなかなか興味深いです。
普及台数という点では、E3以降、北米ではソニーのPS3とマイクロソフトのXBOX360の一騎打ちになるという予想が強まっているようです。しかしまこなこさんは、利益という点では任天堂が優位にあり、ソニーは苦境に追いやられるのではないか、と予想されています。

実際に行動に起こしている任天堂を見ると、レボリューションに対しても希望は十分持てる。そして、その希望の実現のために必要な
ものはコストではなく、アイディアであり、そのアイディアの実現が可能なことを既に示してくれた。ならば、任天堂が勝たないことなんてありえないじゃない
か、と思うわけよ。
その二つのゲーム機の未来はこんな感じだ。より高グラフィックの実現、制作に金が掛かる、バグなども発生するため開発期間が延びる、開発費回収のために販
売価格上昇、ユーザーが高いからと新品を買わずに中古に走る、より販売価格が上昇、ユーザーから見放される、といった感じ。

なるほど、企業としてはたしかに利益は大切です。とはいえ、プラットフォームホルダーとしては、普及台数はとても大切な数字です。普及台数がないと、プラットフォームの影響力が限定されてしまいます。
まあ2つの視点から、バランスよく見る必要があるのでしょうね。

ちょうどいいタイミングで、マイクロソフト、ソニー、任天堂の第1四半期決算がそれぞれ発表されました。ちょっと見てみましょう。そこから未来が垣間見えるかもしれません。

PC Web 「米Microsoftが過去最高益を達成--サーバ/ツール製品、Xboxが牽引」

そしてもう1つが22%の伸びを実現したXbox関連のビジネスで、Xbox本体の出荷数が記録を達成し、Xbox Liveの契約者数が倍増するなど、今年末の次世代ゲーム機「Xbox 360」発売に向けた下地が出来つつある。

Game Watch 「ソニー、2005年度第1四半期連結業績を発表」
ソニー株式会社は、2005年度第1四半期のソニーグループ全体の連結業績を発表した。ゲーム分野では、売上高が1,728億円となり、前年同期比で64%の大幅増。しかし営業損失は59億円になり、前年同期の29億円よりも大きな損失を計上している。

Nintendo INSIDE 「任天堂が2005年度第一四半期の業績を発表」
売上高706億8400万円、営業利益37億5400万円、経常利益213億8600万円、純利益は141億1500万円

マイクロソフトがすばらしいですね。売上を22%伸ばしたうえ、利益率が大幅に改善し、XBOXを含むHome
Entertainment部門の営業損失が半分に減ったそうです。コストを度外視して作られ、赤字ハードといわれたにもかかわらず、着実に収益貢献を高
めています。XBOX360は最初からコストを意識して設計されていますから、次世代機においても、普及台数と利益の両面で成功をおさめるのは、案外マイ
クロソフトなのかもしれません。
任天堂はゲーム部門で巨額の利益をあげています。PS2で圧倒的なシェアを取りながら、ソニーは前年割れし、赤字を出しています。ソニーの戦略はPSP以
降、明らかに歯車が狂い始めています。いくら売ってももうからない。なぜこんなことになったのでしょうか?
3つの性能
ソニーはハードウェアが進化するたびに、投資額を増大させてきた経緯があります。最先端の
半導体工場に数千億円の投資をして、優位性のあるプロセッサを製造します。優位性のあるプロセッサで競争に勝てばボリュームが出ます。ボリュームが出れ
ば、コストが下がります。プロセッサであげた利益をまた投資することで、さらに優位性のあるプロセッサが生まれます。
(参考:後藤弘茂のWeekly海外ニュース「久夛良木健氏が語る、ソニーの半導体戦略」
ソニー独自のプロセッサが競争上の付加価値を生んでいる時代は、この戦略は有効でした。しかしプロセッサの性能がそれほど優位性を生まない時代になると、
最初に巨額の投資をしなければならない点が足かせになり、逆に採算性が悪化する懸念があるわけです。
たとえば、携帯ゲーム機では、性能以外にも、インターフェイス、液晶、バッテリーなど、じつに色々な競争要素があります。高性能のプロセッサは基本的に消
費電力が高く、バッテリーの持ち時間が短くなります。そういう意味で、プロセッサの優位性が活きません。ですからPSPはDSにあっさりと負けてしまいま
したし、全然もうかってないわけです。
次世代据置ゲーム機でも、もっとも重要になるネットワーク性能は、ゲーム機本体内のプロセッサでは決まりません。ユーザーの家庭の回線速度で決まってしま
います。つまりプロセッサで差別化できるのは、映像などのオフラインゲーム性能だけで、オンラインゲーム性能はHDDなどのその他の部品で決まります。
PS3はHDDを標準搭載しないという致命的な判断ミスをおかしました。そのおかげで、オンラインゲーム性能はXBOX360がPS3を完全に圧倒してい
ます。
ソニーはオフライン性能を高めるために数千億円の投資をしています。次世代でもオフラインゲームが主流のままで、大多数のユーザーがオンライン性能が低い
ゲーム機(PS3)でも満足してくれるなら、なるほど、その投資は正しい。
ところが、オンラインゲームが今のまま順調に裾野を広げていくとすると、大多数のユーザーがオンライン性能の高いゲーム機(XBOX360)を求めるよう
になります。その場合、ソニーは競争上、あまり有効でない部分に数千億円の投資をおこなったことになります。致命的な投資判断ミスといえるでしょう。
オフライン性能に投資したソニーとオンライン性能に投資したマイクロソフト、この2社のどちらに軍配があがるのか。普及台数で勝つのはどちらか? 利益で
勝つのはどちらか? 興味深く見守っていきたいですね。
(任天堂はオフライン性能でも、オンライン性能でもなく、さしずめ「アイデア性能」に投資した、と表現すべきでしょうか。たとえばDSはタッチパネル、マ
イク、無線通信など、クリエイターのアイデアを刺激するいろいろな機能を盛り込んでいました。2強対決でいえば、「オフライン性能」対「オンライン性
能」。あえて3社を並べれば、「オフライン性能」対「オンライン性能」対「アイデア性能」の競争、といえるでしょうか。)

Posted by amanoudume at 2005年07月29日 00:31 個別リンク