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このサイトは、ゲーム開発、およびゲーム周辺の周辺技術や動向について日々考察し、毒舌的に物を書き続けることを通して、「ゲームの未来形」という大テーマに対して、何か考えを深められるといいなあ・・・・・・というサイトです。

2005年05月31日

ワイヤレスコントローラは敷居を上げるのか下げるのか

次世代ゲーム機はどれもワイヤレスコントローラを採用しますが、ボクはふだんゲームを遊ぶ時に使ったことがないんで、どれぐらいニーズがあるものなのか、正直あまり実感がないんですよね。で、実際の製品スペックを見てみました。
    Game Watch:「ワイヤレスアナ振2ターボ」をチェック!! (PS2)
    GC用ワイヤレスコントローラ「ウェブバード」製品紹介 (GC)

大体バッテリーが100時間、重さは約210〜220g程度で、乾電池とあわせて260g程度。価格は4000〜4500円程度。コードが無くなる、寝転がりながら遊びやすい(実際遊ぶか?)という利点はあるものの、電池の分だけコントローラが重くなる、電池の長さが心配、といった欠点があります。また振動が弱くなる懸念があるものの、良し悪しの判断は人によるでしょう。

コントローラの高機能化→高価格化

一番気になるのは、コントローラの値段(コスト)がさらに高くなるという点。コントローラにアナログスティックと振動機能が付くようになってコントローラのコストは上昇しました。その結果、昔は標準で2個のコントローラが入っていたのに、今では1個しか入っていないのが当たり前です。買い足さない限り、対戦して遊ぶことができなくなったわけです。買い足すにしてもコントローラ1個あたりの値段が上がったので、敷居が少し高くなりました。
ワイヤレスコントローラになるとさらに値段が上がります。例えば、GCのコントローラを見ても価格が上がっているのがわかると思います。
    HORI デジタルコントローラ ブラック(デジタルキーのみ) 1500円
    ホリパッドキューブ クリアブラック(アナログ+振動) 2500円
    純正ワイヤレスコントローラ「ウェブバード」(ワイヤレス) 4500円

標準で1個しかコントローラが付いてこないとして、4人で遊ぶにはいくらかかるか。
    デジタルコントローラ   1500円×3= 4500円
    アナログコントローラ   2500円×3= 7500円
    ワイヤレスコントローラ  4500円×3=13500円

ゲーム機のコントローラはこれまで、高機能化&高価格化の流れをたどってきました。その結果、TVの前に集まって、多人数で遊ぶ環境をつくるための敷居が上がっているわけです。(とはいえ、最近の子供は自分のコントローラを持って友達の家に集まったりするようですね)

ワイヤレスによるキャパシティの増加

デメリットばかり取り上げてしまいましたが、一方でワイヤレスにするとコントローラの個数を増やしやすいというメリットもあります。PS3はBluetoothで最大7個まで対応します。PSシリーズではマルチタップを使わないかぎり4人対戦のゲームを遊べないという悪環境でしたから、これは良いこと。

また7個までというなら、個人的に主張してる「祖父母・両親・子供の家族6人」のゲームも作りやすいでしょう。高齢者向けの市場開拓は娯楽にたずさわる誰もが意識していることでしょう。孫と子供が遊びにくる時のために、一緒に遊べるゲームとゲーム機本体を買ってもらう、というのも視野に入ってきます。(もちろんコントローラの個数以上に困難なことが山積みです。3世代が一緒に遊べるゲームの難易度の取りかた、今の高齢者はゲーム機に親しみのない世代ということ、今のコントローラは重い、・・・・。)

高齢者向け云々は置いといても、高解像度が前提になれば、画面内の情報量が増えますから、画面内に表示される「プレイヤーの情報」を増やしやすくなります。現在は2〜4人対戦のゲームが大半ですが、6人対戦、8人対戦というより多人数のゲームも増えるかもしれません。そういう状況にもワイヤレスの方が対応しやすいです。(もっとも次世代機ではHD対応はあっても、HD前提にはならないですから、次々世代の話になるかもしれませんが)
ゲーム的に見たワイヤレスコントローラ化の流れは、「敷居は上がるけど、キャパシティが増える」という結論になりそうです。

補足:AV機器的に見たワイヤレスコントローラ化の流れ

ゲーム的に見ると、微妙な気が少しするワイヤレスコントローラですが、AV機器としてのゲーム機を考えれば、利点が多いですね。ゲーム機本体はテレビの横(縦置き)に置くか、ラック(横置き)に入れてしまうと考えると、本体とコントローラがコードで繋がれてると不便ですし、片づけるのも面倒。遊ぶ環境の見栄えの良さでいえば、ワイヤレスのほうが断然優れています。

Posted by amanoudume at 00:10 個別リンク

2005年05月28日

お知らせ

ネット上にて、悪意ある想像を元に、中傷行為をおこなっている人がいらっしゃいますが、
僕はゲーム機メーカーの社員ではありません。
SCE社員、マイクロソフト社員、任天堂社員ではありません。
関連会社社員でもありません。
なお、鶴見さんからは誤解を招く表現を修正されたとのご連絡を受けました。

Posted by amanoudume at 23:47 個別リンク

2005年05月25日

BLOG炎上ブーム

切込隊長BLOGや、ガ島通信
大手BLOGの炎上が続いてて、「あー、デカくなると大変だよなあ・・・・」と思ってましたが、まさかボクん所もそうなるとは・・・・。ついでに鶴見さん
所も、炎上しちゃいましたが。まあ良かれ悪しかれ、良質なBLOGの認知度が上がるのは良いことなんじゃないでしょうか。そのうち収まるもんですし。
つっても、最近の炎上はちょっと長引きがちですが。
切込隊長はコメント欄を放置プレイ、ガ島通信さんはコメント欄を閉じる対処ですね。うちもとりあえずは閉じましたが。対処方法は参考になりますね。
切込隊長はしばらく時間を置いてから、ある程度回答してますね。ただ、結局荒らしは何と回答されてもその後も行動は変わりませんでした。やっぱり時間が経
つまでは鎮火しないものらしい。1ヶ月ぐらいが目安でしょうか。それまでコメント欄を閉じるのは厄介ですねえ。うーん。
BLOGの炎上については、真性引き篭もりさんがいくつも面白い記事を書いておられるのですが、
「荒れるブログの作り方」
これも参考になりますな。
> 飽きさせる、という選択はコスト的に楽である。
> 呆れさせる、という手法はリスクが高い。
> 抹殺する、という選択肢は最も合理的である。
> また、コメント欄を閉鎖するというのもよい。
さて。

Posted by amanoudume at 11:23 個別リンク | TrackBack(0)

2005年05月24日

次世代で加速するマルチプラットフォーム

プラットフォーム競争の激化によってマルチプラットフォーム化が進む
ゲーム機の最初の2世代の与党は 任天堂、次の2世代の与党はソニー。では今度の2世代は・・・・?と尋ねられたとき、「マイクロソフト!」と答える人もいれば、「ソニー!」と答える人も いるはず。しかしいずれが勝つにしても、PS1やPS2でソニーが圧勝したほどの、圧倒的な市場シェアを占めることはなく、6:4とか5:5とか、ほとん ど半々に分け合うのではないか、という予想が多い。 その結果、日本のソフトメーカーも本格的にマルチプラットフォーム化を検討しなければならない時代がいよいよやってきた。例えば、日本でPS3、北米で XBOX360がトップシェアを握った場合、マルチプラットフォーム展開に慣れている欧米のソフトメーカーはほとんど困らないが、日本のソフトメーカーは (部分的にはマルチプラットフォームのタイトルがあるとはいえ)慣れないマルチプラットフォーム対応で苦しむことになる。結果的にベースのエンジンを構築 するコストが増大して、市販のミドルウェアの採用が現世代よりも進むと予想される。少なくとも社内での共通エンジン構想など、省力化の方向に向かう必要が ある。
ゲーム機がPCに近づいたことでマルチプラットフォーム化が進む
また、XBOX360もPS3も、 GPUの開発がATIとNVIDIAになり、共にPCゲームの技術が通用するようになった。XBOX360は初代XBOXに比べるとPCから少し離れた が、PS3はぐっとPCに近い構成になった。 久多良木氏は先行発売するXBOX360を恐れるあまり、必死になって「XBOX1.5」と連呼し、XBOX360はただのPCで、PS3はPCとはまっ たく異なるアーキテクチャだと主張しているが、まともな技術者が取り合う主張ではない。ソニーはPS3の開発途中で、GPU開発を東芝からNVIDIAに 切り替えたといわれている。その開発の遅れを埋めるべく、PCの構成(CPUとメインRAM、GPUとローカルVRAM)を流用せざるを得なかった、とい うのが現在の定評だ。実際、ここ数年自慢していた組込みDRAMは影も形もない。 堕ちた技術者の戯言は無視していい。 DirectXとOpenGLの両対応はPCではそれほど珍しい話ではないし、PS2とXBOXの違いに比べれば、些細な問題にすぎない。そもそもシェー ダーの重要度が比重を増している。シェーダーの方言差など、さらに些細な問題だ。マルチプラットフォームのエンジンを構築するコストは前世代よりもぐっと 下がる。また異なるプラットフォーム間で高いクオリティを維持しやすくもなる。
オンラインゲームの浸透でマルチプラットフォーム化が進む
オンラインゲームで重要なのは、各端末では なく、アクセスされる先にあるコンテンツでありサービスだ。そこに付加価値があり、ソフトメーカーにとってはサービスへの入り口は多いほうがいい。すると マルチプラットフォームが自然な形態となる。理想をいえば、あらゆるプラットフォームに供給するのがベストだが、実際には各プラットフォーム上でのプログ ラムを開発するのにコストがかかるし、ロイヤリティーの問題もある。そのため、短期的にはオールプラットフォームとはいかない。ただし長期的には限りなく オールプラットフォームになる。 例えばスクウェアエニックスは、XBOX360に「FF11」を供給する。PS2、PCに続き、3つ目のプラットフォームとなる。PS3は標準でHDDを 搭載しないこともあり、MMORPGの供給先としては若干面倒だ。XBOX360を選んだのはリーズナブルな判断といえる。 (J.アラード氏へのインタビューで 改めて確認されたように、マイクロソフトはPCとXBOX360をプラットフォームとして近づけていくことを目論んでおり、主にPCで育ってきた MMORPGはXBOX360向きだ。PS3はあまり向かない。ソニーのHDD非搭載の判断は、日本でPSBBが失敗したことが遠因だろうが、MMORPG熱が再点火した場合には致命傷になりえる。)
ソフトメーカーの4つの選択肢
今後、ソフトメーカーが選択しえるリリース形態は以下の4種類だ。   1)同時発売のマルチプラットフォーム   2)発売時期を少しずらしたマルチプラットフォーム   3)期間限定独占供給   4)完全独占供給 1)はもっともポピュラーなマルチ展開で、今後日本のソフトメーカーでも増えていく。2)はトップハードでの発売が1週間早いというようなケース。日本の マルチタイトルでたまに見られるパターン。政治的配慮。3)は半年〜1年程度の期間、他のハードに出さないと約束する場合で、初代「Splinter Cell」がその好例。年末商戦に投入されたのはXBOX版のみで、おかげでXBOXは大いに台数を伸ばした。 今後は4)の完全独占供給が無くなっていって、3)の独占供給が増えるのではないか。独占供給のかわりにプラットフォームホルダーから優遇してもらうの は、そのプラットフォームが圧倒的に勝てばおいしいものの、プラットフォームが負ければリスクが甚大になる。国内の例ではカプコンの「バイオハザード4」 が好例だろう。また独占供給を宣言していなかったが、ナムコの「テイルズ・オブ・シンフォニア」はGC版から約1年の時間を置いて、PS2版が発売され た。これも3)に分類してよいかもしれない。 リスク回避以外にも、魅力的な条件を出されて、独占供給から期間独占供給に変わった例もある。PS2独占だった「GTA」はXBOXに供給されるように なった。 全体的に4)から1)へと比率がシフトしていく。 すると、わざわざ専用タイトルとして作っておいて、それから移植するのは無駄になる。今後は「同時に出せるようにマルチ対応で作っておくが、プラット フォームホルダーとの契約でタイミングをずらす」というケースが増えてくる。 各パブリッシャーがマルチプラットフォームを大前提とした体制を築くことで、リスク回避しやすくなるのはもちろん、プラットフォームホルダーに対して条件 交渉をやりやすくなる。ただしディベロッパーにとってはつらいことになるかもしれない。「移植」仕事が無くなって、(従来とほとんど変わらない額で)「マ ルチプラットフォーム開発」を強制される可能性が高いからだ。 (ただ、逆に開発プラットフォームごとに、開発スタジオが分かれるケースもある。その場合は各スタジオがデータ共有できる体制が不可欠だし、パブリッ シャー側にかなり高度なマネージメント能力が要求される)
マルチプラットフォーム前提の時代がもたらすもの
マルチプラットフォームが浸透していくことで、プ ラットフォーム競争はある意味ダイナミクスを失う。任天堂からソニーに政権交代したときは、まだシングルプラットフォームが当たり前だった。スクウェアの 移籍によって、勝ち組に乗らなければすべてを失うという恐怖感が多くのソフトメーカーをPSに走らせた。しかしマルチプラットフォームでリスク分散されて いると、こういう恐慌は生じにくい。これは現在勝っているソニーにとって良いことだ。しかし悪いこともある。 どのプラットフォームでもほぼ同じゲームが遊べるということは:   A) 先行発売のプラットフォームが有利になる   B) ファーストパーティ、セカンドパーティのソフトが重要度を増す   C) 純ゲーム機以外の付加価値(サービス、デザイン、価格、・・・・)が相対的に重要になる A) XBOX360でEAのソフトが潤沢に供給される影響は、前回の「三者三様E3 」で のべたとおりだ。先行発売によって、マルチタイトルの顧客を自分の所に引き寄せやすい。 B) またファーストパーティタイトルが重要になるため、PS1時代からの衰退シリーズに拘泥しているソニーよりも、独立系クリエイターによる新規タイトルの育 成に努めているマイクロソフトのほうが優勢だ。現在もっているキラータイトルは、ソニーが「GT」、マイクロソフトが「Halo」。全世界で見れば、ほぼ 互角の効果だろう。だが北米に限定すれば、「Halo」のほうがよりキラー度は高い。 C) ゲーム機以外の付加価値については、ソニーとマイクロソフトのどちらが有利か、判断は難しい。PS3はブルーレイが付加価値だし、XBOX360はオンラ イン配信が付加価値だ。とりあえず互角と判断しておく。 このようにXBOX360にプラスに働く効果がかなりある。重要なのは、シェアの早期確保とプラットフォームの差別化だ。
我々は歴史の証人になろうとしている
個人的には、ドラクエは置いといても、「FF11」以外のFFがマルチプラットフォーム化されたとしても、驚きはしない。FF は欧米での売上も大きく、欧米でのプラットフォームの勢いを無視できないからだ。XBOX360の北米での勢いしだいでは、マルチプラットフォーム化もあ りえる。あるいは日本はPS3版のみ、北米はXBOX360版のみ、という変則独占供給もありえなくはない。 もちろん現時点では、PS3オンリーの供給が大前提だ。ただし、今後はこのようにパブリッシャーが色々な選択肢を持てるようになる。独占供給するにして も、より良い条件を引き出しやすい。例えば、こんな想像をめぐらしてみよう。 東京ゲームショウにおいて、PS3のカンファレンスで発表した「FF7テクニカルデモ」をXBOX360上でリアルタイム動作させたらどうなるか? 開発 費はマイクロソフトもちだ。もちろんXBOX360へのFF投入は表明する必要がない。それでもソニーはかなり動揺するし、平身低頭でより良い条件を差し 出してくるだろう。マイクロソフトは少なくとも、XBOX360がPS3と同等以上の性能をもつとアピールできる。宣伝効果としては悪くない。(まぁ和田 社長は「FF7テクニカルデモ」がPS3上のリアルタイムデモではないと明言しているが) もちろん、これは「想像」にすぎない。しかし以前は「想像」さえありえなかった。今はありえる。この違いは大きい。 スクウェアエニックスの和田社長は常々、ハードメーカーに対して、微妙な距離を取っているようにも見える。旧エニックスの時代には、単一プラットフォーム 主義だったが、最近はXBOX360への「FF11」供給、レボリューションへの「FFCC」供給など、全方位外交の姿勢に転換しつつある。 ゲーム機の最初の2世代の与党は任天堂、次の2世代の与党はソニー。では今度の2世代は・・・・? その答えはマイクロソフトかソニーのどちらか、という のが常識的な判断だろう。だが、次の10年で起きる変化は、単純な「与野党の政権交代」にとどまらないかもしれない。 もっと巨大な政変、政治のルールそのものの変化が起こるのではないか。なるほど、与党はマイクロソフトかソニーだろう。しかし与党のもつ影響力が、はたし て過去20年と同等のままなのだろうか? 王様の椅子は今はまだ黄金色に輝いている。だが5年後、10年後には粗大ゴミ置き場のソファー程度のものになっ ているかもしれない。我々は今、歴史の証人になろうとしている。
Posted by amanoudume at 15:14 個別リンク

2005年05月22日

三者三様E3

まずは簡単に、全体の概要から

次世代ゲーム機に関連して、梅田望夫氏が自分のBLOGに「ゲーム素人のための米ゲーム産業入門」という記事を掲載されている。Fortune誌の長文記事をうまく要約されているので、「米国における見方」
知る良い手段といえる。
もちろん日本のユーザーからすると違和感はあるかもしれない。ただ、むしろその「違和感」を取っ掛かりにして、真の米国の状況をつかみ、ワールドワイドの
競争がどこへ向かうのか、感じてほしい。実を言うと、次世代ゲーム機については、日本と米国での温度差、向いている方向の違いを強く感じた。

3ハードの向いている方向はそれぞれ異なる

長い文章になると、焦点がぼけてくるので、まずは手短に3ハードの評価をまとめてみた。

PS3
コントローラ △  実際に握れたわけではないが、操作性の悪さを不安視する意見が大半。バナナ
グラフィック ◎  一部の映像デモは秀逸だが、実ゲームではおそらくXBOX360と大差ない。
オンライン  ×  スペックだけは揃えたが、ソフトもサービスも何も発表が無く、オンライン戦略は不透明
コスト    ×  PS2をはるかに超える、非常に高コストなハード
デザイン  ○  ソニーは優れているが、今度は微妙感も
ソフト数   ◎  やはり一番多いだろう
メディア   ○  ブルーレイは人によっては魅力だろう。ただしHDTVの普及待ちなので、
           発売直後はPS2のDVD搭載ほどの効果は無い
ビジネス   △  従来型のパッケージ販売が主流。記録メディアを内蔵していない点が
            オンライン販売への消極性を裏付けている

XBOX360
コントローラ ○  斬新さはないが、操作性は良い
グラフィック ◎  グラフィックがやや物足りないのはソフト開発の問題。GPUは強力
オンライン  ○  サービスが充実しているほか、オンライン販売にも積極的
コスト    ×  HDD標準搭載や、PS3を上回る強力なGPUなど、コスト増の要因が多い
デザイン  ○  写真より実物のほうがずっと印象がいい
ソフト数   ○  スクエニの参入など、状況は好転している。EAもやる気
メディア   △  可もなく不可もなく
ビジネス   ◎  コストを省みず、HDDを標準搭載した英断はさすが。オンライン販売も容易。

レボリューションコントローラ ?  不明なので評価できない。最も期待されているのは確か
グラフィック ?  不明だが、期待している人は少ないようなので、×でもいいかもしれない
オンライン  ◎  いつのまにか任天堂が最もオンラインに積極的になっているのが不思議だ
コスト    ◎  詳細は不明なものの、低コストという報道が多く、次世代機戦争で
           体力を消耗しないのはおそらく任天堂だけでは。
デザイン  ○  特徴も個性も乏しいが、小さいのは評価できる
ソフト数   ×  GCの状況からすると、より悪くなる可能性が高い
メディア   ?  DVDなのか、次世代DVDなのか、独自規格なのかは不明
ビジネス   ◎  最も説得力のあるオンライン販売。ファミコン〜N64までのゲームは現在は
            入手しにくいこともあって、オールドゲーマーには魅力的。
今回のE3では、ハードこそ発表が間に合ったものの、ソフト開発がぎりぎりだったり、シアター発表のみだったため、多くの人がまだ「次世代のゲーム」を実
感できていないと思う。ここではハードの3つの機能「映像」「CPU」「オンライン」を中心に次世代ゲーム機を評価したい。

貧乏詐欺師が正直金持ちを殴り飛ばせるのが娯楽の世界のルール

ハードスペックについては、トータルではPS3が高いが、グラフィックではPS3よりもXBOX360の方が上という話がある。実際、PS3のメモリ構成はあれれさんが「メモリ容量の鍔迫り合い」
指摘していたとおり、メインRAM256MB、VRAM256MBという構成で、手短にいえばふつうのPCに近い。GPUに限定すれば、PS3のほうがよ
りPCライクで、XBOX360のほうがより従来のゲーム機ライクだ。PS2と初代XBOXの時とは逆になっていて、面白い。
しかし映像勝負の第1ラウンドは、PS3の勝ちに終わった。XBOX360向けのタイトルはインパクトが弱いが、あくまでソフト開発の問題。年内発売に間
に合わせるべく、割り切っている印象だ。ポテンシャルは高いので、PS3が発売される前に、グラフィック性能を活かしたタイトルを投入できるかどうかが
「映像」勝負の分かれ目になる。
今の所マイクロソフトは良くも悪くも、正直すぎる。ソニーと違って「本当の金持ち」だから仕方ないのだが、エンターテインメントの世界は
お客を騙してナンボである。ハッタリ上等の世界であり、嘘から出た真のような成功も少なくない。PS2の映像デモは確かにそのまま実現はしなかったが、
リッジやFFのデモで示されたようなフェイシャルアニメは「FF10」「MGS3」で当たり前のものになった。
PS3の映像デモは確かにハッタリだ。実際、ゲーム画面に近い映像ほど、チープになっていて、XBOX360と変わらなくなっている。しかしだからどうし
た? ハッタリが新しい可能性を切り拓く、それがエンターテインメントの世界のルールで、マイクロソフトはそれを理解していない。金持ち様、嘘つきたちの
世界へようこそ。
現時点でXBOX360で見るべきソフトはまず、EAの「NEED FOR SPEED」とUBI Softの「Ghost Recon3」。この2本が次世代機の「初期タイトル」の基準を作る。EAのスポーツゲームはどれも高水準なので見ておいてもいい。EAはXBOX360に非常に力を入れている。これは重要なので、また後でのべる。

第2ラウンドはCPU
PS3にしても、XBOX360にしても、どちらもCPUがかなり強化されたハードだ。当初はグラフィックよりもそちらに焦点が移るはずだった。しかし E3のふたを開ければ、映像ばかりが話題になっている。結局、プラットフォームホルダーがどれだけ開発環境の改善をうたっても、やはり高度なハードウェア を使いこなすには時間がかかる、ということだ。 とりあえずは既存のタイトル、既存のゲームの”映像を高めただけ”のソフトが氾濫することになる。レースゲームとスポーツゲームはグラフィックの単調増加 の恩恵を最も受けやすいし、FPSもグラフィックを重視するヘビーゲーマーが愛好するジャンルだ。最初はこうしたジャンルが目立つ。 しかし本体発売から半年〜1年以内には、CPUパワーを生かしたゲームの登場が待ち望まれる。1つは単純だが、キャラクター数の増加だろう。実際、 XBOX360では数千の群集を出すゲームがいくつも発表されている。     ○3000キャラクターを表示する「Kameo」     ○1画面に数千体のゾンビが表示されるカプコンの「デッド ライジング」     ○水口哲也氏が関わる「NINETY-NINE NIGHTS」 物理エンジンの採用も進むが、当分は演出的な強化に使われるケースが多いだろう。グラフィックが写実的になった分、物の動きがそれらしくできていないと違 和感をおぼえるからだ。ちなみにPS3は今の所アヒルデモしか提案できておらず、映像のプレゼンぶりに比べると、かなり弱い。 その後はシミュレーションゲームの活性化が期待できる。広大なメモリと強力なCPUパワーを元に、広大な環境シミュレータを構築してもいいし、演算パワー を1〜数体のキャラクター(少女、人間、犬、猫、動物)につぎ込んで、実写的ゲームさえ超えるウルトラ実写的な、強烈な存在感を感じさせるシミュレーショ ンもいい。「Age Of Empire」シリーズのようなRTSも、これまではPCばかりで盛り上がっていたが、いよいよコンシューマー機で花開く時代がくるかもしれない。
いまだにiPod以前の発想しかできないソニー
今回一番のポイントは、すべてのコンシューマー機でオ ンライン機能が標準化されること。ゲーム機の歴史をふりかえって、かつて無かった出来事だ。映像面では、プレゼンテーションの巧妙さから、PS3の勝ちと いう意見が圧倒的だ。しかしそもそも今回の焦点は、そこではなかったはずだ。 Fortune誌でも指摘されているが、PS3はオンライン戦略ではある意味PS2よりも後退している。PSBBが大失敗に終わってから、ソニーはオンライン戦略への自信を喪失しているように見受けられる。というのは、オンラインでは「端末を高性能にして、優位性を発揮する」というソニーの基本戦略が通用しないか らだ。オンラインでは回線速度が端末ではなく、インフラによって決定されてしまう。重要なのはハードウェアの性能ではなく、ソフトウェアやサービスだ。 ソニーの最大の弱点は、ソフト開発力の低さ、サービス構想能力の低さだ。あのビジョナリー久多良木氏も先見の明があるのはハードに限られ、氏の挙げるソフ トウェアの実例はいつもチープだ。かつてはミリオンソフトを次々と打ち立てたSCEJも、PS2時代はシリーズ作品を続々と枯らし、売上は大幅に落ち込ん だままだ。DSよりもプロセッサが高性能で無線LANが高速なPSPが、ワイヤレスサービスでDSよりずっと劣っている。あの宝の持ち腐れ状態がソフト開 発力の低さを雄弁に物語っている。 一方、マイクロソフトはXBOX Live!を順当に進化させているし、昔のゲームをオンライン販売する計画ももっている。海外でも日本同様、手軽なゲームを遊びたいというニーズは年々大 きくなっていて、カジュアルオンラインゲーム市場が成長している。ポーカーなどの手軽なテーブルゲーム、昔なつかしのクラシックゲームは人気が高く、 Yahooなども積極的に取り組んでいる。 この点については、ソニーよりもマイクロソフトのほうがずっと市場に敏感だ。ソニーもマイクロソフトも、共に2D時代のゲームのソフト資産を持たないだけ に、先に優れたサービスを展開したほうが優位に立つ。マイクロソフトはXBOX Live! Arcadeをすでに始めている。もはや勝負は見えている。 もちろんその点では、任天堂も優位だ。「バーチャルコンソール」と銘打ち、1台で過去20年のソフトを遊べると宣言。莫大なソフト資産を誇る任天堂らしい サービスで、一夜にして米国のカジュアルオンラインゲーム市場の勢力図を塗り替えた。 また、日本でのユーザーの反応は意外なほど好意的だった。この辺はわぱのつれづれ日記さんがよくまとめておられる。また日経産業新聞が「最も盛り上がったのは任天堂」と報じた件 も無視できない。 最近強く感じるのは日本と米国のユーザーの温度差だ。日本のユーザーは次世代機の映像の進化への反応が薄く、それよりも大きさがコンパクトだとか、起動が 早くて手軽に遊べることに関心がある。米国のユーザーはまだまだ、もっとすごい映像を、もっとすごいゲームを望んでいる。 XBOX360もレボリューションも、共に内臓記録メディアを持っているが、PS3はHDDが非標準だ。これは、ソニーがオンラインでのコンテンツ販売に 消極的なことをよく表している。これはPSPと同じ失敗だ。PSPもメモステ起動できるようにしてほしいというユーザーの意見は多いし、「ソニーはゲーム 版iPodを作るべきだった」という指摘もよく聞く。ソニーはいまだiPod以前の古い発想しかできていない。 「映像」ではソニーの勝ち(もっとも容易にひっくり返る程度の差だが)。「CPU」ではソニーとマイクロソフトが互角、あるいはマイクロソフトが有利だ。 「オンライン」ではマイクロソフトと任天堂の圧勝だ。PS3を一言で表せば「映像専用プレイヤー」、XBOX360は「最高のゲーム機」というべきだろ う。 あとは、ユーザーがどの部分を重視するかという話になる。内容面は以上だ。
ビジネスでは、米国でXBOX360が有利

台数競争は内容とビジネスの両方で決まる。次にビジネスについてふれると、日本ではPS3有利、米国ではXBOX360有利だ。それは変わらない。欧米のソフトメーカーはかなりXBOX360寄りだ。実際、今回のE3ではXBOX360のタイトルがかなり出展された。平林久和氏が良い指摘
しているが、XBOXは米国の国産機だという点を忘れてはならない。圧倒的な格差がつけば話は変わってくるが、PS3がXBOX360と互角、あるいは
ちょっと良いぐらいなら、心情的にXBOX360に傾く。日本のユーザーや業界人がXBOX360に対して抱いているモヤモヤした感情の逆を考えれば、よ
くわかるのではないか。ギリギリの勝負では、これは無視できないファクターになる。
また重要なのは、EAは2005年については「XBOX360にベットした」という事実だ。360度を取り巻く巨大スクリーンに映し出された映像群。その
下にはXBOX360向けの「NEED FOR
SPEED」がプレイアブル出展されていた。この状況では「EAはXBOX360寄り」と判断するのが自然だ。(まぁもちろん、ムキになって否定する意見
も、きっとコメント欄に寄せられることだろう。)
EAは今年、明らかにXBOX360寄りだ。もちろんPS3が来年出るから、という理由もあるが、もしXBOX360のスタートが好調で、PS3の初動が
つまずけば、来年もXBOX360寄り、再来年もXBOX360寄り、・・・・という事態は十分ありえる話だ。
EAはマルチプラットフォームだが、各プラットフォームで売上に差がかなりある。「Madden」にしても、PS2>>>XBOX>>GCという感じだ。
これは「EAのスポーツゲームを遊びたい数百万人」がPS2を買っているためだ。では、どうして彼らはPS2を買ったのか。第1に現世代機で一番最初に出
たのがPS2だったから、第2にオンライン対応が一番だったのがPS2だったからだ。ご存知のように、EAはマイクロソフトのクローズドな環境を嫌って、
XBOX版のオンライン対応をしなかった。しかし今はその問題は解決されている。そして何より、「次世代のEAスポーツゲーム」を最初に遊べるのは
XBOX360だ。
つまりEAのゲームが購入動機になっている人がXBOX360を買う。最大数百万人ものユーザーが動く。これは大きい。EAスポーツはマルチプラット
フォームだから、XBOX360を買ってしまえば、PS3は要らない。PS2とXBOXの時とは逆の現象がおきるわけだ。
また、XBOX360は有力なFPSタイトルが多い。XBOXも「Halo」を始め、優れたFPSが多く、FPSゲーマーを取り込んで成長したが、そうし
たユーザーが安心してXBOX360に移行できる。まずは「Call Of Duty2」。前作がGame Of The
Yearを受賞しており、秀逸な出来が評判になった。さらに「Quake4」。最盛期の輝きはないが、いまだ根強いファンはいる。そして映像面で非常に評
価の高い「Ghost Recon3」。もちろんマイクロソフト自身が誇る「Halo」の新作も発売予定だ。
XBOXを積極的に購入したFPSユーザー+次世代EAを遊びたい数百万ユーザー。米国での初期タイトルは厚く、初代XBOXをはるかに超えるスタート
ダッシュもありえない話ではない。それだけの台数を生産しきれるのか、のほうがずっと心配だ。
PS3は2006年春とうたっているが、ソニーがかつて日米同時発売した例はない。実際には日本で2006年春、米国で2006年秋という見方が有力だ。
その1年間で、XBOX360がどれだけの台数を積み上げるか、目に見えるようだ。XBOX360が数百万ユーザーを獲得し、PS3の発売タイミングで
「Halo3」のような強力タイトルを叩きつけて、PS3の出鼻をくじけば、面白いことになる。

最後に

トラックバック欄を見ている方はお気づきのことと思いますが、うちのBLOGのコメント欄に投稿されていたあれれ氏が「ゲームのマボロシ」というBLOGを立ち上げておられます。非常に冷静に分析できる方で、ぜひ巡回先に加えてください。
    ○E3雑感(新ハードについて)
    ○成功を受け継ぎ、失敗を反省する
論はボクとは異なり、「ワールドワイドでPS3有利」というもの。大きく違うのは「映像」と「オンライン」のどちらを重視しているかということ。結論は違
えど、思考のプロセスは非常に納得・親近感をおぼえます。
ボクは異なる思考が接触しあうことはすばらしいことだと思います。大切なのは意見(結論)が異なるかどうかではなく、思考のプロセスがしっかりと明示され
ているかどうか。それが無い意見は、ただのしつこい「説得」になり、果ては「布教」「GKの策動」みたいな低次元な書き込みに堕ちます。議論が楽しいの
は、お互いの思考のプロセスが提示される時だけで、結論が同じか違うかは些細な問題です。

Posted by amanoudume at 08:07 個別リンク | TrackBack(1)
次世代機戦争なんて本当に勃発するんですか?
Excerpt: 大体の情報が出揃ったところで、今年のE3の印象のまとめ。 「次世代機戦争」とメディアで騒がれた今年のE3だが、 むしろ次世代機にはあまりスポットライトが当たってはいないように思う。 もしかしたらそれは私たちが関心を無くしてしまったからかもしれないが。 ...
Weblog: 名古屋県民の半ヲタ的生活
Tracked: 2005年05月23日 14:35

2005年05月21日

E3で見えた北米の携帯ゲーム機競争のゆくえ

E3から帰ってきた。現地でも更新できたのだが、やはり落ち着いて記事を書けるのは日本に帰ってきてからだ。さて今回のE3の本題はもちろん次世代据置ゲーム機について。だが、その前にまずDSとPSPの競争について、E3会場で感じたことを一般に報道されている事実にふれながら、まとめてみたい。

遊ばれていないPSP
E3にしても、東京ゲームショウにしても、展示会のようなイベントでは通常、派手 な据置ゲームのほうが人の食いつきが良く、携帯ゲーム機はほとんど見向きもされないことが多い。実際、会場を回ってみたが、PSPの試遊台にはあまり人が 食いついていなかった。当然、順番待ちの光景も見たことが無い。PSPは展示の角度が悪いのか、歩いてみてもほとんど画面が目に入らない。当然わざわざ遊 ぼうと思わないかぎり、通行人が足を止めることはない。 特にこれといった注目作もなく、 全体にパッとしない。SCEAのブースも中心はあくまでPS2で、期待できるタイトルも圧倒的にPS2に集中していた。そして来場者の大半はPS3シア ターに並んでいた。SCEAのブースからは、PS2とPSPの2つのハードを支えつつ、PS3を立ち上げなければならない「つらさ」が感じられた。
遊ばれているDS

一方、DSは任天堂が力を入れて展示していたこともあるが、ソフトメーカーのブースを見ても遊ばれている率が高い。2画面あるおかげか、歩いていてゲーム画面が視野に入る率が高く、結果的に通行人が足を止めやすいのかもしれない。

注目作もそろっていて、DSは「マリオカート」の人気が非常に高く、常に何列も並んでいて、大盛況な様子だった(参考:Game Watchの写真)。
据置ゲームでも、あそこまで列が絶えなかったゲームはほとんど無かったんじゃないか。またWiFiによるインターネット対戦のコーナーも人が絶えない。
WiFiはPSPでも実現されているが、「マリオカート」「どうぶつの森」ほど人が群がっているゲームは1本もなかった。
WiFiといえば、DS上でVoIPを行うデモンストレーションも、ワイヤレスエンターテインメント企業化している任天堂が行うと、また別の可能性、別の意味も見えてきそうだ(参考:ワイヤレス・エンターテインメントという未来)。
会場には無線ダウンロードができるスポットが用意されていて、『ヒトフデ』『エレクトロプランクトン』などの体験版や、リアルゼルダの紹介ムービー(DS
上で再生)も配布されていた。こんなに多くの人間が会場にDSを持ってきているのかとびっくりする。ゲームのイベント会場では暇つぶしにGBA、DS、
PSPで遊んでいる姿も見かけたが、GBAとDSが圧倒的に多い。
また、日本人(ゲーム会社の人間のほか、日本のメディア)が「nintendogs」を持ってきていたらしく、「すれ違い通信」の成功例が非常に多かった
らしい。「ピクトチャット」でもいわれたことだが、DSはイベントで活躍するソフトが多い。イベントに強いDSという印象をあらためて感じる出来事だ。

真実は決して隠せない
イベントの報道記事を見るときは、ふつう新しく出てきたゲーム画面に目がいきや
すいが、会場の風景を撮った写真を見ると意外な真実がわかる。そのゲームの試遊台に人がたくさん食いついているなら、それは絵になるから、自然と写真が撮
られて、掲載されることが多い。逆に、人があまり食いついていない、順番待ちしていないゲームの場合、そんな写真を掲載したら「注目作」「人気があった」
という言葉がうそ臭く響いてしまう。必然的にゲーム画面のみの掲載になる。例えば、Game WatchのSCEAの出展ゲームの紹介記事と、任天堂の出展ゲームの紹介記事
比較してみるといい。意外と、真実は語られていない所に表れるものだ。真実は隠せない。いやむしろ隠されることによって浮かび上がる。
こうした会場の雰囲気を見るかぎり、米国における携帯ゲーム機競争の結果はほぼわかると思う。持ち運ばれているのはDS、遊ばれているのはDS、人々のコ
ミュニケーションを促進しているのはDS、WiFiコンテンツで人気のあるのもDS。もちろんE3だけで米国市場の動向が読めるわけではない。会場に来て
いるのは業界人で、当然大人ばかりなので、子供の意向はくみ取れない。しかし子供がどちらのハードを選ぶかはいまさら議論する必要はあるだろうか?
PSPは日本で好調だったのは最初だけだった。発売から3ヶ月ぐらいは「余熱」が残っていて、「供給さえあればDSをすぐに抜く」かのような予想がネット
上で書き散らされていた。けれども今そんな妄言を書く人は皆無に近い。結局、長続きはしていない。
米国では3月下旬に発売され、ようやく2ヶ月になろうかという時期。まだまだ「余熱」が残っている。しかし長く続く印象は無い。日本のように熱は冷めてい
くように感じられた。少なくともE3会場では冷え切っていたと思う。ただ、日本ではソニーブランドが凋落しつつあるが、米国ではまだまだ健在。ソニーピク
チャーズの存在も大きく、映画のソニーというイメージは強い。だから日本よりは熱が長持ちすると思う。UMDもしばらくは保つはず。しかし時間の問題。
日本につづき、北米においても、携帯ゲーム機競争は終わりつつある。印象操作は数ヶ月もすれば消えていき、最後には真実だけが残る。

Posted by amanoudume at 14:17 個別リンク | TrackBack(2)
E3に見るBlog
Excerpt: 大手サイトにトラックバックをするのは、なんだかおこがましいのだけど、 僕も一応5年ほどネットを通してE3を見ていて、その中でBlogの広がり というのが、情報の流通におもしろい変化を与えていると思います。 こういう匿名でありながら、固定された情報発信源という...
Weblog: silicon-tent
Tracked: 2005年05月21日 17:08
印象操作されてるなあ、という印象のコト
Excerpt: エピソード3のコトでアタマが茹だってしまっている鶴見だが、そんな隙を狙われたのか...
Weblog: 六百デザインの「嘘六百」
Tracked: 2005年05月23日 06:13

2005年05月17日

スペック叫ぶが限界か? PS3も2006年 今年末はマイクロソフトの独り勝ち

SCEのカンファレンスにて、PS3のスペックが公開された模様です。
Game Spot速報
yahoo速報
SCEI公式

メディアはBlue-Rayを採用するほか、DVD、CR-ROM、 CDR+W、DVD-ROM、DVD-R、DVD+Rにも対応。また自社のメモリースティックデュオのほか、SD、コンパクトメモリーフラッシュにも対応。
多種類の記録メディアに対応している一方で、HDDは標準搭載ではなく、スロットだけ。XBOX360と比べると、各種チップやドライブが高価になると予想される分、HDDまで標準搭載とはいかなかったみたいですね。ネットワーク経由でのコンテンツ配信という点では、マイクロソフトよりはるかに劣ったプラットフォームになりそうです。

またCPUは3.2GHzで駆動するCellプロセッサを搭載。CPU単体での浮動小数点演算性能は218G FLOPS。GPUをふくむシステム全体では約2T FLOPS。会場ではXbox360の2倍の性能とアピールした模様。本体メモリは、かねてから推測されていたとおり
メインRAM256MB、VRAM256MB。メインRAMはXDR、VRAMはGDDR。ある意味、Xbox360よりもPCっぽい構成といえます。
NVIDIAのGPU、Reality Synthesizer ことRSXは3億トランジスタ以上と非常に大きく、GeForce 6800
Ultraの2倍以上のパフォーマンスを誇るそうです。
・・・・ふーむ、おおむね予想の範疇ではないでしょうか。実際にどれだけ実効性能が出るかは未知数ですが、とりあえずカタログスペックでは
「Xbox360の2倍」を狙っているようです。なんというか、PS2と初代Xboxの立場が入れ替わったような印象を受けるのは気のせいでしょうかね? この程度の性能差では、表現力に根源的な違いが出せるわけでもなし、先行された溝を埋められるかどうかはあやしいですね。
また、HDD搭載のXBOX360と非搭載のPS3、この方針の違いがどう影響するか、非常に興味深いです。

追記
デザインはうーん・・・・いいのか、これ。コントローラの形状を変更しましたね。傾きセンサー等の
何らかのセンサーを仕込んでいる可能性もあるのかもしれませんね。ハンドルコントローラっぽく使えるとか?

Posted by amanoudume at 13:16 個別リンク | TrackBack(0)

2005年05月15日

XBOX360正式発表とソニーの「先行発売恐怖症」が見せる悪夢

昨日書いたニュース記事のコメント欄がなかなか盛況。まぁ「XBOX360寄り」に入るボクがかなり強く否定的なコメントを発したので、ちょっと驚いた方もいらっしゃったのかもしれない。

国内600万台という目標

XBOX360が世界シェアで伸びる、PS3に勝ち得るという話は以前からあった。そしてそれは変わらない。ただ、日本でどれぐらい売れるか?はややグレーだった。マイクロソフトの日本での目標は600万台といわれている。これはN64の500万台を超えて、国内第2位のハードとしては過去最高の水準である。もし本当にそこまで売れたら、欧米でのシェア増加分をあわせ、世界シェアでは十分PS3を打倒しうる。

XBOX360はどちらかというと、一般人よりもマニア層にアピールする戦略
あり、タイトルの濃さもあって、当面はセガハードと同じポジショニングで考えるのが妥当だ。DCと同程度なら国内200〜300万台、サターンと同程度な
ら400万台。国内日本市場に力を入れているムードや、坂口博信氏の大作RPGの投入、ジャンプとの連携を考えると、最低サターン級。まぁ600万台とい
う目標も現実味が出てくる。昔ほど売れなくなったと言われながらも、やはりRPGは強いジャンルだ。これまでの国内第2位ハードが作り出せなかったレベル
の「超大作RPG」を世に送り出せる効果は大きい。

「自分が勝った理由」におびえるソニー
どれだけ最有力候補といわれたハードでも、最初は必ずゼロから
スタートする。そこがゲーム機の面白いところだ。任天堂がかつてソニーに敗れたときも、この原理が働いている。PSとサターンがどれだけ売れようとも、
「でも結局勝つのは任天堂だよね」といわれていたものだ。しかしある時、気がついたわけだ。PSは200万台存在するが、N64はまだこの世界に1台も存
在していないのだ、という現実に。
ソニーはそこをうまく突いたわけだが、同時に自分が同じことをやられることに、ものすごく恐怖心をもっている。「自分が勝った理由」だからこそ、「自分が負ける理由」にもなりえるのだ。
からDCが発売された時には、表面的には余裕感を発散しつつも、PS2発売前のハッタリアピールを行い、DCが古い世代のハードで、PS2からが新しい
ハードだと印象操作を行った。当時のソニーはアピールが非常に巧妙で、実際そのとおりになった。
PSPでも発売時期が遅れることを極度に嫌っている。多くの業界人が2005年春と予想していたにも関わらず、DSが本当に2004年末に出ると知ると、
強行軍で2004年末に発売した。ソフトはともかく、ハードの発売を焦るとどうなるか。このBLOGを読んでいる方々は、その結果をご存知のはずだ。
そしてPS3でも「先行発売恐怖症」は変わらない。
先日、ソニーの湯原隆男執行役常務がPS3の年内発売の可能性を示唆
た。次世代DVDの規格統一交渉が話題になっているが、今まだそんな段階なのに、年内発売できるはずがない。
にも関わらず、年内発売とコメントせざるを得ない。それほどまでにソニーはXBOX360に先行され、先にシェアを築かれることにおびえている。それも無
理はない。確かに欧米のパブリッシャーの期待感は高いし、とくに米国では今度こそ国産機が勝つのでは、という意味での高揚感も無視できない。実際、EAがすでに25タイトル開発
ているなど、着々とタイトルはそろっている。
また、ソニーグループの業績回復が進みそうにないので、目玉商品を出さないと新体制への不信感につながる、という切羽詰った事情も存在する。湯原氏の発言
が「ただの牽制」でなくなる可能性もある。
場合によっては、ブルーレイ採用というプランを撤回し、2層DVDでいくというプランもありえるのかもしれない。2層DVD搭載の標準バージョンとブルー
レイ搭載の高級バージョンの2種類が出るのでは?というまことしやかな噂も流れているようだ。
しかし、仮にドライブの問題を置いといても、元々XBOX360よりも開発環境の配布が遅れていたのだ。そんな状況でスケジュールを早めれば、ソフトの完
成度でXBOX360より劣る可能性は目に見えている。名前だけは有名ソフトが並ぶだろうが、中身はPS2と変わらないソフトが大量に出てくる危険性があ
る。「ナムコさーん、リッジレーサーを年内にお願いします。中身はリッジレーサーズと同じでいいですから。ポリゴン数を10倍にしてくれたら、それで」と
か、「コーエーさまー、ポリゴン数同じで1000体出す無双を作ってください。あとは何も変わらなくても全然オッケーですよ」とか。
ユーザーに伝えにくい魅力
これまでゲーム機はグラフィック性能の向上を前提としてきたし、業界にとっ
て説得力をもってきた。なぜなら見た目の変化は「魅力を伝えやすい」からだ。操作性やゲーム性の変化は、「さわってみないとわからない」「遊んでみないと
わからない」ため、アピールしにくい。
ところがXBOX360の映像は正直、インパクトに欠けていた。性能の問題もないわけではないだろうが、ゲーム開発者が「どれもこれも綺麗にしてみまし
た」的な絵作りしかできず、結果的に「XBOXと変わらない」絵になっている。たとえば格闘ゲームにしても、一番肝心の人間そのものは大して変わっていな
いし、魅力も上がっていない。
「ラスタライズ方式の限界」などという意見もあるが、まったくの嘘だ。髪の毛のポリゴン数がまだまだ少なくて、表現としてサラサラ感をまるで表現できない
し、指先などのポリゴン数は現行機より多いが、なめらかさに欠けるのは相変わらずだ。質感もチープだ。
「ディテールを見ればわかる」「HDTVでないと議論の意味が無い」などと、素っ頓狂な意見を唱える方もいらっしゃるが、世の中のユーザーは2台テレビを
用意して、XBOXとXBOX360の画面を比べながら遊ぶのだろうか? ゲームを楽しみたかったら、HDTVを買えと居直るつもりだろうか? ここまで
ユーザーからズレまくった意見を堂々と書ける人も香ばしい。もし日本のゲーム開発者の大半が同じような考えなら、日本のゲーム業界の未来など、知れたもの
だ。
「まったく違いがわからない次世代機」という悪夢

XBOX360の正式発表では、ゲーム開発の側に相当な「映像」センスが必要なことが露呈した。しかしこれは何もXBOX360だけの問題ではない。性能面では大差ないはずのPS3もまた同じ「伝えにくさ」を背負う羽目になると思われる。

まして、ソニーが焦るあまり、年内発売を強行するようであれば、「まったく違いがわからない次世代機」という悪夢が完成するだろう。そのとき、はたして次世代ゲーム機は盛り上がるのだろうか? これまでのような早い普及ペースを維持できるか? ハードが売れてもソフトが全然売れないという事態にならないか?
昨日のニュース記事に対して、「わぱのつれづれ日記」さんからトラックバックをいただいた。その中で「まじめに次世代機総崩れという可能性もなきにしもあらず」と懸念を表明されているが、まったく同感である。

要は供給側の「伝え方が悪い」のである。「伝えやすい魅力」を打ち出してくれれば、それが理想だ。しかしそれが難しいなら、せめて「伝えにくい魅力を伝えるための最大努力」はすべきだろう。
ボクが昨日の記事で、一番の問題点としたのもそこだ。「魅力がある」とか「魅力がない」とかよりも、「魅力を伝える努力と工夫」が足らない。あの能天気な情報リリースぶりを見る限り、どれだけ大変なことか、彼らはわかっていないのではないか。

マイクロソフト、ソニー、そしてゲーム開発者といった娯楽供給者が直面した問題は、「伝えにくい魅力をどうやって伝えるか」ということだ。それはもしかすると、単調進化の恩恵にあずかってきたゲーム業界にとって、かなり困難な課題
もしれない。しかし努力をおこたっては何にもならない。国内ゲーム市場はただでさえ縮小しているのに、ゲームがより少数の人間にしか魅力が伝わらないよう
であれば、ますます市場は縮小してしまうだろう。
娯楽を提供する側が「魅力がわからないユーザーが悪い」とか、「時間が経てば自動的に魅力が伝わる」という「供給者の論理」にとらわれるなら、その娯楽産
業は末期症状だ。
精神論ではない。わかりにくい魅力をうまく伝えて成功した実例が、ついこの間あるではないか。
任天堂は「わかりにくい魅力」という点でものすごく苦労してきた。N64はアナログスティックを一番最初に標準搭載したし、評価の高いゲームが多いが、
「伝え方がすごく難しい」との指摘は多かった。そして実際、芳しい結果は出なかった。その頃から苦労を重ねてきた結果、任天堂は「伝えにくい魅力をどう
やって伝えるか」の経験値が高くなった。DSでは体験イベントをふやし、遊んでいる姿を積極的に流した。そしてDSは映像で圧倒的に勝るPSPより、はる
かに多く売れ、新規ソフトである「nintendogs」も好調なセールスを記録している。
継続的な努力と工夫があれば、わかりにくい魅力をわかりやすく伝えることはできる。
伝えることがあらゆる表現の基本であり、人を楽しませる表現を娯楽という。魅力の伝わらない娯楽など、娯楽ではないし、それを放棄した供給者ばかりが多い
なら、なるほど日本のゲーム業界の行く末など知れたものだ。
娯楽から逃げるな。

Posted by amanoudume at 00:07 個別リンク | TrackBack(6)
メモリ容量の鍔迫り合い
Excerpt: さて、早速はじめての記事を書いてみたいと思います。発熱地帯さんの「XBOX360正式発表とソニーの「先行発売恐怖症」が見せる悪夢」が面白いです。 現状のグラフィックスの向上ぐらいだと、ユーザーさんに魅力をアピールできないのでは、という話です。平林久和さんの「贅沢品
Weblog: マボロシ
Tracked: 2005年05月14日 14:00
[ゲーム]ゲームと映像のHD化についての考察
Excerpt: 先日、Xbox360の概要が盛大に発表されましたが、そのインパクトは想像以上に低いものでした。実際、ブログや2chでの反応も、批判的な内容が大勢 を占めています。 Xbox360では、特に「HD化」ということを表に押し出しています。HD化とはつまり、1080i, 720pへの対応と言う...
Weblog: わぱのつれづれ日記
Tracked: 2005年05月14日 19:21
Xbox360
Excerpt: この360という名称を聞いたとき、IBMシステム/360のパクリかよって思った人は 何人いたんでしょうね。 自分は高校の(コンピュータの)歴史で学んだのですが。 まぁそれはいいとして。 デザインは、Xboxが白くなっただけっていう印象。 まぁ悪くはない。 自分はゲーム...
Weblog: SOBLOG
Tracked: 2005年05月15日 02:48
「まったく違いがわからない次世代機」という悪夢
Excerpt: 発熱地帯さんの「ユーザーに伝えにくい魅力」 と 「まったく違いがわからない次世代機」という悪夢というタイトルのブログを書かれています。 自分も全く同感です。 ただし、自分はクリエイター側なので、ただ「そうだよね〜」って 言ってる場合でもないんだけどね。 ...
Weblog: ゲームを創る旅
Tracked: 2005年05月15日 16:30
明るい日と書いて「明日」と読むというコト
Excerpt: さて、E3は火曜日からだが、今日は朝から仕事だ仕事。 昔は「不規則正しい生活」が...
Weblog: 六百デザインの「嘘六百」
Tracked: 2005年05月16日 08:30
XBOX360 vs PS3 関連
Excerpt: XBOX360正式発表とソニーの「先行発売恐怖症」が見せる悪夢 には全く同感です。 ただ、次世代機の底力はポリゴン数がたくさん出るところじゃないのです。 そういうことに気づいている国内のクリエイターは殆どいないみたいで、いまだにあちこちで「他社より10万ポリ
Weblog: 港区赤坂四畳半社長(国益第一編)
Tracked: 2005年05月17日 15:36

2005年05月10日

ワイヤレス・エンターテインメントという未来

急速に立ち上がったローカルワイヤレス・ネットワークゲーム

一昨年から書いていたことだが、ローカルワイヤレス・ネットワークゲームが急速に立ち上がりつつある。それまでは携帯電話というグローバルワイヤレスなプラットフォームしかなかった。携帯電話は距離の点で非常にすばらしいネットワークを持っているものの、一方でパケットを飛ばすたびにお金を取られるという制約がある。そのためダウンロード型のiアプリが主体だった。定額制が始まったことで、携帯電話向けのMMORPGの可能性が一時期取り沙汰されたけれど、定額料金そのものがまだまだ高いこともあって、まだまだダウンロード型のiアプリが強いのが現状だ。

いわゆるWiFiのようなローカルワイヤレス・ネットワークは距離に限界がある一方で、無料のネットワークを提供できるという強みがある。また契約などの手続きが要らない(省き得る)。誰でも自由にネットワークに参加できる。こうしたWi-Fiの特徴はどちらかというと、日本よりも米国のほうが正しく捉えていて、携帯電話大国と化した日本以上に、Wi-Fiの可能性を信じている。

梅田望夫・英語で読むITトレンド「Wi-Fiと音楽配信が米国で盛り上がる二つの理由」

Wi-Fiが面白いのは、Wi-Fi技術やWi-Fi利用形態の現在の状態が面白い
からなのではなく、オープンワイヤレス・ネットワークを作り得る可能性ゆえだ、
そのオープンという意味は「open to innovation」という意味だ、と。

けれども面白いことに、ローカルワイヤレス・ネットワークを使ったエンターテインメントでは、日本が圧倒的である。任天堂とソニーが携帯ゲーム機にワイヤレス通信機能を搭載したことで、短期間のうちにローカルワイヤレス・ネットワークゲームが生まれてきた。ここで任天堂とソニーが熾烈な競争を繰り広げるなら、さらに面白く、ホットな世界になっていくかもしれない。しかし残念ながら、ソニーはワイヤレス・エンターテインメントに対してとてもネガティブで、現状では任天堂が異常なまでにアグレッシブである。


ゲーム会社からワイヤレス・エンターテインメント企業に変身しつつある任天堂

1.
任天堂のワイヤレス通信に賭ける意気込みはめざましい。任天堂はまず最初、GBA向けにワイヤレスアダプターを提供した。GBA末期だから今さら感もあったが、なんとポケモンと同梱すると発表した。これによって、全世界で数百万人のユーザーがワイヤレス通信を体験することが保証された。

2.
その後、DSが発表され、DSにはワイヤレス通信が標準搭載されることになった。さらに本体には「ピクトチャット」を内臓。お絵かきチャットはPCなどにもあったが、携帯端末で無線通信でやると、あそこまで楽しいコミュニケーションツールになったわけだ。この手の「お互いに時間を共有するタイプのネットワークゲーム」は、じつは携帯電話は苦手である。

というのは、携帯電話は基本的にパケット代を取るからだ。定額制はあるが定額料金そのものがまだ高いし、まさか定額制の人に限定してアプリケーションを展開するわけにもいかない。ここは、無料のローカルワイヤレス・ネットワークが優位性を発揮する部分で、そこを生かしたアプリケーションだからこそ、携帯電話というワイヤレス端末がこれだけ普及していても、新鮮な遊びたりえたわけだ。

3.
また、任天堂は初期タイトルから、「1本のゲームソフトで数人が遊べる」環境を提供した。じつはGBAでも同じことができた。たとえば、据置ゲームでは、1本のソフトに複数のコントローラがあって、複数人で遊ぶことができる。要はそういうプレイ環境を携帯機で作っただけの話である。ただ、GBAは基本的にケーブル通信だったので、ケーブルで接続しないと対戦できなかった。

子供ならケーブルを持ち歩くのはまあ十分可能だが、大人が遊ぶには敷居が高い。あまり浸透していなかったのではないか。実際、ゲームマニアのBLOGを見ても、GBAでも1本のゲームソフトで数人が遊べたことを知らない人が意外といた。結果として、よりいっそう対戦ゲームを遊びやすくなった。

4.
そして「nintendogs」ではすれ違い通信を実現し、まさに新しい遊びを実現した。これも、「ピクトチャット」と同じく、無料のワイヤレスネットワークでなければ難しい。有料では敷居が高くなり、あまり広がらないだろう。ここでも、ローカルワイヤレス・ネットワークの本質が活かされている。

5.
さらについ昨日発表された、WiFiの無料アクセスポイントを全国に1000箇所設置する構想も、任天堂にしてはなかなかアグレッシブな施策といえる。先日のGDCでは、WiFiネットワークを利用したゲームとして、「どうぶつの森」が発表されている。「どうぶつの森」は販売実績が50万本以上の有力タイトルであり、根強いファンがいて、しかもゲームの中に「お手紙」や「お出かけ」といったネットワークゲーム的な遊びが含まれている。かねてからユーザーコミュニティでは、オンライン対応を希望していた筆頭のソフトでもある。発売されれば、日本国内だけで50万人・・・・とまではいかなくても、かなり近い人数がWiFiネットワークを体験することになる。これはかなりインパクトのある数字だと思う。

あくまで個人的な見解にすぎないが、この5つの施策を俯瞰してみれば、もはや任天堂は「ゲーム会社」というより「ワイヤレス・エンターテインメント企業」といったほうが正確だと思う。しかもこのうち2番〜4番の3つの施策は、DS発売からわずか半年以内に実現されたものだ。一昔前の任天堂からは考えられないスピード感である。
(まぁ「コミュニケーション・エンターテインメント企業」でもいいのだが、「エンターテインメント」という抽象的な単語にさらに「コミュニケーション」という抽象的な単語を重ねるのは、個人的には好みではない。また成長の原動力はあくまで「ワイヤレス」だから、そこを強調したほうが適切な表現だと考えた。)

ワイヤレス通信を活かせていないPSPの現状

1.
一方、SCEはPSPのワイヤレス通信を有効活用しきれていない。任天堂の「1本のゲームで複数の人が遊べる」仕組みと同じなゲームシェアリングは、本体発売には間に合わず、対応ソフトが非常に少ない。通信対応ソフトの大半が対応しているDSとは対照的だ。

2.
また、キャラクター的には枯れてきているとはいえ、かつてはコミュニケーションを遊びに取り入れた「どこいつ」も、旧態然とした遊び方にとどまり、「5年間停止していたのか?」と思わざるを得えない。最近、「nintendogs」のすれ違い通信が話題になっているが、ああいう遊びは「どこいつ」でもやれたはずだ。数年前には積極的に新しい遊びに取り組んだのに、今ではせっかくの無線通信を生かせていない。開発者のクリエイティビティーが低下したというほかない。

3.
ただし、WiFi経由でのネット対戦やWEBブラウザはPSPの方がDSより若干進んでいる。そこはアドバンテージ。ただし、上記のように任天堂は満を持してキラータイトルを準備中だ。それまでにPSPでどんなタイトルが出てくるのか? 今の所、対応ゲームはそれほど多くないし、魅力に欠けている。実際、「ワイプアウト」も「ダービータイム」も全然売れていない。

4.
一番やる気が感じられないのは、韓国ではPSPを公衆無線LANと連携させるのに、日本ではその気配がまるでないことだ。日本のほうがインフラが整っていないという事情はわかるが、それを踏まえたうえで、最低限のアクセスポイントを提供しようとする任天堂とくらべ、あまりにネガティブだ。ハイスペックな機械も、アプリケーションとサービスが無ければ意味がない。

ソニーにしかできない戦い方はあるはずだ

個人的な感想をいえば、任天堂の1000箇所のアクセスポイントも決して多くはない。ただ、まぁ、任天堂はまだゲーム機メーカーの枠にとどまっているから、インフラを自前で整えても、後で回収するのが難しい。だからまさか1社で日本に公衆無線LAN網を築くわけにはいかない。おのずと自然なサイズが決まる。

一方、ソニーはここでグループのスケールメリットを存分にいかせるはずだ。相手より優位に戦える場所でしっかりポイントを稼がなければ、競争には永遠に勝てない。というより、PSPを無線LAN端末の最有力候補に押し上げるぐらいの勢いで取り組んでほしいものだ。

例えば、JRと提携して、山手線を始めとする主要な路線の駅で、PSPからWEBが見られるぐらいのサービスは始めてほしい。それとPSPからの接続のデフォルトはSo-netにしてしまい、PSPからのアクセスなら月会費無料というサービスもありえるだろう。PSPでネット接続したら、自動的に「無料」でSo-net会員になる。以前、ソニーがニフティを買収するという話があったが、そんな金があるなら、こういうことに使え、といいたい。

ゲーム部門とネット部門を両方抱えるソニーグループでなければできない芸当を見せてほしい。コストは広告費でまかなえばいい。広告のバナーデータはキャッシュしておき、ブラウザの立ち上げ、接続、ロード時間などの待ち時間に広告を表示する仕組みにする。

ISP各社は接続料が伸び悩んでいることもあって、ポータルサイト事業に舵を切っている。ネット広告を新しい収益源と見込んでいる。So-netも遅まきながら、路線転換を始めたばかりだ。
つもながら、動くのが遅いが。どういうわけか、ソニーはネットに関してはつねに鈍い。しかし今でもソニーにしかできないビジネスというのもあるはずだ。

かつて、ソニーはSo-net会員がPS2をネット接続端末として利用できるように「PS2ポータルサイト」を用意したが、なんとも中途半端な対応だった。PS2のネットビジネスが悲惨な末路を迎えたのは、誰もが知るところだが、こんな半端な連携しかできないなら、当然である。
公衆無線LANはこれまで少なからぬ会社が挑んできたものの、いまだ誰も成功していない。一夜にして最有力候補に踊り出ようというぐらいの気合がほしいものだ。別にこういう内容でなくてもかまわない。所詮こういう場所に書くようなアイデアである。穴も多い。要は、それぐらいの大規模なサービスの1つも打ち上げなければ、PSPという機械は性能を活かしきれないまま死んでしまうぞ、ということである。

ソニーグループ内でPSPという端末を活かした有機的な連携サービスのアイデアが次々と湧いていて、PSPの付加価値を高めるようなプランが進行しているのであれば、それでいい。きちんと知恵をしぼれば、1、2分で考えたようなアイデアよりも、もっと実現性が高くて、かつ大胆不敵なプランが出てくるはずだ。
しかしどんなに良いアイデアが出てきても、グループ各社の軋轢で潰れてしまったり、「コストが……」「技術が……」という小利口なツッコミだけは元気で、議論そのものがろくに起きていないのであれば、嘆かわしい事態だ。

ワイヤレス・エンターテインメントこそ、日本のゲーム産業の絶対優位性

この記事では、主にローカルワイヤレス・ネットワークにしぼって語った。結果として、ローカルワイヤレス・ネットワークにおいてアグレッシブな企業と、非常に消極的な企業について語ることになった。グローバルワイヤレス・ネットワークにはふれなかった。

しかし勘違いしてほしくないが、グローバルな携帯電話とローカルなワイヤレスLANのどちらが良いかとか、どちらが覇権を握るか、ということを議論する記事ではない。携帯電話大国の日本では多くの人の答えは知れているし、梅田望夫氏のBLOGにあるとおり、オープンイノベーションを信奉する米国ではWiFiと答える人が少なくないだろう。

グローバルワイヤレス・ネットワークとローカルワイヤレス・ネットワークは現状では良い補完関係にあるといえる。携帯電話のようなグローバル網だからできる娯楽、携帯ゲーム機のような無料のローカル網だからできる娯楽。それぞれの優位性を伸ばす形で、いろいろなアプリケーションとサービスが生まれてほしい。

もちろん、定額制の定額料金が値下がりしていくにつれて、両者の差は縮まっていく。その先に、最終的にどうなるかは、また別の記事で書いてみたい。重要なのは、両者が優位性を発揮しつつ画期的な新しいエンターテインメントを生み出していくことだ。なぜなら携帯電話にしても、携帯ゲーム機にしても、圧倒的に日本が先行している分野だからだ。はっきりいって、米国は物の数ではない。また、将来のアジア市場をにらんでも十分有望である。

昨今、日本のゲーム会社は欧米で市場シェアを失い、据置ゲーム機の主導権も米国(マイクロソフト)に奪われる可能性が高くなっている。そこでヒステリックに似非ナショナリズムに走るのは愚劣の極みである。重要なのは、自分たちが、国が、産業が、絶対的な優位性を発揮できる場所を見つけることだ。そういう場所を見つけ、そこにリソースを集中することで、圧倒的な競争力が生まれる。競争力の源泉を掘り当てることが、次の10年、20年の繁栄につながるのだ。

参考:
発熱地帯「ワイヤードオンラインゲームからワイヤレスオンラインゲームへ」

Posted by amanoudume at 00:53 個別リンク | Comments (14) | TrackBack(2)
[ワイヤレス]
Excerpt: 任天堂サン、公衆無線LANへ http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050509/ninten.htm これまでのHotSpotが「インターネットアクセスの提供」というハコものだったのに対し、任天堂はゲームという中味ギッシリのアクセス網ですから、根 本的に違いますよね。 やはり...
Weblog: Unwired Planet
Tracked: 2005年05月11日 08:28
ローカルワイヤレス・ネットワークゲーム
Excerpt: 発熱地帯急速に立ち上がったローカルワイヤレス・ネットワークゲーム ニンテン犬のすれ違い云々もさることながら、 ローカルワイアレス・ネットワークゲームは、ローカルなだけに、リアルと関連性をもったゲームが出来そうな気がする。 たとえば、RPGを想定すると、各エリ...
Weblog: 有無夢
Tracked: 2005年05月12日 04:55

2005年05月08日

こうしてダメ人間はダメブロガーになった

みなさまのおかげで2004年元旦
「発熱地帯」を始めて1年5ヶ月、100万ヒットに届きました。
・・・・。
・・・・。
・・・・。
えー、まあ、だからどうしたって訳でもなく、キリ番の人へのプレゼントをするわけでもないんですが、ちょっとこれまでをふりかえってみようかな〜、などと
思ったわけです。発熱地帯という形では1年5ヶ月ですけど、ボクが最初の個人ホームページを立ち上げて、WEBデビュー(謎)したのがちょうど5年前の
GW明けなんですよね。
   2000年5月  Dakini's 3D Collection
   2002年9月  (潜伏期間)
   2003年1月  Dakini's BBS (毒舌BBSほか、名称がコロコロ変わってます)
   2004年1月  発熱地帯
   2005年5月  現在
そもそも始めた経緯なんですが・・・・。
せっかくだから書いちゃおうかな。
ボクは最初ですねー、サイト作るよー、ってなことを99年の秋ぐらいからいってたんです。ところがいっこうに作らない。なんつーか、ついついサボってたわ
けです(ちなみに最初に作ろうとしてたのは書評サイトでした)。で、それから半年あまりの時間が経って、会社の同僚の・・・・まぁAでもBでもCでもいい
んですが、仮称のKということでK氏が先に日記ページを立ち上げたんですよ、社内ネットワークで。で、思いっきりネタにされてしまって、
> 作る、作る、言ってて何ヶ月も経ちます。
> いつも口ばっかり。これではダメだなと思って、ボクが先に立ち上げちゃいました。
> まったく彼はすっからかんの口先だけのダメ人間ですね(プゲラ
いや、まあ、正確に記憶してないんで文面は微妙に違いますけど、口調とかニュアンスはだいたいこんな感じでした。
もうっ、これってただの「羞恥プレイ」ですよっ!

まー、ゲーム開発してるとですね、一般的に、
開発末期にやってくる「徹夜プレイ」とか、
いつまでも仕様がこない、スタッフがそろわない「放置プレイ」とか、
ゲームの問題点の槍玉に挙げられる「羞恥プレイ」とか、
さまざまな「プレイ」を経験することになりますから、今のボクなら別段なんてことはない。
むしろポッと顔を赤らめつつ、「羞恥プレイ、ハァハァ」などと呟いていたかもしれませんw

が、まだ若かったんだなあ・・・・。
うわーん、このままじゃ、恥ずかしいよ、ママーン!などと心の中で泣いたボクは
GW中に何かサイトをでっち上げなきゃいかん、と思ったわけです。
で、当時一番手っ取り早かったのが3D技術の紹介だったんで、そういうサイトを立ち上げたんです。

今ふりかえると、ただのバカですな・・・・。

【2000年5月  Dakini's 3D Collection】
最初はリアルタイム3D技術の紹介、特にSIGGRAPHの論文紹介からスタートしたんですけど、ずるずる続けているうちにゲーム系ニュースについてのコ
メントが増えていきました。「おまえはCG Worldの手先かっ!」ってぐらい、CG World読もうよー、と書いていた記憶があります。
スタンスとしては割りと中立だったんですが、20001年秋ごろにはビミョーにGCの状況に批判的で、「スマブラ無かったら、終わってたね(w」なんて書
いてました。ただ、XBOXには好意的でしたね。それもXBOXの日本発売まで。あの「研磨機」騒動でぶち切れて、初期不良特集を連日書きまくり、以後
XBOX信者が寄ってきても撃退するようになったわけですが・・・・。
【2003年1月  Dakini's BBS (毒舌BBSほか、名称がコロコロ変わってます)】ちょうどCellの特許文献が話題に
なった頃に、BBSにこっそり記事を投稿し始めていました。当初は「Cellぐらいのパフォーマンスがあったら、どんなゲームが作れるか?」とか、
「PS2とXboxとGC、どれが一番性能が高いのか?」とか、ちょっと技術から入ったゲームの話題が中心でした。ちょうどNVIDIAがだめぽで、
ATIの評価が上がってきた頃。NVIDIA対ATIの話題もけっこう多かったですね。そして「ラチェット&クランク」「Half-Life2」の話題が
出始めた頃から、ゲーム開発論みたいな話に移行していきました。
この頃はちょうど、「日本のゲーム開発者は技術力が足りない」みたいな記事が非開発者系のライターによって書かれていた頃で、不正確極まりない3D技術解
説記事が横行していた時代でもあります。
また、E3出展では、プレイアブル出展されているゲームが「並んでいる暇がないのでやってません」と書かれ、ゲーム画面の動画を見せただけのゲームが「も
うここまで完成している。すごいっ。本当にすごいゲームですよ!」などと賞賛されていたりしました。その後、糞ライターが絶賛したゲームは予想通り発売延
期になり、リークなどによって、全然できていなかったことが露呈しました。
そういう一部ライターを批判してましたね。「ゲームはインタラクティブなメディアなんだから、あくまでプレイアブルを評価すべき。シアター出展で、ムー
ビーを垂れ流しているだけのゲームばかり注目して絶賛するのっておかしいだろー」。
当時は全般的にライター批判が多かった。
また基本的なスタンスとして、PS2断固支持。久多良木氏を高く評価していた頃です。
GCは無視か、批判のどちらか。マイクロソフトは敵の中の敵。まさに凶箱。
世間様では、BLOGが浸透し始めていて、「ブログってどうよ?」みたいな話題が目新しかった時期ですね。なつかしー。まぁ当時は、BBSのCGIを使っ
て、BLOGを書いてるようなもんだったんですが。
話題の中心が3D技術→ゲーム開発→ゲーム産業論と変わっていって、この頃に模索した結果、「発熱地帯」が生まれました。
【2004年1月  発熱地帯】ゲーム産業についての分析が中心で、もはや技術系の記事はほぼゼロ。何気に開発系の記事もこの頃から単調
減少してるんですよね。ううむ。当初はアニメバブルに乗っかって、アニメ感想を書いたり、あるいはラノベ感想を書いたりしていましたが・・・・。GW前か
ら忙しくなって更新が減っていきました。途中でPCがぶっ壊れるし。
秋ごろから更新頻度が復活。
「日増しにリアリティをおびてきた新時代の天下二分の構図」以降、DSとPSPの競争を中心にした記事が増えていきました。そして12月の初期不良騒動があってからは、しばらくの間、批判記事が続きました。

年が明けてからは、DSのソフトの売行きをベースに、ゲームの難易度、ゲームマニアとライトユーザーの違い、ゲームデザインの方向性(スキル主義の10年、コスト主義の10年ときて、次の10年は?)、といったゲームの方向性についての議論に戻ってきました。

またゲーム産業については、ゲーム市場が二極化しつつあるという状況をふまえて、いくつか記事を書いてきました。ゲーム会社が「パブリッシャー」と「スタジオ」に分かれていくこと、枯れたジャンルについては「作家」が台頭しつつあること。(「二極化していく「未来」」「ゲームの二極化の果てはパブリッシャー/スタジオ/作家の3階層モデル?」
・・・・と、まあこんな感じでやってきたわけですけど、Collection→BBS→発熱地帯と形を変えている間に、プラットフォームホルダーに対する
評価が変わっていますね。
んー、まあ、うちの読者の大半は「天下二分論」以降に来られた方々です。ですから、圧倒的多数の人にとっては一貫して「あー、この人、ソニーがものすごく
嫌いなのね」という印象しかないわけです。昔から読んでいるごく一部の人たちは「こいつ、コロッと意見変えやがって」と思ってるかもしれませんが。

Posted by amanoudume at 00:23 個別リンク | TrackBack(0)

2005年05月04日

成長に必要な新しいルール

北米もまた日本の二の舞になるのか?

EAの通期利益がアナリストの予想を下回ったことから、EA
の株価が急落。連動してtake2、Activisionといった欧米のパブリッシャーの株価が落ちているようです。まぁ成長が鈍化・停止すれば、こうい
うことは自然に起こります。
ソフトの価格競争の激化、版権の獲得競争の激化、開発スタジオ等の囲い込み、次世代ゲームへの投資増など、欧米のゲーム産業もコスト増加/利益減少に向
かっていますから、今後は同様のニュースを聞く機会も増えるのではないでしょうか。欧米もますます厳しくなるでしょうね。
次世代ゲーム機で懸念されるのは
    1)ソフトの開発費が高騰する
    2)次世代機のゲームソフトは1000円程度価格が上昇する(といわれている)
    3)ユーザーにとってソフトを買いにくい方向に進む
    4)一方で競争激化によるソフトの低価格販売攻勢も激化する
    5)利益の確保が難しくなってくる
というネガティブスパイラルに陥ってしまわないかという点。日本のゲーム業界がPS2の登場を契機に逆に落ち込んでいったように、XBOX2やPS3の登
場を機に欧米のゲーム産業も衰退が始まるのではないか。そういう予想があります。
次世代ゲームになったからといって、前世代ゲームよりも多く売れるわけではありません。大幅に売り上げを拡大できない以上、コストを落とさないと利益は減
ります。マネージメントの向上や開発環境の改善があったとしても、次世代機ではおよそ2倍の開発規模になるという予想もありますから、それだけ人件費が増
えてしまうと、非常に厳しい。
欧米のゲーム産業ではますます中国へのアウトソーシングが進み、人件費の圧縮が大きなテーマになるでしょう。となると、パブリッシャーは強くなっても、
ディベロッパーはひどい負担を背負わされ、活力を減退させていく可能性がかなりあります。次世代ゲーム機に進んだ時に容易に予想される、こうした問題点へ
の解答はいまだありません。無いものの、先に進まなければならない。
そこで2つの予想が出てきているわけです。1つは日本のようにやはり減退していくのではないかという予想。もう1つはいくつもの問題を乗り越え、産業とし
てより成長するという予想。欧米のゲーム関係者は当然後者の人間が多いわけですが、そのこと自体はあまり説得力を持ちません。
なぜなら、PS1時代末期、PS2が発表された直後の日本のゲーム業界人の反応、発言を思い出せばいい。「永遠に続く成長は無い」。理論ではわかっていて
も、実際に高成長している時に「次に奈落が待っている」と考えるのは難しい。成長への幻想を捨てきれない人たちにとって、減退するという予想は実感の無い
ものでしょう。そして実感をともなわない予想は、彼らにとってあまり説得力を持ちません。説得力を持たない予想は机上の空論として処理され、業界や企業と
いった大きな集団は予想された事態への対処が遅れがちになります。

ゲーム業界には新しいルールが必要になってきた
ここで問題なのは、ではゲームは日本でも欧米でも衰退
化していくのか?ということ。
長期的な視野で見た時の減退を克服するには、業界の既存ルールのいくつかを変更する必要があると思います。それらすべてを論じるのは避け、ここではそのう
ち2つだけを提示することにします。1つは「ゲームソフトはソフト単独の売上で利益を回収する」という利益構造。もう1つは「ゲームソフトはタイトルの名
前や会社の名前だけで買われるもので、作り手の名前などほとんど意味を持たない」という認知構造。
この2つのルールは長い間、ゲーム業界を縛り続けた「常識」です。単純に変わるものではありません。けれども長期的な視野に立てば、その「常識」を書き換
えていかないかぎり、ゲーム産業の末路もまた「常識」として定まってしまうでしょう。ゲームの世界はおよそ10年(ゲーム機2世代)ごとにプラットフォー
ムホルダーのトップが交代し、メディアやプロセッサなどの根幹部分が飛躍的に変化しました。
チャレンジャーは古いルールにかわる新しいルールを持ち込むことで、新しいプラットフォームを成功させました。新しいルールは当初は古いルールを熟知した
人間(一部の開発者、一部の流通関係者)に小馬鹿にされるものです。なぜなら彼らは古いルールブックはよく知っていますが、新しいルールは何も知らないか
らです。彼らは古い出来事を都合よく持ち出して、新しいルールが普及するはずがない、と声高に主張します。
しかしゲームの歴史というものを振り返れば、じつにたくさんの「常識」が、「ルール」が崩れ、新しいルールが打ち立てられてきたのです。今では信じがたい
ことですが、かつては「日本でRPGが売れるはずがない。子供があんなに難しいものを遊ぶはずがない。あれはマニアの遊びだ」という主張が説得力をもって
いた時期があったのです。もしその常識を全員が信じていたなら、世の中に「ドラゴンクエスト」が誕生することはなかったでしょう。
古い常識、古いルールというものは所詮、そんなものです。古いルールに頑迷に固執している者が、現在形のロジカルな議論をしているのか、それとも過去の出
来事を例示することしかできないのか。そこを見ぬかなければなりません。
もちろん新しいルールを打ち立てるのは簡単ではありません。PCで動いていたRPGを単純にそのまま持ち込もうとすれば、「ドラクエ」は失敗していたで
しょう。ファミコンのスペックや、ユーザーのRPGというジャンルへの理解度を考慮して、誰もが楽しめるようなゲームデザインを作り上げたから、「ドラク
エ」は成功しました。新しいルールは単純に新しいというだけでは成功せず、導入において知恵を絞る必要があります。
重要なのは新しいルールを持ち込もうとしている者に知恵があるかどうか、です。知恵ある者は偉大な挑戦者として勝利への階段をのぼっていき、知恵なき者
(あるいは古い知識だけ持っている者)は階段から転げ落ちてフェードアウトしていくのでしょう。

Posted by amanoudume at 00:48 個別リンク